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1月30日

 何も無くてつまらないなと思ってたら、ドリームランドじゃないか!


「あぁ、ドリームランドか」

『何よ君、知ってたら教えてくれても良いじゃんかー、意地悪だなぁ』


「上手くこうなるか、不安だったんだ」

『よしよし、良いぞ良いぞー』






 ドリームランドを知っている体だったが、クトルゥフなのか何なのか。

 だが特に危険も無さそうだし、アレの事は置いておこう。


 エミールと共にアヴァロンへ向かうと、ハナとショナ君が元気に口論していた。


「どうした」

「ショナ、言ってみ、休みに何してた」


「実家に顔を出して、夕方には帰って資料を読み込んで…家事とかを映画を観ながら片付けて、修練場で練習したり…備品点検とか」

「ほらぁ」

「あー、真面目で有名っすもんね」


「別に真面目アピールをする為では」

「でもだ、友達と会うとか有るでしょうよ」


「同期や友人とは時間が合わないですし、急な呼び出しがあったら迷惑を掛けてしまうので」

「そこはアレっすよ、適当に言って謝って帰れば良いんすよ」


「自分なら嫌じゃ無いですか?」

「俺は自分がこうだし、友達が女に呼ばれたとかも全然許しちゃうんで、別に良いかなーって」

「お互いにガバガバなのね」


「そうなるかもって話してたんで。許してくれないのは消えて、許してくれるのだけ残った感じっすよ」

「良いなぁ、その緩さ。ワシもその環境に浸りたい」


「でもアレっすよ、一応前置きはしても、グループから居なくなられると寂しいなとは思うんで」

「そう言う時は?」


「そう言う人間には絶対に大丈夫そうな時だけ声を掛けて、後は好きにしてって感じっすね」

「向こうでもそう言う環境を作れたら良かったんだけど、何か、人に、興味無いんだろうか?」

「それは無いだろう、エミールにも俺にも構っているんだ」


「そうっすよ、俺らにだって気を使って」

「円滑な人間関係を念頭に置いてるので、別にそんな、タケちゃんみたいに」

「ならショナ君の休みを気にしないだろう」


「立場的に監督や責任が有るワ」

《おう!揉め事か!?揉め事やんな?!》

「キノコ神」


《キノコ神ちゃう!ノームや》

「ノーム」


《ノームさん、な》

「ノームさん、盗み聞きか」


《ちゃうねん、キノコ置きに来たら何や聞こえてきはってんもん。耳もええねん、鼻も、ついでに目も》

「ハナ、男になってやれ」

「うっす」


《ぉおん?!ワシ、どう思えばええの?》

「さぁな」

「そら好きにしたら宜しいがな」


《ほう、見た感じは分からんな》

「リアルガチですので、触れる」


《幻術ちゃうんかい》

「魔道具、ほら」


《あん、エエお臍やんけ》

「どうも」

「何だ、外見だけなのか」


《そらそうやろ、毒々しい色の毒蛙と可愛いアマガエルちゃんやったら、アマガエルちゃん選ぶやろがい》

「成程な」

「握手したまま変身を」


《ふぁ!?》

「出来ませんな」


《はぁ、遊ばんといてくれる?!》

「こう高い高いして」


《誰か止めてこの子!!》

「いやぁ、難しいっすねぇ」

「だな、興味は有る」

「あの、一応精霊さんなんですし」


《一応?!》

「余裕が有りますなぁ」


《ちゃうちゃう、ちゃうねん、え、マジですんの?》


「どうなるか言ってくれれば」

《そんなん!女で受け止められた瞬間に失神や!!》


「じゃあ、試してみようか」

《言うたら》

