2月14日
マサコが本格的に人を操作し始めたらしく、もう教会に居させない方が良いのでは、と。
「何処に置くべきだと思う」
《それこそ、“彼ら”に接触させるべきかと》
「だが歴史的な問題が有って素直に受け入れられるかどうか、なんじゃないのか?」
「だからだよ、定期的に根本を揺らがせないと直ぐに根付こうとして人を操る。“彼ら”には効果は無い筈だ」
「そう追い詰め過ぎても」
「帰還予定なのだし、1ヶ所に留まれると思う方がねぇ。今の所は改善点も挙げてくれてないから、場所を切り替えるには良い言い訳になるんだ」
《様子次第では大罪達が引き受けるそうですし、1度、顔合わせはさせているべきかと》
「大罪化は念頭に置いてくれているんだよな」
「勿論だよ、国連からも1人愛想の良い子を呼ぶしね」
《コチラです》
あぁ、本来の道筋で亡くなった子か。
だが、この子で大丈夫なのだろうか。
いや、本来では彼女の死体で正気を取り戻していたのだし、引き合わせてみるのもアリなのかも知れない。
きっと、また直ぐに教会へ戻る事になるのだろうし。
桜木さんの為に何か出来無いかと百貨店に行くと、運悪く謹慎処分を下された華山香と出会ってしまった。
《あ、津井儺さん》
「どうも、では」
《あの、待って下さい、少しだけお話を》
「なら今ココでどうぞ」
《その、もう少し落ち着いた場所で》
「何の事についてでしょうか」
《少しで良いんです、お願いします》
深々と頭を下げられても。
「何分有れば良いですか」
《5、8分下さい》
「分かりました」
そうして屋上へ行き、僕は直ぐに出て来るであろう冷たい緑茶を頼み、彼女はホット珈琲を頼んだ。
忙しいフリをしているのに全くコチラに気を使う気配は無い、業務時間内だと言う事にしてしまっていれば良かった。
《あの、この度はご迷惑をお掛けしまして、すみませんでした》
「話はそれだけでしょうか」
《いえ》
何が言いたいんだろうか、業務の事は一切言えないのだし。
「ならなんでしょうか」
言い出し掛けていたのに、運悪く珈琲が運ばれて来た。
ココから8分も時間を取られるなら、振り切れば良かったかも知れない。
《あ、お忙しかったですかね》
「そう思うなら用件を言って貰えませんか」
《すみません》
「珈琲が来てからのカウントで残り6分ですが、用件をどうぞ」
《あの、呆れられてるとは思うんですけど、チャンスを下さい》
「何の、ですか」
《好きなんです》
「無理です」
《えっ》
「重要な事を、迂闊に言うべきでは無い事を言う人は無理です」
《それは、良かれと》
「良かれと思って機密漏洩をする人と同列に思われたく無いですし、君には全く興味も湧かないので無理です」
《そんな》
「話はそれだけですか?」
《お願いします》
「話はそれだけですか?」
《少しでも》
「話はそれだけですか?」
《はぃ》
「では失礼します」
どうして、何故泣くのだろう。
桜木さんなら泣かないだろうし、そもそもあんなミスはしないだろうし。
あぁ、こうして人は比べてしまうんだなと、そこに気付ける様な挙動をしてくれた事だけは評価するけれど。
もう2度と関わらないで欲しい。
一応、省庁に連絡をしておこう。
【あぁ、津井儺ですか、どうかしましたか?】
「華山香に接触されました、今、百貨店です」
津井儺君に興味が有るとの噂は本当だったんですね。
ですが本当に好きなら、彼に関わるべきでは無かった。
もっと言えば、善意と言う名の悪行をしないで頂ければ、少しは津井儺君の対処も変わっていたでしょうね。
「そうでしたか、災難でしたね」
【はい】
はい、ですか。
「用事がおわりましたら、コチラに来て報告書を作りませんか」
【はい、直ぐに向かいます、それから用事を済ませますので】
声の抑揚も何も落ち着いてはいますが、怒髪冠を衝いている感じなのでしょうかね。
「分かりました、では」
【はい、では】
そうして津井儺君が来て、報告書を仕上げ。
今日も昨日と同じ、去年と同じだと心の何処かで思っていたのかも知れませんね。
桜木様が夢に見た第2地球が現れたとの一報を受け、久し振りに頭が真っ白になってしまって。
津井儺君が落ち着いた態度で居てくれた事で、何とか平常心を取り戻す事が出来た。
「君が居てくれて助かりました、制服に着替えて電話番をお願い出来ませんかね」
「はい、了解しました」
華山香さん以外を総動員し、各方面からの応対、窓口への相談に回って頂き。
私は武光様の招集する会議へ、秘密のドアを使い、浮島へ。
「おう、すまないな」
「いえ、正しく緊急事態ですから」
先住民の方々のテントで、第2地球と呼ばれる敵かも知れない星が現れたと聞かされた。
けれど、ココからは何も。
「コチラは少し反対側、日本上空から確認出来たそうです」
『あ、そうなんですね』
ココの人から良く見定めよって言われたけど、あの星の事なんだろうか。
私達の役目は、強く光り輝く方をお連れする事。
けど言葉が良く分からない、正確には半分程しか分からない状態でココへ来ている。
けれど、だからこそ、不信感を抱かれぬ様に情報をお互いに分け合ってきなさい、と。
『アンリマユ、カイン、リリス』
私達が名前を名乗ると、少し驚いた様な表情をしたかと思うと、直ぐに笑顔を向けて下さった。
言葉が同じだから驚いたのか、何をお揃いたのだろうか。
今回も使節団員が来たが、コレもエナのお陰でスムーズに言葉の解析が進んでいる。
しかも目的を言わせる為のだけのコミュニケーションに特化しているので、馬鹿のフリでもしない限り、明日にでも何をしに来たのかが分かる筈。
そうすれば魔道具も効く。
『武光様、そろそろ』
「あぁ、すまんな、後は任せた」
『はい』
そして寝る準備をしている時、ふと映画館にネイハムが居てくれたらと一瞬だけだが思ってしまった。
だがアイツの内面には狂気が有る、本来の道筋を知りたがり、本気で邪魔をされては困るなと思い直し、ベッドへ入った。




