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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
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第五節-05.公女、上陸しました。弟。

◇◇◇


「ミーティスは、元気かしら?」


 ミーティス、ミオソチス・イリス・ド・シャテニエはわたしの可愛い弟。次代の大公なのだ。

 あの夢を見て、8歳のミーティスのお顔を思い出していた。

 あの夢?

 どんな夢だったのだろう。思い出させい。


「結構、(うな)されていたよ?ペリィ。寝汗スゲーしぃ。おねしょかと思……」

「時々思うの。ユキ、貴女確か、『神子姫』って呼ばれていなかったかしら?なのに、これが、実態。素の神子姫は淑女ですら無い!『残念姫』でした。って」

「ひ、ひっどぉーい。カーテシーさんが苛めますぅ」

「や、止め、止めて。それ思い出すと全力で凹むからぁー」



 勝ち誇る、なんちゃって姫である。


「今日も面白いわー。あの姫達ってさぁ、一方は完璧に淑女(レディ)を演じ切ろうと空回って、もう一方は、だらけ過ぎて品性の欠片も無くし……」

「よっく聞こえていて、陰口にすらなってないぞカナメ。ヤツフサここへ」

「はっ!」

「カナメ、不敬罪である。16分の刑を執行せよ!」

「はっ!喜んでっ!」

「………?」


 おかしい。おかしいよ、ヤツフサ様。年頃の女子の寝ているお部屋に、常駐?してらっしゃるの?

 しかも、今日は刑罰を与えるのを、『喜んで』って、……。


 ああ、夢。だったわね。……何か凄く気になる夢、……だった気がしている。今も……。ミーティス。。。


 ガルデニアのシュカにお手紙を届けて貰おう。ついでにわたしの近況報告も兼ねて。

 こう言う長距離の連絡手段って影渡りって言うあの移動方法は、欠点だらけよね。……意外とクロ様って、使え無いわ。

 何か良い移動術を考えましょう。お勉強の合間で、……。わたくし、い、今、合間で、『愛まで』って、駄洒落言っていないで、勉強よ!






「あのね。妾はね。貴女の心が聞こえるの。すまんね。使い勝手の悪いフェンリルさんで、さあー」


 勉強の合間が今。

 そして、漆黒のフェンリル様はご機嫌斜めです。

 原因は、言わずもなが。


「最近は、漆黒のクロ様を見付けても恐れないのです。ガルデニアのシュカ。同じ色っぽいからでしょうか?そうなのですか?シュカ、ああ、何て可愛らしいシュカなのでしょう。シュカ、シュカ」