「しないとは言って無いな」

「堪え性が無いと大変すねぇ」

「あの、流石に」


「よいしょー」

《ひゃーーー!!!!!》


「ビックリした?」

《アカン、もうお嫁に行かれへん、めっちゃ叫んでもうたやん》


「お嫁に行く側なのね」

《例え話やんけ。なんやこの子、こう言う子なん?》

「まぁ、実はこうなんだろう」

「みたいです、すみません」

「すっごい楽しそうだったっすね」


《なんや自分それワイの事か?!》

「どっちかって言うと、どっちもっすね」

「ワシは楽しい」

「だろうな」

「本当に楽しそうですね」


「ほう、楽しいかノームさんも」

《君!余計な事を言わんといてくれるぅ?!》

「失礼しました」

「何か、生き生きっすね」

「だな」


「生き生き富山ー」

《ひゃーーー!!!!!》


「こう高い高いで喜ばれると」

《喜んでへんよ!?》


「え、どうしたら楽しんでくれんの」

《人格変わり過ぎちゃう!?》


「変わって無いのに酷い」

《ホンマに同じ子なん?騙してるんと違うの?》

「いや、実はだな」

「武光さん」

「実はっすね」


「あ、両性具有はどう言う扱いになるの」

《何それワシも考えた事の無い角度でどうして抉ってくるん?》


「ねぇってば、言わないとさっきのマジでやるぞ」

《考えた事も無い言うてるやーん》


「考えて。6、5」

《6からて?!》


「4、3」

《ちょ、またそんな》


「2、0ー」

《あぁー!機能してはるかによるぅー!!》


「ほう、くわしく」

《匂いや、匂いで分かるねん。アレ、せや君》


「高い高ーい」

《もーーー!!!》


「楽しいな、男って」

《そこぉ?!》

「よし、次は俺だな」


《お外て、成層圏まで飛ばしそうやん自分》

「流石に無理だろう、話が有る」


《なんや、魔石か》

「いや、ハナの体の事だ、アイツが言うまで」


《え、今、後ろで言うてはるけど》


 どうしてこう、上手くいかないんだろうか。


 どうして。


「どうしてそんな事を」

「胸は邪魔だし、月経も邪魔になるし」

「アマゾネスじゃ無いっすか、凄いっすね、その思いっ切りぷり」


「居るの?」

《従者創成期に名乗り出た種族じゃよ》

「ハナ」


「ごめんねタケちゃん。何か、さっさと言った方が良いかなって。何なら男の方が楽だし、皆と居ても気を使い合わないで良いかなって」

《それや、それで揉めてるんかな思て来たんよ》

「どんだけ鼻が良いんだか」


《前は間違いやってんかなー思ってんけど、今日で確信して、んで、踏み込んだねん》

「はぁ」

「武光さん」


「おう、知ってた」

「俺は胸だけかなーって思ってたんすよねぇ」

《自分、気付いてへんかったん?》


「はい」

「まぁ、服で誤魔化してたし」

《いやいやいや、あんなふぐむむ》

「すまんな、繊細な内容なんでな、ハナに説明する時間を与えたかったんだ」


「色々考えた結果と、男があまりにも楽だったのでバラしました。ずっとコレじゃアカンのかしら」

《そらアカンやろ、なんやバランスおかしくなってはるもん》

『うん、長期連用は良く無い』

《そうだねぇ、バランスを保とうとするのが2つだからねぇ》


《前の体用やし、魔道具を微調整したらええねん》

「ほう、行ってくるー」


《なんでワイもーー》


「俺、行きましょか?」

「頼む」


「うっす」


「繊細な内容だとは思いますけど」

「相談を受けたと言うより、すると報告を受けただけだ。あの会議の後にな」


