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2月11日

 夢の中では3月4日まで進み、あの知恵の輪の魔法は何なのか聞かれたんだったな。

 アレはきっと、性転換の魔法だろう。

 万が一を、ロウヒ神も考えていたのだろうな。


 そして今日は、2月11日、ハナの帰還予定まで残り9日。

 無色国家はどうにか出来たが、他に何をすべきだろうか。


「アクトゥリアン、宇宙デブリは存在するのか?」

【0で言われる様なモノは無いですねぇ。大気圏で燃え尽きる等のゴミを残さない事が発射の条件なので】


「もし、惑星が近くで崩壊した場合、お前達は大丈夫なのか?」

【心配してくれるんですね、ふふ、ありがとうございます。ビーム砲と防御壁は有るので大丈夫ですよー】


「攻撃を受けてもか」

【はい、移動は可能ですので】


「そうか」


 あぁ、今回も対価を受け取ってくれるだろうか。

 何か、用意すべきだろうか。


 だが、何を。


『おはようございます、タケミツさん』

「おはようエミール、調子はどうだ」


『ふふ、大丈夫ですよ、目も体調も』


 髪も目も、俺は対価には差し出せない。

 ならもう、女性体の純潔位しか無いんだろうか。





 おタケが凄そうな神様に接触した。

 んで対価の話に、しかも女性体の純潔って。


 あぁ、冗談か、ビックリした。

 嫁との馴れ初めか、良いんだ、こんなので。


 そうして早速宇宙へ。

 良いなぁ、楽しそうだなぁ。






 毎回、同じ対価は気が引けるな。

 もし次が有るなら、ちゃんと考えるべきなんだが、どうすべきか。


『あの、美味しく無かったですか?』

「いや、すまん、考え事をしていてな」

『タケミツさん、今度はどんな悩みなんですか?』


「俺は帰還予定だからこそと言うか、渡せる対価の少なさに落胆していてな」

『あの、ハナさんみたいにお土産じゃダメなんですかね?』

『寧ろ、それで良いんですかね?』

『ふふ、少なくとも私はハナのお土産は嬉しいわね。私や、他のヴァルキュリアや神々の事を考えて、選んでくれるって分かってるんですもの』


「ドリアードは、対価を貰い受けている気配は無いんだが」

《我の場合は傍に置いてくれるだけで良いんじゃよ、本来なら忌避されても仕方の無い存在じゃし。じゃが同行するかと訪ねてくれた、その時点で対価を貰い受けたも同然なんじゃよ》


「クエビコ神もか?」

『アレは良い景色を色々と見せてくれる、動けぬワシを過度に気遣うでも無く、不意にどうだと訪ねてくれる。そうした心遣いと、気安さだな』

《下手に崇め奉られるだけじゃとな、飽いてくるでな。アレじゃな、王が下町へ行きたがる感じじゃよ》

『そもそも、ハナって提供したがりなのよね、面白い事もプレゼントも、料理だって美味しいモノを食べさせたいからこそ、作るのを遠慮する方だし』


「譲り、提供している意識は有るんだろうか」

《気にしいじゃからなぁ、そこのバランスなんじゃよ》

『饗されるのとは少し違う、とでも言えば良いだろうか』

『そうねぇ、サービス精神旺盛って感じよね』

『ふふふ、ノームさんにもサービス精神旺盛ですもんね』

《ココでワシの話するぅ?》

『美味しいキノコと魔石、ありがとうございます』


《別にエエねんで》

「元気が無いな、高い高いでもしてやろうか」


《アンタ女やんけ、しかもマジで洒落にならんくなりそうやし、遠慮するわ》

『勢いが全然ですね、どうしたんですか?』


《何やこう、巫山戯合えるシオンちゃんが恋しいとか全然思ってへんねんけど、やっぱ何か、寂しいやん?》

『寂しいんですね、ふふ』

「最後に凝縮されたな」

『大人気ですね桜木さん、ふふ』


《何やろな、別に居らんくても全然エエねんで?そないな事でワイは死なへんもん。でもな、何かオモロい事が減るんは寂しいやん、いつまでなん?》

「そうだな、少し様子を見て来るかな」


 流石に神々には隠すつもりも無いしな。


《ふぁ!?居なくなってしもたん?!》

「他の召喚者達には言って無いんだ、内密に頼む」


《それはエエけど、何でなん?何処に行ってしもたん?》

「他の世界だろうと、俺は予想している」


《せやったら、あの揉め事もアレなん?ハナに帰って来て貰う為のゴミ処理なん?》

「半分だな、もう半分はココの為だ」


《はぁ、頭が上がらんわ。ワイ何も気付かんかってんもの、堪忍な、何か手伝える事は有るか兄ちゃん》


「ハナから受ける対価と、俺の対価について話してくれないか?」

《紫苑ちゃんはもうな、孫みたいなモノやね。ハナも孫なんやけど、見た目がもう最上級に苦手な可愛い孫やねん。せやから、ちゃんと幸せそうにしてくれてればエエねんけど。アンタは他人やしな、対価をしっかり貰わなアカンねん。どう区別するかっちゅうと、フィーリングやね》


