リスタート
異世界もの初挑戦です。
厨二病全開で書いたのでよろしくお願いします。
RPGによくあるテンプレート。
勇者がいて、魔王がいて、世界は魔王に支配されていて、勇者は王様に頼まれて魔王討伐の旅に出る。
けど考えてみればおかしい。
まずこの勇者ってのは何者なのか。王様が雇った傭兵のような存在なのか、それとも誰かが予言した救世主なのか、あるいは天界からの使者か。
いずれにしても、魔王とか言うよく分からないけど強大な存在と戦う、その任を勇者一人に背負わせるのはどうかと思う。あの時の僕に冷静な判断力があれば、たとえば転生前の記憶を取り戻したばかりとかでなければ、どんなに法外な報酬を用意されたとしても絶対にやらなかっただろう。自分が死にたくないのは当然として、世界の命運なんて、現代日本ではまず背負わないような責任を押し付けられるなんて僕はごめんだ。
それでもその勇者ってやつは、国が軍隊を送り込んでも倒せなかった魔王をたかが数名の仲間と共に倒してしまう。そして世界は救われる。
そう、本来ならば。
けれどもし、勇者なんてただの幻想で、彼あるいは彼女が敗北して世界が魔王に完全に支配されてしまったら、その世界はどうなってしまうのだろう。
「……」
一面の荒野、焼け落ちた家々、逃げ惑う人々、降り注ぎ血の雨、そこら中に転がる死屍累々。
ああなるほど。イメージ通り、こういう感じだ。
目の前に広がるこの景色こそ、僕が思い描いていた通りのバットエンドの世界、ゲームオーバーの先にある世界だ。
「もう……終わりだな」
こんな絶望的な状況の中でも、僕は落ち着いていた。それはきっと、こういう結末を予測していたからだろう。自分に勇者など務まらない。そんなこと、最初から分かり切っていたじゃないか。
僕は腰に下げた仰々しい勇者の剣を投げ捨てる。
すると、その剣にたまたま体を掠めた一匹の魔物がこちらを振り向く。
「シャァァァッ!」
翼の生えたグロテスクな黒い小太りの魔物が、僕を獲物と定めて襲い掛かる。もう逃げる気力も反撃する意思もない。死ぬのは怖いが、所詮一度は死んだ身だ。
魔物の爪が眼前に迫る。瞬間、
バチィィッ!
まるでイヤホンを無理やり引き抜いたような電気の音がして、目の前の景色は停止した。
「これは……」
事態を把握するために周囲を見渡す。すると人も魔物も、写真でその光景を切り取ったように静止している。再度正面を向くと、僕に襲い掛かってきた魔物も、僕に手刀を突き出した状態で、空中で静止している。
「何だよ、一体……」
まるで時間が止まったかのような現象に、僕は困惑する。当然ながら僕の力じゃない。そもそもそんな便利なものがあるなら魔王に負ける訳がない。
辺りをきょろきょろ見回していると、ふと、自分の目の前にあるものに気が付き視線を落とす。
そこにあったのは、これはゲームだと言わんばかりに、雰囲気ぶち壊しなホップアップウィンドウが表示されている。
『ゲームオーバーです。リセットしますか?』
この状況をそんな言葉で片付け、僕に『YES』か『NO』かで迫ってくる表示。この世界で、僕はこんなものを見たことがない。HPバーやステータス画面なんてものがなかったからこそ、僕も真面目に勇者ごっこをやっていたと言える。
それが、今までの出来事はただのゲームですと、そんな風に切り捨てるこの質問に嫌気が差し、僕は答えた。
「どのルートも詰んでるよ、バーカ」
瞬間、世界は暗転し、僕の意識は消失した。