「すみません、気付けず」

「見ない様にしていたなら、気付かず当然だ。それが例えどんな意味だったとしてもだ」


「意識しない様にと思えば思う程」

「意識する、そう言うものだろう」


「僕、やっぱり長期勤務は止めます」

「どうしてそうなる」


「桜木さんがあんな風に」

「大丈夫だ、気付いて無い。多分アレは素だ」


「でももし気付かれたら」

「俺がフォローする。頼む、お前は優しくて良い奴だ、料理も気遣いだって」


「でも、桜木さんの胸が無くなってる事に気付けませんでしたし」

「アレは元々猫背だ、それにあの様子なら胸にコンプレックスが有ったのかも知れんのだし」


「僕、信用されて無いのでは」

「いや、コレは俺が子持ちだからでだな。お前の事を心配しているから、休みすら気にしたんだろうに」


「排除したいだけでは」


 困った。

 向こうがこうなると、コッチがこうなるのか。


「だったら、どうしてだと思う」


「弱いので、足手まといかと」

「ハナが強さだけで人間を選ぶと思うのか?」


「いえ、でも」

「自信が無いのは分かるが、ハナも俺も自信が無いなりに考え動いてるんだ。だからショナ君も今のままで良い、思い遣りを持って動いて欲しい」


「すみません、ありがとうございます」


「ただいまー、もうコレで長期連用でも大丈夫だってー」

「おう」


 そして向こうで言う紫苑の状態のまま、エリクサーを作りながらエリクサーを飲み始めた。

 かなり気が楽になったなら、魔素が溢れるのも時間の問題かも知れん。


『ふふっ、ご機嫌ですねハナさん』

「そうだな。エミール、そろそろ鍛冶神達の元に行ってみないか?」


『はい!』


 今回は魔王は買い物に行ったままなので放置、カールラと賢人に同行して貰い、ニーダベリルへ。

 先ずはアクトゥリアンを呼び出しエミールと契約させ、武器の相談をしていると。


『不味いな、溢れたらしい』


 本来より早い、しかも紫苑の状態だ。


「どうなってる」

『ワシは大丈夫だが、ドリアードが発情し始めた』


「ショナ君は」

『魔道具と魔法でどうにかだ』


 前はロキが来て、魔道具が壊れた。

 しかも俺にはまだ刺青が無い。


「魔法か、どうしたら良い」

『刺青だ』


「ほう、なら入れるか」






 あぁ、溢れる系女、男子かぁ。

 もう超楽しいじゃんよ。


 絶対に、眷族にしたい。






 本来通りアヴァロンへ、そこでエルフを借り受けエイルの元へ。

 先ずは俺、そしてエミールの順に刺青を施して貰い。

 ココからはオリジナル。


 リズの元へと向かった。


「溢れるとはな、コッチも想定外だ」

「やはり珍しいか」


「あぁ、しかも英雄気質に多いと文献には残ってる」

「そうなのか、クエビコ神」

『あぁ、エミールなら分かるだろうか、ジャンヌダルク、ロビンフット』

『はい、傾向は分かりますけど』


「治癒魔法を使うからと言って、後衛とは限らない。生かせるなら殺せる、そうだろう」

『まして雷電もだ』

『ゼウス神にオーディン神』

「だから、ココでは滅ぼされたんだ。アイツの系譜」


『なんですかそれ!』

「色々調べててな、治癒魔法師や雷電使いが途絶えた理由を知った。原因は召喚者と、転生者だ」

「転生者が何をしたんだ」


「大昔はな、転生者でも魔力は普通に有ったんだ。そうして召喚者とつるんで、世の為人の為と治癒魔法師を狩り、雷電使いも表に出られなくした。アイツが来た日に、最後の治癒魔法師兼、雷電使いが死んだんだ」


