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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第二章
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お似合いな婚約

この間、王様に呼ばれてからクラヴィクスの様子がおかしい。

別に普段通り職務をこなすしトレーニングも勉強も見てくれている。

お気に入りにしてくれたのか毎日紅茶も飲んでいる。


「クラヴィクスさん?どうしました?」

「いや……何でもない」


不思議なのは由良に視線を向ける回数と、聞くと必ず何でもないと答えて、また業務に戻る。

一体何なんだろう……と首を傾げていると、執務室の扉がノックされた。


「………」


気配で誰だか分かったのか、クラヴィクスが不機嫌そうに立ち上がり入室を許可した。

入ってきたのは、王宮では見たことのないダークパープルの髪色をした女性。

モデルで活躍出来そうな長身とスタイルの良さ。

香水の良い匂いが女性らしさを更に引き出している。

クラヴィクスに向ける微笑みが印象的で、由良はボーッと2人が並ぶ光景を眺めていた。


「貴女がフォンツァの、由良さん?」

「え?あ、はい!片山由良と申します!」


並ぶと美男美女だな……と思っていた時に話しかけられ、慌てて立ち上がり挨拶をする。


「一度ご挨拶をと思っておりました。私、クラヴィクス様の婚約者になりました、マグダレーネ・ハワードと申します」

「……こん、やくしゃ……?」


聞き覚えのあるフレーズを反芻し、漸くそれが恋愛小説等に出てくる婚約者だと気が付く。


「えぇぇ!?こ、婚約者!?クラヴィクスさんの!?」

「えぇ、今後とも宜しくお願い致します」

「は、はい…………えっ?」


突然の婚約者登場に頭の中がパニックだ。

そんな由良を見かねたのか、クラヴィクスが由良の額をぺしりと叩く。


「マグダレーネは仮の婚約者だ。………君も、無闇やたらに周りに言い触らさないように。特に王宮以外の者には言わないように」

「承知しております。でも、フォンツァには伝えておかなくてはならないですよね?」

「……詳しくは私から話す」


畏まりました……とお辞儀をしたマグダレーネは、挨拶だけしたかったようで、直ぐに出ていってしまった。

どうしていいか分からず立ったままでいると、ソファーに座らされた。

その横にクラヴィクスがどさりと腰を下ろす。

少しだけ離れた距離が、埋まらない溝のように感じたのは、クラヴィクスが婚約者を作ったからだろうか。

何とも言えない苦しさに俯いていると、クラヴィクスがゆっくりと、婚約者を作った訳を話し出した。


「……以上だ。何か質問は?」

「いいえ。その、お疲れ様です」

「ああ……全くもって面倒だ」


眉間の皺がどんどん寄る。


「君にももしかしたら苦労をかけるかも知れないが、少しの間宜しく頼む」

「はい……」


面倒だという姿に何だかホッとしてしまう反面、その婚約者が自分だったら良かったのに……と思ってしまい、頭をぷるぷる振る。

隣国の王の願いは大人の女性だ。

それを満たしているのは今のマグダレーネのような人で……と、クラヴィクスを見る。


「大人の女性って良いですね」


クラヴィクスの隣にいてもお似合いな人。

マグダレーネや先生のような。

そう考えると嫌な気持ちに捕らわれそうになり、ソファーから勢い良く立ち上がる。


「今日の勉強終わったので帰ります!」

「あ、ああ……そうか」

「はい、本日もありがとうございました」


ペコリとお辞儀をして扉から出る辺りで、クラヴィクスのため息が聞こえてきた。

そのため息が胸に来て、じんわりと涙が瞳を濡らす。

その気持ちから逃れるように歩き出した。



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