伝説の泉で溺れた幼馴染は泉の女神に助けられた ~「お前が落としたのは、金髪の幼馴染か? それとも銀髪の幼馴染か?」~
突然だが、俺は勇者だ。
どうやら伝説の勇者の血を引くものとして、王様に魔王討伐の旅に出るように言われた。
初めは断ったが、魔王を倒したら褒美と領地をくれることになった。
世界の平和のため、俺は旅に出る!
そして、長い年月が過ぎた。
俺もともに旅立った幼馴染も強くなり、魔王城も近くなってきた。
途中、伝説の泉があるということで立ち寄り、水浴びをする。
恐らくこれが最後の水浴びだろう。
「きゃぁぁぁぁ!」
「どうした!」
あいつが水浴び中、俺は周辺の警戒に当たっていた。
突然叫び声が聞こえ、俺は泉の方に走って向かう。
泉の中央、その水面に泡が見える。
まさか、おぼれたのか!
すると、泉が突然光だし、何かが出てきた。
白いローブを着た白い髪の女神。
「お前が落としたのは、金髪の幼馴染か? それとも銀髪の幼馴染か?」
どっちでもない。
俺の幼馴染は水色の髪だ。
その二人って、どちら様?
「どっちでもありません」
「本当にどっちでもないのか?」
「はい」
「この金髪の幼馴染はソードマスター。接近戦においては世界最強」
「は、はぁ……」
「この銀髪の幼馴染はマジックマスター。魔法攻撃においては世界最強」
「へー」
「この、どちらでもないのか?」
「はい」
「なんという清き心の持ち主よ。ほうびだ、この二人を連れていくがよい」
「いえ、いりません。本物の幼馴染を返してください」
「そこまで正直者なのか……。よかろう、本物の幼馴染も戻してやろう」
※ ※ ※
泉のほとりに男が一人。
そして、幼馴染が三人になった。
「なんで私が三人いるの?」
「それは私のセリフ」
「ちょっと、同じ声で話さないでもらえますか? 訳が分かりません」
これは困った。同じ顔、同じ声。
でも、髪の色が違うのと微妙に性格が違う?
「これからどうするか対策を練る。今日はここで休もう」
伝説の泉のおかげで、このあたりに魔物はいない。
安心してテントを張ることができる。
って、なんでこうなる?
「おまえら、何してんだ?」
「だって、いつも一緒に寝てるでしょ」
「そうそう、一人だけ仲間外れは良くないと思います」
「早く寝ようぜ」
いままで二人旅だったのが一気に四人になった。
魔王城はすぐそこ。
ソードマスター、マジックマスター、聖女。
そして、俺。
ん? このメンバー。
俺いらなくないか?
こうして新しいメンバーが増え、旅は続くのであった。
「どけ! こんなに近寄ったら寝れないじゃないか!」
「寝れると思ってるの?」
「夜は始まったばかりですよ?」
「ここは安全ですからなー」