2月23日
ココは前回と同じ、先ずは部屋に案内され、着替えをし、エルヒムと会う事に。
そして部屋の外部では音声だけ。
エルヒムとの会話も、前回と同じ、話す者がショナから男のミーシャになっただけだった。
「アクトゥリアン、あの転移はどう見てもお前らの技術に思えるんだがな」
【マジで向こうには現在進行系で介入してませんからね?】
コレも同じ。
ただ全く違うのは、マサコの状態。
自分が項目に当て嵌まるかどうかをサイラに聞き、自尊心が高いと言われ呆然とし、暫く考え込むと放心状態になった。
そして教会を出てからも不安げな状態は改善せず、焚火を眺めて放心しては、指輪を見つめ。
どうやら、家族の事を考え始めたらしい。
お父さんも、お母さんも。
良く考えれば分かった事なのに。
殆ど、当て嵌まる。
ネイハム先生と一緒に行った病院でも、当て嵌まってる人とは会話が上手く繋がらなかった。
でもそれは、病気だと思ったからで。
お父さんもお母さんも正常だと思ってたから。
けど、違った。
あの人達は普通じゃ無い、大多数じゃない、正常じゃない。
だから、私まで影響された。
影響されただけ。
私は違う、こんなんじゃない、私は違う、私はおかしくない、少し影響されただけ。
だって、皆、多少なりとも持ってる気質だって言うし。
この程度なら、向こうなら個性の範疇だろうし。
マイナス面としてあげつらってるだけで。
ココが少し不寛容なだけ。
日本人みたいなルールとマナーで、日本人みたいな悪癖で考えるから、全部日本独特の同調主義のせい。
私みたいな欧米式は悪目立ちしてるだけ、それを許容出来無いだけで。
だって、私みたいなのも向こうにいっぱい居たし。
そう、私の周りだって自己主張する人は沢山居たけど何とかなってたし、それで注意された事は無いし。
1つ位は誰にだって当て嵌まるんだし、私は困ってないし。
皆、欠点の1つや2つは有るんだし、話に割り込んだりとか、中断させた事は無いし。
印象とか、表現のちょっとした違いなだけで。
個性だし、単なる性格の傾向で。
陰謀論者じゃないけど、きっと向こうでだって、お金儲けの為に病気って事にしてるのかもだし。
『コレって、予備軍の人も入れたら、もっと多いって事ですよね。なら、コレって個性とか、単なる特徴ってだけじゃ』
「困る人や傷付く人が居なければ、それで済みますね」
『それって、ナイーブだったり、神経質だったら、勝手に傷付き易い人に合わせないとダメって事ですか?』
「どんなに個性的な方でも、もしそう言う方と相対する場合には、言葉を選ぶべきなのでは」
『そうだとは思いますけど、それだとストレスが溜まるだろうし』
「言葉を選ぶ事がストレスなんですか?」
『だって、悪気が。正直に言ってるだけで、向こうが嫌な気持ちになるのは』
「その言葉を続けると、嫌な気持ちになる方が悪い、と言う事になりそうですが」
『別に、そうは言ってないのに』
「では、嫌な気持ちになる方は悪くは無い、で宜しいでしょうか」
『そう勝手に傷付かれる方が迷惑だって』
「相手からの言葉が無ければ、勝手に傷付く事も無いのでは」
『それだとコミュニケーションが取れないじゃないですか』
「コミュニケーションの定義をお願いします」
『話し合いとか、摺り合わせとかですけど』
「では、その言葉は傷付くから止めて下さい、そう注意する事もコミュニケーションに入りますか?」
『入りますけど』
「では、向こうで、何か注意をされた事はありますか?」
『無いですけど』
「それはどうしてでしょうか」
『注意される様な事をして無いからです』
「もう1つ、あるかと」
『もう1つ?』
「はい。注意しない事を選ぶ理由です」
『それ、私に注意する価値が無いって事ですか!』
「怒鳴らないで頂けますか、耳が痛いので」
『そうやって!』
「止めて下さいと言いましたよね、私は我慢強い方ですが、我慢する理由が無いので退席させて頂きます」
あぁ、どうしよう、怒られる。
言われたから言い返しただけなのに、どうしよう。
小野坂君は向こうで言う、悲嘆期に突入してしまいましたね。
抑圧期、暴発期、ハネムーン期を循環する、負の連鎖に入りかけている。
ハネムーン期には、それこそ被害者意識が高じて自傷行為に走る事も有るし、相手が近寄って来るまで無視をしたり、状況次第では相手に媚び諂う事も有る。
更にはこの時期に限り相手にだけは責任を押し付けない、やっと真に理解した様な素振りをし、お互いに悪かったと言う落し所に持って行こうとするか。
ひたすらに無視か、泣いて謝るか。
相手が阿るか、飽きるか忘れるまで、このハネムーン期が続く。
仲が修復されたと思えば、また自分だけが我慢しているんだと思い込む抑圧期に入り、タイミング次第で爆発期に入る。
そして仲が修復されない時は、自身の欠点を隠し過剰に被害者として飾り立てた言葉を振り撒くか、無かった事にするか。
「確かに振り幅が大きく、誰にも被害が無ければ個性。ですが傷付き、困る人が居る以上、個性の範囲に収まらないんですよ」
『じゃあ、そう言う人達が一方的に我慢するしか無いんですか』
「一方的ではありませんよ。相手が嫌がる事は避けるべき、だとは思いませんか?」
『そうですけど、でも、だって。本当の事を言っちゃダメって』
「言葉には沢山、種類が有る事はご存知ですよね。自身を表す言葉だけでも、僕、私、自分、自身、朕なんて言う言葉も有ります、ですがTPOや文法に応じて使い分ける事も有りますよね?」
『ですけど、サイラさんだって、私に注意する価値が無いって言ってたじゃないですか』
「言ってませんよ」
『だから、そう受け取れる様な』
「様々な立場から考える訓練の最中に、他の側面を呈示しただけですし。仮にそうだとして、どんな問題が生じるんでしょうか」
『嘘なら、けなされた、馬鹿にされた』
「本当なら、どうなるんでしょうか」
『だって私、注意された事は無いから、それを嘘だと思われてるみたいで』
「アナタが、その労力を使う価値が無いとみなされた事が有る、と言ってはいません。注意、に関して見本を示しただけだとは、思えませんか」
『だって、私は何も役に立てて無いから』
「だから怒鳴るのは間違いでは?」
『怒鳴ってません!』
「そうですか、では今のも含めて、記録用媒体で一緒に確認しましょうか」
『違うんです、ごめんなさい、追い詰められたから』
「それも、確認してみましょうね」
そして泣き出し、発作を起こし、確認する事を避けた。
過剰な自己防衛反応がココでは役に立たないと、分かって頂くまでにはまだ掛かりそうですね。
男ミーシャ、イケメン。
何よ、何なのよ、背まで大きくなって。
「眼福」
「ありがとうございます」
基本真顔だけど、ニコッとされるとキャってなりそうになるわな。
けどこのまま、枯れたままで居られないかな、ハーレムとか大変そうじゃん。
あぁ、その運用方法を聞くのはアリか。
そうアホな事を考えてたせいか、部屋に部隊長のルトが尋ねて来た。
流石に1日目だし、何か用事が有るのかと思ったけど、マジで単なる挨拶だった。
「以降は入れない方針で」
『はい』
「はい」
それと仔山羊ちゃん、影から通訳してくれんの、便利。