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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
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第一節-04・公女、行方知れずになりました。園遊会。

◇◇◇


 7月(フイユ)の第二週6日、今日は安息日。毎週訪れるお休みの日。

 帝国帝都の皇帝陛下の居城、ブルジュオン城の庭園で本来学生の交流会として開催されるガーデンパーティーが行われる。

 わたしはこの園遊会(ガーデンパーティー)で、二人の皇子を見極めるのだ。



 在籍している学園の生徒は500人程。勿論、新一年生は含まれません。2~4年生の人数です。

 編入試験の結果、ですか?言わずもなが。

 優秀な優等生なわたくしは事実上の学年首席だと合否通知のお手紙に書いてありました。


「流石、姫様。ガルデニアは誇らしいです!」


 晴れて新三年生に編入が決まりました。

 まあ、当然と言っちゃあ当然なのですよ。


 閑話休題。

 500名の生徒くらい余裕な帝城の庭園広場。立食形式の園遊会ですから当然なのですが、今は夏真っ盛り!

 しかも頗る良い天気。少々暑さが厳しいのでは?とは思いましたが、至る所に冷風を出す魔具が設置されております。

 シャテニエ公国の東に拡がるクラスペダ山脈に生息する魔獣の中には冷蔵魔具に使用出来る魔石を持つものもいて、よくこの季節狩りに行ったものでした。

 でも冷せる魔石を得ることは殆ど無く、何時もしょんぼりしてお城に帰ったものです。


 何が言いたいのかと言うと、それだけ特化型の魔石は貴重なのです。それを惜し気も無く設置出来る帝国の底力よ!

 これが、国力の差の一端なのでしょう。

 少し小腹が空きました。食べましょう。

 ?何でしょうこの白い物体は……、小さな平皿に載ったまあるい白い……。冷たいっ甘いっ何?美味しいじゃないぃぃぃ!!!何でしょう?この世にこのような甘味が存在していただなんてっ!知らなかった今、知った!何故わたしはコレを知らなかったでしょう!?

 早くにアナタを知り得ていたのなら………。


 まあいいわ。知ったからには知り尽くしましょう!「おいオマエ!」ああっ、素っ晴らしいぃぃぃ!お口がひんやり、、、あっ、頭が「キーン」とします。痛い、痛いぃー。ですが、甘くて冷たくて美味しいです。この小さな葉っぱを噛むと何故かわたしの息も涼しくなってお口の中がサッパリ致します。何て尊い甘味───「おいっ!オマエを呼んでいるのだっ!」


───う る さ い !


「何方です?鬱陶しいったらありません!」

「なん、だっ、と!」


 お耳が悪のでしょうか?


「何方です?鬱陶しいったらありません!」

「ぶ、無礼な!」

「無礼も何も躾のなって無いのは貴方ではなくて?淑女に対するマナーがなっておりません。大体、わたしに『オマエ』とは?何なのでしょう。

 ああー、そうだったのですね?まともに教育を受ける機会が無かったのでしょう。可愛そうに憐れですわ同情を禁じ得ません。貴方が悪いのではありません。教育の機会を学ぶ時間を取り上げた貴方の周り即ち、環境がいけなかった。そうお思いになる方が、『自身の所為では無い!』と責任の回避や転嫁が出来ますことよ?

 良かったわね。この餓鬼がっ!」

「きっ、貴様ぁーこの私が誰かと───」

「存じません。だって貴方、名乗ってもいらっしゃらないでしょ?」

「───ん?言われてみれば名乗っておらん」


 んんー、こいつバカ?ヤバい面白過ぎて口角が上がる!何でしょうかこのバカ!?


「改めて名乗ろう。私は第一王子(・・)のカクチュスと言う。オマエは───」

淑女(レディ)に対して『オマエ』とは、如何なものか。わたくしはシャテニエ公国公女、ペルスネージュです。まともな教育の無い国の殿下。まともな教育を感受した公国の公女がご挨拶申し上げます。以後お見知り置きを」


 で、カーテシー。どおこの完璧な所作!お知りなさい完璧淑女のこのわたくしをっ!


