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2月8日

 確実に、少しだけ時期が早まっている。

 今日は人の雨が降る夢をハナが見た。


【タケちゃん、居たよね?】

「あぁ、邪魔になってしまったか?」


【ううん、共有出来て良かったよ、全然感想が湧かないから何とも言えなくて】

「正直、降って来たのは無害なんだとは思ったが。あの地球には良いも悪いも浮かばないな」


【なのよねぇ、遠いからかな】

「かも知れんが、迂闊に近寄らないでくれよ」


【おうよ】


 もしかしたら、全く同じ日付けの動きはしないかも知れない。

 この些細なズレが、悪影響を及ぼさないか。


 不安で堪らない。


「ハナは、大丈夫そうか?」

《寧ろお主じゃろう、不安が溢れておるぞい》

『良い悪いの判断はつかんと言っていたが』


「アレが予知夢なら接触は必ず有るだろう、まして灯台のハナが目を付けられる事が心配なんだ」

《だけじゃろか?》


「攫われたり、消えたりされるのが怖いんだ。俺が代わってやりたいが、男の俺を標的にはしないだろう」

《それはアレじゃよ、魔道具で変身しておけば良かろう?》


「確かに」


 それで俺が異世界に転移するなら、俺がそのままこなせば良いだけだ。

 だが、そう上手く行くだろうか。


 だが、もう既にズレているんだ、試す価値は有るだろう。




 桜木さんは紫苑さんへ、小野坂さんも男性へ。

 エミール君はそのままで、武光さんが女性として過ごす事になった。


「タケちゃん、美人さんやね」

「褒められると複雑に思えるのは、こう言う事か」

『シオンさん、髪はカツラなんですよね?』


「そこを心配する?」

『だって、もう普通に馴染んで、おトイレ行ってたじゃ無いですか』

『あの、どうやってしました?』


「あぁ、座ってした、ウチの家訓みたいなもんだから」

『そうなんですね、ありがとうございます』


「大変そうだなぁ」

「桜木さんが馴染み過ぎなんですよ」


「あ、ショナも成れよ、ショナ子ちゃんに」

「何でか先ずは聞かせて貰えますかね?」


「マサコちゃんがどう反応するかが気になる」

「確かにどうなんだろうな」


 小野坂さんが戻って来る前にと、本当に変身させられてしまった。


「マサコちゃん、今のタケちゃんは苦手?」

『あ、え、本来が男性だと知っていると、ちょっと』


「じゃあショナ子ちゃんも?かなり本来っぽく無い?」

「誂ってます?」

『すみません、やっぱり本来が男性だと』

『じゃあ、実はハナさんの本来の性自認が男性だった場合はどうなるんですか?』


『え』

「まぁ、女だぞと喜んで自覚はして無いが、一応は男性が性対象ぞ」


「紫苑でショナ子なら抱けるだろう」

「アリ」

「誂わないで貰えますか?」


「うん、全然イケるわ、不思議」

「もー」


『あの、桜木さんって』

「拘って無いとか言ったらどうなる感じ?」


『えーっと』


 小野坂さんが完全に混乱している。

 偏見は無いとは資料には有ったが、ココまでの事は経験していないらしい。


「大丈夫だよ、タケちゃんにもマサコちゃんにも全く興味が無いから」


 何故か、ココでムッとしていた。

 複雑と言うか、繊細にも種類が有るんだなと思った。


「そう言えば、この紫苑でも相性は良く無いんだろうか」

《じゃの》


「そうか。少しココで紫苑と訓練してからソチラへ向かう、小野坂は自主練しててくれ」

『はい』


『ふぅ、何でムッとしたんですかね?』

「何でだろね、安心して貰えると思ったのに」

「そう見られたくは無いが、対象から外れれば無関心と同義で嫌なのかも知れんな」

「複雑ですね」


