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逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
23/29

第五節-02.公女、上陸しました。神子姫。

◇◇◇


 移動?要塞『ザラタン』と言う島に曳航され、上陸したわたし達五人は、尋問と言うか、取り調べを受けている。


 今やわたくしと言えば『黄土色金髪』と揶揄される謂わば、輝く黄土色がわたし、ペルスネージュのトレードマークと言えよう。

 だが、射すような日射しと嵐の所為で、すっかり白子ペルスネージュに戻って居た。


 さて、島の警備隊の尋問を前に、「包み隠さずに本当のことを言おう」と、五人で取り決めていたこともあってか、各々が個別に尋問を受けたわたし達は、早々に解放。……されていない船長アムリー・レイさん。


 後で分かったことだが、『漁船』と言ったのに、魚の一匹も船に無かったので、反って疑われたようだ。

 違法営業、……白タク行為も正直に語ったようではあったが、黒に近い犯罪行為である。それについては処分保留と言う形での釈放となった。

 因みに、『西方亜大陸語』の出来る尋問官も数名いらっしゃる様子で、尋問に関して言葉での齟齬の心配は無かった。


 一応、亜大陸と大陸の間は約10日の航海が必要な程、距離があるのだが、『海峡』と呼ばれているらしい。


『要塞の案内を(つかまつ)ったヨシナガ三等尉官です。以後、お見知りおきを。殿下』

『あ、ヨシナガ様、公女、下です。えーっと、違う、王女、皇女では無いので、違う『殿下』敬称。です』

『ああー、そうでしたか、では何とお呼びを……』

『マリー。お願い只、マリーで』





 藁葺きの屋根。畑?いいえ、水田と言う稲の畑?なのだそうだ。


 わたし達の主食がパンやパスタであるように、『アキツシマ皇国』では、『お米』と言う穀物が主食なのだ。と言うヨシナガ様、……因みに、海上でわたし達の対応をされたヨシナガと言う一等佐官は、彼女の夫なのだと言うことだった。


『サヨリ様、わたしのおかしいアキツシマ語。が、あるようなら、下さいませ教えて!』


 アキツシマ皇国の方々の

 お名前は先に家名があって、最後にご自分の名が入るそうで、わたし達と逆で、面白い。


 個人より一族が優先されるお国柄なのだろう。

 とは、思ったが、我が公国もグランフルーリア帝国も個人よりお家のような、……そんな気がする。

 元々は、個人が優先されていたのだろうか?

 いやいや、豪族や盗賊の頭が帝国、公国貴族の先祖なのだから、やはりお家が優先されていただろう。



 閑話休題。

 要塞島の一番高い場所、……島の中心にある建物は、お城、……要塞の指令部なのだそうで、現在この要塞『ザラタン』の総司令は、若干14歳の公太女、『ユキ』姫様、んんー、ユキ殿下?だと言う。


 ヨシナガ・サヨリ三尉様が仰るに、ユキ公太女は、あまり『殿下』と言う敬称がお好きでは無い、と言うことだった。


 またお話しが、逸れて仕舞いました。


 で、一番高い指令部のお城の建屋下から、水田への水が流れ出ているのだそうで、それをこれから見学出来るのだと言う。


 何か機械的な構造物に思える流水口。

 アムリーは、そんな予感をわたしに仰っている。

 ナヴェとバジル兄弟も興味津々な様子だ。


「姫様、ガルデニアはお腹が空きました」


 仕様の無いわたしの傍付き侍女の為、わたしがサヨリ様に尋ねましょう。


『えー、わたしのガルデニア。侍女、が空腹を訴えておりまして、……貨幣。生憎換金出来て無いのですが。レートはどのように……』

『お食事、ですか、実は我が(あるじ)、ユキ姫様が公女様と、……ああーっ、マリー様との会食をご所望しておりまして────ヤツフサいるか?』

『はっ!サヨリ様。只今伺って参ります』


 ヤツフサと呼ばれた男性が、今の今まで、何処に潜んでいたのだろう。わたしには分からなかったのだが、ガルデニアは気が付いていた?


『ガルデニア殿は、流石ですね。我らの(くさ)に気が付いておられたようですね──────。只今、彼より合図がありました。このまま、指令部、……失礼、会食の場へご案内申し上げます』


 ああー、しまった!

