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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
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第一節-05.公女、行方知れずになりました。書斎の母。

◇◇◇


 グランフルーリア帝国の我がシャテニエ公家の邸宅、そのわたしの居室の隣に書斎がある。


「お好きにお使い下さい」


 そう、筆頭執事のロタユスは言っていた。

 編入試験のあった日の夕方、その書斎に入って驚いた。

 わたしの姿絵が多数、所狭しと壁に並んでいたのだ!

 しかもわたし、大人っぽいし………。。。


「───あれ?赤ちゃん抱いているわ。わたし……」


 そう、その姿絵には赤子を抱く大人(アダルティー)なわたしが、赤ちゃんのわたしを抱いている物だったのだ。


「お母様?」


 そんな筈は無い。


 亡くなったお母様の御髪は、ちょっと変わったブラウンブロンドであった筈。

 お母様が亡くなったのは、わたしが七歳になったばかりの時だ。

 わたくしの記憶が確かならば、お母様は茶色っぽい金髪。

 なんと表現すべきか?

 まるで、お人形のような、光る黄土色的な茶色?そう、作り物っぽい色合いの髪色であったと、記憶している。

 兎に角、それら姿絵の真相を探るべく………。。。



「奥様は、お染めになられておりました」


 謎は解けた!回答早過ぎ、ロテユス。

 何故、染めていたの?元の色は何色?


「奥様の元々の御髪は姫様と同じ色でございました」


 って、ことは、『白』?


「はい。ですが、夜会に行く度に揶揄されていらっしゃいまして、……言葉にするのも憚れるのですが」


 ロテユスの言うに、「公国の年寄り姫」だとか、「白髪(しらが)姫」。と言われていた。と………。

 そして、染めることを決意した出来事が、わたしの一歳の頃にあったのだと言う。



 お母様は『狩り』が大好きだった。


 わたしがお腹にいた頃狩りが出来なかった。

 でも、生んで仕舞えば狩りが出来るようになった。

 社交シーズンが始まる季節は、同時に、狩りのシーズンでもある。

 帝都郊外の森で、二年ぶりの狩りを楽しんでいたお母様。

 そのお母様に向かって、複数の矢が飛んで来た。



「これは失敬、レオノーラ様でしたか。いやいや、私どもはてっきり、『兎』だと思いまして、矢を射った次第でして」


 明らかに、故意であった。

 矢を射った貴族は、帝国の侯爵家の令息、とその取り巻き達。

 その令息は、お母様レオノーラに以前、求婚したとかしないとか、まあそう言う貴族の子弟達であったのだ。

 お母様は、公国の伯爵家出身。

 既に公族ではあるが、公国は帝国の属国である。

 「間違えた」と、言われれば、「そうですか」、としか言い返せない。

 そう言うことが度々、起こるようになり、とうとうお母様は髪を染めた。茶色に……。

 まあ、茶色になる毛染め剤であったのに、茶金髪になっちゃった。

 それから、お母様は毛染め剤で髪を染め続けたのだと言う。



「───ねえ、ロテユス。髪色のことはわかったわ。わたしが『白子』であることは、わたしも知っている。白い髪だし、瞳も赤い。でも、何故お母様も同じお色なの?だって、『白子』って突然変異なのでしょう?」

「母子共に、突然変異なのでは?」


 ロテユス、適当過ぎ。。。





◇◇◇


「え?皇子じゃ無く、王子(・・)!?」



 マロンダム城に着城いて、お父様に帰国の報告と、ここに至る経緯をお話ししたところ、驚愕の事実が判明した。



 食事も取らず自室で横になる頃、緊張の糸が切れたらしい。そのまま翌日の昼まで眠りに着いた。

 起きると父の執務室へ向かった。起き次第来るようにと侍女が言付かっていたからだ。



「カクチュスとダフネと言う兄弟はチボールディア王国の王子だったと言うことですね」


 チボールディア王国は帝国の西にある山合の王国で、帝国が初期に併吞した国だ。もう200年以上前のことだ。

 属国のベテランである。


「兄の第一王子カクチュス殿下の釣書が数日前に届いておる。手紙もな」


 触ると妊娠しそうなので、お父様にお手紙の内容をかい摘まんで教えて貰った。

 それによると、~彼とわたしは互いに一目惚れをして将来を誓い合った仲………。

 ───っだ、とおぉぉぉーーーっ!ぶっ殺してやるっっっ!!!

