表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/174

2月13日

 ハナの行動は特に変わる事も無く、本来通りに進んでいた。

 そして俺の役割をエナが担ってくれて助かっている。


『交渉に来た場合、言語体系が同じかどうか怪しいからコミュニケーションツールを新造中』

「そうか、助かる」


 だが、だからと言って訓練に集中する余裕が無い。

 未だにマサコの状態が安定せず、徐々に教会内部の人間がマサコの味方になり増長させるような言動を取り始めたからだ。


 だからこそ、ハナの従者にはハナの為になる事に時間を割いて貰いたい、と俺は張り込みを続けさせて貰う事にした。


 どうして、こうもマサコは不安定なのだろうか。

 本当に、トリックスターの面まで似ていると言う事なのだろうか。


《武光君、小野坂さんの事ですか》

「あぁ、すまん、ハナと似た側面としてトリックスターの面まで似るものなのか、とな」

『だろうね、撹拌機や櫂たる側面は時に調和を齎すし、不破にも導ける。すべてはTPO、マサコもタイミングや順序次第で十分に活躍出来る機会は有ると思う、多分』


《それなんですが、最初に来た場合でしたら、もう少し何とかなったのではと》

『じゃあ、先ずは人間のシミュレーションから聞かせて』


 エナの言葉により五十六先生やネイハムのシミュレーションが始まった。




 小野坂君が最初に来ていたら。

 それは僕もサラッとなら考えてはいたけれど。


「神様達の前でかぁ、頑張らないとねぇ」

《ですね》


「先ずは桜木君と立場をすり替えて考えてみようか」


 北海道の冷たい小川の側で。


《健康ですし、眠っていた、になるでしょうね》

「そうして暫くして2人の従者が来るけれどもだ」


《ジュラさん、でしょうね》

「津井儺君は早々に交代かな」


《そうですね、そうして療養の為にどう動くか、そして魔王がどう動くか》

「病院へ面談に行くのか、そもそも神獣はどうするんだい?」


《保養地で出会うと言う事にしておきましょう》

「ならそのまま魔王も接触し様とするだろうね、そして見事にドン引き、拒絶される」


《代わりの従者が来るまで保養地に、例の華山香ですかね。その子が来て、神獣の卵を得て、魔王が来て》

「一緒に行動するかどうか、難しいだろうねぇ」


《そもそも、旧米国がどう動くか》

「そうだねぇ、国連の事も知ってしまった以上は先入観無しに考えるのは難しいけれど。あぁ、国連から1人加わるだろうかね」


《暫くは保養地で、国連からの派遣を待つ》

「悔しいけれど、そのまま国連を信じて情報を開示してしまっていた可能性は高いからねぇ」


《なら急いで魔王の証言をさせない様にと、教会からも派遣されていそうですね》

「国連の子次第だけれど、流石にそれは良い子が来る事を想定させて貰って、均衡は保たれるけれど」


《神獣がどれか、ですね》

「この場合はすり替えだから2体が付くとしよう、そうして旧米国に行く事になり、ドリアードと関われ無いだろうねぇ」


《神獣が早々に生まれてくれて助かりましたね、コレで教会も国連に潜む者も手出しは出来ない》

「そして天使さんの協力を得つつ、常識と知識を学ぶ」


《ココで大罪や魔王について、両者から詳しく聞く事にはなるでしょうけれど》

「天使除けが発動するだろうね、それも広範囲に、彼女にも分からない様に」

「そして従者の誰かが犠牲になりそうだな」


「そうだねぇ、またと無いチャンスだ、必死に排除するだろうね」

《国連の従者を排除し、それを擦り付ける》

「だろうな、そうして孤立させ、洗脳を始める」