『どうして』

「医学の進歩の妨げになる、か」

「あぁ、そして雷電も同じくだ」


「科学の妨げに。それをハナは」

「まだ知らない、先ずはお前に言うか悩んでたんだ」


「そうか、すまなかった」

「いや、お前が何で桜木を気にしていたのか、やっと本当に分かった気がする。精神科医にも情報を渡す予定だ」


「そうか」

『タケミツさん、どうして怒らないんですか』


「誰に怒る。コイツか?コイツの親か?コレは誰にも怒れない、怒るなら大昔の人類にだろう」

《私も話したいのだが、良いか》

『うむ、許可をしよう』


《どうも女媧よ、少し経緯を説明するわ》




 凄くガッカリした。

 ハナさんが言うには凄く良い世界だって聞いてたのに、散々な事が有って築かれた世界だった。


『凄くガッカリで、凄く残念です』

「エミール」

「だよな、正直俺もだ、結局は誰かの犠牲の上に成り立ってるんだからな」


「エミール、ハナは」

『ハナさんは好きです。でもだから、ハナさんが可哀想です、ココは良い世界だって言ってたのに』

「コレを言いたくても、今は余計に言えない。アイツの気持ち次第で、溢れた魔素の作用が変わるかも知れないからな」


「そう、既に危惧されていたか」

「あぁ、情報が上がった時点でな、気分次第で扇動でも何でも思いのままだろう。とな」

『ハナさんはそんな事しません』


「エミール君だとしてもだ、雷電の系譜の治癒魔法師で」

「リズ、似た他の系譜は無いのか?」


「あぁ、教会の人間が使える奇蹟、ただ桜木のよりは劣る」

「教会は、自治区だったか」


「おう、ロサンゼルス自治区だ。無色国家と繋がってやがる」

「隣は、ベガスか」


「だからだろうな、常に眼前に汚点を突き付けられ続けて、耐えきれなくなったんだろう」

『どう言う事なんですか?』

「お前には辛い話になるかも知れんが、落ち着いて聞いて欲しい」


 大罪。

 大罪を形づくったのが、名を与えて不老不死にしたのが教会。


「ただまぁ、悪評の殆どは有名無実、アイツらにおっ被せる為だけに使ってただけで、普通に無害で有益なんだよ」

「憤怒や怠惰は法務関係の上の方だったか」


「他の自治区からの推薦も有ってな、強欲は歴史保全をしてくれる大事な美術館の学芸員で、美食はえびす様と仲が良いらしいし」

『あぁ、今でもコチラへ秘密裏に来ているそうだ』

「俺は、どちらかと言えば無神論者だったが、辛いだろう」


『信じてました、それで疑って、また信じてたのに』

「すまんが、死の天使も良いだろうか」

『許可しよう』


【主がお望みで無かった事だけは、どうか信じて下さいませんでしょうか】

『じゃあ、どうして止めなかったんですか』

『人が、そう決めたんだ』

《それを神も認めた。最初は良かったのよ》

「だとするならな、伝聞はいずれネジ曲がるんだよ、例え意図しなくても、例え悪意が無くても。だから向こうで人災が沢山起きてる、じゃなかったらもっと向こうは平和な筈だろ」

「ココも、だろう」


『無色国家、ですか』

「も、だな。弱い人間には強く革新的な思想が魅力的に見えるらしい、しかも体制が変革されない限りは新たに不満を作り出せる永久機関付き。普通を不満に思わせ、憎ませ、争わせる」