「ぐっ!オマエが公女と言うのは知っていた。だから声を掛けたのだ!」

「知っていて尚、『オマエ』呼ばわりとは、……余程殿下の父君母君が愚かなのでしょう。お痛わしい……」

「父上と母上を愚弄すること、許さぬぞ!先程の発言撤回しろっ!」

「では、言い換えます。愚かな皇子(・・)ですこと。余程できた陛下でもこんな愚息では可哀想。きっと第二皇子(・・)も憐れな生き物なのでしょう。言い換えましたが、コレで宜しいでしょうか?では、ごきげんようさようならー」

「きっ、きっ、きっ、貴様あぁぁぁーーー!!!」


 ゆっくり優雅にこの場所から離れましょう。あの皇子(・・)、お顔が茹でたカニのように真っ赤ですわ!


「あー兄上ぇー、ここでしたか。おやその方、公女ちゃんですか?わー白ぉーい!ホント真っ白!アイスクリームみたいー!ええーそのお皿アイスクリームのじゃないですかー!真っ白公女が真っ白アイス食べてた何て、面白過ぎぃーーー!」


 あー、こいつもバカだわぁー。何だこのバカっぽい喋り方は……。留学しても婚約とか、無いわあーマジ無いわあー。出来得る限り全力で拘わりを持たない方向で学院生活を送りましょう。

 このことはお父様にお手紙で報告を─────。。。



「婚約してはくれませ──「全力でお断り申し上げます!」」

「婚約をしてはく──「全力でお断り申し上げます!」」

「婚約をばっ───「全力でお断り申し上げます!」」

「結婚しては──「誠心誠意全力でお断り申し上げます!」」


 しつこいっつーの!


「わたくし、頭の可哀想な方とは拘わりを持ちたくないのです。申し訳ありません」

「兄上、物凄い言われようだねー!あはははー!」

「先ず、初対面で求婚は無いでしょう?可笑しいですわ」

「ヌゥ、確かに。確かに初対面ではあるが、オマエの姿絵は持っている」


 何言ってんだあーこいつぅー、姿絵?わたしの?何故?


「何故貴方がわたくしの姿絵を所持しているの!?」

「オレ、模写得意なんだーーー!」


 模写?模写だとう!!!


「そうだ。我が弟ダフネは絵が上手くてな。以前、マロンダム城にお邪魔した際、飾ってあったオマエの絵を真似て描いたのだ。

 その絵は今も私の枕元にあって、毎日の自慰に欠かせぬ物となっておる。詰まるところ、私はオマエに惚れている」


 何だあその告白(カミングアウト)。完全にダメ(アウト)じゃん!


「自慰してるって………貴方、キモチワルイ。吐き気がするぅ」


 マジ、気持ち悪くなって来た。吐く………。


「えー!悪阻ぃ!?兄上の射精で妊娠したのー!?兄上スゲー!」


 ああー、ダメだこの兄弟。マジで断ろう。婚約とか婚姻とかこの兄弟どっちもダメだ。生理的に、生物的に無理だ。ああーっ吐き気がか、、。、ウウェェー。

 そしてわたしは意識を手放した。






 気が付くとわたしはベッドの中にいた。

 白い天井、知らない天井。ここは何処だ?


「姫様、お気付きになられましたか!ガルデニアは心配だったのです」

「ガルデニア、か…。ここは?」


 知らない大人の女性が答えた。


「帝城の医務室よ」

「皇宮の中?」

「違う違う、外廷の医務室。内廷の部屋に運び込める訳無いでしょう」


 ああ、彼女の言う通りだ。わたしは皇族では無いのだからな。

 ん?『運んだ』、だと!?誰が、あのバカ皇子(・・)どもか!?


「ええと、ありがとうございます。もう気分は悪く無いので。

 ところで何方がわたしを運んで下さったのですか?一言お礼を……」

「あー、大丈夫。この城の近衛だから運んで来たの」


 良かったあーあのバカ達じゃ無くってー!


「良かったあーあのバカ達じゃ無くってー」


あっ!音声に乗って、口外してしまったわ!


