表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げた皇子と逃げ出す公女は、勉強になりました。  作者: 潤ナナ
第一章.皇子と公女は逃げました。
20/29

第四節-03.皇子、追跡者になりました。清掃者。

◇◇◇


 あれから四日。もう新年度だ。9月(リュンヌ)第一週の2日。

 この日の僕は壇上で、新一年生に対し、生徒会会長として祝辞を宣べている筈だった。

 多分、副会長職のナルスィスが入学式の祝辞を代弁するのだろうな。そして明日は、始業式だ。

 ………僕、何でこんなことをしているんだろうね?

 男爵邸の瓦礫撤去はの指示は兎も角、町の運営管理にシャテニエ公国の兵が一個中隊50名が8月(フードル)最終日に駆け付けてくれている。


 実は湾岸州の都市の新参の町ノタは、湾岸州の西の外れも外れ、最西端。しかも湾岸の諸都市から離れ過ぎていて、小規模な兵が派遣されるにしても、五日以上は掛かると思われる場所だった。


 公国ならば、直ぐ北に国境があって、即応可能であるのだ。と思ったのだが、そうそう小競り合いが起こるでも無い程、平和な世である。


 国境に兵など居なかった。


 それで、シャテニエの閣下に応援要請を出す為、ブー・ルポールに居るクロに伝言を頼んだ。

 中隊が来たのは頼んだ翌日。

 早過ぎと思い訊くと、「姫様からの要請で、……まあ、姫様の尻拭いですけどね」と、苦笑いの中隊長様でした。

 要請は、あのカラス、『シュカ』の功績だな。




 状況が状況なので、身分を明かし、町の警吏と行政官を集めて、一時的に男爵家に責任の所在を求め収監させた。

 後は、公国兵が来るまで臨時で指揮を取った。

 それからの昨日と今朝は、男爵の事情聴取。

 中隊副官のユーグさんと取り調べをした。


「何故、彼女達を拘束したのか?」


 以下理由。


 以前、恋漕がれた女性がいて、その方は亡くなったのだが、その生き写しのような少女を偶々視察中(笑)だった港湾で見掛けた、

 何とか連行したのだが、何故かその少女が激怒し館を破壊された。と言う。

 そこまでは、彼の息子からの自供で、何故激昂する程だったかは割愛する。


「でも、父上は監禁した時僕に言いましたよね。『あれは、公国の公女だ。なに、数日監禁すれば心が折れて奴隷に出来よう。私が楽しんだら、おまえにも……』って仰るから、僕も協力したんです!」


 とは、男爵の嫡男の言った下衆な話し。

 うん、殺そう。そう思ったよ?僕。。。


 まあ、最初見た時に今は亡き、『レオノール・ロラ・マルゴー・ド・ラ・フォーレ=シャテニエ公妃』だと思ったのは、ペルスネージュも同じ毛染め剤を使っていたから。なのだと考えた。ってことは、『輝くニンジン』は終了。前の『黄土色金髪』に戻したのだな。

 見たかったなあー、『輝くニンジン』………。


 そして、僕はマリーのやらかした物の後片づけを粗方終えた。後は公国さんにお任せで、僕は再び追跡者に戻ろう。


 それにしても僕はペルスネージュ嬢(貴女)の専属掃除人じゃないんだよ?






◇◇◇


 さて、数日前にクロ、……ノワールが、対岸の町の宿、『サメの歯三本亭』に来た時のこと。

 彼女の報告は二つ。


 一つは港町ブー・ルプールを治めている領主、ドゥスト伯爵の麻薬のこと。


(あるじ)の仰る通り、『天使の卵』は、ボルドワール・アメデー・ド・ドゥスト伯爵の手の者が、仕入れ先については、大陸からの物と、……但し種、……ぅうー。ダメじゃな。文で報せる、が、良いのう、……子細失念じゃ」


 まあ兎に角、ドゥスト伯と麻薬『天使の卵』について、関係がある。と言うこと、なのだろう。


 二つ目は、『聖都イン=アンナ』のイン=アンナ教会絡みのこと。


教皇(・・)、……法王(・・)であったか?ベアトリス十四世?五?……』

「アドリヌス十四世だ。なんだよ『ベアトリス』、って。法王は男性だよ」

『そ、……そう、その十四世が死んだそうじゃ』

「……教皇猊下が、アドリヌス十四世猊下が亡くなった!?」


 驚いた。

 ……と、同時にこれは、好機!なのでは?そう思った。

 と、同時に『このタイミングで亡くなる?……クロ()の仕業なのでは……』。とも思って仕舞う。

 だが、好機であることには変わりない。


 イン=アンナ教会のトップであるところの教皇猊下であるが、帝国国内に於て、『皇帝はグランフルーリア帝国の皇帝が唯一無二の皇帝である。教会トップが「皇」を名乗るのは、不敬である』と、言う考えにより、『教皇猊下』若しくは、『教皇聖下』ではなく、『法王(・・)猊下』と呼称されている。