 感情が昂って破壊して仕舞った帝国の学園を思い出す。



 執務室のガラス窓を全て割って仕舞いました。

 お父様の机の上に積まれていた書類は散乱して、一部は燃やし尽くして仕舞いましたごめんなさい。

 従者や近衛に片付けを手伝って貰うこと小一時間。お話し再開しました。


「そのカクチュスと言うのが非常にマナーが悪く、口も悪い。挙げ句、弟が模写したペリィの姿絵で、じっ、じじ、じっ、……自慰…オナニーしていると言葉に出した。と、………ペリィの体調不良は奴が原因だったと?

 先ず、模写とオナニー公言に関して、公文書として正式に抗議しよう。帝国の学園の学園長にもその旨、伝えておくのが良いであろうな。

 我が愛娘をオナペットに利用するなど、万死に値する。ペリィに接触あった場合、挙兵する旨、……と言う感じで抗議文の文面に盛り込むのもありだな!なあ宰相」

「閣下、手緩いですな。このテオドール我が私兵を持って即刻、戦の先駆けとなりましょう!」


 ちょっ!この大人達怖いよおー。

 たかがオナニー風情で………。

 いいや、殺そう。



 お父様の執務室の戸がノックされ、衛士が入室した。


「閣下、西門の警吏から至急の知らせです。口頭にて伝えます。今宜しいでしょうか?」

「良い、申せ」

「はっ!チボールディア王国第一王子カクチュスと第二王子ダフネを名乗る少年、騎兵四騎の一団が、我らが姫君ペルスネージュ公女を迎えに来た。

 との暴言を吐きやがった為、一個小隊を持ち制圧、全員拘束したとのことです。以上!」

「うむ、『よくやった。その忠義に大公は酬いる』そう伝えよ!」

「はっ!」





◇◇◇


 帝国西のチボールディアにお父様は抗議文を送りました。

 只送ったのでは無く、使者を立て明言の通り公文書として送り出しました。

 二週間後には使者と共に届くでしょう。


 さて、あの王子(バカ)どもですが、留置場に入って貰っております。

 勿論、貴賓使用の牢ではありません。極一般的な牢です。




 その二日後、


「大公閣下並び、ペルスネージュ様に接見の先触れがあります。帝国の使者殿です。お連れしても宜しいでしょうか」

「執務室、……いや、応接室で会おう」


 お父様と昼食中、そんな嫌な予感しかしない話が舞い込んで来た。


「すると、帝国第一皇子が我が娘ペリィちゃんと会って話がしたい、と」

「公式な訪問では無く、あくまでも個人的な接見であるので、もし拒んだとしても帝国の意思に反したと言及することが無い旨、お返事をお聞かせ願いたく。非公式な訪問ゆえ、公文書に残す必要の無い旨をきちんと伝えるよう主より承っております」


 一晩考えさせて欲しい。と、わたしは使者に伝えて貰った。だが……。



「ペルスネージュよ。我が国は独立国とは名ばかりの公国だ。私はことを荒立てたくは無い。情けない国主で、愛しい娘すら守れないダメな父親だ。と、私はそう思う。皇子と話すだけなのだ。堪え応じよう我が愛娘よ」


 翌日、二日後の正午に合うことを伝えた。





 どうしよう。どうしたら良かった?最善策は?回避方法は?わたしはどうしたらいい?