「ね」

「よし、本気で来いよ」


「おう」


 紫苑さんだと、魔剣の威力は半減していた。

 ただ運動神経は確実に向上している、でも憑依には劣る。


「反応が僅かに鈍いな」

「目では追えてるし、体も動くんだけど、何か余計な力が入る感じやね」


「そもそも素体が慣れて無いのも有るだろう、何か良い練習方法は無いか?」

「ココのマニュアルですと、乱取りなんですが」

「おー、やってみるー」


 女性化を解かせて貰い、紫苑さんと乱取りへ。




 紫苑はコツさえ掴めば早かった。

 体格差も有ってか、ショナ君の投げすら防いだ。


「紫苑さんだと、格闘の素養はどうなんでしょう」

《不思議と有るんじゃと》

「やっぱり生まれる性別を間違えたかぁ」

「かも知れんな」


 そもそも、紫苑が本来なら呼ばれていたのか。

 呼ばれたとして、夢見の能力は。


「夢見はどうなるんやろ」

《やはり幾ばくかは薄れるんじゃと、不思議なモノじゃな》

「そうなるとクトゥルフとの相性にも関わるんだろうか」

《はい、反応速度が変わると捉えて頂いて構いません》

『やっぱり夢って複雑なんですね』


「でもなぁ、補助有りっぽいかもじゃん」

「試すか、制御具」


 魔法を得ての格闘の素養らしい、素体はショナ君でも勝てていた。


「何か不思議、オモロ」

「大丈夫ですか?動けますか?」


「駄目だ、動けないかも」

「え、打ち所が悪かったんでしょうか、確認しますから動かないままで」


 こう、紫苑だとこんな風にふざけるか。


「絞め技か」

「参りました」

「楽しいなぁ男性体」


 だろうな、公然とイチャイチャ出来るんだからな。


「もっと色々と教えてやろうか?」

「うん、頼む」


 少しばかり教え、後は2人に任せて小野坂の元へ。

 コレで少しは慣れてくれると良いんだが。




 何か本当に、性別がどうでも良いかも知れん。

 ショナ子ちゃん可愛いし、紫苑だと触れるのに躊躇いも無いし。


「紫苑さん、ワザと投げられて楽しいですか?」

「絶叫マシーン好きやねん」


「なら遊園地に遊びに行きましょうよ」

「追々ね」


「起き上がって貰えないと、何処か痛めたのかと怖くなるんですけど」

「寝技ってエロくね?」


「僕は思いません」

「じゃあ掛けてくれ、ほれ」


 女性体なら遠慮しちゃう事も頼めるし、男性体は最高だなぁ。




 やっと紫苑が格闘練習に飽きて、エリクサー作りをしてくれた。

 そのタイミングで様子を見に行くと案の定シャオヘイが孵り、またしてもエリクサーに飛び込んだ。


『うん、良い味だ』

「だろうな、早く出てやってくれ」


『仕方無い』

「人化は出来そうか?」


『いや』

「そうか。すまんなメイメイ、この中身を貰うぞ」

「おうよ、良かったちゃんと孵って」


『弱くて強い、心配になるわけだな』

「あぁ、じゃあな」

「おうよ」


 今度は里へ向かい、コンスタンティンと共に虚栄心の店へ。


「何か、礼をさせてはくれないだろうか」

「あら何よ改まっちゃって」


「俺は帰る側だからこそ、今からでも俺なりに礼がしたいんだ」

「そうねぇ、ハナを守ってくれたら別に良いわよ」


「それだけで」

「貰いたい人から貰う主義なの、アンタには何でか興味が無いのよね」


「ハナには興味が有るのか」

「大丈夫よ、取って食べたりはしないわよ」


「アイツの、灯台の性質を知ってての興味なのか?」


「私もね、昔は灯台守として改心しかけたのだけれど、傲慢さから失っちゃったのよね。大罪なんだから何とか出来るだろうって、運命を舐めてたの、だからもし請われる事が有れば応じるけれど。きっと、アノ子は望まないでしょうね、それで良いの、それが良いのよ」