「ああ、あの子達ね。あの子らオロオロするだけで何の役にも立っていないわよー」


 良かったあー。。。

 あんなのに借りとか作ったら、本当に結婚せざる負えなくなるような気がする。


「帰ろっかあ、ガルデニア」





◇◇◇


「暑かったでしょ?はいウイエ召し上がれ!」


 真夏の炎天下、わたし達が帰るまでずっと待っていた馭者のウイエ。


「ウイエ、ほら早く食べちゃって!お皿返すのに衛士待たせているから──」


 まだ、園遊会は続いている。

 って言うか、開会の挨拶の前に意識を失ったので、厳密には始まったばかりなのだろう。

 わたし達はお城の西門を抜けお城を囲むお堀に掛かる下げ橋を渡る。そして北門付近から城郭……市壁に沿って帝都を一周している外縁通りを公国領事館、詰まり帝国の本邸に向かうのだった。

 あまり他の馬車や人とすれ違うことが無い。


「広い通りなのに殆ど馬車止まらないわね」

「やはり貴族街だからでしょうか?雑多な平民の居住区とは違うのです」

「そう言う言い方、無いと思うわ」

「いえ、ガルデニアも平民ですし、娼婦でしたし。雑多な猥雑な平民街何て…」

「ガルデニア。自分を卑下する言葉は使わ無いで!わたしは例え貴女でもガルデニアを貶める人間は軽蔑します!」

「───姫様」


 そう、ガルデニアはわたしが拾った娼婦。

 公都マロンダムの貧民窟(スラム)近くの路地に踞っていたこの子を拾った。わたしが六歳、ガルデニア10歳の時。


「あれから8年……か」


 20分掛からず邸宅に着いた。お城に行く時は40分近く掛かったのに。

 園遊会で倒れたことが伝わっていたらしく、使用人達に酷く心配された。


 悪夢は翌日から始まった。





◇◇◇


 朝食の後、わたしは市場(マルシェ)のある中央広場に馬車で向かう。


「ウイエも教会行く?」

「姫さんみてぇな高貴な方といっしょってなぁ自分的に最高なんですが、姫さん的に外聞悪く無えっすか?」

「わたし、気にしないわよ?」


 教会は商業組合(ギルド)と大通りを挟んだ向かい側にある。そこの停車所馬車を預け、ウイエもいっしょに礼拝堂に入る。

 一応大公の長女で、大公家直系で、継承権三位であるところのわたしは、それなりの見栄(・・)を張らない訳にはいかないので、お布施を………。


「どうしたの?ガルデニア」

「───それが」


 ガルデニアが出した金貨袋。やけに小さい……っつか何だそれ?ガルデニアの手のひらに乗っかってんじゃねえーかあ!

 中身は「モリア銀(ミスリル)貨」。冗談では無い!これでは数枚金貨を抜くことが出来ないではないかっ!だって一枚しか入ってないんだよ?硬貨。


 そう教会にわたしが一人で行くことが多いので、その付き添いは何時もガルデニアだけ。

 夏至祭と豊穣祭、冬至祭そして新年の年四階、わたしはお布施を出している。その度金貨50枚を持たされ教会に出すのだが、数枚抜くのがわたしクオリティー。

 来るべきその日に備え、貯めているのだ!もう50枚は貯まったかしら。


 その金貨は商業組合(ギルド)に預けている。預ける都度、証文を発行して貰っているから、例え公国から追放されても他国の組合で証文を出せば金貨全額が手に入る。

 但し国によっては取引税とかで1~3割抜かれて仕舞うこともあるようだ。

 3割とか酷くない?

 で、困った。一枚の硬貨は数枚の金貨など抜けない。


「姫様、宜しいのですか?」

「ああ、今回は諦める。帝都に初めて来た───「二度目です」──ようなものだからこうして礼拝に来たのだ。詰まりあっても臨時収入。無ければ無いでいいんじゃないかなー」