『良く有る革命家の手口だが、良い様に使えば良い方向に』

《悪用すれば独裁国家の樹立》

【そして大虐殺へと繋がる】

「ポルポトか」


『なら、悪いのは人間じゃ』

「エミール君、それは少し違うと俺は思う。桜木は良い奴だろう、武光もだ。俺もと言いたいが、俺を良く知らないだろうしな」

『大丈夫だ、お前は良い人間だ』

「クエビコ神に同意だ、俺もそう思うぞ、リズもハナも、ショナ君もだ。皆が真面目で優しい、だからこそ起きる問題の方がココは多い」


「ドリアードな、ココの問題の大半はお節介と言うか、優しさでは有る」

「良いんだか悪いんだかな、どうにも調子が狂う」


『タケミツさん、リズさん、無色国家には何もしないんですか』

「まだ、だ。エミール、何もして無いワケじゃ無い」


『でも、賢人さんは知らないんですよね』

「アレにはまだ知らせたく無いだけで、いずれは知って貰うつもりだ」

「桜木にはどうする」


「勘が良い、早々に気取られると思った方が良いかも知れん」

『まだ、僕に言って無い事は有りませんか』


「心得だな、従者の」

「ま、リハビリついでに原文でも読んでくれ。それで従者が誤解されたとしてもだ、俺は知らんよ」




 エミールが黙読すると、ハナとは違った反応を示した。


『僕の父は軍人です、だからまだ分かりますけど』


「ましてハナは口頭だったんでな、その楔の意図を」

『分かります、気になる人がこんな事を思ってたんだとしたら。僕だってショックで、誤解すると思います』

「お、バレバレか桜木は」


『表情は見えなかったんですけど、その分、声の調子とか、空気感とかそう言うので。ハナさんは、いつもショナさんに、少し緊張してたので』

「そうか」

「クエビコ様、そっちはどんな感じか聞いても宜しいでしょうか」


『ロキが来ている』




 植物達をモリモリ育成していると、綺麗な顔の男性が。


「だれ」

『ロキ。噂してくれてたのに、中々来れなくてごめんね?』


「あ、どうも、桜木花子です」

『まぁまぁ、座って座って。俺も座って良い?』


「あ、はい、どうぞ」

『島の設定ちゃんとした?誰でも無条件で入れるっぽいけど』


「はい、確認してみます」


 タブレットを操作していると、今度は。


「桜木」

「リズちゃん、来て大丈夫なの?」


「おう、魔力無いから大丈夫かもってな」

「かもって」

『どうし…魔素とか漏れてる感じ?』


「魔力溢れちゃって魔素が漏れてます」

『わ、大変だ。何か出来る事ある?』


「帰って貰うのが先かと」

『大丈夫、同類だから心配無いハズ。だけどその子は』

「転生者なんで、魔力が無い」


『そっかそっか、この子が俺と同じなら大丈夫だね』

「そっか。どうして急に来たんよ」

『ワシだ、正確には武光が心配してな。寂しくて不安で泣いてるのではと言ってな』

「そんなタマじゃ無いだろうがな」


「見る?」

「おいやめろ」

『本来は女の子なんだよね?』


「いや、転移の途中で大事なモノが引っ掛かって落として来ちゃった」

「お前なぁ」

『そりゃ大変だ、魔道具?』


「うい」

「そう容易く腹を見せるな」

『可愛いお臍だね』


「桜木さん?」

「ロキさんやで」

『どーもー』

「ショナ君、魔道具はどうだ?」


「はい、大丈」

「な」

『あー、ごめんね。俺の体質かも』

「へ」


『何か、偶に他人を不運にしちゃうんだよね』




 完全に失敗した。

 焦ったせいだ。


 急いで魔道具の代替品を渡しに向かったのだが、遅かった。


『強力だな』

「寝たか、助かった」

「タケちゃん」


「すまんが、一旦回収する」

「お、おう」


 そうして賢人を変わりに置き、ショナ君とリズを引き取って研究班へ。


 分かったのは、実に不運な偶然が重なった事。

 魔道具と魔法が干渉し、両方が弾け飛んだ。


 本来には無かった流れ。


「どうしてこんな事に」


 研究班が考える原因としては、魔道具と魔法でカバーする範囲が干渉していたのではと。


