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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
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第五節-04.公女、上陸しました。大海亀。

◇◇◇


 9月(リュンヌ)第二週の6日。本日は週に一度の安息日。


 結局、ユキのお部屋にお泊まりしたわたし。

 あ、バジルは、姉アムリーに回収され、泣く泣く客間に連れて行かれた。

 よっぽどユキが気に入ったのかしら?


 一つ疑問に思っていたこと、……お城の下から涌き出ている真水のこと。


「ああ、あれね。あれはねぇー。あれよあれ?ええーっとぉー、んーっとね。何だっけ?サヨぉー」

「はっ!姫様、あれはザラタンが定期的、……不定期に吸い上げた海水を真水にする濾過器、……魔具です。……に通した水です。

 濾過の過程で精製出来た塩も我々は使っておりますし、全ての塩を使い切ることは無いので、それらを皇国に税、と言う形で、納めております。それでも余るので、一部は要塞の収入源の一つ、となっており、その収入で────」

「サヨ、長過ぎ君よぉ?」

「はっ!失礼致しました。他にお訊きになられたい事柄があれば、私の出来得る範疇でお答え致し上げます」

「それじゃあ、一つ。わたしが留学生としてアキツシマ皇国の学校に入るとすると、入学金、年間の授業料その他に掛かる金額って幾らになるのかしら?」

「只今資料が──────────。届きました。……ご苦労、カナメ。一応、資料をお渡し致しますが、……失礼ながら、アキツシマの言語は、読み書きがお出来になりましょうか?」


 この瞬間、わたしは、思い知る。


 そうだった。わたし、何とか言葉は喋られるようにはなったけれど、読み書き、アキツシマの歴史、経済政治それらを知らないじゃないですかあーっ!

 帝国のセントル高等学園の編入試験の為に頑張ったあの半年。

 それ以上にこの皇国を知らないわたしは、………と、取り敢えず、勉強よ?ね!


「読めません」

「では、初期費用ですが─────」


 お金の単位すら、知らないわたしでした。




 で、ユキが漁船マドナグが見てみたい。と言うお願いに答える形でザラタンの港?に来た訳だが、港は無い!

 では、あの警備挺や白い悪魔は何処(いずこ)

 お舟は皆、ザラタンの甲羅にぶら下がっておりました。

 一応、ザラタンも気を使って?いるのでしょう。喫水線をザラタン自ら設定しているようです。

 そして船達は、そのザラタン設定喫水線ギリギリの所に船首を下向きにしておりました。


「おお、あれが漁船マドナグ号かぁー!白いなっ!」

「ですね」



 船を覗くと、アムリー姉弟が作業をしていました。

 何故かそこにはクロワッs、……クロ様もいらしておいでで、


「ああ、姫様と姫様。ようこそ!我が白い悪魔の元へ」

「修理作業を見ておったのだが、あまりにもあんまりな修理しか出来ぬ様子での。思わず手を出してしもおた」

「いやあ、クロ様のおかげさんで、ほぼ完了です。ま さ に 神獣っす」

「神頼み。ってかぁー!」

「下らぬことを抜かすなナヴェ!手を動かせ!」


 流石クロ様。下手な人(ひとしゅ)より余程役立つわね。


「当たり前じゃわ」


 あ?え!考えただけなのに何故伝わったの?


「それがのう。妾の主との番の輝き、……そのなんじゃあ、ぬしとの親和性が、どうも高まって来ているようでの。その内妾の心もぬしに伝わりそうで、怖いのじゃ」

「そう、です。か」


 何故だろうか。わたしはクロ様の初恋をもぎ取ったのではないのだろうか?そう感じて、罪悪感、とでも言うのだろうか、そんな気持ちになった。


(ぬしの所為では無い)


 クロ様の包み込むかのような優しさを感じた。


 が、瞬間、悪寒がした。

 そう、クロ様は、虎視眈々と獲物を狩る狼のように狡猾に牙を剥いているのだ!