 なる程、このように硬貨一枚ではチョロまかすことも出来ない。

 将来、わたしに子が出来たら教会のお使い時は硬貨一枚だけを持たせよう。

 思わぬところで、勉強になりました。


 礼拝堂の入口に立っている修道師にガルデニアが袋を渡し、


「教会や救いを求める人のお役に立ちますよう」


 と常套句を言い礼拝堂に入った。

 取り合えずお祈りをして、ちょっと買い食いをしてー。ウイエは美味しいと評判の屋台を幾つも知っていたので、結構楽しめた。

 そして正午(中の鐘一つ時)が鳴る頃お邸に戻った。




「姫様、お届け物をお預かりしております」


 エントランスで、筆頭執事のロテユスに渡された大きな花束。


「これは?」

「はい、姫様を訪ねて少年がお二人いらっしゃいまして──」


 不在であることと戻る時間が未定であることを伝えると、「また来る」と言い帰って行った。と言うことだった。

 少年の特徴は二人共茶色の髪で碧眼。筋肉質な少年にタレ目の少年は「兄上」と言っていたと言うことで、あのバカ皇子(・・)兄弟確定だった。


 キモチワルイ。。。




 気が付くと自分のベッドにいた。


「大丈夫ですか姫様」


 眉をハの字にしたロテユスがわたしの顔を覗き込んでいた。

 その横に心配そうに佇むガルデニアいる。


「大丈夫です。心配掛けたわね」

「姫様、ガルデニアはお医者をお呼びするのが良いかと思うのですが……」

「必要無いわ。只───」


 あの兄弟のことを考えると気持ち悪くなる。生理的に受け付けない。生物として、無理。と言うことをロテユスとガルデニアに訴え、もし彼らが訪問してもわたしが不在若しくは、体調不良を理由にお会い出来ないと言って欲しいと頼んだ。

 翌日も朝から来た様子で、またしても花束を置いていった。

 花束には、『私の愛しいネージュ』とミミズが跳ね上がったような小汚ない文字が綴られていた。

 それが毎日続き、五日目の昼過ぎサロンでお茶をしていたわたしの視界にあの兄弟が入った。

 サロンの外、ウッドデッキに登ろうとしている兄弟が見えたのだ。


 恐怖。


 わたしは生まれて初めて命に拘わる恐怖を体験した。そう錯覚した。

 ガタガタ震えるわたしを強く抱き締めるガルデニアに完全に身体を預け、わたしはずっと涙を流していたらしい。

 後でガルデニアが教えてくれた。


 翌朝早くわたしは帝都を発った。

 予定日より数日早いが帰路についたのである。

 もう、精神が持ちません。




◇◇◇


 帝都を発って3日目。

 あの兄弟が追って来るのではないか?と、思い騎士二騎を馬車の数百メートル後方に配し、公国に向け移動していた。昼の休憩の後次の宿泊予定の町を目指して動き出して間も無く、後方で警戒させていた騎士が馬車の横に来た。


「例の兄弟と思わしき者の乗る馬車が、400m程の距離を保ったまま、姫様の御座馬車を追いかけているように思われます!」


 戦慄した!


「分隊長。馬を一頭わたしに都合付けなさい。それと衛士3騎、わたしと公都に先行致します。あのクソ兄弟の足止めに残り七名は頑張って下さいぃぃぃ」


 と言う訳で衛士の一人の馬を拝借し、衛士……騎士三名と馬を走らせた。


「姫様!ガルデニアもごいっしょしたいのです!」


 まあ、当然そう言うだろうとは思っていたが、「わたしと離れるのは、たったの二日だから」と言ったところで、納得出来ないガルデニア。

 それでも、「命令です」と言うと、渋々引き下がるのもガルデニアだったりする。


 荷物は商業組合発行の証文の入っているリュックのみ。

 残った馬車と衛士隊分隊はその場で停まっても貰った。あまり広くない街道なので、足止めにはうってつけ!





 予定した町に着いて、取り敢えず、食事をするのだが衛士3人は遠慮するのだが。


「姫様と同じ食卓で食事など、畏れ多い」


 と、食事を取ろうとしない。


 畏れ多いのと、わたしが余裕を持って逃げ仰せることとどっちを選ぶ?と問うと渋々ながら食事をしてくれた。

 代え馬の交渉を衛士二人に頼み、もう一人の衛士と二人で簡単な食糧と鉄鍋を購入した。


 町の外で待つこと四半時、四頭の馬を連れた衛士が戻って来た。


「姫様のお書きになった証文は渡しました。こちらが馬主の提示額了承の受諾書です」


 後で全額払うことになるが、それは公都に着いてから。

 そのまま夜通しで馬を走らせ次の町を目指した。


 もう一度馬を変え、翌日夕方、公都のマロンダム城に帰り着いたのだった。


お昼にもう一本。

夕方にも一本上げます。

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