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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
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第二節-02.皇子、家出しました。ハンター業。

◇◇◇


「登録したいのですが」

「お幾つですか?」

「11歳です」


 帝都フルール・ド・セントルの南東区、南門に程近い所にある四階建ての建屋。狩猟者組合(ハンターギルド)の建物の受付窓口に亜麻色の髪の少年がいる。

 私シルヴィアは所謂受付嬢。子爵家の令嬢、とは言え四女。殆ど一般庶民、百々の詰まり平民として生きて行くんだろうなー。

 何処かの貴族令息に見初められる。なんて物語は無いのを知っている。知ってはいるけどなんなのこの子!今目の前にいる私の窓口に立つこの子。

 唾付~けよっ!


「こちらの書式にしたがってご記入下さい。あっ、分かんないトコロとかあったらお姉さんに言って!」

「ありがとう。記入終わったらまた窓口に並べばいいんですか?」

「ええ、そうよ♡」

「……。」


 私シルヴィア、16歳。11歳の彼、何か素敵。将来有望な美少年。と、言うよか、今!最高ぅぅぅーっ!

 五歳差何て、誤差の内。彼、貴族っぽいけど、貴族かしら?わざわざハンターになる貴族令息の理由は…………。普通に考えて、「貧乏だから」!貧乏だから何!?将来の美丈夫が貧乏だったとして何だと言うの!買いよ買い。っつか、今が旬。彼は私が飼うわあぁぁぁーーー!!!


「シルヴィ、クネクネして気持ち悪い。真面目に仕事してよ」


 同僚に注意されました。

 再び彼が窓口に並んだ。でも、そっちは隣の窓口!

 こうして彼と私の望む邂逅は泡と消えるのでした。

 しかし名前は押さえた。『ヴォル』君。私のヴォル君。私だけのヴォルキュン!!!





◇◇◇


 物心付いた頃には僕の生活は決まっていた。


 朝侍従に支度をされダイニングで朝食を取る。午前は家庭教師が来て座学。昼を挟み、剣術などの修練。教える師は近衛騎士の団長や副団長。8つになる頃からは、魔導師団の団長の魔術指導が加わった。午後3時(後の鐘2つ時)にお茶の時間。夕食の午後6時(終りの鐘1つ時)までは特に予定の無い時間は兄上といっしょに只々遊んだ。

 座学も実技の師も同じような評価であった。僕ら兄弟はどちらも甲乙付けがたく優秀な生徒だと。

 僕らは、いっしょに楽しみいっしょに競った。


 ある日僕は気が付いた。父上の後継と言う物を、競い合いは後継争いの一つなのだと………。

 そして、我が母の妬み嫉み欲望。それらを体現させる道具が僕であると言うこと。

 結論。帝国に僕がいなければ良い。だから僕は国外に行くことにした。

 成人の儀の前に僕は一人で生きて行くことを目標に考えた。

 だから狩猟者(ハンター)になろうと思った。


 この時11歳になったばかりの僕の初冬の話し。





 ◇◇◇


 僕の狩猟者(ハンター)稼業は、安息日である毎週の6日だ。だから月に五日しか組合(ギルド)に言って依頼を熟すことが出来ない。だから階級(クラス)も上がらない。階級が上がらなければより効率良く稼げない。

 どうするか?一人では出来ない依頼を熟すには、パーティーを組むしかない。

 今あるパーティーに参加する方法もあるが、搾取されるのが落ちらしい。

 受付嬢のシルヴィアさんが、


「新人だから授業料だと言って殆ど取り分の無いまま、荷物持ちにさせられることも多いのよ!気を付けてヴォルきゅん♡」


 と、言っていた。

 その『♡』、何?