「相性か」

《キノコ好きにキノコ上げるんのと、キノコ好きでも無いのに上げるんは違うやん。そない感じやで》


「絶妙に分からんな」

《分かる奴はフィーリングが合う、合わんから分からんねん、シンプルイズベストやろ》


「だな」

《よし、対価や、男に変身して全力で高い高いせい》


「おう、任せろ」


 この行動も、ハナの為の思い出作りの一環なのだろう。

 キノコ神は、絶叫しながらそのまま消えて行った。




 僕も、何か対価で渡せるモノを考えるべきだと思った。

 それは小野坂さんも同じだったみたいで、お買い物へと出掛けた。


 僕は、何を渡せるんだろう。


「小野坂はどうした」

『お帰りなさい、お買い物に行きましたよ』


「そうか」

『僕は、何を渡せると思いますか?』


「ハナなら、何て言うと思う。ハナに渡すなら、何を渡したい」

『良いモノ、ですね。そっか、だからお料理を遠慮してたんですね』


「だな、まして手作りを喜ぶのも、嫌がるのも居る。逆にだ、既製品だと嫌がるのも居るだろうな」

『プレゼントって、凄く難しいから、だからお土産なんですね』


「そこに有る最上級が旨いかどうかは別、そうなったら味見が必要で、そうなると味覚が合うからこそ喜ばれる」

『正解〜やっぱり味覚が合うって大事よ、ね?』


「だな、結婚ともなれば余計にな。辛さの度合い、塩味の度合い、甘さ加減に酸味にとな。当然、全てがチグハグなら苦痛しか無いだろう」

『ハナさん、無理してたんですかね』

『無い無い、もう凄い表情に出るもの、ふふふ、そこも好き』


「本当に美味そうに食うからなメイメイは」

『向こうで、ちゃんと食べてますかね?』

『エミールも大好きで仕方無いのねぇ、でも程々にしないとね、アノ子が嫉妬しちゃうかもだし』


「だな、話題は程々にしよう」

『はい。あの、僕、釣り針を作ろうと思うんですけど』

『あら良いじゃない、じゃあ材料を取りに行きましょ』


 今日は、俺らも休暇日かも知れんな。




 従者ちゃんが、従者じゃ無い状態でココまで来て、相談したいんですって。

 ハナが好き過ぎてこう行動するって、いじらしくて良いじゃない。


「しょうがないわねぇ、で、ホテルは取ったの?」

「いえ、断られるかもと思ってたので、ダメだったらトンボ返りしようかと」


「プライベートと言えど召喚者様の為の相談を私が断るワケが無いじゃないの、って言うか荷物少ないわねぇ」

「そう長居する気も無かったので」


「良い度胸ねぇ、良いわ、ちょっといらっしゃい」


 ハナとのデート用にって服を選んであげたのに、スッゴイ落ち込まれちゃった。

 何か有ったのかしら。


「あの、居なくなったのはご存知ですよね」

「そうだけど」


「僕の貞操を、強固な砦は好きだって、言って貰えた直後に、居なくなったんです」

「はー、何を気に病む事が有るの。アンタのせいじゃないのは、まぁ、帰って来れば分かるでしょうけど」


「しかも作戦の一環とは言え、一時的に婚約者が出来たりで」

「あぁ、それは少し不味そうねぇ」


「ですよね、本当に迂闊でした」


 詳しく聞けば特に問題は無さそうに思えるけれど、ちょっと複雑性が有って着地点が微妙な事になりそうなのよね、アノ子。

 まして心得の事も有るし、後に響かないと良いんだけれど。


「まぁ、全ては帰って来てからよね」

「帰って来ると思いますか?」


「だって、じゃないと幸せにしてあげられないじゃない。何よ、ハッとした顔して」

「その発想は、僕には無いなと」


「アンタ達、立場も何も違うのにちょっと似てるわね。アンタは何でそんなに自信が無いのよ」


「童貞だからです」

「ぐっ、ちょっと、真顔でヤメて頂戴よ」


「真面目に悩んでるんですが」

「経験は一緒に積めば良いじゃない」


「面食いなんですよ?しかも救ったら選び放題になるんですよ?」

「まぁ、灯台だから選び放題でも問題は無いものねぇ」


「本当は、僕だけを選んで欲しいって、でもそれには」

「対価か代償か、難しい所よね」


「それに、高望みだと理解しているから、自信が無いんです」

「そこは他の能力で補いなさいよ」


「伸ばそう、勉強しようとは思ったんですけど。服飾なら虚栄心さんが居ますし、じゃあ経営なら、プロに任せるべきだろうと、なってしまって」

「あぁ、ウブの面倒な所が発動してるわねぇ」


「すみません」

「良い意味で発動させる方法も有るわよ」


「どう?」

「それこそもう、デートプランとかで良いじゃない。全てが終わったら旅行だって視察だって普通にするでしょうし、例えアンタと行かなくても、ハナの役には立つじゃない」


「確かに、公務も入るでしょうし」

「そうよ、で、公務ってどんな感じになる予定なの?」


「予定としては土日に軍の行事に出向いてもらおうかと、災害であれ何であれ、軍は出動しますので、慰問と言う形になるかと」

「慰問ならハナにして欲しいものだけれど」


「民間人への露出も考慮しての事なので」

「はぁ、それって何年もそうなるの?」


「最初の1年はお願いしようかと、後は大きな行事のみで。後半は特に、事業の立ち上げや余暇を過ごして貰えればと」

「平和の象徴にしたいのね。なら余計に、行事の前後に旅行させちゃいなさいよ、どうせ遠慮するでしょうから、公務に紛れ込ませるのよ」


「確かに、良いですね」


 はぁ、弟ってこんな感じなのかしら。