 仮に今回拒絶しても帝国の学園には1学年上級生だけれど在籍している。

 わたしだが、彼らも成績が良いと訊く。教員推薦と言う生徒会役員枠があっておそらく、彼らと共に生徒会の所属となる可能性が大きい。否が応でも近付くことになるだろう。

 ならば、どうするか……。


 いや、もうわたしの中にその答えはあるのだ。





◇◇◇


 ウイエは馭者で厩番。ウイエの父親もお城で厩番をしていた。


 わたしが物心付く頃にはウイエのお父様とお話しをしていたと思う。

 乗馬はそのお父様に教えて貰った。

 わたしが8つの年、ウイエのお父様が厩番を引退した。それからはウイエが乗馬を教えてくれた。

 ウイエとは、お互いに馬の可愛いところとかカッコいいところを話したりしている。


 ところで、わたしは王族皇族、支配階級の令息が嫌いだ。

 お母様が亡くなって半年のことだったと思う。

 南部湾岸州の都市国家群の定例会議が公都マロンダムで行われた。


 各々の都市の長は、殆どが世襲制、『世襲市長』とか呼ばれていた。

 その世襲市長は、帝国皇帝より子爵位から侯爵位を賜っている。

 その市長の会議開催期間、彼らの子女はマロンダム城の庭園で好きに遊んで良いことになっていた。


 同い年くらいの子どももいた。母を亡くして塞ぎ込んでいたわたしをお城の女官が元気付けの為なのか、その子ども達にわたしを紹介して、いっしょに遊べるように計らってくれた。



「今日からオマエ、おれの子分なぁ」


 から始まり、


 「白髪(しらが)頭。変なのぉー」「おい!ババァ頭」と、言葉で虐められた。

 尤も彼らはわたしを弄って構っているつもりらしかったが、今となっては本当のところは分からない。


「オマエ、母さんが死んだショックで白くなったんだって?」


 もう我慢出来なかった。

 我に還ったわたしの見たものは、頭髪を焼かれた酷いことを言った何処かの令息だった。

 「いきなり焼かれた」と、その令息も取り巻きも、挙げ句彼らの従者も異口同音にそう言った。


 わたしの侍女がいくら、「姫様は虐められていた」と訴えても事実を曲げて彼らは大声で、「わたしが悪さをした」と言い続けた。

 信じて貰えなくて、わたしは悔しかったし悲しかった。憎かった。

 そして、


「ねえー、ガルぅ。白い髪の毛って悪いの?皆と違って、わたし変なの?」


 と訊いて仕舞った。

 これが不味かった。


「いいえ、いいえ!姫の髪は世界一っす。確かに珍しいです。だが、それだから尊いっ!美しい。そうガルデニアは思うっす!」


 半年前に公都の大通りでわたしとお母様の乗った馬車の前に飛び出て来た少女。酷い怪我をおっていると勘違いしたわたしの「連れて帰って、怪我を治す!」、に賛同したお母様が保護した子ども。


 名前が無い。と言うので、絵本の勇者の名前を付けた。

 名前を付けたら、「一生あんたの下僕になる」と、宣言してその日の内にわたしの侍女になった。

 因みに、怪我で出血していたのでは無く、初潮だったそうだ。

 その為なのか、彼女は売春宿の元締めに捨てられた。


「生理始まったら、妊娠すんじゃな

無えーか!」


 と、、、

 まあ、そこを拾った訳なのだが………。


「お母様が、『成りきるには先ず格好。次は言葉』って。ガル言葉遣いが悪いですよ」

「失礼致しました姫さん、……様。姫様、その髪の毛は、来月くらい後で実際にお教え出来るのですが、──夜雪が積もった朝、スンゲーいい天気の雪のようにキラキラと輝いててキレーだぜ!オレ、朝の雪が大好きです。だから姫様の髪の毛も大好き!だってこんなにも美しいんだもん!そうガルデニアは思います。

 それに昔、オレ、……私ガルデニアの母ちゃん…さんが言ってた。『白は純血純真の色。白はどんな悪い心にも染まっていない』って、姫さん、様の髪の毛が悪いことは無えー!ないです。その姫様が悪であるはずもないし。

 こうも言ってた。『白は純血純真であるから、周りの悪意を浮き出させる』って!詰まり、あいつらの悪意を見せたのは姫様あんただ!悪を浮き出したんだ!多分、きっと、誇っていいんだぜ?だって姫様、悪者発見器なんだから!そうガルデニアは考えます。それにー、───────」


 延々とガルデニアのお喋りが続いて、わたしは風邪を引いた。初冬の夕方、庭園でずっと語られるわたしへの賛美は続いた……。


 閑話休題。

 支配階級の令息にいい思い出は無い。

 今回の王子(バカ)もそうだった。


 帝国の第一皇子だっていきなりマロンダムに乗り込んで来て、「会って話しをしろ!」だ。

 こいつら皆、信用出来ない。

 そこで長年着服、……貯めていたお金の出番だ。

 買い物の仕方も覚えた。他の準備も万端。後は実行と協力者。


 協力者のウイエの実家に匿って貰う算段は付いている。

夕方の一本から第二節です。

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