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2月5日

 日本時間の朝7時過ぎ。

 トルコは真夜中、コレも想定されていたのか、次はグアムへと行く事に。


 時差は1時間。


「やだ、カラっとしてて暖かいんだけど」

「買っておいて良かったですね、服」

「綺麗な海だなぁ」


 先ずは大使館員オススメの最北端のビーチをお散歩。

 青い海、白い砂。


 一生歩いていられる気がしたが、海は見ていると入りたくなるもので。

 足をジャブジャブ浸けながら歩き続ける。


 偶に貝を拾う。


 意外と途切れない海岸線。

 暑い、エリクサーがガブガブ飲める。


「イカンな、実にイカン」

「ですね」

「ココ入れないんだっけ」


 海流が凄いので遊泳禁止区域だそう。

 実に惜しい。


「入れないと入りたくなる、例え泳げなくても」

「俺も」

「水着、有ります?」


 無いの知ってますよね。

 しかもまだ、お店空いてませんよね。


「実に惜しいですな、メシにしましょう」

「ですね」


 BigとかSpecialとか書いて有って、値段が高ければ大概は全盛り。

 後は喋れれば、拙い中学生英語でも大丈夫。


「ゴハン必ず付くのね」

「日本の占領下にもなりましたから」


「取り残された人は」

「それは大丈夫です、居ません。原因も違いますから」


「残された人は居なかったんや」

「はい」


 出て来たのはもう、映画で見る様なアメリカンモーニングプレート、ハッシュポテトめちゃ旨。

 レッドライスが気に入りました。


「レッドライスが気に入りました」

「水着の後に見てみましょうか、もう空いてますよ。直ぐそこのアウトレット」


 もう、計画通りとか思われてるんだろうか。


 アウトレットらしいアウトレットっぽい感じ、服はざっくりと分類された程度、ギリギリ選べる程度に雑多に並んでいる。


 アレク達には自分達用と紫苑用を選んどいて貰い、水着は適当に。


 Tシャツをじっくり選んでいると、凄く良いデザインを発見してしまった。

 ブランドを調べるとハワイにも店舗が、って言うか日本にも有るぅ。


 有るけど、ココの方が安い。


 戻って来たアレク達に同ブランドを集める様に頼みつつ、そのブランドのサンダルや靴を試着。


「ブランドにハマる人の気持ちが分かった」

「ブランドって言うか、デザインですよね。似たの有るみたいですよ、ほら」


「ハワイぃい」


 厄災後の慰安旅行には、ハワイが決定しました。


 そしてそのまま次はスーパーへ、オモチャに目移りしつつシュノーケルセットを選んでいると、アレクが秒で買いに行った。

 買わせる執念が凄い。


 そして体が冷えたので、お外で休憩。


「あー、暖かいなぁ」

「疲れたべや、ズルっこしたれ」


 エリクサーをショナやアレクに少し飲ませ、ぬるい白湯なんぞ飲んでいると薄っすらと汗をかく暖かさ。


「どっちで海に行くべきか」