「支えてやって欲しいと願うのは、我儘なんだろうか」

「別に、アンタに願われ無くてもするわよ。天使と同様に、下心無しの好意って好きなのよ、私達」


「だから、俺には対価が要求されるんだな」


「万能じゃ無い限り、当然警戒心が湧くもの。けど今なら分かるわ、凄いのが来るんでしょう」

「あぁ、特大のがな」


「今なら、誰もが対価無しで何でも受け入れてくれるんじゃないかしらね」


「だが、何をどう願えば良いか」


 俺で身代わりが成立するのか。

 そも身代わりをすべきなのかすら迷っている。


 こんな事を、誰にどう相談すれば良いのか。


「もし運命を変えたいなら、それはオススメしないわよ」

「対価では無く、代償を支払う事になるのだろう」


「そう、ハナはきっと望まないわ」


「だな、後はもう最低限、流れに身を任せる事にするよ」

「そうよ、抗う時期と流される時期を良く見極めて、しっかり頑張って頂戴ね」


 準備は最低限。

 だが、基準値も無い状態で、何が最低限となるのだろうか。




 何か、あの夢を見たからか焦燥感が消えちゃって、腑抜けちゃった。

 不味いよなぁ、きっとコレからなのに。


「紫苑さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫過ぎて困るわ、何かもう、役割終わったかも」


「そん、帰還の気配が有るんですか?」

「いや、焦燥感とか消えちゃって、どうしようかなーって感じ」


「あの、お昼寝の時だけでも体を戻すべきでは」

「あぁ、そうね、夢見で何か得られるかもだし」


 ぷにぷに。

 もう痩せるなと言われてるけど、美容体重とは程遠いのよなぁ。


「ココって、美容体重とか存在してる?」

「精密な体脂肪率の計測は有りますけど、芸能関係や運動系の方がする程度で、過度な痩せ信仰はとっくに廃れてますよ。妊娠や成長に影響しますので」


「妊娠、したく無いのかも」

「病弱でしたし、ある意味で当然かも知れませんね。出産前後に危なくなる事は、ココでも有りますし」


「悪阻とかマジヤバそうやねん」

「だからこそ余計に痩せ過ぎが危ないんですよ、胎児へも影響しますから」


「向こうじゃまだまだデブぞ」

「丁度良いと思うんですけどね、色々な意味で」


「ほう」

「寝れないんでしたら白雨さんを呼びますか?」


「誂われてくれたら寝れるかも知れん」

「もう童貞を誇る気なのでどうぞ」


「やっと認めたか」

「そんなに変ですかね?」


「いや、ワシは砦が強固な方が好きやで」




 あの夢見が、移動の切っ掛けなのか。

 ハナが消えたと報告が入った。


 ショナ君はもう真っ青で、前回以上のダメージ具合だ。


「詳細を聞いても良いか?」


「僕を誂えば寝れるかもと、そう言って、少しして眠ったんです。それで、新しく何か情報をと、視線を外して元に戻したら、掛け布団が沈んで、通信機にも応答無しで」


「そうか」


「少し、浮かれてしまったんです。強固な砦の方が、好きだと言って貰えて」

「大丈夫だ、切っ掛けはきっと別に有る筈だ、お前のせいじゃない。大丈夫だ、お前は何も悪く無い」


 ショナ君にとって、最悪のタイミングでの転移。

 切っ掛けは、きっとあの夢の内容が行き渡るべき場所へ行き渡ったから。


 そうなると、転移はこの世界が引き起こした事に。


『ご主人様を、探しに行きます』

「クーロン、探し尽くすタイミングを教えてくれ」


『それは』

「気配を察知出来ない場所への移動なら、お前にも探知は無理だろう。なら、終わりは何時になるんだ?」


『でも』

「行くなとは言って無い、目途を教えてくれ。永遠に探させるワケにはいかないんだ、厄災が待っているんだからな」

「あの、武光さんは、どうして落ち着いていられるんでしょうか」


「向こうに有ったんだ、転移を繰り返す話がな。リズに繋いでくれるか?」

「はい」




 武光さんが言った通り、リズさんも知っている話。

 でも、ココに前例は。


「前例は無いのか?」