「けど神獣が居るんだ、それをどう処理するかだよ」

《1体は性別を理由に引き離す事は出来るでしょうけれど》

「ソロモン72柱で、実は悪魔の化身だとでも言うんじゃないのか」


「あぁ、フェニックスは37に居たね、なら孤立は簡単だろうねぇ」

《そうして次に来るのは》

「俺か、ハナか」


「すり替えだから次は君だな」

「あの国はその事実を隠匿し、俺に力を付けさせ。俺は、接触をしなかったかも知れない」


「随分と弱気だねぇ」

「俺はハナに触発されてこうなんだ、基本的には脳筋、能天気、馬鹿な楽天家なんだ。だから戦う為にと知識や常識は程々に、ひたすら戦闘訓練をして」

《エミール君が来る》


「まぁ、君が言う通りに想定してみるけれど。流石に関わるだろうねぇ、僕の国もイギリスも」

《そうなると旧米国の調査に掛からせる事になりますよ》

「あぁ、なら適当に接触させるか。そうなるとそれなりにソッチだコッチだと俺は調べるぞ、そうして天使に接触か」


《そうなると孤立させる時期、ですね》

「武光君が来た位かなぁ、従者同士の揉め事、内政干渉だと言って関わらせなければ良いんだし」

「だがエミールが来る以上、関わらないワケにはいかなくなるだろう」


《ドリアードが接触し、アヴァロンへ。そこでユグドラシルか、病院で治すか》

「そこで小野坂君だよね、外部から分断させるワケにもいかないし、時間を掛けて丸め込みながら丸め込む」


《どうしても悪い方向へ考えてしまいますが、教会側の人間が増えていた可能性は有るかと》

「だろうな、そうして俺が様子を見に行ったとしても、上手く誤魔化されていた可能性が高い」

「悲観的だねぇ。仮にそうしていたとしても、桜木君が来るんだよ?」


《ですが旧米国ですよ》

「そこはベガスか、彼らの地区か。まぁ、どちらにしても“彼ら”と接触して、天使さんとも接触してだ」

「あぁ、俺は怒られそうだな、内政干渉とは違うんじゃないのか、とな」


《ですが暫くは入院と療養でしょう》

「なら彼ら、大罪達、天使さんかなぁ」

「そうして一気に国連の調査に、か」


「いや、それこそ自国に戻って知恵神様に頼るんじゃないかな。その間に怠惰や憤怒君が隣か国連の調査に乗り出して、連携を取る」

「あぁ、ハナにかなりの高負担だが、俺が協力出来ていたかどうか」

《ココ位は希望的観測を加えましょう、協力する前提でお願いします》


「天使とそこで関わり、実情を知るだろう。そして俺はどの国も国連も、体制側をそこまでは信用していない。だからこそハナの感性に頼って、言う通りに動くだろう」

「けど問題は今回の転移だよねぇ、小野坂君に耐えられるんだろうか」

《最悪は未帰還のまま、召喚者の誰かに擦り付け、エミール君と敵対し兼ねない》


「だがコチラは魔道具を揃えているだろう、天使も加え、それでエミールを何とか取り戻す」

《だとしても最悪の想定は継続するでしょうね、帰還しても彼女は孤立したまま、教会に取り込まれたまま》

「あー、洗脳されていた事実に耐えられないだろうし、すっかり意固地になってそうだねぇ」


「最悪は、大罪化だろうな」

『最悪はね。私達の想定としては、来た順番に意味が有るのかもしれないと思っている。武光が最初でも、エミールが最初でも、ハナが最初で無ければ似た様な道を辿ると思っている』

《武光君が最初でも、ですか》


『その後にエミール、ハナ、マサコでも比較対象が直近に居る事が分かれば容易く捻じ曲がるだろう。そしてハナ、エミール、マサコでも。マサコ、エミール、ハナでも、先に来たのに能力の差に自尊心が揺らいでしまう。後だったとしても、きっと劣等感から洗脳を受け易い状態になるだろうと考えている』