 ならば自分でパーティーを作る。

 実力の拮抗する同年代の人………いない。

 ソロのままハンターを続け、何時か『週末ハンター』と呼ばれていることは知らなかった。

 そんな感じで一年半。夏のある日に出会った兄弟が、ジェルブラとイビスキュス。


 ジェルブラは16歳、イビスキュスは14歳のハンターで、兄のジェルブラの得物は大きな戦斧。イビスキュスは長剣なのだが、二人の体格的に逆の方がしっくり来る気がする。

 兄弟は後衛の出来る魔術師を求めていた。

 お試しで2度3度とパーティーを組んで依頼をこなした。

 ジェルの指示は的確だった。イビスも普段から兄を慕って居るようで自己顕示欲よりも兄の指示が優先されていて、僕とも上手く連携が取れていた。

 近接戦に於て僕は剣も槍も使えるのだが、対格的に兄弟の足手まといにしかならなさそうであった。

 彼らは泊まり掛けの依頼もこなせる。一方の僕は、安息日の一日だけ。そんな僕に配慮してくれたのだろう。兄弟は何時も週末は日中だけの依頼を受けるのが常となっていた。


 僕は13歳になり、セントル高等学園に入学した。

 因みに、学園は四年制で、13になる貴族の子弟、優秀な平民にも開かれており、16歳の成人になる年までの学園である。


 僕と兄上は相変わらず座学に実技に競いあった。

 だからなのか成績は何時も首席か次席。

 魔術が僕の方が得意で、兄上は剣技に秀でていた。

 座学は拮抗。兎に角、苦しんで努力するより、楽しんでいた方が勉強になるのだと知った。


 本当に勉強になりましたよ。




「坊っちゃんはずっと帝都でハンターするのか?」

「いや、15になる年の夏に他の国に行こうと思っているよ。それと、坊っちゃん止めてっ!」

「そうか……」

「兄貴どうするよぉ。俺、どっか行きてぇかも」

「そうだなあー……」


 ジェルは器用に川魚の腸を取り除いては塩を刷り込んで行く。それを小串に刺し、石で組んだ竈の周りに刺して並べている。


「皆で行くか!他所の国」


 遠火で焼いた川魚は程よい塩加減で凄く美味しかった。

 そんな休日が幾度もあった。




 僕が14歳になる頃、ナルスィスも14歳になっていた。


 学園に入学して生徒会に所属した。同世代の人間と接する機会を得た。

 楽しい時間だった。


 そして、相も変わらず僕は週末ハンターだった。

 でも時々、平日の午後ハンターの依頼を受ける余裕は出来たみたいだ。





◇◇◇


 私はシルヴィア。自他共に認めるショタコンだ。「認めたく無いものだ。若さ故の───」は、どうでもいい。最近背の伸びてきた彼、今までローブを着ていて魔術師然としていたお姿から革の脛当て、胸当て何て軽戦士っぽい感じになっちゃって、私はキュンキュンしっぱなし。

 女性がスカートを履く理由が分かった気がします。


 なる程、お股が蒸れますね。


「シャテニエ公国方面の護衛、ですか?」

「はい、出来れば公都マロンダムへ行く商隊とか行商人、馬車とかがあれば……」

「定期運行の駅馬車はありますね。ですが、大体決まったパーティーの方が押さえていますよ?」

「そう、ですか……」

7月(フイユ)の第三週の4日の駅馬車が今一番近い公国方面の護衛依頼ですね。人数は五名ですね」

「ジェル、イビスこれ受けてもいいかな?」

「俺は構わん」

「兄貴がいいなら俺もいいぜぇ」


 ヤバい!この金髪兄弟に攻められてるヴォルきゅんを想像して仕舞ったっ!うわあああーーー!壊れる壊されるぅヴォルきゅんが(けが)されて行くよおおおーーー!!!


「あのぉ、シルヴィアさん」

「──はっ!ぬ、濡れてません!ませんともっ!