「『二週間後に教皇猊下の葬儀、一ヶ月後教皇選出の、『選出の儀(エレクシオン)の開催!?』だって?一ヶ月後って、僕と兄上の誕生パーティーがあるじゃないか!その後直ぐに『立太子の儀』じゃないっ!

 間に合うかな、僕?」

『それについては問題無い。と、思うが』

「何でさ?クロ」

『妾()に乗れば、夜中に帝都へ向かうことも出来よう。まあ、(あるじ)は、妾に乗って移動したことなど無いからの。……見るのが一番良いであろう』


 僕の影から出たクロ。

 それに、もう一人?一匹現れた真っ白なフェンリル。

 その白いフェンリルの背には、一人の人間が乗って居たのだった。






◇◇◇


「なんで。なんで居るんだ?『フィーリィ』!!!」


 そう、僕、……とナルスィスの妹、フィーリィがフェンリルの背に乗って居たのだったった。

 僕と腹違いの妹。

 プルムヴェールお母様の娘、……つまり、ナルスィスと同腹の兄妹で、13歳の帝国第一皇女のフィーリィ、…ネモフィラ・マルゴー・ド・エデルヴァイスがそこには居るのだった。

 いや、シャーリーはいい。それより、この白い(・・)フェンリルは、誰?……誰、はないか。何処のフェンリル様!?


「ああ、すまぬ。紹介がまだであったな。これは妾の二番目の姉じゃ」


 ああ、クロの姉上。。。


「……姉上であらせられましたか。

 僕はこのクロワッサン、……クロの一応、主、ヴォルビスと言います。ヴォル、とお呼び下さい。

 で、姉上様のお名前は、何と仰るのでしょうか?」

「我に名は無い。そう言うものだ。……なんならぬしが我に名を付けよ」

「え?僕の名付けでいいの!?……ならどうしよう。……うう~~~ん……」

「あっ、主、主よっ!ダメじゃ!ダメじゃ!」


 ───真っ白な大狼、白い。大きな白い、……輝くような、白。


「『ヴェニュス』、は、どうかな?ほら、春とか夏頃?夜明けの東の空に、輝いている星。『明星』。君の光るような毛を見てそう、思った──」


 瞬間、僕の目の前が真っ白になった。宿の部屋が真っ白な光に覆われた。

 この光景、クロの名付けの時とおんなじだ!

 青白い光の洪水は、やがて暖かなピンク色の付いた白い光となり、…………仕舞った!確か名付けは番が現れてとか、番が付ける物だとかクロは言っていたんだった。

 と言うことは─────


「ヴォルよ。我と婚姻だな?……にしても、我が妹は食べ物とは、……クロワッサン。……ぷぷっ!

 ───しかし我は、美の女神(ヴェニュス)、か。……ふむ、イン=アンナ、イシュタル…イシュト神信仰にも繋がる名よ。まあ、我は神獣であるから、適当ではあるがな。

 で、ヴォル、で良いか?ヴォル、おまえの妹ご、どうするのか?」


 あっ、忘れてた!フィーリィ。

 でも、まああれだ。

 久しぶりに本物の金髪を見た気がする。

 だって今まで似非金髪の女の子が傍に居たんだもの!

 あの『輝く黄土色』。……僕が、多分、僕は、恋をしているんだ。

 彼女、……マリーは今頃、何処まで行っているんだろう?


 それにしても、なんで、


「フィーリィ、何故君がここに居るのっ!?」


 純白の毛皮からその金髪の頭を持ち上げたフィーリィの淡い青紫の瞳からは涙が溢れていた。


「どうしたの?何故泣いている?フィー」

「───今、今は言いたくない。今は言いたくない。でも私、兄様、……ヴォルビス兄様にお会いしたかった。逢いたかった。それは、本当。助けて頂きたかったの!ヴォル兄様!」




 それから僕は、フェンリルの姉妹、クロとヴェニュス、妹のフィーリィを宿、『サメの歯三本亭』に残し、市場(マルシェ)へと急いだ。

 ネモフィル、……妹フィーリィの服と靴を求めて。

 だって、フィーリィってば、ネグリジェのままだったのだ。

 勿論、靴だって履いていない。

 どうやら、昨夜に帝城、……皇宮からこの町、スィマジイ ド ラメール、……スィールに来たようなのだ。

 スィールの宿屋、『サメの歯三本亭』に。





 ところで、


『妾()に乗れば、夜中に帝都へ向かうことも出来よう。まあ、(あるじ)は、妾に乗って移動したことなど無いからの。……見るのが一番良いであろう』


 と言っていたクロ。

 なる程、クロの背に乗って移動すれば、夜のうちに帝城まで行くことが出来る。と、そう言うことか。


(クロ。ヴェニュスとフィーリィ三人で僕の所に来て!)