 面倒可愛いって、こうなのかしらね。




 虚栄心さんのお陰で、先ずは帰還後の第2地球が出現するまでに何をすべきか。

 厄災後にどう補佐したら良いかの目途が付いた。


【津井儺君、休暇の意味を忘れちゃいましたか?】

「すみません、でも思い付いただけで大丈夫です、休暇はちゃんとしてますよ」


【なら良いんですが、ちゃんと楽しんだ証拠を確認するかもですからね】

「はい、ありがとうございます柏木さん」


 期間後に、食事のストックが切れている可能性を考慮し、桜木さんの好物を店舗へ委託する事に。

 食べ歩きも何人かで行い、視察と言う名目にする事になった。


 そして公務に旅行を混ぜる案も採用して貰えた、でも安全性を確保する為、行く行事も地域もランダムに。

 毎回旅行は出来なくても、地域振興にも良いだろうと、前日や後日に行われる事になった。


 後は家。

 実際に南北と中央に家を持って頂ければ、安全性を確保し易いので採用となり、家の候補も何件か上がった。

 だが問題は資金。


 事業を起こす想定はなされているが、飲食なのか何かのモノづくりかが不明なので、詳細が詰められない状態。

 コレはもう、帰還後に少しずつ聞き出すしか無いのだろうか。




 少し昼寝をしただけなんだが、もう3月9日まで進んでいた。

 どうしても、あの道を辿ってしまう。


 影響力が少なさ過ぎたんだろうか。

 もっと、紫苑らしさを引き出してやるべきだったんだろうか。


『ふふ、筋肉痛ですか?』

「いや、だが反省点がまだまだ有ると思ってな」

『ですね、さ、頑張りましょう』






 おタケをワイプに、従者君や他のを観たけど。

 やっぱりハナちゃんだよなぁ、もう、どうなるか気になって仕方無いんだもの。


 それと、もっと他の人間のシミュレーションも知りたいんだよな、あのネイハムちゃんのとか。


 そうそう、コイツ。

 リズちゃんに会う為に五十六ちゃんと来て、今はホテルで相談中。






「やっぱり、呪いがネックかねぇ」

《そうなんです、寝返る事は無いとは思いますが、灯台の性質も有りますし》


「でもねぇ、自己認識はしっかりしてる方じゃない。小野坂さんより良い状態だと思うけどねぇ」

《そうですね、表面上、人に左右され易いのは小野坂さんですが》


「根深さが気になるのかい」

《家庭内が平和だった小野坂さんと、桜木花子では不安定さの根本が違うかと》


「でも時期によるじゃない、厄介なのは小野坂さんの方だと思うけどねぇ」

《そっちは任せます》


「興味無いと直ぐこうだ、君の悪い癖だよ本当」

《典型的過ぎて考察するまでも無いかと、信頼出来る支えが有れば大丈夫でしょう》


「そうだけどさぁ」

《結論は以上なんですが》


「分かった分かった、待って待って」

《別に付き合って頂かなくても結構ですよ、どうぞ帝都観光でもしてらして下さい》


「もー、僕だって興味が無いワケじゃ無いんだ。ただね、居ない時に探られたって勘付かれたら、不信感を持たれそうじゃ無いか」

《そこは医師として堂々として下さい、能力的に監査対象になったとしても、納得する子なんですから》


「でもねぇ、自分を脅威認定って悲しいモノだよ」

《そこを補佐するのが仕事でしょう》


「もうハッキリ言うけど、最悪はハーレムの管理も任されるかもなんだよ?それか狗神か土蜘蛛の補佐になる、補佐だけなら良いけど、果てはかなり立ち入る事にもなるんだ、私は嫌だよ」

《折角の召喚者様なんですよ》


「同じ人間で、まして本当に普通の子が勝手に連れて来られて、役目を背負わされて。コレって、状態としては異常事態なんだよ?」

《普通でしょうかね、あの天使に安らぎすら感じるのが》


「まぁ、そこは呪いかもだし」

《そう普通の女の子だろう目線を持つ方が1人は居ても良いですけど、呪いなのか適性なのかを見極めるべきだと思うんですが》


「もうちょっと、詳しく言ってくれるかな?」

《前衛が本当は誰なのか、最悪は誰を生き残らせるべきなのか、です》


「そこまでかぁ」

《信じて無いんですね、予知夢を》


「だねぇ、暗喩か比喩だと日和見のおじさんはそう考えてるし、大方はそうだよ」

《もし私達にも、そうですね、見るのが1番かも知れませんね》




 俺と白雨が精神科医に呼び出された。

 鍵に触れさせろって、第2地球を観察したいから。


『そもそも、見れるか分からないんだが』

《では行って確認して下さい、見れたら鍵を出して下さい》

「なんか、キレてね?」

「僕が日和見だから、怒ったんだ、ごめんね」


『危ないかも知れないと言っていたのは、良いのか?』

《日和見し過ぎて対策が後手に回る方が嫌なんです、それに、ご本人が居ないからこそ得られる情報もあるかも知れませんので》

「それには同意だけどもさぁ」

「危ないんだろ、ドリームランドって」


《謎の、おじさんと呼ばれた方の言葉が正しいなら、開拓された場所は安全な筈ですし。桜木花子の影響も無いかと。ですので協力して下さい、ドリアードも》

《我は良いが。マーリンがどうするかは分からんよ?》


《世界平和の為です、協力して下さい》

《しょうがないのぅ》

『分かった』

「僕は見守らせて貰うよ」

「俺も、連絡係は必要だろ」






 良いねぇ、コッチに来てくれた。

 ん?コッチ?

 俺って、ずっとドリームランドに居る感じ?


