拒否
隣国の王との話を済ませ、早々に帰国してから直ぐにバルクとの謁見になった。
謁見の場にいるのはクラヴィクスとルッツと由良のみ。
あまり大人数で行っても……となり、3人に任せますとディアナに告げられ3人での謁見になってしまった。
この場にいるのは緊張するなと思いつつ、報告を黙って聞く。
隣国のフォンツァの報告をするとなると、クラヴィクスの父親についても報告しなくてはななくて、バルクは驚いた表情を見せている。
「そうか……別れが出来たのなら良かった」
「……」
禁忌の術についても説明を終えた所で、バルクのホッとした表情が見えて由良も嬉しくなる。
やっぱりクラヴィクスは周りの人から愛されているな……と、のほほんと考えていると、クラヴィクスにじっと見つめられビクリと肩を震わせた。
「願えば帰れると聞いたが?その報告は君から受けていない」
「えっ?」
それはかーしゃとの、あの空間での会話でありクラヴィクスが聞こえる筈もない。
ドクドクと高鳴る心臓を押さえながらクラヴィクスを見ると、ため息を吐かれてしまった。
「君がかーしゃと呼んでいる奴に聞いた。君にも確認したい。それは事実か?」
「は、はい……あの、どうしてクラヴィクスさんが……」
「この間、アイツが部屋に来たからだ」
あの空間で見えた元の世界には、かーしゃに願えば帰れる。
少しだけ悩んでいたのは事実だけど、今はここに……クラヴィクスの隣にもう少しだけいたいと願ってここにいる。
それを説明するのはまだ勇気が出なくて、事実だと伝えるしかなかった。
ルッツとバルクも難しい顔を見せている。
クラヴィクスに至っては不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。
何だか気まずい謁見はこうして終了しルッツとバルクとはそこで別れ、クラヴィクスと2人、無言のまま執務室に入る。
ごめんなさいの一言が中々出ない。
何事もなかったかのように机に向かう姿が寂しくて、思わずクラヴィクスの腕の裾を掴む。
ピタリと立ち止まり由良の方を向くクラヴィクスの行動に、胸の高まりが押さえられない。
(拒否されなかった……?)
最初は避けられ、途中からは避けられはしなかったものの、拒否するような仕草をしていた。
でも今は触れるのを許してくれているような態度だ。
そこに何を思っているのかはクラヴィクスの表情からは読み取れない。
それでもその行動が由良を突き動かす。
(だって、私は……)
何があるか分からない今、ここにはずっといれないかもしれない。
先生も戻ってきてからもクラヴィクスを思っていた。
それはきっと想いを伝えられなかったからで、再会した時に想いを伝えられたから、スッキリとした表情で帰っていったのではないか?
自分もそう出来たら、もし戻ったとしても……とクラヴィクスを見つめる。
「クラヴィクスさん……私……」
「………すまない」
眉間に皺を寄せながら一度瞳を閉じたクラヴィクスは、ゆっくりと息を吐き、由良の言葉が続くのを拒否した。
直接的な言葉は伝えられなかったけれど、クラヴィクスには真意が伝わったらしい。
どうやらフラれてしまったようだ。
きっと年下の妹のような存在として受け入れられたのだろう。
呆然としながら握っていた袖を離すと、クラヴィクスが由良の額に手を当てた。
「今日はもう休みなさい。明日も休みでいい」
「……はい」
それ以外何も言えず、涙が溢れそうな姿が見えないように扉の方を向き、クラヴィクスから離れる。
見ているか分からないけれど、ペコリとお辞儀をして執務室を後にした。
フラれてもなお、自分の体調を心配してくれるクラヴィクスへの気持ちは消えそうにない。
(皆どうやって忘れていくんだろう……)
泣いている姿を隠しながら客間へと帰り、今まで読んできた小説の内容を思い浮かべる。
「……分からないや」
ベッドに突っ伏し、ディアナが心配そうに駆け寄ってくるまで、由良は目を閉じ静かに涙した。