 食事のマナーや、………例えば、従者が食事の席での同席が可能かをお訊きしなければ!


 帝国、公国では同席出来ないことになっているのだし、……でもお腹が空いたのは、ガルデニアだし、わたしも食べたいし、……


 て、ああ、大丈夫なのですか。そうですか。。。




 今、14歳だと言う公太女ユキ姫様。

 ひょっとしたら、わたしと同い年だったら、いいな。

 そうしたら、大陸、……アキツシマ皇国への留学を打診してみてもいいかも!


 何て、都合のいい話し、無いわよね。





◇◇◇


 指令部、……お城は白壁に屋根が黒い煉瓦造りで、一番高い斜塔にユキ姫様の私室があるのだそうで、……ああ、屋根の煉瓦は、『かわら』と言う煉瓦の造り方に似て非なる物なのだと言う。


 その辺りもお勉強させて頂けたら、いいのになあー。





 会食の場所は、ユキ姫様の私室だった!


 ちょっと、……いいや、盛大に驚いたのはわたしだけでは無かった。

 と、言うか、アムリー・レイは魂が口から出て来ている状態である。

 まあ、流石男の子、……と言うか、未々子どもなナヴェ、バジル兄弟は動じてなど居なかった。

 そのまま大人になりませんように、慎みとか身分差とか覚えてね。。。


 我が友にして侍女のガルデニアは、と言うと、


「姫様、どのようなお食事が頂けるのでしょう。ガルデニアはワクワクしております!」


 マイペースで何より。。。




 いいや、本当にマイペースであったのは、わたしだった。

 マジ、凹んだわよ。




『ユキ姫様の御前である。一同の者、控えおろう…………』


 淑女たるわたくし、ここは完璧なカーテシーで!

 と、思ったのですが、わたしが主賓である。と言う自負し過ぎて居たのも事実。

 だから、広いお部屋、……謁見の間のような感じのお部屋で、式典官の方の、「控えおろう」のお声で、わたしは、亜大陸式の淑女の礼、カーテシーを致しました。


 周りのどよめきで、自分の失態を知ったのです。


 主賓たるわたくしは、こともあろうにサヨリ様の半歩前に立っておりました。

 総司令官であり、公太女のユキ姫様が()と思わしき所に座しており、他の重鎮の方々もお部屋の左右に並んで座られている。と言う構図。少々変わっているなあ、とは思ったのです。


 で、カーテシーです。


 右の足を斜め後方内側へ引いて、左足の膝を曲げ身体を落とし背筋を真っ直ぐに伸ばしました。

 相手は皇族の姫君です。なので、深めにお辞儀を致しました。


 目の前の方々が皆、神妙な、と言うか妙な物を見たみたいな顔付きになっておりました。

 気になったわたしは、後ろの皆を振り返ると、そこには、正座?と言う座り方で()に頭を付けてお辞儀をしているサヨリ様とガルデニア、アムリー姉弟が見えたのです。


 もし、わたしが主賓であると自負せずにヨシナガ・サヨリ三尉の後ろに控えて居たのなら、わたしだけ(・・)が立って挨拶をする、と言う失態は防ぐことが出来たであろうに!

 なのに………。。。

 もう反省以外ありません。




 只の()と思っていたそれは、藺草と呼ばれる湿地に生える多年草で出来た『タタミ』と言う床材なのだと言うことだった。


 このお城に入る時にエントランスホールで、


『お履き物はお脱ぎ下さい』


 と、サヨリ様に言われ、ブーツを脱いでお城の床に上がったわたし達。

 内履きなる革製品と麻の布の間のような履き物を言われるまま、履いて、ユキ姫様と謁見した訳なのだが、なる程、この履き物はタタミの床を滑ることもつっかえることも無くスムーズに歩ける。