「何をシュカシュカ言ってんだ?ペリィの侍女は?」

「時々ああなるわ。でも優秀な侍女よ?」

「あははー。疑問系になってるぞペリィちゃん」

「で、お手紙届いたの?シュカってば、随分早いご帰還だったわね?」

「それが、どうも遠過ぎて行かなかったようです。いいえ、行けなかった。が、ガルデニアの感想と見解です」



 この要塞ザラタンまでは、カラスのシュカはいっしょに船で来たのだ。が、カラスって渡り鳥では無いのよね。

 渡り鳥じゃ無いなら無理も無いわ。

 本当、勉強になりました。



「じゃあ、麻薬のことで忙しいヴェニュス様にお訊きしましょう………」


 どうも、ヴォルビス様一行は、麻薬絡みで、今切迫していらっしゃるようだ。

 要領は得ないのだが、ヴォルビス殿下の妹君の身の上に何らかの厄介事(トラブル)があったようだ。


「へえー。あの皇子の妹君かぁー。可愛いの?いや、可愛いだろうなあぁー。フヒヒヒ」

「キモいわ、ユキちゃん。貴女、本物のユキ姫ですの?偽物なのでしょう?この『似非姫』!」

「あのぉ、わたくしの物真似、……いえ、口調とか似てはおりましたが、非情に不快です!ヤツフサ様。カナメさん不敬です」

「はっ!承知。17分+1の刑を直ちにぃー、喜んでっ」

「あのね、ユキちゃん、ヤツフサ様。わたしの命令に喜んでって、……しかも処罰時間。ご自分で設定致しましたわ。宜しいのでしょうか?」

「喜んで居るならば、いいと思うの」


 それでいいの?皇国の皇族は…………

 ほら、命令や伝達の系統ってあるわよね?そう言うの無視したり、間抜きしたり、………伝令、伝達も情報の一つ。情報の不足や統率の取れていない軍隊程、崩れるのも早いわ。

 だけれども、こう言う緩さって、必要なのかしら?それともわたしが、自身を縛り付けていて、柔軟な仕上がりは気持ちがいいわね。

 んー、何故にお洗濯のお話しに………。ああっ!そうでしたわ。

 寝汗で寝具が湿っちゃって、………おねしょじゃ無いのよ!


 あら、もうこんな時間。家庭教師をして下さる方がいらっしゃる時間ね。

 さあー頑張りましょう!


 9月(リュンヌ)第三週の4日。昼までは、歴史の授業。午後は算学と理学。

 数日前にユキちゃんに借りた教科書達は、後で表紙を見て驚いたの。だって、『算学④』『理学④』『世界史④』だって、………最終学年の教科書だった。

 でも、驚いたのはそのことでは無くて、ユキちゃん、四年生の教科書で勉強していたことなのです。

 意外と生真面目で頑張り屋さんなのね!


 今、と言うかここのところわたしは、ユキちゃんといっしょに遊ばなくなっている。

 わたしは、家庭教師の先生に毎日のように勉強を見て貰っている。重点的に皇国の歴史、地理、政治、経済を。

 語学は、まあ、わたしが外国人と言うこともあって、問題はないようだ。だって外国語の必修科目が、『西方亜大陸語』だもん。


 皇国のアキツシマ語。これは数日間で読み書きは出来るようになった。

 表音文字(音素、音節)数、補助文字数共に若干の違いはあるが、基本の文字は亜大陸と同数であったのが幸いした。


 少し時間のある日は、バジルとナヴェに教えられるレベルになっていた。


 最大の問題はお金、……現在手元にあるのは亜大陸の共通硬貨の金貨60余枚。

 亜大陸では、通貨単位をいちいち言わない。

金貨五枚と銀貨一枚、………とかそう言う感覚でお金は使って来たのだ。

 アキツシマ皇国では?と言うと。通貨単位がキチンとある。


 基本通貨の単位は、『タマ』。補助通貨は『ツブ』。

 10ツブで1タマと、なる。


 物品の物価やその他で変わっては来るのだから単純比較は出来ないが、───例えば、肉串、帝都や公都では、銅貨2~3枚。皇国ザラタンでは15~40タマ。お昼ごはん帝国での日替わりランチ、銅貨5枚~大銅貨1枚。ザラタンの食堂で一番安い『定食』68タマで、売れ筋定食は、85タマ。

 馬1頭金貨3~6枚。皇国では、50~90万タマ。

 そうすると、わたしの今持っている金貨60枚は1000~1500万タマと、なるかな?意外と少なかったのだ。


 ランチをユキちゃんといっしょに食べた。

 が、どうも様子がおかしい。何時ものバカっぽい、……ぽいだけでバカじゃ無いのよ!

 どうして元気が無いの?と訊くと、どうやら今回のザラタンとの主従契約についての報告とわたしのことらしいのだ。

 らしい(・・・)と言うのもわたしのことに関してだけは口を濁す。だが結局、皇都『イズモ』へわたし共々行くことになったのである。





◇◇◇


 移動要塞ザラタン。本名『薄皮まんじゅう』。前にお団子を食べた甘味屋さんにも、その『薄皮まんじゅう』が置いてあった。

 なる程、ザラタンは、ひっくり返したお椀と言う表現よりも、『おまんじゅう』と言う甘味に似ていた。そして、甘くて美味しかった。……ザラタンじゃ無くて、薄皮まんじゅうが、ですよ!




 最近、クロ様が一人言を言っているのをよく見掛ける。


「そうかそうか、うんうん分かる分かるぞ。───そうそう、そう言うことよの!いやいや、止めよ止めよ」


 上記の通り、誰かとお話ししているみたいな?