「最悪で無い場合は、どうなんだ」




 私のシミュレーションには例の映画館で観た映像が混ざっているけれど、武光君の口ぶりからしてアレが本来だとの予想は付いた。

 そしてだからこそ、コレだけ足掻いているとも取れる。


『立場だけをすり替えた場合……』


 彼女が旧米国へ行くとなった際、改めて旧米国の実情を討論し、自治区への調査の為に先にベガスの大罪達と接触する事になっていただろう。

 そうしてココでの魔王や大罪について学び、“彼ら”とも接触していただろう、と。


《そう“彼ら”が仰っていると言う事でしょうか》

『うん、その土地を踏ませるなら本来は必ず会う、と』

「だけ、なのかい」


『会っていたら、周りに助言はしただろうって』

「あぁ、良い感じでは無いんだね」


『正直、漏れ聞こえて来る言葉だけでお腹いっぱいなんだって』

《そうでしたか。それで、接触後は》


 天使との交流後、転生者の事が漏れ、国連の調査が入る。

 そうしている間に武光君が召喚され、接触の際に同じく国への調査が入るだろう、と。


「すまんが、それは神々の介入が」

『連携はして無いだろうし、私も居ないだろうね。君がハナに触発されるまでは』


 そして旧米国や国連の内務調査部の情報を手に入れる事が出来た頃、エミール君が現れる。

 そうして治療の為に暫く付き添い、今回と同じ様に武光君が動く。


 ある程度の脅威が取り除かれた後、桜木花子が現れる。


「具合の悪い状態で、ベガスか」

『そうしてハバスで神獣を得て、暫くは容量を安定させる為に動き、魔王がハナのサポートに付く』


「なら人間になれる可能性は有るな」

『そうだね』

《ですがあの襲撃はどうなるんでしょうか》


『亡くなったままだろうね、ストレージで保存するにしても、生き返らせる事が前提だから。ハナが居ない状態なら、従者は死んだまま』

《そして後追いで蘇生を得て、彼女に妬まれる》


『そうだね、妬みや僻みが無いと思い込んでいるから、自覚も無しに少しずつ捻じれていき、飛ばされる』

《戻って来るのでしょうか》


『そこは分からない、どんな世界でどんな風に過ごすか未知数だし。少なくとも純潔を保ったままでは帰って来るにしても、それで成長しているか、より捻じれているかは分からない』