『何故じゃ?』

(今日は『サメの歯三本亭』に四人でお泊まりする。だから人形(ひとがた)に顕現して、外から宿に入りたいんだ)

『了解じゃ』


 路地裏の僕の所にワンピースに着替えたフィーリィと黒髪の美女、……なんだ!?スッゲーゴージャス系の美女が現れた。

 赤い瞳の銀髪の美女。……何故か縦ロールにしているヴェニュスだった。


「───四人部屋、……で、いいのか?……まあいいか」


 そんな訳で、その晩も『サメの歯三本亭』に泊まった訳だが、夕食事が大変だった。


 兎に角クロもだが、ヴェニュスの美女っぷりが凄まじく、挙げ句、妹フィーリィの可愛さ(兄の欲目かな?)もあって、声を掛けて来る酔っぱらいの多いこと。

 挙げ句、美女美少女三人に囲まれている僕に対するやっかみ?が酷くて、ゆっくり食事をしている場合ではなかった。

 まあ結局、宿の女将に助けては貰えたが、、、。


 昨夜一晩、ヴェニュスの背にしがみついていたであろうフィーリィは、食後部屋に入ると倒れるように眠って仕舞った。


 それから僕らは明日以降の行動について話し合った。

 フィーリィが眠ってからの話し合いの予定だったから、眠ってくれて好都合ではあった。


「僕としては、マリーの動向が知りたい。けど、法王亡き今、どうやって教会を懐柔するか?それを───」

「我が良い物を提供しようぞ」


 ヴェニュスはそう言った。

 ところで、マリーは白子(アルビノ)で白い髪に真っ赤な瞳。ヴェニュスもマリーと同じで、赤い瞳で白い髪だ。


「失礼かもだけれど、ヴェニュスも白子?──ああ、話しの腰、折っちゃって、あれだけど」

「どうであろうな?クロワッサン。ぷぷっ」

「おい!姉、……ヴェニュス、か?いくら姉でも、妾に対して失礼じゃ!

 まあ良い。───妾らフェンリルは本来、真っ白な毛皮の獣ぞ。妾は異端、……と言うか、妾は兄弟の中で孤立しておった。……何せ、妾だけが、真っ黒であったのだからのっ」

「我は仲良くしておったではないか」

「よお言うわっ」


 そう、か。クロは差別されていたのか。……だから、あの時。もう七年も前になるのか。

 あの北の峡谷の底から、



「ねえ、もしも僕が君を助けて仕舞ったら、君はもう、お母様や兄弟といっしょに居られなくなっちゃうの?」


 そう僕が聞いた時、彼女、クロは何も言わずに僕に助けられたのだろう。

 家族の元に帰れなくなってもいい。そう思ったのかもしれない。


で、ヴェニュスの『良い物』、とは?


「秘策、……と、言うかの。教会を懐柔、……いいや、ヴォルの言いなりに出来る方法がある。我のこの用意周到さを見よっ!」



 目の前の(くう)に映像が流れ出した。





◇◇◇


 9月(リュンヌ)第二週の1日。

 わたしとガルデニアは南部都市国家群、湾岸州の西の外れの都市、『西の入江(クリッキュウエストゥ)』の町に来ている。

 町、……都市は大変に大きく、狩猟者組合(ギルド)の受付嬢との雑談で知ったのだが、人口15万を越えていると言う。


「姫さ、……いえ、マリー。昨日の町、『スィバーハ』は良かったっすねえ!あの湖」

「そうねえ、……綺麗な湖だったわ。お魚、最高!……でも、」

「あの貴族、……伯爵?でしたか。あれ潰すの、結構手間でしたね」

「まさか、あんな趣味、……好事家が居るなどとは、思わなんだわ」

「ですが姫様、……いえ、マリー。だからってブチギレてまた、破壊しやがってっ!どおーなってんだ、おまえの頭はっっっ!」


お昼頃、閑話『皇子、子犬?拾いました』の続きをアレします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