2月12日
私は察して欲しいワケじゃない。
普通なら自然と分かる筈、分かってくれる筈。
どうして分かって貰えないんだろう。
子供っぽいって思われたくないだけなのに。
ちゃんと分かる様に言ってる筈なのに。
まだ、説明が足りないんだろうか。
それとも、まだ誤解されてるんだろうか。
もしかしたら、何か伝え間違えたんだろうか。
もっと言葉を尽くせば、きっと分かってくれる筈。
彼女の言葉を尽くすと言うのは、言葉数を多くする事。
言い換えも例えも使わない、使っても本質が分かっていない事を示すに過ぎない。
『マサコさん、笑顔を向けて欲しいと伝えるだけで良いんですよ』
「でも、私に笑いたくないのかなと、だからマイケルさんから聞いて欲しいんです」
要するに僕からサイラさんに伝えて欲しいんですよね、それは分かりますが、そうやって人を操作して得られる結果にはいずれ疑念が浮かぶ。
しかもそれで満足しては、いずれ誰かに操作されかねない危険性をも孕む事になる。
意思を伝え、合意が得られない事を認める。
それが大人、それが自由なんですよ。
映画館の神に提案された事を考えてみたが、コレがシミュレーションならまだしも、誰かを犠牲にするのは耐えられない。
耐えたくない。
けれど、本来がどうなってるのかは気になる。
俺が帰ってからどうなったのか、俺を恨んではいないだろうか。
もし可能なら、本来の道筋は観てみたい。
安全に、誰も苦しまずに、本来の道筋を観る方法が有れば良いんだが。
《武光君、お悩みですか》
ネイハムに、コレを相談する事は出来ないんだろうか。
「アナタは、もし。自分が亡くなった後の世界を見られるなら、その先を確認したいか?」
《それは死後の世界の話、と言う前提で宜しいでしょうか》
あぁ、こう聞くと云う事は映画館の事を知ってるんだな。
「あぁ、それでも良い。想定の先を確認出来るなら、したいかだ」
《自分が懸念する重要な事柄で、どうにか出来るなら、そうですね》
「それは、正解を知りたいのか?それとも合っているのか、確認をしたいのか」
《勿論、両方ですよ》
「アナタなら何回確認したら、正解に辿り着ける」
《正解の定義によるかと》
「例えば、ハナの幸せだ」
《あぁ、それだけなら簡単ですよ。もし今回何か有っても、3回で充分でしょう》
「整形かハーレムでもか」
《誰から見た幸せかによりますが、幸せだと思わせる補佐だけなら父兄ですから可能ですし。問題は君が幸せだと納得出来るか、では?》
「いや、そうだが、周囲も納得の幸せを提供したい」
《本人達だけが納得するのはダメなんですか?》
「出来るなら、子々孫々が幸せだった事を疑わない程度には、他者の評価も欲しい」
《難しい事を仰っているのは分かっていますか?》
「あぁ、だから最善とは何か、常に考えてる」
そして本来の道筋への好奇心が、誰かを不幸にする事も。
武光君も映画館の事が言えなさそうな口ぶり。
こうなると確かに敵方では無さそうですが。
なら彼は本来の道筋を知らない第三者なのか、それとも何度か既にやり直している状態なのか。
今までどの様な道を歩んだかが分かれば良いんですが、彼の場合ですとハーレムは歓迎していない。
なら整形ルートで何か有ったのか、少しのズレで。
《あぁ、津井儺君の事でしょうか》
「何か有ったのか?」
《まぁ、アナタが予想する様な出来事だと言えるかも知れません》
「はぁ、辞めるとでも言っているのか?」
この感じは。
寝ている時だけしか情報を得られないと云う事なんでしょうかね。
《いえ、転移性恋愛についてです》
「あぁ、そうか」
予想通りなら喜んでも良い筈なんですが。
《推しは彼だと予想していたんですが》
「あぁ、だが恋心を早く自覚すれば良いと言う事でも無いだろう」
やはり彼次第、かなり振り幅が出るんでしょうね。
《そうですね》
「良い奴なんだがな、なんせウブいんでな」
《そうですね、かなり》
けれど、彼の悩みは津井儺君と桜木花子が添い遂げる未来について。
しかも彼の本質が善人だとするなら、被害数が少ない状態にさせたい筈。
あのもう1つの道筋が前回のモノなのか、本来辿った道なのか。
また映画館に行ければ対策を練れるのは確かなんですが。
桜木さんに置き換えて書物を漁っても、自分に重ねられるモノは殆ど無かった。
どうにかなりたいだとか、子供が欲しいなんて考えは自分には無い。
けれど近くでお支え出来たらとは思う。
コレは単に従者としての気持ち。
の、筈。
そして逃げでも有るとは思う。
人生も顔も名前も何もかも変えて貰うか、ハーレムの一員となるか、諦めるか。
だから考えそのものを否定している可能性も否定出来無い。
けれど、今の僕に恋愛感情は無い。
コレは従者としての気持ちだけ。
《それで、答えが出たの?》
「はい、勘違いだったみたいです」
《あら、会って確認したのね》
「え、いえ」
《祥那、なら保留よ。次に会ってみた時にどう思うか、一緒に居てどう思うか。それからじゃなきゃ、アナタの都合の良い解釈を脳が結論として出しているに過ぎない。コレは人と人との問題なのだから、会えない間に結論を出しては相手に答えを押し付ける事になるわ、大事な事なのだからゆっくり見極めなさい》
「はい」
そもそも、桜木さんが帰ってきてくれるのか、どうか。