「ジャンケンで決めちゃう?」

「そんな大事なこ」

「ジャーンケーン」


「ほい」

「ぽい」


 ショナの乱入によりあいこが続いたが、勝てたので紫苑で海へ行く事に。


「あれ?アレクが勝ったら」

「サクラのままだけど」

「じゃあ、行きましょうか」


 下着はともかく、ダボダボの服だったのでそのまま紫苑へ。


 最北端より少し下に有る有料ビーチへ。

 トイレにシャワーにベンチ付き、他は有料だが既に準備は万端ですよ。

 さっき買い揃えたんですから。


「さ、皆さん、行きますよ」

『あい!』

「はい」

「はーい」




 ユグドラシルで訓練しては休憩を繰り返す、体力と勘を取り戻す為に、ただただ的を狙う。

 でも今回は動く標的、フギンとムニンが協力してくれて、蜜仍君もフォローしてくれる。


「お疲れ様ですー」

『ハナさんはどうですか?』

「だな、どうだ?」

《我を置いて、海じゃ》


『良いなぁ』

「行ってこい」

「折角ですし、是非是非」


『はい!』


 ハナさんじゃ無くてシオンさんで少しビックリした、そしてもっとビックリしたのは、僕を見付けた瞬間に海に投げ飛ばした事。

 凄く、楽しい。




 後は、俺と蜜仍と小野坂だけ。

 何をしても、早くは生まれてくれないものだな。

 俺の卵よ。


「すまんな、お前を行かせられなくて」

「いえいえ、お邪魔する数は最少じゃないと」


『あの、エミールさんは?』

「所用で出掛けた」


『あの、桜木さんに、そろそろ浮島をお返しすべきなんじゃ』

「大丈夫だ、問題無い。それとも何処か、他に候補地でも出来たか?」


『いえ、あの、お礼を言っておいて頂けますか』

「はい」

「おう」


 身体強化を学びつつ、小野坂や蜜仍と訓練した後は治癒魔法で治して貰う、その工程をひたすら繰り返す。


 そして予想通り、小野坂の治療魔法はハナとは違う。

 皮膚や粘膜の治療は可能、痛みのコントロールも可能だが、筋や骨は非常に難しいらしく、内臓に至ってはほぼ治せないらしい。

 エイル神の治癒魔法とエリクサーが無ければ、何度も何度も立ち上がる事は出来無いだろう。


『すみません』

『良いの良いの、さ、休んでて』

「そうだぞ、少しずつだ」


 もし、この世界を変える気が無いのなら小野坂が表に立つか残るべきで、世界を革命するならハナなのか。


 それを、世界が選ぶのか。


『ちょっと、何よ怖い顔をして』

「治癒魔法の違いに、気付けた気がしたんだ」


『あー、聞かせてくれる?』




 おタケが言うには、世界がハナかマサコちゃんを選ぶ、世界とは民意なんだと。

 蘇生さえ出来るハナを生かすか。

 残らせないか、殺させるか。


「選ばせたら、そうなってしまう気がするんだ」


『厄災とワンセットだったり、大罪化や何かしちゃってるから、ね。現に召喚者自体が厄災派も居るし。例え災害から救っても、逆恨みとかでも遺恨って残っちゃうのよね。だから、それには同意』