 それにタタミの微かな弾力も感じて足裏に非情に心地いい。



 初っぱなやらかしたわたしを含め五人は、サヨリ様の案内でユキ姫様の私室へ誘導されました。


 サヨリ様はと言うと、わたし達の案内は終えたとばかりに下へ下がりました。

 文字通り下へ、です。

 ユキ姫様のお部屋は、謁見の間らしき大部屋の真上、大部屋の奥の階段を上がった先にあるのです。

 わたしが心の中で斜塔と呼んでいたこのお城で一番高い塔は『天守閣』と言うのだそうで、お城の重要な部分なのだと言う。


 各階層毎に機能があり、三階部分は『指令部』。四階部分は、先程まで居た『謁見室』として。五階がユキ姫様のお部屋で、最上階が、物見櫓の機能とユキ姫様のお部屋の一部になっていた。



『ユキ姫様、謁見の際のわたくしのご無礼、大変失礼致しました。謹んで謝罪を申し上げます』


 ん?あ、れ?なんだが、何気にアキツシマ語がネイティブになっている気がす、る。

 やらかして、何かが繋がったのかしら?


「サヨリの報告通り、中々語学が堪能だと訊いてはいたが、……ふむ、其方は優秀であるのだな」


 ユキ姫様は、とても流暢な西方亜大陸語で話された。

 このユキ姫と言う方、中々どうして、侮れませんわ!


『謝罪、受け入れて頂けますでしょうか?』

『良い。余がそなたの立場であれば、おそらく同じように間違えたであろう。それにそなたに取って、初めての異文化なのであろう?』

『はい。国外に出ることは今回が初めて、……いいえ、公国

 、シャテニエ公国以外では、グランフルーリア帝国へは行く機会がありましたが、わたしの故国はその帝国の属国ですので、広義の意味で、初めての出国になるのかしら?』

『そうか。───話しは違うが、そなたの連れ(・・)が、退屈しておる。ここは、共通の言語として亜大陸語での会話にせぬか?』




 こうして、会食は始まった。

 最初、このタタミ敷きの床には、ダイニングテーブルも椅子も無いのに、どうやって食事を行うのか不安になっていた。

 後で、ガルデニアが言ったのだが、シャテニエ山脈の向こう側には、地面に敷物を敷き、そこに寝そべって地面に置いた皿から手掴みで食事をする部族が居るのだと言う。だから、カトラリーも無く、寝そべって手掴みごはんだ!そう思ったのだそうだ。


 まあ、食事が運ばれて来て、解決はしたのだけれど…………。。。


 膳と言う、小さなテーブルにお皿や器が並び、名前は知らないが、根菜やお魚の切り身が、お花のように飾られた見た目重視の食事、……なのだと思ったのだが…………


「公女ペルスネージュよ、皆よそれらは飾り、では無い。まあ、食してみよ!」

「「「……………………。。。」」」


 ガルデニアとアムリー弟達は、無言。


「───────うま、い……旨い!うおおぉぉぉ、なんじゃこりゃあー、クッソウメーェッ!!!」


 美味しい。わたしも無言になってしまった。

 だが、だからと言って『クソ』は無いわ、アムリー・レイ。

 何だろう?帝国などでは、高級料理は高級になる程に、香辛料やハーブを多様多彩に使う物なのだが、この食材の味付けは、簡素。

 悪く言うならば、全く洗練されていない。複雑な味では無い。無いのだが、素朴で、その食材その物の味を引きでしているのだ。

 だから美味しい。


 こっちは、(なま)のお魚?


