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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
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第一節-02.公女、行方知れずになりました。編入試験。

◇◇◇

 

「深淵より深い闇、日の光も星の輝きも消え、永久(とこしえ)の時を刻む夜の闇よ。我が思いに答えよ!

 ───焼き尽くせ!ドラゴスレ○ぃぃぃぃぃーーーブぅぅぅぅーーーーー!!!」





◇◇◇


 7月(フイユ)第二週の2日の午後。わたしは全力で完全に完璧に怒っていた。


 選択語学の『古アルド語』と『大陸語』の試験。『算学』グランフルーリア帝国の『地理』『歴史』『経済学』の試験を終え、昼食の後、実技試験を行っている。

 実技試験なのだが……。



「実技は格闘術、魔術、家政学の内の中から選択出来るのではなかったのですか?わたくし、魔術の実技を希望していたのですが…」

「いいや、家政学だ。調理実技試験であると試験内容にあった筈だ。きちんとそのことを把握出来ていなかった君が悪い」


 記されていた?そんな筈は無い。

 編入試験の案内書の何処にも、そのような事柄は一切合切、無かった!と、思う。



 人参、玉ねぎ、じゃがいも。よく知らない葉菜に根菜、などの野菜の他、お肉類。各種調味料が所狭しと並んでいる。

 今日は、フルール・ド・セントル高等学園の編入試験の日である。


 なんとか試験を乗りきり、良い成績で編入出来ることこそが目標なのだ。

 だがしかし、調理は得意ではない。

 寧ろ、不得意。と、言うよりも壊滅的に出来ない部類。

 と、言うより犯罪者になれる(クラス)


 以前、公国のマロンダム城、……わたくし達の暮らすお城だが、……の近衛達にサンドイッチ?を作って出した。

 「何時もご苦労様」と言う意味で………。

 結果、お城の警備体制が四日間、手薄になってしまった。

 まあ、そう言う訳で、お料理は不得意どころでは無い。


 しかし、わたしは頑張る。

 そう、頑張った。

 頑張ったつもりではあったのだ。わたし的には。。。

 地理、経済学はわたしの知る範疇であった。が、歴史に関しては、この国、グランフルーリア帝国の歴史なのだ。公国の歴史ではない。

 それでも頑張った。この数ヶ月、頑張って帝国史を覚えたのだ。

 歴史、とはその国に都合の良い事柄から出来ている物なのだ。

 公国で習った歴史と若干の違いがあって、結構混乱するのだが、頑張って覚えた。

 きっと良い結果になったであろう。


 だが家政学、特に調理は別だ。無理だ。わたくし製サンドイッチで入院した近衛も居た。と、伝え聞いている程にお料理は不得意なのです。


 調理を始めて15分。既にわたくしは限界だった。

 我慢の臨界を越えてしまった。

 玉ねぎが切れない。人参の皮が剥けない。塩、知っている。胡椒で、こっちがシナ……モン?香辛料とか、知っている?サフラ……ン?何それ。スープ?味付け?そんなのしたこともない。何からこのお鍋に入れたら良い?サンドイッチ、とは違う。

 例えサンドイッチであったとしても作ることなど出来ないのに!

 ああっ!まな板が割れている。いいや、まな板を真っ二つにしたのは、わたし。

 と、言うか、お鍋にまな板の破片が入っている。野菜といっしょに煮込んだのも、わたくしだ。木片の煮込み?的な何か………。

 どうしましょう?

 もう、どう仕様もなく混乱している。わたし。



「より深い闇、日の光も星の輝きも消え、永久(とこしえ)の時を刻む夜の闇よ。我が思いに答えよ!」

「なっ!何を!?」

「───焼き尽くせ!ドラゴス○イぃぃぃぃぃーーーブぅぅぅいぅーーーーー!!!」


───ドッ。。。グオオオォォォォォーーーーーーォォォんんんん………。





 白い空間。

 真っ白な世界がある。


 その中でわたしは一人、佇んでいた。

 先生?

 ああ、確か試験監督の先生、名前を、……ネルガルとか仰っておりましたわ。

 ネルガル先生は、何処でしょう?


 白い世界は、何時か無くなっていた。

 気が付くと、わたしの周りには広く開けた場所があった。教室の広さ程の場所だ。

 わたしの居た調理室は消えていた。


「あら?ここは地面? ですのね。わたくし、二階の調理実習室に居ましたのに……。先生?ネルガル先生、何処にいらっしゃいますの?」

「…………。」


 青空の下、ネルガル先生は校舎の四階であろう部分にぶら下がって居た。わたしの頭上に居たのだ。


 ネルガル先生は、どうしてお外におられるのでしょう?

 と言うより、何故お外?

 よく周りを見ると、わたしも外に居る。

 いや、左右に校舎がある。厳密に言えば、教室一室分の空間を挟む形で校舎の舎屋が建っていた。


 そうだ。わたし、お料理を作っていて、混乱して、……わたくしの持てる最大にして最強を奏でたのでしたわ。





◇◇◇


 ネルガル先生は独身の男性講師。

 教師では無く、講師である。


 教師には毎月のお給金があり、夏期休暇中であってもお給金が出るのだそうだ。

 だが、講師には決まったお給金は無い。働いた分のみ給与が出るのだ。

 したがって、ネルガル先生に夏期休暇中のお給金は無い。


「お腹空いて死んじゃうかも……」


 そう言っていたそうだ。

 彼は閃いた。らしい……。

 試験監督をして、少しは給金が出る。そして、実技の時にごはんを作って貰おう!確か、編入試験を受けるのは女生徒と聞いている。

 女の子であれば、ごはんなんて、お茶の子さいさい!では無いかもしれない。

 貴族のご令嬢だと、食事なんて作ったことなんて無いだろうな。しかも、公女様だと!