『それに加え人間とは、選んだ事にすら気付かず、その道を進む事は多い』

「ハナには死んで欲しく無い、残って平和に過ごして欲しい」

《本人はそんな事も考えず、全くもって楽しそうじゃがのぅ》




 楽しい。

 どうしようかって言う程、楽しい。


 そしてメシ、海辺で食う魚の姿揚げ、ましてお醤油ベースで白米よ。

 美味いに決まってる。


「アレク上手いね、骨避けるの」

「コレは多分魔王の、子供の世話で染み付いてんのかも。はい」

『ありがとうございます』

「何処に誂う成分が有ったんでしょうかね」


「サクラのじゃね」

「ワシかー」

「かもですね」


 そして食後には少しの日光浴、それから貝殻拾い。


 後の問題は、お土産をどうするか。


 名残惜しいが海とエミールと別れ、スーパーへ。

 うん、ココは調味料とか酒でいこう。


 フィナデニソース、レッドライスの素、グアム産の塩数種、焼酎にラムにウイスキーにジン。

 ラムはちょっと気になるので、個人用に小瓶をゲット。


 そしてモール内で再び手作り石鹸を買い漁ったが、足りない気がする。




 桜木さんがタブレットを取り出し、買い漏れが無いのか調べていると思っていたら。


「楽しんだ具合いとお土産の感じが比例して無い気がする」


 足り無い気がして気が咎めるらしい。

 こう考えてくれるのも、神々の楽しみなのかも知れない。


「ちょっと、海辺で考えてみましょうか」




 見事に、寝かしつけられた。


「夕暮れじゃんよ」

「おそようございます、ナイトマーケット行きましょう」


 チャモロビレッジと呼ばれる場所にはBBQの匂いが漂って、骨付きや丸焼きがアチコチで焼き上がっている。

 オベロンが喜びそう。


「お土産にします」


 フレッシュジュースに甘味のアピギギ、食べ物以外にも麦わら帽子やワンピースなんかも有って、ごちゃまぜ間が凄く素晴らしい。

 音楽も生演奏、しかもちょっと行けば海も有る。


「桜木さん、ご自分のは?」


 ダサいと言うか絶妙なステッカー、そして渡せるか分からないが賢人君用に、絶妙に喜べ無さそうな栓抜き。

 もう、リアクションが欲しくて買って渡す為のモノ。


 タケちゃんには、何をあげようか。




 ハナに呼ばれ地上に降りると、木彫りの像をくれた。

 タオタオモナと言う像で、願いを叶えてくれるらしい。


「良い感じの笑顔だな」

「でしょ、他に思い浮かばんかった」


「ありがとうメイメイ」

「いえいえ、じゃあ、お土産渡してくる」


「おう」




 先ずはお土産を渡しにアヴァロンへ。

 ティターニアにはハーブティーにロクムとバクラワ、可愛いカップのミルクプリン。

 オベロンへは勿論お酒と、さっき買ったお肉。


 エイル先生にはミルクプリン、バクラワ、トルコランプ、石鹸、塩、ハーブティーを自分で選んで貰った。


 全部ピンク色を選ぶの、可愛いな。


『ありがとう、旅行はどうだった?』

「うん、もう食べ道楽、買い物三昧。楽しかったです」


『ふふ、これからもちゃんと休養するのよ!だから、次の行き先も考えておいてね』


「お、はい」

『じゃあ、皆にもオヤツを配ってくるわね!』


 次に鍛冶神達には今日の品物を全開放。


 心配だったが、全然喜んでくれた。




 そうして桜木さんがお土産を配り終えると、今度は編み物の手解きへ、その合間にハマムの話しに。


 それがどうして何故なのか、ハンを作ると言い出されてしまった。


「なぜ」


《そりゃベタ褒めしたからだろう》

《俺らの方がもっと》

《上手く出来るんだよってな!》


「いや、でも今、向こうは」

《大丈夫じゃよ、まだヴァルハラじゃ》


「でも島のサイズが」

《居ないんじゃし、広げれば良かろう》


《ハンだ!》

《サウナだ!》

《建てるぞー!》

「サウナも?!」


 久し振りに桜木さんがドリアードによって、泉へ落とされた。


 直後に泉へ飛び込むと、桜木さんの目の前にはキラキラとした目の大工達。

 断れず、土下座の体勢のまま、浮島の面積を拡げていった。