【コッチの記録には無いが】

《大昔じゃが、それらしきのは有るんじゃよなぁ》

『精神鑑定なんぞも無い時代でな、不確定では有るが存在はしている』


【マジか、何か共通点は無いんだろうか】

《気の優しい子じゃろうかね》

『だからこそ、証言がまともに扱われなかった面も有るがな』

「なら、本当に桜木さんは」

「帰還の期間はどうだ」


《バラバラじゃが、腹が大きくなって帰って来たのが居るんじゃと》

『あぁ、子を成したとの証言は確かに有るが、何せ物証も何も無い時代だ。元から妊娠していたのではと、それで終わりだ』

「そんな、じゃあ、桜木さんが」

「紫苑になれる魔道具を付けたままだろう、ハナもそう貞操が緩い方でも無いんだし」


《じゃと良いんじゃが、帰還方法がバラバラじゃて》

『帰還の期間もな』

「いや、ハナならきっとココへ帰って来る筈だ。例え」


 もし、向こうに好きな人が出来てしまったら。

 本当に、帰って来てくれるのか、僕はそれを願うべきなんだろうか。




 例え、愛する人間が出来てしまっても、義理で帰って来る筈。

 だがマティアスや身柱を、もし愛してしまったなら、アイツの帰還を願うべきなのか。


 いや、俺は、ハナに幸せになって貰いたい。

 例え、相手がショナ君で無くとも、あの犬神憑きでも。




 早く来ないかなぁ、おタケちゃん。

 ハナちゃん、雪原に居るし、コレが本来と同じルートか確認して欲しいんだよねぇ。


『お、来てくれたんだ』

「確認出来ればと思って来たんだが、そうか、同じ道筋だな」


『日付けも?』

「あぁ、会話も同じだ」


『そっか、先を聞いても良い?』

「本来なら、また転移する」


『マジかぁ、渡りなんだね』

「いや、それから戻って厄災を終える筈なんだが。俺は、帰還を願うべきなんだろうか」


『半々で良いんじゃ無い?』


「そうか、半々か」

『って言うか、そっちはコレからどうすんの?』


「居ない事の隠蔽と、そうだな、緊急時には蜜仍かミーシャに代理をさせるかな」

『落ち着き過ぎて怪しまれそうだよ、少しは落ち込んだり何かしたら?』


「前の俺はな、知らされて無かったんだ。それを何とも思わなかった、だが今回は俺はちゃんと動きたい。目下はあの国家だ」

『アレって悪意って言うか善意だよね、不思議な形状の善意』


「そうか、攻略にはどうすべきだと思う」

『俺の手で良いなら教えるけど』


「頼む」


『同種だと思わせて潜り込む、獅子身中の虫になって疑心暗鬼にさせて内部崩壊、それを外側からも叩かせる、かなぁ』

「成程な」


 あぁ、請われ無いと教えちゃ駄目なシステムなのね、成程。


『問題は、全部を把握しないと漏れが出る事かな』

「だな、助かった」


『いえいえ』


 あぁ、俺って悪い子なのにお礼を言われちゃった。






 目覚めると流石にドリアードに不審がられてしまった。


《よう吞気に寝ていられるのう》

「リセットだ、慌てたからと言ってハナを見付けられるなら俺もそうしている。ショナ君はどうだ」

『何とか落ち着いてミーシャと蜜仍には説明出来ているが』


《顔色は最悪じゃな》

「ロキ神とエイルにサポートをお願いしたいんだが」


《了解じゃと》

「そうか。アレク、頼めるか」

【おう】


「アレクも、ダメか」

《白雨は大丈夫そうじゃ、場所は分からんが気配は感じるんじゃと》

『何処とは言えんが、生存は確認出来ているらしい』


「そうか、俺も生きている気がする」




 ショナさん、真っ青。

 桜木様が消えたなんて最初は冗談だと思ったけど、本当なんだ。


「ショナ、蜜仍、探しに行く気は有りますか」

「ミーシャさん、有りますけど、何処に行けば良いんですかね?」


「無色国家」

「流石に桜木さんが気付くワケは」

「ですね、向こうに浚う能力も無いでしょうし」


「なら、他に」

『やっほー、どんな感じー?』

『本当に、気配も無いのね』


 武光様が既に事情を説明してくれていたらしいんだけど、神様達は全然平気そう。