「クロw……様。何方かとお話しされておられたのですか?」

「ん?なんだおぬしか。いんや、特に大した話しでは無い。……相談事じゃ、愚痴を訊いてやっておった」

「そうだったのですか。ところで、ヴォルビス殿下の所へは、お帰りになられないのですか?」

「今のところ、はな。実際、物理的に無理じゃしのう」



 相談の相手は、ザラタンね。同じ食べ物の名前を付けられた者どうしでお互いにシンパシーを感じているのかしらね。


 そう、クロ様やフェンリルの『影渡り』と言う移動魔法、……魔法じゃ無くて、最近わたしは移動の『異能力』だと確信している。……その欠点、『移動先の目視』の為、この海原を渡り切ることが出来ないのだ。

 なのでわたしは、影渡りに代わる移動魔法を思考中なのだ。

 間違っても、『試行中』では無い、思考中です。


「ぶっちゃけ、出来ないかなーと思っておるだけであろうが」

「まあ、その通りなんですが、……そう言う心読まないで下さい!」


 一応、試してはいないのだけれど、───例えば、わたしは『今、マロンダム城に居る』可能性があったとする。そうなると、『では、どの時間からザラタンに居なっかったか』と言うことになる。

 つまり前提として、『ザラタンに居なかったわたし』と言う時間軸に居たことになってしまう。

 弟に会いたい姉は、実際には存在せず。何時も弟といっしょの姉と言う存在からの分岐となるのだ。

 したがって、距離的要因で弟に会う可能性の時間への分岐点は、『弟に会いたいのに会えない姉』の存在のある今時点のわたしなのだ。

 現在から未来方向への可能性に行くことは出来るが、過去が改竄される未来へは、基本行くことが出来ない、と言うこと。

 だが、何にでも例外はある。例えば、怪我など。転倒しなかった可能性に戻る。すると、転ばなかった過去を改竄したことになる。

 もし、過去を変える必要があっても、その過去はほんの一瞬前のことだけ。


 それを『昨日転んで骨折していたことに気が付いた朝』は、変えることは出来ない。

 転んだ後、湯浴みをし、夕食をし、トイレへ行き、寝間着に着替え、ベッドに入った─────

 これだけの事象があって、『転んだ』事実の無い時間軸など遥か彼方の全く異なる世界と同義であると言える。

 それこそ、『異世界転移』であると言える。

 そこに存在するのは自分では無く、よく似た他者なのだから。


 例えるなら、『親殺しのパラドックス』が分かりやすい。


 過去へ行き母親なり父親を殺す。では、自分の存在は?親が死んだのだから、居ない自分は親を殺せない。居ない自分が居るのだから親は死なない。

 答えは至極簡単だ。

 親を殺す自分の居る世界と、親が死んで自分の居ない世界。

 可能性と分岐する世界は同義であり、平行して存在して居るのだ世界とは………。


 怪我をしなかった世界がある。ではその世界は幾つあるのか?正解はは「無限にある」だ。

 怪我をした世界。これも正解は、「無限にある」。

 だが、どちらかの世界がほんの少し少なかったら、多かったら、………可能性とはそう言うことだ。

 怪我をしない現実がより多い世界に行こうとするならその可能性の高い選択を行えばいいだけであるのだ。


 わたしがこの仕組み(・・・)を知ったのは、ヴォルビス殿下達と狩猟者(ハンター)パーティー『豊穣の魚』として聖都イン=アンナへ向かう駅馬車警護の仕事の時だった。

 殿下の言う『イシュト神信仰とイン=アンナ教会』のお話しを訊いたその前の日、だったと思う。


 その時に魔法の基礎原理も学んだ。

 世界には、火、風、水、土の魔法があるのだが、それは、その物では無く、端に便宜上そう言っているだけだ。と、言うのだ。

 それらは、『状態の変化』だとも言った。


 殿下は言う、「例えるなら、『水』が解りいい」と、………水は、温まると湯気になる。厳密に言うなら湯気は水なのだが、……まあ水を温めると水蒸気、つまり、気化する。逆に冷やすと氷になる。氷の状態は固体つまり、『土』。水の状態、これは液体、つまり、『水』。水蒸気は気体、これは、『風』。

 では、水って何で出来ている?