 即断るも、お土産を貰ったからと見事に押し切られ、皆で泉から島へと向かった。

 そこへドリアードも加わり島が整備されると、一気に建設が始まった。


 職人達のストレージから各々の道具や素材が出てくる。

 大きな白い大理石から、煉瓦にノミまで様々。


「なんてこった」

「こうなんですかね、英雄潭が出来る過程って」


「流されてる感じが、状況はコントロールしたいんだが」

「でも、ハンがあれば皆が泊まれて良いじゃないですか」


「確かに、最近大所帯となりつつあるもんなぁ」

「ですね」


「もっと増えたりして」

「え?!」


「冗談、流石にもう無いだろー…他に、魔王や大罪みたいに気に掛けといた方が良いのってある?」

「流石にもう居ないんじゃ無いかと…各国が内密にしていなければ、ですが」


 それから泉を通してティターニアやエイル先生と話しながら、建設を待つ事に。

 今の家以上に大きなハンなので、流石の職人達も秒でとはいかない様子。


 コチラはもう人員が増えないか一応の確認の為、警戒されてる人物をタブレットでチェックした。


 他の大罪もソロモンさんも、安全だと確認出来ている。


 つまらんと思いつつも、少しほっとした。


「桜木さん、今度は何を調べてるんですか?」

「ソロモン72柱」


「ちょ」

「冗談、流石に不必要に警戒心は煽らんよ」


「かと言って、過度に慮る事も無いのでは?」

「お、推すか」


「いえ、ですがもし気になるんであれば、接触すべきかと」

「気になるって言うとなぁ、天使さんも気になるんだけど、小野坂さんの担当だし」

【気にしてくれるのは、嬉しい】


「死天使さん、向こうは良いの?」

【私の外見も、そう気に入られるモノでは無いからね】


「初見は驚くけど、良い声だから問題無しよ」

【ふふ、ありがとう。所で、誰に会いたいのかな】


「ガブちゃんとか、ウーリーちゃんとか」

「あの、何処でお名前を知ったんですか?」


「ヲタクの常識」

「漫画なんですね」

【そうか、読んでみたいものだけれど】


「タイトルが物騒なんだが」

【そう容易く不敬等とは言わないよ、教えておくれ】




 桜木さんが言ったタイトルは、確かに少し物騒だったが、天使は特に気にする様子は無かった。

 寧ろ、普通に中身が気になるらしい。


「良いんかい」

【馬鹿にするでも無いのだから、問題無い。天使同士の争いも、実際に有ったのだし】


「あ、明けの明星さんは?」

【ふふ、ルシフェルか。向こうでは誤解が有る様だが、良い子だよ】


「会える?」

【呼べば来るだろう、さ、呼んでごらん】


 全くもって性別不明な、怖くなる程に綺麗な翼人が現れた。

 クトゥルフ神話で言う美し過ぎると正気が失われるという逸話を、本当に実感した。

 あまりにも完璧だと、怖くなるのは本当だった。




 めっちゃ美人さん。

 しかも凄く優しそう。


「初めまして、桜木花子です」

『呼んでくれて有り難う、死天使も』

【恐れられる仲間同士だからこそ、仲良くすべきだと主も言っておられるからね、当然だよ】


『相変わらず固い子だね』

【君が柔らか過ぎるんだ、だから舐められてしまうのだよ】

「なんか、懐きたくなる」


『ふふ、そっちの子は真っ青だよ』

【完璧過ぎるのが君の悪い所だからね、中てられたんだろう】

「あれ、こんなに優しそうなのに」


「すみません、その前に畏怖と言うか、何か怖く感じてしまって」

【なら直視はしない方が良いね、ルシフェルは最も明るい星だから】

「太陽さんか、暖かいなり」

『ふふ、君の場合は呪いのお陰かな、私を見ても怖く無いのは』


「呪い?あぁ、毒親の呪いね、感謝しとく」

【毒と同じく、こう裏返る事も有るんだね、成程】

『畏れられないのは嬉しいものだね、ふふふ』


 ショナ、何が怖いのかサッパリ分からん。

 優しくて暖かくて、悪意の心配もしなくて良い安心感が有るし、良い匂いだし。


「あれ、良い匂いなのは何で?」

【相性が良いんだろうね】

『もし困った事が起きたら、私を呼んでおくれね。召し上げを主にお願いしておくよ』

「え、あの」


『召し上げの定義は様々だと聞いているよ、大丈夫、取って食べたりはしないから』