 まあ、考えても仕様の無いことだ。


「で、ペリィちゃんの魔改造って何処?」

「ああ、このタービン周りの辺りだよ。結構複雑だったんで修理、苦労したさ!」

「嘘を付くで無いわ!妾がそこのギアを組み直したではないかっ」

「何故、聖獣様が機械の修理とか、………ビックリだよぉーあたし。でも合う歯車ってこの要塞にあったの?」

「意外じゃろ?こう言う機械部品の規格と言うものは統一されてお────」

「ギャアアアアァァーーー!」



 お隣の巡視挺の中から、野太い男性の悲鳴が響き渡った。


「誰だ!俺の大切なカナメちゃん号の体内から、部品を盗みやがったのはあぁぁぁーーーっっっ!!!」

「誰、カナメって?」

「私です。ウエムラ・カナメ一等海曹17歳と48ヶ月の少女ですが?」


 帝国、公国でも女性の結婚適齢期は、成人の16歳~20歳くらいである。

 おそらくここアキツシマ皇国でも同じなのだろう。そう思わせる自己紹介をありがとう。

 勉強になりました。


「ああ、今朝はありがとうございました」

「お役に立てて何よりでっ!本日は私、カナメがお客人の警護、と。貴重な安息日を潰して、デートの予定を変更して、参りました」

「ご、ごめんなさい。。。」

「あのね、ペリィちゃんあんまり真に受けないで。どうせカナメってば、またフラレたんだしょ?」

「うっせーぞ、ユッキー!」


 ああ、どうやら当たりの様子ね。

 でも、皇族に対して、不敬ではないの?


「カナメ。不敬罪、現行犯だ。ヤツフサ、15分の刑を執行せよ!」

「はっ!」


 何時も神出鬼没ね。ヤツフサ様?敬称は、様かしらね。


 かなりな閑話休題になって仕舞ったわね。

 この要塞もそうだけれど、歯車があるってことは、結構、アキツシマ皇国って文明的に進んでいるのかしら?


「あのう、ギアを巡視挺が使っていると言うのは、アキツシマ皇国の船も蒸気機関なのですか?」

「そおですよ。全ての船に蒸気機関があるわ。それと一部、試験的に電動機関(モーター駆動)を備えているの」

「何でしょう?モーター駆動とは」

「一見は百聞に如かず。よ?」


 直し終えたお隣のの船、巡視挺の駆動部を見学させて頂いた。


「これが、モーター。で、こっちが蓄電池(バッテリー)この銅線からモーターに電気が送られて、……まあお前さんの───」

「キヨミズ!ペリィちゃ、……ペルスネージュ様は一国の姫である。言葉遣いに気を付けよ!」

「はっ!すんませんです。お姫さん、……様。で、モーターの回転で、船底のスクリューを回しておりヤス。電気は蒸気機関の駆動時に余剰熱とタービンの回転時の運動エネルギーを貯めて蓄電池へと送る。そう言う仕組みでさあ。結構魔力と似た感じでしょ?……えーっとお、ペルシャ?ネーコ?姫様」

「うん、ありがとう。でもわたし、そんな毛の長そうな猫じゃないのよ?」





◇◇◇


 翌朝の9月の第三週の1日。


 またまたユキのお部屋にお泊まりしたわたしは、夜にアキツシマ皇国の歴史、経済政治に地理をお勉強させて貰った。

 かなり深い歴史書、とでも言う程の教科書であった。

 他に理学と算学の教科書も見せては貰ったのだが、公国も帝国もおバカさんな教科書だと思って仕舞う程の内容であった。


 さて、何故こんなに早い時間に起きたかと言うと、クロ様がお見えになられたから。

 クロ様の言うには、


「今日はザラタンご機嫌でのっ!朝も早くから妾に話し掛けてきよって、まあ、一昨日、全力疾走で、昨日一日休めた様子だったようじゃ」


 あれって、全力だったの?

 まあ、それなりに早い、とは思いましたけれどもザラタン意外とのんびり屋さんなのかしらね。


「でーじゃ。今からザラタンと契約のし直しじゃ!」


 そう言ったクロ様は、人形(ひとがた)からフェンリルの姿に変わった。


『ではな。ぬしとユキとやら、妾の背に乗りゃれいっ』


 ユキは、何故か乗らない。


「ほらユキ、クロ様に乗って!」

「いいの?」

「だって、クロ様が─────」


(クロ様、どうもユキは、クロ様のお声が届いていらっしゃらないのでは?)

『おおー、失念しておった。妾としたことがーーー』


 クロ様は、また人形に戻られるとご自身の髪の毛一房を切り、編み込んでユキの左手首に巻いた。


 何時も思うのだが、本当にクロ様はいろいろ器用だ。


 聖獣とは言え、普段は獣のお姿なのに、手先が器用。


「本当にクロ様、いろいろなことがお出来になって、凄いなあーって思いますわ」

「妾が、この漆黒の毛皮の所為で、疎まれて育ったことは言うてはおらんだの?まあ、妾はそう言うことがあっての。幾度か、皆のような真っ白なフェンリルになっておる世界線を探してみたのじゃ。が、そんな可能性は皆無に近かった。だからかのう。人形であれば、只の黒髪の女じゃ。人の世に紛れ人と番になる。そう言う世界もありじゃと思うての。勉強もした裁縫もいろいろと、……そんな時じゃ。ヴォルビスと言う少年に出合ったのは、主は何時でも優しい。分かるじゃろ?妾が惚れるのも、……まあそう言う感じよの。では、行くぞ」


 あーあ。クロ様のお気持ちが、手に取るように分かるわ!