「お水はお水です。お水を『パン』みたいに言わないで下さいませ。パンであれば、小麦粉と牛乳と玉子と───」


 そう、そう言う感じに『水』だって出来ている。一つは、『水の(もと)』。もう一つは、鉄の錆やそう言う物の素になる『酸の素』。この二つで水は出来ている。


「へー。知りませんでした。じゃあ残りの『火』とはどのような状態なのですか?」

「この火だけは違うんだ。簡単に言えば、『力』かな?」

「力、………ですの?」


 水が土の状態の時と、水の時と、気体、風の状態の時、水は、……水の粒達はどう言う状態だった?


「ええーと、固まっていたり、流れていたり、フワフワ漂っていた?────ああ、そうか、状態ってそう言うことなのですね!氷の時、水達は全く動かない。でも水から湯気って、ドンドン自由に動き回っています。────と言うことは、水の素と酸の素の自由を奪えば湯気になって水になって氷に、……つまりドンドン熱が無くなって行くってことは、『火』と熱は同じ物。『力』と言うのはそれを行使し得る物。そう言うことですね!それと、水の素を燃やすと、これもまた『水』になるのですね。だって鉄を燃やすと黒錆が出来ますもの。

 公国は、『ダムの国』って言われるくらい人造湖が多いので、石工のおじ様とか大工の方々とわたし、仲良しなの。でね、ダムの建材には石もたくさん使うけれど、鉄骨がいっぱい必要なの!その鉄骨なのだけれど、使う前に必ずやるのが、『焼き』。何で焼くのか訊いたらね。こうすると錆付かないんだって。錆びると脆くなって危険なんだって言う。なら最初から錆付けておいて、それ以上錆無いようにする。だから彼らはそれを『黒錆』と呼んでいたわ」

「ま、全くその通りだ。り、理解が早過ぎ、……早くて良い生徒だなマリーは(なあクロぉー)」

『凄いのう。妾の(あるじ)は、理解するのに半年掛かったと記憶しておるが……』

「────と言うことは、風達の運動を完全に止めると、凍る。広範囲の冷却魔法の行使が可能になる。逆に、風が凄くいっぱい運動すると、広範囲を焼き尽くす。そう言うことですね!」

「おっ、おお」



 あれから、まだ一ヶ月と半分を越えたくらいの時間しか経っていないのよね。

 なんだか懐かしいわ。

 もっともっと、ヴォル様とお話しがしたい。もっとヴォル様に触れていたい。

 だけど、ザラタンにはヴォル様が居ない。─────寂しい。。。




 ザラタンは海峡を北上して行く。


 まだまだ夏。っと思っていたのだが、もう秋口、時機に冬になるだろう。

 北へ向かっているからなのか、ここ数日、朝晩冷え込むようだ。

 ザラタンの北上は終わり終点は皇都イズモ。

 お蕎麦と言うパスタの親戚が美味しい。とカナメさんは言うが、彼女はウソを付いている可能性があるので、信用していない。

 そんな時、念話がヴェニュス様から届いた。



『我から、マリーに知らせがある。知ってはおろうが、我らは、麻薬『天使の卵』を追っておる。まあ、話しの前提だが、でだ、それがシャテニエ公国にも流れておって、其方の弟君のミオソチス公子の鎮痛剤として御された。と言う情報を掴んだ。─────我が何としても、………とは思うが、現状身動きが取れん。我の妹、クロワッサンには同様に伝えた。後は頑張れ。以上だ』



 ミーティスが?ミーティス?わたしのミオソチスが麻薬を麻薬に。。。


『落ち着け。ペルスネージュよ。妾とてぬしの悲しむ姿など見とお無い。今妾はザラタンとの話し合いを終えたところじゃ、勿論、ユキとも話を通しておる─────』


 海峡を完全に渡る程の時間は無いが、亜大陸近くの海域まではザラタンが送って下さることになった。

 そこからは、アムリー・レイのマドナグ号で残りの海峡を渡って、亜大陸到着後はクロ様の全力疾走で公国へ向かう。

 そう言うことになった。

 5~6日の行程だ。



「ミーティス、どうか無事でいてっ!」


夕方、大閑話と称する短いお話しを上げます。まあ、前話の焼き直しっぽい感じです。

明日から、新章──────エビしんじょ(う)………

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