【穏やかに過ごせるだろうとは、私も確約しておくよ】

「穏やかかぁ、どんなんだろうなぁ」

「あの、国同士の問題にもなり兼ねないので、相談を」


『あぁ、まだそう揉めているんだったね、是非にもそうしておくれ』

【ふふ、ではそろそろ引き上げようか、死の女神が待ち焦がれているらしい】

「あ、ありがとうございました。また」


『またね、ハナ』




 どうして悪評が出てしまうのか、どうして向こうで悪く言われてしまったのかが、分かった気がした。

 僕ら普通の人間には眩し過ぎる、光が強過ぎて自身の影の黒さが嫌になる。


 僕に無かった筈の嫉妬心や、妬み、嫉み、僻み。

 それが一斉に沸き立て、一瞬でも天使を排除したくなってしまった。


 怖い、悪意の芽生えが他人に左右されるなんて、凄く怖かった。


「大丈夫か?」

「無理でした、桜木さんは何も無かったんですか?」


「呪いのお陰なのかね、別に怖くも何も無いが。何が怖いの?」


「自分の、闇の深さ、でしょうか」

「比べるかね、天使さんと」


「比べてすらいなかったんですが、強い照明の真下に居た感じです」

「ほー?まぁ、向こうで話そうか」


 桜木さんと共にヘルヘイムへ移動し、先ずはヘル神にお土産を渡した。

 トルコランプと刺繍屋のハンカチ、石鹸を選んで貰っていた。


 ココでも僕は少し怖いのだが、桜木さんにその気配は無い。


《あら、恐怖が顔に出てるわね》

「ルシフェルさんでビビったらしい」

「すみません」


《あぁ、光が強い系統よね、分かるわ私も嫌いだもの》

「嫌いと言うか、苦手な感じがして」

「ショナにも苦手が有るのね」


「普通の人間なので」

「ワシも」

《ふふ、ならハナも怖かったのかしら?》


「いや、暖かくて良い匂いがした、召し上げも検討してくれるって」

《あらあら、ライバル出現ね、ロキに教えてあげないと》


「そう言うと来ちゃうんじゃない?」

《ふふ、そうね。それで、どう苦手なのかしらね、従者は》

「僕がこう、一方的に、負の感情に呑まれそうになっただけで」


「ほう?」

《ふふ、完璧過ぎた、のかしら》

「……はい」


《そう、ハナ、ココには呼ばないで頂戴ね。私、そう言うの本当に嫌いだから》

「気を付けるけど、完璧が嫌い?」


《完璧な者に評価をされたく無いのよ、何1つ》

「何か分かる気もするが、ショナは何故か分からん」


『やっほー、遊びに、あれ?変な空気だ』

《完璧な従者は完璧な天使のルシフェルが苦手なんですって、ふふふ》

「まぁ、ザックリ言うとそんな感じ」

「僕、全然完璧では無いんですが」


『シンプルだけど可愛い顔だよ?』

《そうね、ふふふ》

「んだ、何が不満ぞ」


「相応しいとか相応しく無いとか、考えた事も無かったんですけど。今、この立場になると、どうしても考えてしまうんです。色々」

《ルシフェルから召し上げのお声掛けが有ったんですって、ふふふ》

『真反対のライバルかぁ、困るなぁ。そんな嫌な奴なの?』


「いえ、寧ろ、本当に完全に完璧な感じで、自分が惨めになる位、完璧に見えました」

「ヘルも、そう思うの?」

《寧ろ、恵まれた環境から同情されたく無いのよ。ハッキリ言って、別世界のモノだからと関わらないでくれる方が、好感が持てるわね》

『純粋に合わないだろうって警戒心、お互いの為だよね』


《でもハナが言うには良さそうな者なのだから、ハナはハナで関わって良いのよ》

「ワシも同情は嫌よ、そう構われる位なら放置して欲しいもの」

「そう接する方には見えなかったんですが」

『あぁ、何か分かるかも、可愛いねぇショナ君は』




 ショナがロキに良い子良い子されてんの。

 しかも黙って受けて、そんな嫌だったかルシフェルさん。


《ふふ、でもハナには良い者なら、召し上げは誰でも良いわよ》

『えー、そこは俺を推してよー?』

「まぁ、ロキの方が気は楽そうよな、きっちりカッチリだったらしんどそうだし」

「もしそうじゃ無かったら、どうするんですか?」


「一応、人間側に留まる気なんだが?」

『そしたら余計に伴侶が居た方が良いんじゃない?』