 でも、女の子だ。少しは頑張って調理するであろう!

 実技試験が選択であることなど、如何様にも誤魔化せる!


 などと素敵な考えが閃いたのだそうだ。



 だが、現実は遥か斜め上、……斜め後方、かもしれないが、遥か彼方にあって、予想された事象とは違っていた。

 わたしは、校舎を半壊させ、ネルガル先生は全治二ヶ月の大怪我をおってしまった。

 それだけでは無く、翌日に予定されていた入学考査試験、9月(リュンヌ)に入学する予定の新一年生の入試が延期になったのだと……。


 無論、わたしの所為である。

 調理実習室のあった学園校舎西棟の半壊は、試験会場である教室とは違う棟ではあったのだが、半壊した西棟の瓦礫や破片が学園の敷地、特に中庭や校庭に散乱しており、危険と判断した学園長以下、教師陣が入試延期としたのだった。

 半壊した西棟の被害に止まらず、他の舎屋にも被害が広まっていたそうだ。


 西棟の吹っ飛んだ破片は、他の棟の壁や窓をも粉砕したのだと聞いた。

 幸いなことは、死傷者が皆無であったと言うことくらい。

 まあ、夏期休暇中のことだったし、実技棟の西棟であって、教職員室は東棟だったこともあって、出勤していた教職員数名もそちらに居たのであったと言うこと。

 午前中の答案用紙も教職員室にあって、無事に採点された模様。





◇◇◇


「姫様、学園からのお手紙をガルデニアがお預かり致しました」

「ありがとう」


 午後のお茶を邸宅のサロンで嗜んでいたわたしに彼女、ガルデニアは手紙を持って来た。


 サロンは中庭に面したお部屋で、全面がガラス張りの部屋だ。

 高価なガラスは、その大きさその物が、その家のある意味(ステータス)で、その家の財力の象徴とも言える。

 そう言えば、半壊した西棟の一部がガラス化していた。と、聞いた。


 わたしの侍女ガルデニアは、会話の中で何故か自分の名を何時も言う。「どうして?」と訊くと、


「姫様に頂いた名前ですから……」


 と、言うのだけれど、それでも何故?と、思う。


 閑話休題です。

 兎に角、ガルデニアから受け取ったその手紙を開いた。

「ペーパーナイフを」と言ったのに、ガルデニアに投擲用のナイフをスカートの中から出してわたしに手渡した。

 時々こんなことをするガルデニアは、ちょっと変わった子だ。


 で、編入試験の結果は合格だった。

 更にこう記されていた。


『───筆記試験7科目の合計点数696点。新三年生174名中、一位。よって、新学期は三年一組への編入となります』

 と記されていた。あらぁー?一問か二問間違えたのですね。完璧に出来たと思っていたのに………。


 ところで一組、と言う(クラス)は、特別クラスと言われ、他のクラスが25名であるのに対し、20名のクラスである。

 そして、平民の多いクラスでもある。

 と言うのも、特待生には平民が多いのだ。


 特待生はその名の通り特別待遇な生徒のことで、学費、寮費が全て無料。学食も贅沢をしなければ、毎月支給される『食事券』で賄うことが出来る待遇なのだそうな。

 貴族の通う学園に平民?と思うのではあるが、そこがグランフルーリア帝国の大国たる所以であろう。と、思う。


 貴族以外からも優秀な人材を広く募り且つ、有能な者を帝国に帰属させているのだ。

 特待生として無料で教育を施し、恩を着せる。

 特待生は無料、とは言っても只、無料と言う訳では無い。官吏として、文官若しくは、武官として五年以上帝国で働く義務が生ずるのだ。


 特待生は各学年30名程。多くは2組以降のクラスに在席するのだが、一組には、約10名が在席する。

 大抵の特待生が平民であることから、一組の半数が貴族では無く平民と言うことになる。

 まあ、特待生の多くが平民、それと下位の世襲貴族、子爵家男爵家の裕福ではない貴族のご令息や令嬢もいる訳で、そう言った生徒も居るのである。

 我がシャテニエ公国も数年前から、特待生制度を取り入れたのだが、まだまだ帝国のように定着した制度とは、言い難い。



 兎に角、わたしは9月(リュンヌ)より、三年一組に在席することになった。


 なったのだが、校舎が半壊した影響で、入学式も始業式も学園の講堂では無く、帝城の大広間で行われるようだ。

 因みに新一年生の入試であるが、予定の7月(フイユ)第二週の3日は、校舎半壊の影響で、入学考査試験は5日に行われた。

 試験会場は、学園から離れた帝国士官学校であったそうだ。

 土地勘の無い地方や他国からの受験生に混乱があったことは言わずもなが。


「編入試験、筆記試験は合格だったのだけれど、実技試験は────満点?って、何故!?」


 ───ああー、書いてあったわ。


『───先ず、実技試験の選択が魔法であったにも拘わらず、家政学の調理であったことをお詫び申し上げます。監督役の講師ジュネ・ネルガルの不手際で───』


「不手際、ですって?明らかな故意よね。で、………」


『───講師ジュネ・ネルガルにより、100点満点中100点。と、評価された……』


 と、書いてあった。

 校舎半壊やネルガル先生の入院費などについての記載が全く無かった。


「不自然、ですわ?」

「そうでしょうか?ガルデニアの姫様を誑かしたのですから、当然でございます。そう、愚考致します」

「わたし、貴女だけの公女では無いのだけれど?まあ、弁償しろと言われたら、弁償致しますけれど」


 そのくらいの蓄え、………無いですわ。どうしましょう……。金貨何枚くらいでしょうか?


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