 あぁ、でも誰の映画館なんだろ。


 あ、考えると溶ろけちゃうぅ。


『分かったって、考えないから見させて』


 もう、そんな意地悪しなくても、ちゃんと見届けるのにな。




 桜木花子が見た第2地球には、確かに何の感慨も思い浮かばなかった。

 ただ、そこにある、ただそれだけ。


『ただ在るなと、感じるだけなんだが』

《それこそ、距離が遠いからでしょうかね。誰か、近付けさせて下さる方は居ませんか》

『死んでも知らないからな』


《お久しぶりですマーリン、宜しくお願いしますね》


 近付く程に不安が増す。

 地球から離れるからでは無く、明らかに良く無い何かが存在する気配。


 それがどう、良く無い何かなのかは皆目見当がつかない。

 ただ、悪意が存在するだろう感覚だけ。


『言語化には難しい感覚だろう』

《そうですね、でも何か、馴染みが有る感覚と異質な感覚が混在する様な》


『それも、言語化が難しいだろう』

《ですね》


 二面性、身近にある悪意。

 異質で、馴染みのある何か。


「ふぅ、好奇心は猫を殺すらしいんだけどねぇ」

《やっぱり来ましたね》


「だねぇ、ただ有るだけだけど、近付いてどうだった?」

《お願い出来ますか、マーリン》

『あぁ』


 一定の距離で悪意と恐怖に耐えられず、五十六先生は引き返して来た。

 どうやら、途中で黒い仔山羊が見えたらしい。


「ビックリしたよぉ、急に見える様になって迫って来るんだもの」

《そうなると、クトゥルフが関係するのかも知れませんね》


「だね、でもそうなると、あの子が本当に脅威認定されてしまうよ」

『それは困るんだが』

《もう既にアナタ達を囲っている時点で、認定されなかった方が不思議なんですよ。元大罪に元魔王、傍に置いてるだけでも、議論は続いていたんですよ》


「秘匿してたとは言え、最強だしね、魔王候補目前だよ」

『俺らのせいか』

《それと接触した神々の偏りです、ココですら魔属性と言われる方々ばかりですから。武光さんが未然に防いでくれたので未満ですが、あのまま行けば魔王候補ではと提訴が行われてた可能性は高いんですよ。人の身に余るだろう力を持つと、毎回起こるんです、排除する騒動が》