「なら、ハナもそうなると」


『ううん、けど、帰って来るかどうかは分からない。ココよりも安心安全なら、戻って来ない方が良いのかも知れないし』


 そう、戻って来て欲しいと願う事は、桜木花子を戦地へ連れ戻す事となる。

 もし他の世界で厄災相当の事が無いなら、戻って来る事は彼女の為にはならないのかも知れない。




 エナのシミュレーションが不完全だからこそ、本来の道筋を教えたい。

 だが言おうとすれば行動も何もかもを乗っ取られてしまい、下手をすれば何かしてしまう可能性が有る。


「それなら桜木君が来なければ、小野坂君は活躍出来たんだろうかね」

『今日までなら、後は厄災の内容次第』

「どうしても、その嫉妬心は抑えられないのか」


『どの時代でもそうなんだって。ハナが全く気にしないのが、また気に食わないだろうって』

《でしょうね、彼女にとって、相手にされない事は蔑ろにされるに等しい事ですから》

「けれどもチヤホヤされたいとは思っていないと言うからね、自己自認の乖離が多き過ぎるんだよ」


「もし、マサコが大罪化したら、それは厄災扱いとなるのだろうか」

『半々。成しえる前に憤怒は憤怒になった、厄災が終わる頃に大罪化の兆しがどれだけなのかによると思う』


 仮に本来の道筋を観たいからと言って大罪化させても、次もハナと白雨の協力で抑え込めるとは限らない。

 ほんの少し違うだけでコレだけ違っているなら、やはり危険は冒せない。


「後は、桜木君が戻って来て、向こうの状況を話してくれるかどうか、だねぇ」




 ()()()()なら、無理に従者を続けさせなくても良いのではとシスターが言ってくれた。

 嫌われているんじゃなくて、合わないだけ。

 なら、マイケルさんに相談してみよう。


『あの、合わないなら、無理に続けさせなくても良いんじゃないかって、言われたんですけど』

『そう、ですか。それはどなたの事でしょうか』


『あの、シスターは悪く無いんです』

『いえ、合わないかも知れないとマサコさんが思っている方の事です』


『それは』


 今、ココでサイラさんだと言ってしまったら、私が悪者扱いされないだろうか。

 名指しされたら私は嫌だし。


 けど、仲良くしたく無いなら、そう言って欲しいし。




 自分の立場が万が一にも悪くなるかも知れない、だから次の言葉を紡げない。

 言いたいけれど言えない、でも、でもだって。


『言いたい事を言っても大丈夫ですよ』


 この言葉を何度言った事だろうか。

 けれど次に出て来る言葉は。


『やっぱり良いです、ごめんなさい、忘れて下さい』


 こうして自分が望む言葉を出してくれないとなると、標的を変え、自分の思う通りの言葉を言ってくれる人に出会うまで、似た様なやり取りを繰り返す。

 そうして出会った人から私へ、伝言させる気も無しに伝言をさせる。


 こう人を操る事に罪悪感は全く無い。

 何故なら、自分の挙動には無関心で、他人が善意で善行を行ってくれているのだと思い込んでいるからだ。


『何のご用でしょうかシスター』

「あの、マサコ様の件で……」


 操られる側も善意善行と信じている。

 マサコ様は悪意の無いタイプの操る人(マニピュレータ)、罪悪感を押し付け、悪意無しに人を傷付ける。


 コレは彼女の性質なのか、本質なのか。




 武光さんが桜木さんの為に時間を使う様にと言われたそうで、今度は賢人君から相談を受ける事に。


「ショナさんは何をするつもりなんすか?」

「永住される事を前提に、家探しをと」


「あー、成程っすね」

「それと今は綿や服飾全般、企業についても一応勉強しています」


「引き籠りたいって言ってたのにっすか?」

「それでも無職は受け入れ無いかも知れませんし、誰かとご結婚なさる時用に役に立てばと」


「ショナさん、休暇の意味分かってます?」

「好きに行動して良い時間だと思ってますが」


「それで勉強っすか」

「何か問題でも」


「こう、友達と遊んだりとか?」

「切り替えが下手なので。君は楽しめるんですね」


「いやー、そう言われるとぶっちゃけ無理っすよねぇ」

「僕もです」


「えー、じゃあ何してるんすか?」

「勉強です。家探しは職務に復帰してからかと」


「真面目っすよねぇ」

「何もしない方が落ち着かないので」


「あぁ、ウチら料理の仕込みするかどうかで悩んでるんすよね。もし帰って来ない場合、それ食うの凄い虚しいじゃないっすか」

「そうですね。でも良い事かも知れないなと思うんですよ、行った先の世界に厄災が無いなら、安全ですから」


「いやー、義理堅い感じも有るし、帰って来ちゃうんじゃないっすかね。だからこそ、余計に何したら良いんだろうなーって」

「君が慣れてる事で良いんじゃないですかね、全員で1つに集中するのも良いですけど、個性を生かすべきかと」


「そうっすよねー」


「他にも何か」

「いやー、何か、俺も不安なんすかね。このまま帰って来なかったら、俺らが見切られたって事も含まれるじゃないっすか。もっと執着して貰える様にしてたら、良かったのかなーとか考えちゃうんすよね」


 楔として機能していたのかと改めて聞かれたら、僕は何もしていなかった。

 付き添い寄り添う事は出来ても、楔となると、もっと何か出来たのかも知れないとは思う。


 けれど、それが何だったのかと聞かれると、何も思い浮かばない。


「例えば、何ですか」

「そらもう、恋愛の意味で好かれるとかっすよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