《そうね、人間の世界は複雑だって聞くもの》


「お見合い的なので良いんじゃね?」

「まさかそこも民意にする気じゃ」

《それは駄目よ、ちゃんと選ばないとロキと一緒に出禁よ》

『俺もかぁ』


「先の話だし、考えときますー」




 ヘル神のご厚意で、ドリアードから情報を得られたが。

 結婚まで民意に任せる気だとは。


《枯れておるのぅ》

『コレも、呪いの所為なのだろうか』

「だとしたら、あまりにも残酷過ぎるだろう」


《全くじゃが、コレからどうするんじゃ?》

「もう少し、ショナ君を知って貰いたいんだが」

『だがネイハムに言われていただろう、過度な介入には気を付けろと』


「あぁ、だが」


 本来なら、大使館でショナ君と言い合いをし、仲を深める事が出来たんだ。

 なのに、コレでは本当にどうなる事か。




 タケちゃんから通信機経由で連絡が来た、虚栄心から服が出来たと連絡が来たと。

 そうして店で集合し、紫苑で試着。


「にしても良い身体よねぇ」

「タケちゃんのお陰よね、イメージが染み込んでるみたい」

「そうか、少しは良い影響を与えられたか」


「何よタケちゃんまで、ずっと良い影響しか受けて無いぞ?」

「どうにも自信が無くてな、ショナ君もか?」

「まぁ、はい」

「あらあら、お話はお食事をしながら、早速お出掛けしましょうね」


 今日の虚栄心はロングドレス。

 コレには何も思わないのかしら。


「ショナや、虚栄心の姿は平気なのかい」

「桜木さん、アレは次元が違うと言うか」

「何が有ったんだ?」




 ザッと言うと、天使に嫉妬したのねショナ君。

 可愛いじゃないの。


「ふふ、まだハナには分からない事なのかも知れないわねぇ、ふふふ」

「子供扱いぃ」

「そうなると俺もまだまだ子供だな、半分位しか分からないぞ」


「良いんじゃ無い、分からなくて良い事も沢山有るもの」

「例えば何さ」


「若くしての死に別れ、自殺者を見送る家族の気持ち」

「体験したくは無いが、体験しないと寄り添えないのでは?」


「アンタは大丈夫、それに全員が全員、寄り添って欲しいワケでも無いのよ。ただそうで有ったと、知ってくれるだけで充分な者も居るのよ」

「どう聞けば良い?」


「聞かないで、待つの。どうしても聞かなければいけないなら、ちゃんと説明してあげれば大丈夫よ」

「虚栄心も、居るのか」


「どうかしらね、さ、着いたわよ」


 私みたいな大罪の気持ちを、そう心配してくれるだけで良いのよ。

 それでもう、充分なのよ。




 腹筋って、素晴らしい。

 満腹なのにそんなに腹が出ないの、そして背中側に出るのねマジで。


「コレこそ怖いわ」

「だがハナとそう変わらない量なんだな」

「本来の姿に依存するんでしょうかね」

「小さい方に合わせてるだけでしょ。それで、今日の予定は有るのかしら?」


「ニュクスさん達にお土産を渡すのと、コンちゃんの服も仕立てた方が良いかなぁ」

「それは俺のが孵ってからに合わせようと思うんだが、どうだろう」


「そう?頼むね」

「おう」

「じゃ、私達はまだお話が残ってるから、行ってらっしゃい」


「うん、はいお土産。じゃあまたね」

「あらありがとう、またね」


 そうしてニュクスさん達にお土産を配布し、細かな雷電の操作も教えて貰った。

 電界、気配察知に便利過ぎ。


「便利」

《ふふ、色々と、そうだ、街へ行って散策してらっしゃいよ》

『そうですね、地上で慣らすと良いですよ』

『名物も有るから、楽しんでらっしゃい、お土産を楽しみにしてるわね』

「頼まれてしまったので、行きましょう」


 こう、定期的にリフレッシュ休暇が挟まれちゃうんだが。

 甘やかされて、本当に良いんだろうか。


「甘やかされてる」

「かも知れませんね」


 ホテルは真っ白で、青くてお洒落。

 高いんだろうなぁ。


 あぁ、もし生き抜けたら何を生業にしようか。




 ハナはそのまま向こうで眠ってしまったと聞き、俺も気が緩んだのか、眠気が。

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