 ええーっと、クロ様。行くぞ。とは一体何処へ?






「ブクブクブク……」


 って、ユキ!沈んでる沈んでる。


「ブクブクブクブク……」


 ちょーっ!わたしも沈んでる。溺れちゃう溺れちゃうってか、既に溺れているのですが?

 クロっ!おい!クロワッサンよおー。わたしを助けろ下さい!


「うっさいのう。ほおれ!」

「あら!?息が楽に……」

「何処かな?ここ……」


 不思議なことに、確かに身体が海中にあるのに呼吸が出来ている。

 だが、何か変だ。そう水中に居ても服も髪も何処も濡れた気配が無いのだ。


『それはそうであろう。今の妾らは、アストラルのみでここにおる。その方が、ザラタンの精神に働き掛けやすい』

(アストラル?)

(何だっけ?)

『アストラル体じゃ。星振体とも、魂魄と言う物とも似ておる。まあ、端的に言えば、心、情緒体であろうか?まあザラタンともお話し合いぞ?初めよう』





◇◇◇


 そこは、一件の農家だった。


 わたしは、この貧しい農家の一人娘。

 そして、この寒村も貧しかった。


「お父さん。お母さんは、何処?」


 わたしが父と呼んだ男性は、……父?私の父は、皇の皇配、名は、『アズサ』。だが、この男は私の父君では無い。

 私が生まれてから数度お会いしたが、こう言う暖かい人ではなかった。と記憶している。

 私の、………『私』、……だと!?私の一人称は、『私』ではなかった、筈。


 では、私の名は?

『ナンナ』。そうナンナだ。コウ族の分派『イ族』のナンナだったっけ?

 さっき鏡を覗いた。が、私の顔では無かった。

 老人のような真っ白な髪の毛。瞳は兎かと思う程に赤い。そう赤かったのだ。


 誰か知り合いに似ている気がする。

 でも、私は、ナンナだ!


 段々と思い出して来た。

 去年、私は穀物の不作を凄く心配して、それで、……そう、日照りの予感、……とは違う。

 私は分かるのだ。前の年の嵐の回数や空気の匂いで、……溜池を村のあちこちに造って、干魃を凌いだ。


 だが、今回の流行り病は今までとは、違っている。

 治す(すべ)が、無いのだ。

 そうだ母はそれで亡くなったのだわ。皆に知らせないと!手遅れになる前に。。。




 おそらくだが、幾つもの村や集落が滅んで仕舞っただろう。隣の村の開墾で、切り開いた森の奥に住んで居た動物か魔物の持つ病の源が蔓延したのだ。

 このままこの大陸に留まれば、やがてイ族も滅んでいたであろう。


 私は村の民に呼び掛け、それに応じた者々と共に海を渡った。

 渡る手助けをして下さった大亀の子ども、『***●*●*◆』。

 いつまでもいっしょに居たかったが、貴方には貴方の役割がある。

 だから、……待っていてこの海で『***●*●*◆』よ。


 何時か私達は大きな集団になっていた。

 海峡を渡り、砂漠を越え、そして私の目指すその場所へ、……気が付くと私は病魔に犯されていた。


「私の導きはこれが最後になります。子ども達、よく訊きなさい。もう予兆はありました。これから100年、大きな冬が訪れます。海は凍り付くでしょう。世界の何処かに月が落ちたら、きっとあなた方にもわかる筈です。できるだけ南へお行きなさい。でもリュシエンヌ、貴女は北へ、私達イ族の再興の為に。彼『***●*●*◆』を探して海を渡るのです。それにしても貴女はあたし(・・・)そっくりねぇー?そっかー!あたしってば、ユキちゃん姫だったっけ?

 ────起きたぜ!」



 そうだった。あたしは、ペリィそっくりに生まれて、あたしの子どもの一人、リュシエンヌはあたしそっくりで、そうして、そう昔のあたしが、リュシーをアキツシマへと行けと言ったんじゃない!


 さあ、時間と文字数、………は関係ねーよぉ?

 今こそ再契約よ!


 さあ、楽しくお話ししましょう。

 我が友、『薄皮まんじゅう』!!!



『ウーワアアー!!!僕の名前、思い出しやがったかあああぁぁぁーーーー!ちっくしょうぅぅぅぅーーーーー!

 別の名前を所望するぅー。ああっ、けっ、契約の輝きがっ!』


────ペカーーーーーーー。。。



 その日、移動要塞ザラタンに住む多くの文官、武官も住民達は目をやられた。


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