本章2話 何事も前向きに捉える少女
度々言い回しに出て来ますが、わざとでは決して有りません!とだけ申し上げときます。
神族と魔族、それぞれに相反する種族だが特性での共通点もまた多い。世間一般としてすぐ思い付く一番の共通点は魔法を自由に扱う事だろうか。
此方もまた属性に縛られるのは前述通りだ。
いや、正解には『色』による縛りだろうが。
大いなる力と呼ばれ畏怖される対象でも在る。
在るのだが……。
「え~と、どうせなら夕飯は豪華にいくべきだよねぇ。野宿だし誰にも頼れないなら自分の力で便利さを追及させて貰いましょうかこの際だし」
『キミ、馴染み過ぎだよね?!』
至高の存在も吃驚な前向き思考な少女。
持てる力をあっという間に我が物にして自由自在に扱い始め、そして贅沢極まりない使い方をこなす。
会話もバッチリ成り立たせている。
互いに他に会話する者も居ない今の状況。
少女はまだしも、至高の存在にしてみれば永い年月の中でも久しい事態。逃す手は無かった。
そうして始めた野宿準備。
少女は魔力など無縁な世界に住んでは居たが、その分憧れに近い文学世界としてはキッチリ確立している環境で育ったといっても過言ではない。
なので活用法もきちんと心得て実行出来るのだ。
川の岸辺で風魔法を使って魚を捕まえ、石を組み上げた簡易竈を土魔法補助で作成して、火魔法を使って焼いて先ずは一品をサクサクと完成させた。
と、それだけならまぁ至高の存在も納得の範囲。
けれども少女はそれを遥かに上回る能力を発揮。
空間魔法を操って川から近い岩場に異空間を創って安全地帯な居住場所を確保し、鑑定魔法を使って其処らから摘んだ木の実や茸の選別を行って腹を満たす別の品を新たに探し。ついでに土魔法と水魔法と火魔法を行使して簡易風呂まで作り上げる始末。
もう魔法の大盤振る舞いだ。
属性も魔力量も完全無視なチート無双状態。
誰に何を教わる事も無く、自身に降りかかった災難を嘆く事も無く楽しそうに準備をこなす。
『楽しそうだねぇ……』
「楽しいわよ実際」
そんな小さな内面の呟きに笑顔で返す少女。
一つの身体に同居状態な互い。嘘は通じない。
だからこそ至高の存在の戸惑いも大きいのだろう。
「貴方も知ってるでしょうに、私の事は」
『まぁそりゃ魂の記憶は一浚いしてるし』
「なら分かるでしょ?」
『ウンソウダネ』
何故か棒読みになる相手の響きに疑問を覚えたものの、目の前の完成寸前な夕飯と腹の虫の音に意識がいったので直ぐに忘れて現実に引き戻された少女。
少女によって引き起こされたその小さな違和感は長らく気付く事もなく放置された。至高の存在もまた知りながらも指摘する事すら無かった。
前は前、今は今。
それが気付く方にも気付かぬ方にも共通した認識。
記憶は在ろうとこの世界では意味も無い。
せいぜい便利生活する為の有効手段のみだ、と。
至高の存在はまだしも少女は本気でそう考えた。
もしかしたら、だが。
この前向き一直線な思考回路こそが至高の存在が疑問視した少女の魂の強さの源なのかも知れない。