 それは正解なんだが、前は両方弾け飛ばなかった。


「そう落ち込むな武光、トリックスターなんだし、そう予測は」

「そうか、トリックスターの能力か」


「まぁ、かもな」


 他人の不運を発動。

 前にそんな話は聞いて無いぞ。


「不運の発動、どうしたら回避出来るんだ」

「俺らは初耳だし、神々に聞くのが1番じゃ無いか?」


 確かに。

 先ずはエイル神へ相談へ。


『え?ロキ来ちゃったの?』

「あぁ、しかもショナ君の魔道具が壊れて、賢人が今は付いてるが」


『あー、偶に有るのよ。他人の不運発動しちゃうの』

「その体質を、どうしたら抑えられるんだろうか」


『親しくなれば、ロキが気に入れば大丈夫よ』


 絶望的だ。

 勘が良いロキ神は避けたかったんだが、親しくならなければ不運が発動する。


「どうしてそんな事が」

『ロキと周りの為なの。ナリとナヴィの加護、人と神の境界線。利用し合わない為の最初の警告、ロキと、関わった人間への警告なのよ』


「はぁ」

『そんな悪い子じゃ無いのよ?お節介な人間好きで、そう自由に動けちゃうから、不運は猫の鈴みたいなモノなのよ』


「悪神とは思ってはいないんだが、勘の良さが苦手でな」

『あら、悪い事でもするつもり?』


「いや、いや、そうかも知れない。ハナに知られずに色々と動きたいんだが、ハナ以上に勘が良いのに居られると、動き辛いんだ」

『過保護は成長を妨げるわよ?』


「どんな事でも、夢見に影響させたく無いんだ」

『そうだけど、あまり思い詰めたら良く無いわよ。大丈夫、魔力消費が順調なら直ぐにハナに会えるわ』


 もうかなり運命を変えてしまってるかも知れない。

 次はショナ君が殺されるかも知れない。


 そして次は、生き返らせる事が出来無いかも知れない。


「すまなかった」

『ううん、私達は所詮補助しか出来無いから。元気出して頑張って!』


「おう」




 ショナがぶっ倒れた。

 今は寝てるだけらしいが、凄く心配。

 この体だから支えられたが。


『いやー、美味しいねココの桃』

「さようで」


『ごめんね本当、アレってコントロール出来無いんだ』

「なぜ」


『加護で呪いだから』

「ほう」


『ナリとナヴィって子供が居るんだけど、ラグナロクで俺を縛り付ける役割だったんだ。その変形で、2人は加護と呪いを俺に授けたの、周りと俺を守る為』

「守る為に不運発動?」


『うん、俺と関わると不幸になるかもって警告。下心が有れば逃げ出すし、良い人間なら俺を許してくれるから。猫の鈴みたいって良く言われてる、俺ですよーって必ず何かが鳴るから』


「それ、ネタバレしたらアカンやん」

『君は俺を追い出さないし、良い人間じゃない』


「じゃないじゃない、悪い人間かもよ」

『無い無い、俺なんか心配しないよ悪い人間は』


「心配して無いし」

『バラして大丈夫かって言ってくれたじゃない』


「欠点に目がいっただけですし」

『頑固だなぁ』


「はい」

『素直。へそ曲がりとか言われ無い?』


「分かります?」

『分かる分かる、俺もだもん。だけどさぁ、普通にしてるだけなのにね』


「なぜ親しげ、狙いは何でしょうか」

『良いねぇ警戒心バリバリで、よしよし』


「そんなアホっ子に見えますか」

『褒めてるの、癖が有る方が面白いからねぇ』


「何も面白い事は出来ませんけど」


『1つはねぇ、狙いは何かって聞かないで、親しくなって利用しようとするでしょ。後はねぇ、召喚者なのにロキだと恐れないとか、仲間を心配したりとか』

「褒めても何も出ませんけども」


『あ、褒めてるって分かってくれた?』

「やりずれぇ」


『分かるぅ〜』

「一応、まだ反省してる雰囲気で居てくれます?身内が心配なので」


『大丈夫だよ、多分アレは寝てるだけだから』

「ご経験が?」


『ラグナロクのアレ、皆で押し掛けたの半分は俺のせいなんだ。途中から神々が本気になってナリとナヴィを本当に殺して、ヘルが居るから大丈夫だって思ってたんだけど。マジで毒薬垂らしてくるし、だからマジ切れしちゃって、扇動しちゃった』