「だからネイハム君は知りたがったんだねぇ」

《真に排除対象になれば、我々は体制側、桜木花子が敵になりますからね。抑え込める方法を模索するしか無いので》

『なら、アンタは敵になるのか?』


《そうなりたく無いので、桜木花子を知りたいんです》


『なら、見て回れば良いだろう』

《はい、五十六先生は帰っても良いですよ》

「見るよぉ、ココまで来たんだものぉ、あ、ただ別々に行動はするよ。白雨君、案内して貰えるかな」

『あぁ』




 ココにはまだ、温泉郷って無いのね。

 気になるなぁ、いつ統合されるんだろう、帰って来たらかな。


 早く帰って来て欲しいけど、死なれたら嫌だなぁ。




 家は、田舎にしてみたら平凡。

 港町も、花街は店も豊富で精工でも、比較対象が無いので評価は不能。

 特筆すべきは遊郭だろうか、利用した気配は無し、寧ろ禿(かむろ)として遊んでいただけらしい。


 そしてマンション跡地の禿山、心象描写なのだろうか、草木も生え無さそうな黒い山。


 それから港街も、ヘル神が通り過ぎた気がするが無視し、視察を続行。


 どうやら第2地球は、あの家でしか見れないらしい。


 こう商店が多いのは所有願望の表れなのか、経営に興味が有るのか。


《祥那君》

「あ、先生、何か有ったんですか?」


《第2地球の視察のついでに見回ってました、ソチラは?》

「桜木さんの役に立つにはと思っていたら、来てたんですが、不味いでしょうか?」


《いえ、ですが休暇の筈では?》

「はい、ベガスには滞在してますが、出来る事は無いかと考えてまして」


《熱心なのは良いと思いますが、プライベートは大事にすべきかと》

「あの、仕事が趣味では駄目なんでしょうか」


《その仕事が出来なくなったら、どうするんですか?》

「四肢のどれかが残る事は想定しているんですが、希望的観測が過ぎますか?」


《いえ、そこまで考えてらっしゃるなら結構ですが、桜木花子が心配するのでは?》

「ですよね、どうしたら、好かれるんでしょう」


 思考の抑制が効かなくなるんでしょうかね、ココは。


《作り上げた状態を好かれるより、通常通りの状態を好かれる方が、嬉しくはありませんか?》

「はい、ありがとうございます。お邪魔しました、では」


 夢現と言うにはハッキリした意識、ですが願望が容易に発露させられる世界。

 大丈夫でしょうか、五十六先生は。


《そう言えば、アナタの事は認識されて無さそうでしたね》

『ココではお互いに認識されたく無いと思えば、そうなる』


《便利なのか不便なのか、評価が難しいですね》


 そうして桜木花子の家に戻ると、五十六先生が第2地球を背にお花見をしていた。


「容易に叶っちゃうんだねぇ、願望が」

《何処までも日和見主義ですね》


「穏やかさも有るって事だよ、ココには。そう、何でも有るから侵害されたく無いんだろうね、住民も来訪者も」

《ですが、空鬼と呼ばれるモノが》


 噂をすると、直ぐに目端に空鬼が。

 ココの住民には見えないのか、見慣れているのか無視されている。

 私達を排除する気配は無いんですが、絶妙に嫌な造形ですね。


「嫌な感じが実に良いね、差し当たってはお巡りさんなんだろうね」

《管理には》

『今は我じゃな、アレが居らんし』


《亡くなったワケでは無いんですよね》

『じゃの、生存の気配は有るが、何処でどうとまでは分からんよ』


《クトゥルフが繋がっているからでしょうか》

『かも知れんし、全く別の事かも知れんと言うておるのにじゃ』

『だって、心配なんだもん』


『コヤツを何とかしてくれんか?』

《ロキ神》

『あ、サクラちゃんの先生だ、美人さんだねぇ』

「そうなんだよ、見た目は良いんだ見た目はね」


『え?性格は最悪なの?それとも性癖?』

「興味のムラが凄くてねぇ、しかもドSなんだよぉ」

《余計な情報をココで伝えないで頂けませんか》