 本当に戻って来るって信じてるみたい、でも、あの心得を知って戻って来てくれるか僕は不安。


「あの」

「お世話になります、よろしくお願い致します」

『何よ水臭いわねぇ、ショナ君』

『そうだよ、コレは緊急事態なんだし。先ずは妊娠して帰って来たらを想定しないとね』

「桜木様はそんな事はしません」


『あのねぇ、真面目だからこそ帰還の為にするかもだよ?』

「ですが」

『はいはい、考えたく無くても前例が有るんだから考えないと、よ。家はまだよね?』

「はい、目下は北海道か沖縄をと考えています」

「ショナさん、もうそこまで受け入れちゃってるんですか?」


「最悪は、想定すべきかと」

『そうそう、あの子神経質だから他の家とは少し離れてた方が良いわよね、アナタ達の事も有るし』

『後は人間に暮らし易い場所だよねぇ、能力がそのままで帰って来るかどうかだし』


 もし本当にそうなったら、里に来て貰いたいけど。

 里に自由は少ないし、そもそも来てくれるかどうかだし。


「あの、里は、厳しいですよね」

「はい、有り難いんですが、力の偏りを心配する勢力も出ると思うので」

『だねぇ』

『じゃあ、ショナ君は家探し、ミーシャちゃんと蜜仍ちゃんは変化の練習、難しそうなら魔道具ね』

「はい」




 神々のお陰で、向こうは落ち着いたらしいが。

 エミールに告知するかどうか、だな。


 正直、コレ以上ストレスは増やしてやりたく無いんだが。


【武光様、動きが有ったっすよ】

「賢人か、もう復帰したのか」


【あれ、声が】

「まぁ、色々とな。今は何処だ?」


【例の場所っす】

「無色国家か」


【うっす。凄いっすねココ、マジで思想が凄いっす】

「そうか、準備をしてくる、後で合流しよう」


【うっす】


 無色国家は前の世界で言うオーストラリアに存在し、理想郷(オセアニア)呼ばれる地域とアボリジニ共和国と土地を割譲している。

 海沿いは全て先住民地区、中央に楕円形で区切られた地区があり、更に2分割する形で緩衝地帯、中央分離帯がある。

 第三国が分割統治し、日々訪れる国を出てたがる者、不法入国や不法滞在する人間を統括や管理をしている。


 無法国家は入るのは容易いが検査で出国に時間が掛かり、無色国家は出入りにすら時間が掛かる。

 免疫と独自ルールが、そうさせているらしい。


「ですので、入国となりますと」

「柏木卿、コッチの性別で、ココで籍を作ってくれ」


「はい、畏まりました」


 その間に地理の把握。


 中央分離帯には日本、北欧三国、欧州連合、中つ国、旧米国自治区、エジプト自治区、ロシア自治区、トルコ、イギリス。

 各国が数年おきに区切られた地区へランダムに配属され、その地区内部のみで行動を許され、万が一の救援にはアボリジニと共同で部隊が向かう。


 今年度は上記の並びで、上から順に中央分離帯に配置されている。

 極稀にどちらかの国に帰化する者も居るらしいが、今回は居ないらしい。

 配置が特に不味いな、中つ国と旧米国の並びだ。


「柏木卿、コレをどう思う」

「はい、非常に宜しく無いかと。両端は非常に緩い方々なので、はい」


「俺は汚染源がココだと思うんだが」

「どちらも物見遊山の若者が多いそうで、我々もそこでは無いかと危惧しております」


「そうか、何かワクチンを打つべきか?」

「いえ、寧ろ我々が病原体だと思われているので、接触は難しいかと」


「だが、接触出来る者が居るんだろう」

「純潔の指輪をご存じでしょうか」


「あぁ」

「はい、それと、教会の証明書です」


「偽造は出来るか」

「万が一に備えご用意は有りますが」


「頼む」

「はい、少々お待ち頂く事になるので、明朝来て頂いても宜しいでしょうか」


「あぁ、宜しく頼む。すまないな、こんな時間に」

「いえいえ、大事な事ですから。では」


 こんな時でも腹は減るし、寝れてしまう。

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