 あっ、スイマセンよだれ拭きますので……。で、ヴォルきゅん何ですか?」

「その7月第三週4日の護衛、受けたいのですが」

「はい、パーティー『豊穣の魚』さん、受諾しました。一度、駅馬車の護衛について説明をお受けになって下さい。駅馬車の運営事務所の場所は────────」





◇◇◇


 二頭立て馬車三台が列を成して進む。速度は大人の男性の早歩きくらい。護衛は五人。


 一台目の馬車の馭者の隣に僕は座った。三台目の後方出入り口にキャメロアと言う19歳の剣と弓使いの男性ハンター。後方を警戒する位置だ。

 護衛五人のリーダーは30歳の剣士。階級Cのベテランハンターのミュゲ、月に何回かは駅馬車の護衛をしていて、いろいろ護衛の仕事のいろはを教えて下さる人だ。


 そして一台目と三台目に並走するのは後方がジェルブラ。前方はイビスキュスが並走した。

 馬車と並走している護衛は敵襲時後や定期的に報告するなど後方前方とリーダーへの伝令役。


 護衛の仕事四日目。朝はから快晴で日差しの厳しい一日になるはずであったが、昼休憩の後間も無く土砂降りの雨が駅馬車を襲った。


 馬車の幌を通す勢いの雨量に馬も進めず、少し広い場所を目指しゆっくり進んだ。

 馭者は馬を手綱で引いて歩く他無く、ずぶ濡れになった。停まれる場所を探すウチ、あれ程の豪雨は無かったことのようにすっかり止み、ずぶ濡れの馭者は兎も角、護衛のハンターも乗客も濡れぼそっていた。石畳の街道も帝都から離れる程に整備の状態は悪く、大量の雨を含んでいて馬車が進める状況では無いことは一目瞭然であった。


 町にたどり着けない、と判断した馭者達は野営をする旨を乗客に伝えた。


 周辺の警戒にジェルブラとミュゲがあたっている。

 僕とイビスそれとキャメロアさんで薪を拾いに行くが、雨で使えそうな物が無い。と思ったが、なんとイビスは兄の大きな戦斧で木を切り倒しにかかり始めた!


「武器をそんなことに使うなんて……あー、でも斧だもんなあー。いいのか?」

「偶にこう言う使い方するぜぇ、普通に」


 へぇー、そうなんだ。僕の槍はどう使おう、………想像した。槍の先で焼く動物の肉。槍の刃は煤と肉の油にまみれて、………ああ、無理、無理だ。


 薪割りの要領で燃やせる程度にした木に火を点けるのだが、何せ生木。雨に濡れた落ち木よりはまし(・・)と言うだけで、火が点きにくいことは仕方がない。

 頑張って魔術師として何とか焚き火になりました。馬車には各々鉄鍋が備えられていて、こう言う自体も想定される為、1~2食分の乾燥野菜と塩漬け肉も備えてあった。

 一応手持ちの桶も馬車に備え付けられており、乗客の男性が水を往復して運んでくれていた。


 日が沈む頃には保存食スープも煮え、皆で薄く切ったライ麦パンといっしょに食した。

 美味しく無かった。


「街道の北も南も魔獣も盗賊も見当たらない」

「そうか。ジェルと言ったか、おまえも食事を貰って来な。休憩代わるよ」

「ミュゲさん、そうさせていただく」


 夜警は2交代にした最初はジェル、イビスとキャメロアさん。明け方までは僕とミュゲさん。


「街道の状態どうでしょう?」

「国境の辺りは殆ど整備されて無ぇーからな、結構泥濘残ってると思うぜー。一日遅れになるな」

「遅れることって、結構あるんですか?」

「勿論勿論、しょっちゅうだよー。まっおかげで銀貨一枚増えるがなー。ダッハッハッハー」


 三日目午後の豪雨以外、大したトラブルも無く行程6日でシャテニエの公都マロンダムに到着した。マロンダムの狩猟者組合で依頼完遂を報告し、報酬の銀貨五枚+1を各々が受け取り、先に決めていた宿に入った。


 夕食までまだ余裕があり部屋に戻って寛ごうと階段を昇り始めたところで女性と男性の怒号が聞こえたのだった。



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