『まぁまぁ、知ったら知らせないとフェアじゃ無いとは思わない?』

「だよねぇ、それが良心だよネイハム君」

《それならばご本人に直接》


『ココの住民はね、見て聞いてるんだよ、中身まで。君が考えてる事を察知して、まるで噂話の様に広めるんだ。そうして来た者を安全かどうか、サクラちゃんにフィードバックしてるかもなんだよね』


《そうなると、桜木花子の為だけに》

『だって、サクラちゃんの世界なんだもの、当然だよね』

「向こうより良いかも知れないね、過敏な彼女にピッタリな安息地じゃないか」


《ココに引き籠もられたら手出しが出来なく、コレが、桜木花子の安全装置なんですか?》

《そう使えばそうなるじゃろな》

『それだけ、大きな厄災なのかもねぇ』

「そうだねぇ」


《何を呑気な、最大規模かも知れないんですよ。そうなると、殆ど桜木花子が負う事に》

『だからこそ、生きる執念を強固にして貰いたいよね』

「生きようと足掻かなければ死んでしまう場面で、生きたいと思えるか、死んでも良いと思ってしまうか。あぁ、異世界に飛ばされた理由が分かったかも知れないよ、執着を持って貰う旅なのかも知れないね」


《だとして、他の3人はどうなるんですか》

「スペアと補佐と執着だろうね」

『エミール君を気に入ってるけど、執着には弱かったんだろうね。そして補佐は、実際に両方を補佐してるし』


《帰還が叶わなければ、小野坂さんに負担が行くんですよ》

「プレッシャーで伸びる子も居るんだし、最悪は告知した方がしっかりするかもだよね」

『おタケも最悪は考えてるだろうし、そうなるとエミール君がどうなるかなぁ』


《そうなると、最悪は彼が》

「柔らかい時期だからねぇ、魔王か大罪化する可能性も有るだろうね」

『でもさぁ、空きが有るからってそうなるかなぁ?』


「大罪の代替わりも懸念はされているし、重複もね。ただそうなると、重複は直ぐに解消される筈なんだ、正義と正義のぶつかり合いになるからね。どちらかが消えるだろう、とね」

《それを防ぐには》

『サクラちゃんが軸だからねぇ、他に作らせるのが1番なんだけど、拗れてる方だから難しいと思うよ』


《毎回、こんな複雑な組み合わせだったんでしょうか》

『どうだろうね、俺とかは忌避される側だし』

《じゃな、セバスにでも聞けば良かろう》


《それか、アレク君ですかね。向こうへ帰りたいんですが》

『うむ、ほれ』




 先生が眠って数時間後、いきなり起きたかと思うと、過去の召喚者はどうだったのかと聞かれた。

 サクラの為に教えたいんだけど、凄い朧げで、殆ど覚えて無いんだよね。


「ごめんね、セバスの所に送ろうか?」

《お願いします》


「五十六先生は良いの?」

《どうせ起きたら観光でもするでしょう、ついてて下されば結構ですよ》


「おう」


 送って帰って来ると、白雨も五十六先生も起きて来た。

 そうしてサクラの為に観光しようって言われた、生きる執着が重要になるかもって。

 だから俺らも色々と知って、サクラの生きる意欲に繋がる何かを見付けろってさ。


「ネイハム君とは違う懸念が浮かんだんですよ、この世界を諦めて、絶望して、生きる事を止めてしまうかも知れない。世に言う鬱になられる事を、僕は心配になったんですよ」

「召喚者が悪だって言うのも居る位だしな」

『本当に、目の当たりにしないでくれて良かったと思う』


「そう情報を隔離しても、いつかは漏れると思って行動しないといけませんからね。そうなる前に、気分転換の方法を模索すべきだと思うんですよ」

「コレ、万華鏡とか好きそうだと思うんだけど」

『スノードームが好きなら好きそうだな』


「作るのはどうなんでしょうね」

「あー、好き」

『もう、勝手に買っておくか』


「程々にお願いしますね、自主性が大切ですから」

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