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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第二章
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実力行使

ハーロルトの話を聞いた二日後。

執務室にいた由良は寒気を感じ、クラヴィクスから貰ったストールを羽織る。

クラヴィクスはその行動を見て立ち上がり、街の方へ視線を移した。


「ふむ。行くか……」


相変わらず魔物探知機としての効果は期待されているようで、ストールを羽織っただけでクラヴィクスは街を目指してくれた。

何だか嬉しいが、少し微妙な気持ちでクラヴィクスに着いていく。



***



噴水広場に着き辺りを見回すも、見える範囲には特に何もない。


「気のせいですかね?」

「いや……君の探知能力は侮れない。何かあるのだろう」


口元に手を当て考え込むクラヴィクスは、何か思い当たる節があるのか、森を指差した。


「近頃森が騒がしいとハーロルトが言っていたと言ったな?」

「はい」

「念のために見てこよう。君は詰所に行き、森に向かわせるようにしてくれ」

「1人で行くんですか!?」


ハーロルトの話を信じて森に注視してくれるのは嬉しいし、やっぱりそんなクラヴィクスが好きだとは思うが、こんな風に1人で行こうとする姿は好きではない。

ダメです!と怒っていると、森の奥から爆発音が聞こえてきた。

一斉にバサバサと飛び立つ鳥たち。

飛び立った後に出てきたのは黒い煙。


「火事か……厄介な」

「クラヴィクスさん!」

「恐らく、火を撒き散らす魔物が暴れているんだろう。森の火で自滅するとは思うが……」


冷静に分析するクラヴィクスは、次々と指示を出していく。


「君は魔法使いがいる詰所に行き、水の魔法を使える者を全員呼んでこい。次に、魔法学校に行き、訓練途中でも水を扱える者を集めろ」

「クラヴィクスさんは?」

「私は街の入り口に向かう。早くしなければ森の延焼が街に広がる」


クラヴィクスの指差す先には、轟々と燃える木々。

あれが街まで来たら燃え広がるのは必至だ。

怖い気持ちを封じて頷くと、頭をポンッと叩かれた。


「頼む」

「はい!」


短い言葉だけど、自身を信頼してくれているから頼んでくれている。

そう思う力が湧いてくる。

力強く頷き、詰所へと走っていった。



***



詰所にいる魔法使いと、魔法学校にいる魔法使いに事情を話すと、すぐに協力を申し出てくれた。

その中にはロッティもいて互いに頷き合う。


「ロッティ」

「由良、行きましょう」

「うん!」


急ぎ街にもう一度戻ると、噎せそうな煙が辺りに蔓延していた。

腕で口元を隠しながら進むと、森からの熱気が襲ってくる。

一部では民家に燃え移ってしまったようで、魔法使いが必死に消火している。

魔法学校の生徒たちは、まだ水の力も弱く、微々たる力にしかなれないけど……と助力に回っていく。


「クラヴィクスさん!」

「伝達してくれたようだな。なら、君も下がれ」


チラリと視線を向けるだけでクラヴィクスは直ぐ様水の魔法を唱え始める。

唱えている途中、何か気配を感じたのか、由良の横をじっと睨み付けた。

横に何かいるのだろうか……と横を向くと、ニッコリと微笑んだかーしゃの姿があった。


「かーしゃ!?」

「由良、あれ私ならすぐに消せるけど?」


指差す先は燃え盛る炎。

それなら頼みたい!と喜ぶものの、クラヴィクスに腕を引っ張られてしまう。


「君はバカか。あんな者に願ったら身ごと持ってかれるぞ」

「本当君って命知らずだよね」


鼻で笑うかーしゃがクラヴィクスを睨む。


「君のせいで人が死んでも良いの?」

「死なせない」


スッと後ろを向いたクラヴィクスは、目を閉じて集中していく。

中々動かないクラヴィクスに心配になるものの、かーしゃは感心したように声を上げた。


「へぇ、中々やるね」

「え?」

「上を見ててごらん」


クラヴィクスの上空を示すかーしゃに釣られ上を見る。

すると、上空にはどす黒い雲が溜まっていくのが見える。

最初は小さい粒だったのが、周りの水蒸気を集めながらどんどん大きくなっていく。

次第に大きくなり分散し、また水蒸気を集めながら大きくなり分散……を繰り返していくと、クラヴィクスがより一層手に力を籠めた。

水蒸気を溜めた雲は一気に雨を降らせていき、外に出ている者は全員びしょ濡れ確実になってしまったが、火は一気に消えていく。


「凄い……」


これだけの力があれば、1人で大丈夫だったのでは?と思いながらクラヴィクスを見ると、額を手で押さえしゃがみこんだ。


「クラヴィクスさん!」


大雨が降る中走り寄ると、クラヴィクスが手で制し立ち上がった。


「大丈夫だ。それより体調を崩す前に帰りなさい」


そう言っているクラヴィクスの方が心配だ……と思っていると、かーしゃがクラヴィクスをじっと見つめ、何やら考え込んでいる。


「……何だ」

「いや、君は違うんだって、思っただけだよ」


クラヴィクスに対し好戦的ではないかーしゃを見るのは初めてだ。

それはクラヴィクスもだったようで、かーしゃの瞳をじっと見つめ返している。


「違うとは?」

「……クラヴィクス。君は、どうやってその力を手に入れた?アイツのお陰か?」

「……お前の思っているような方法ではない」


かーしゃの意図を読めたのか、端的に言葉を発したクラヴィクスの答えにかーしゃは満足そうに頷いた。


「ふーん。………じゃあね由良。待ってるからいつでもおいで」


ヒラヒラと手を振るかーしゃは、そのまま風に乗って消えていく。

大雨の降る中、森を見上げる。クラヴィクスの魔法のお陰か火は勢いを弱めもう殆ど鎮火していた。



***



執務室に戻り、クラヴィクスの魔法により服も体も乾かしてもらう。

まるでお風呂に入った後のポカポカとした暖かさがある……とソファーに座りながら思っていると、ルッツが執務室にやってきた。

森に関する報告と延焼具合などを聞いていると、クラヴィクスから問われた。


「君はあの神といつ出会ったんだ?」

「え?あ、言わなかったでしたっけ?」


ここに来てからのかーしゃとのことは全て伝えたけれど、そう言えば昔出会った時のことは言わなかった……と伝えていくと、2人して微妙な反応を見せた。


「……ロリ……いや、ストー……ああ、うん……ははっ」

「幼女趣味な上にいつまでも追い掛けてくるとは……気色の悪い神だな」

「ちょっ!クラヴィクス!しっ!」

「事実だ」

「事実でも!言ったら何されるか分かんないだろ!?」

「ほう、お前も事実だと言ったな」

「ちがっ!神様!!違うから神様!!」


2人の掛け合いを笑って聞きながら紅茶を用意する。

何でもない会話をして過ごす日々が何だか幸せで、こんな日が続けば嬉しいのに……と思えた。


(アイツって誰だろう……)


ただ1つ、かーしゃがクラヴィクスに向けた言葉だけが、何故か酷く気にかかった。







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