「御愁傷様です」


『今はもうナリとナヴィは生き返って、寿命で死んでるけど。ヘルにも怒られたんだぁ、影響させちゃうからムキになるなって』

「だから物腰が柔らかいのね」


『痛いのが嫌いなだけ、物理的な苦痛嫌い』


「また弱点をさ」

『ほら優しい』


「ぐっ」


『それに直ぐ信じてくれちゃうし』

「え、嘘とか怒るんですが」


『心配ならヘルの館に来たら良いよ、俺ってそこで嘘言うと死んじゃうから』

「今は生きてそうですが」


『生き返えらせて貰った後、怒られる』

「先ずは殺すって凄い素敵」


『でしょ、良い子なんだよ。優しいんだけど中々ね、今度来てくれない?』

「死んじゃう感じ?」


『死なない死なない、ちゃんとすれば』

「若干不安の残る言い方」


『一応冥界だし、番犬居るし』

「ワンワンか」


『あ、フェンリルとか触ってみる?』

「大丈夫なんでしょうか」


『優しくて可愛いよ?』


「相談してみます」

『慎重だねぇ』


「ハナ」

「タケちゃん、ショナは?」


「大丈夫だ、ほら」

「すみません、寝ちゃってました」

「良いの良いの、でも」


「魔法の使用中以外は大丈夫らしいが、蓄積もするらしい。しかも」

「賢人君、寝てますね。耐性に個人差が有るので引き続き僕が残りますね」

「無理せんでよ?」


「はい」

「それと、買い溜めた食料だ」

「良い匂い」


「花茶もだ」

『お、面白そう』


「お湯を入れると花が咲くんです。先程は挨拶もせず失礼しました、李 武光です」

『うん、俺の名前はもう知ってるよね』


「はい。すまんな、リズを寄越したりバタバタさせて」

「ううん、本当に効かないってだけで安心したし。ありがとう」


「いや、俺の方こそ。じゃあな」

「うん、じゃあね」


『恋人?』

「違うよ、コッチのお兄ちゃん」




 さっさと帰って来るしか無かったからこそ助かったが、次はどうなる事か。


『早速食っているな』

「そうか」

『僕らって、危ない人間でも有るんですよね』

「まぁ、完全に否定は出来無いな。力が、少なくとも俺よりは有るんだからな」


「しかもお前はこう、小さいしな」

「怖いわ、そのスピードで持ち上げられんの」


「そうか、次からは気を付ける」

「そもそもすんな」


『エミール、お前には重い話を一気に聞かせ過ぎたな』

「それはマジでごめんな、悪かった」

「俺もだ、すまない」

『僕を守ろうとしての事だって、そう思って良いんですよね?』


「コレはお前用の嘘が分かる魔道具だ、そしてコレは見抜けなくさせる魔道具。コレを外した上で答えるから、先ずは付けて欲しい」


『分かりました』


「因みにだ、最初に嘘を言わせるのがポイントだ」


『じゃあ、ハナさんは嫌いですか?』

「あぁ、大嫌いだ」


『冷たくて、音がするんですけど』

「嘘が反応してるんだ、本当の事には」


『反応しないんですね』

「あぁ、そうだ。ただ欠点も有る、曖昧な返事には反応しなかったりもする」

「研究班としては、それは個人差らしい」


「あぁ、あくまでも感性を研ぎ澄ませた状態にもって行くだけなんだろう」


『僕や、僕とハナさんの為に、黙ってたんですか?』

「そうだ」


『これからも、そうするつもりなんですか?』

「そうだ」


『いつ、言ってくれるんですか?』

「最も適した時期に言うつもりだ」


『それじゃあ時期が来なかったら』

「言わない、言えないだろう。それでもだ、俺が居なくても知る事は出来る筈だろう、リズ」


「どんな知識でも、知る理由が正当ならな。本来なら従者心得をいきなり知る事は出来無いんだよ、ココには知る権利と知らない権利が共存してる。普通なら年齢や職業に合わせた情報の開示段階が有る、それは召喚者でもだ。信用の無い人間に機密は明かせないからな」

『勝手に呼んどいて信用って』


「それなんだが、すまんエミール君。コッチはコッチで、凄い能力持って勝手に来てって感想も有るんだ、過去の事例が有る以上はそう思う人間も居る。人間界には人間界のルールが有るんだ」

『自分勝手ですよね、人間も神様も』

「クエビコ神、誰が呼んでるか知ってるか」


『憶測は有るが定かでは無い、この世界そのものが呼んでいるのではと言われている』

《少なくとも、ウチの神々じゃ無いわ》

【主も、より良き人間の出現は願っていますが】

「どうしたって教会は認めらんないだろうな、憤怒は召喚者で大罪なんだから」


『また、新しい情報が』

「すまんマジで、桜木の事が有って学習は」


『いえ、僕も寝てばっかりでしたからそれは良いんですけど、タケミツさん?』

「大丈夫か武光」

「俺も、眠気に抗えないんだ」

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