「その赤や白い物は、刺身と言う。この魚醤、……魚を発酵させて作る調味料だ。それを少し付けて食する───旨いぞ?」


 わたしが、刺身と言う物に躊躇していると、ユキ姫はそう言い、ご自身が刺身を口に入れた。

 うん!美味しい。

 お肉の油とは違う油が甘く感じた。


「……うぉ!少年!それはそのまま口にするで無いっ!」

「────ぐおわあぁぁーうわあぁー!!!痛い、…辛い辛い辛いぃぃぃーーーっ!痛辛ぁぁぁ!た、たずげで!兄ちゃんんん」


 ああ、ルスティカーナだわ。

 あまりの辛さにバジルは、隣のアムリーの膳にあるコップを掴むと一気に飲み干した。


「ああっ!」


 ユキ姫が大声を出したのは、バジルの飲み干したそれが、お酒であったから………。

 わたし達の五人の中の年長者、アムリーは今年22歳の行き遅れ、……唯一の成人なので、お酒を出されていたのだ。


 その公国の白ワインよりも無色透明なお酒は、あの水田の稲、……お米で作った『米酒』と言う物らしい。

 バジル10歳は、その場に倒れ、何処から途もなく現れた男性に運ばれて、ユキ姫の奥のお部屋で休む羽目になった。

 バジル退場の後、彼女といろいろなお話しをした。




「ユキ姫様は、14歳と訊いとりますけど、ひょっとして公女様と同い年になるんすか?」

「ちょっと、アムリー。発言は上の者の許しがあって、それから───」

「良い。この場で同席する者の立場は同等と捉えて欲しい。何故ならば、余が望んだことなのだ。

 で、質問の答え、だが───余は、2月の生まれだ。来年の2月で、15になる。ペルスネージュは?」

「わたし、……その前にわたくしの名、長いので───」

「余は、そなたに訊きたい。家族や親しき者は、そなたを何と呼ぶのか?」

「家族には『ペリィ』と、狩猟者(ハンター)の友人達には、『マリー』と、……最近は特にマリーと呼ばれておりました」


 思い出したヴォル様のお顔に、ほんの少し紅潮したわたし。

 悲しいことに、白子のわたしのお顔は、赤くなると本当に赤さが目立って仕舞うのだ。だから───


「好い人を想ったのだな?が、何故にマリーなのか?ペルスネージュの何処にもそのような音は皆無のようだが」

「わたし、名を『ペルスネージュ・マルグリット・ド・シャテニエ』と申しまして、狩猟者組合(ギルド)組合証(カード)の名前表記を『マリー・ペル』としておりました。それで皆、マリー、と」

「ほおー、どれ、差し支えなければ、その組合証を余に見せてはくれぬか」

「問題ありません。───どうぞ」


 そう言ってわたしはユキ姫に組合証を手渡し、……渡すつもりで立ち上がったのだが、慣れない正座で、足が痺れて仕舞っていた。

 だから、……と言う訳では無いのだが、またしても何処から途もなく現れた給仕服の女性が、わたしの手の組合証を持ち、ユキ姫に渡して下さった。


 まじまじ組合証を見ながらユキ姫は、


「───この職業に、ペリィは、『魔術師』とあるが、他に剣とかそう言った得物は使えぬのか?」

「いいえ、元々、狩りが好きだったもので、弓矢を少々。刃物は、わたしよりも寧ろ、ガルデニアが得意です」

「ひ、姫様!ガルデニアの得意は、剣などでは無く、投擲類や暗器類です。今まで、いろいろ投げ過ぎて、人生も女も投げて来たのですガルデニアは!」

「あははは!面白いの!ペリィの侍女は、……ところで、魔術師、マリー・ペルよ。余に見せてはくれぬか?マリーの最大火力をだ。この場で」


 挑戦的に不適なお顔の片側の口角を上げてユキ姫様は仰った。


「だっ、ダメ!ダメでございますユキ姫様。ガルデニアの姫様の最大は、このお城も一瞬で瓦礫に変えて仕舞うのです!ガルデニアには理解の及ばない魔法理論での魔術使いが、姫様とヴォルビス殿下なのです!異常に恐ろしいのです!ガルデニア、チビって仕舞うのです」


 あー、ガルデニア。ヴォル様のお名前を出して仕舞いました。

 これは、ヤバい?


「余の防壁でも防げぬのだろうか?して、ペリィその魔術とは、どのようなものか訊かせて欲しい」

「───物体を任意の場所、方向に落とす。と……」

「ん?それだけなの?」

「僭越ながら、ガルデニアが説明申し上げます。───例えば、あちらの壁。あの壁全体に物も人も空気でさえも、全てが落ち尽くすのです。この島、……おそらく、ガルデニアの姫様が少しでも感極まったならば、要塞ザラタンすら落とし尽くすでしょう」


 何気に誇らし気に語る傍付き侍女ガルデニア。

 またしても余計なことを………。

 後で、ガルデニアにお説教ですわ────。と言うか、なんでしょう。ワクワク顔のユキ姫様が、あのヤツフサと呼ばれている男性に話しをされていました。

 何時から彼、いましたのかしら?


「食事の途中ではあるが、外へ行く。ペリィ、良いな」


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