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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第一章
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異世界の歴史

さっきまであった筈の重機がない。

そもそも神社があった林も、近くにあった民家やマンションまでもが無くなっている。


「え?神社は?マンションは?」

「由良様落ち着いてください」


ベットに座らされ背中を撫でられると、ある1つの可能性を考えた。

だから海外の人のような出で立ちでも、簡単に名前を呼べているのだと思うと辻褄が合う。


「ここ、あの、もしかして……ファンタジーな世界……」

「ん?ファンタジーな世界?」


何が原因か分からないけれど、先生の愛読書の世界……神隠しに遭遇してしまったようだ。

自分には起こらないことだと、どこかで考えていたけれど、それは都合の良い考えだった。


「ああ!そういや何か本になってるって言ってたな。それでファンタジーな世界か!由良ちゃんは読んだ?」


こんなことになるなら、好き嫌いせずに読んでおけば良かった……と、思いつつ首を振ると、クラヴィクスが分厚い書類を渡してきた。


「この国の歴史、私生活での常識、今後暮らす上での最低限の知識などが書いてある。この書類を見ながら説明をしていこう」

「流石クラヴィクス!用意が早い!」


小さく拍手をしているルッツやディアナの分も用意しているようで、その用意周到さからクラヴィクスが仕事が出来る人だと想像が出来る。


「この国の名はフィスディ。君の世界とは違い国王が治めている」


ペラリと捲る資料には、国の成り立ちから書いてあり教科書を見ている気分になるが、文字を読むのは好きな為に読み進めていく。


フィスディになる前は、フランカと呼ばれる陸続きの大きな大陸で、国境を隔てて5つの国が存在していた。

最初は平和に暮らしていたものの、更なる繁栄を求めた魔法使いが中心となり、土地を奪い合う争いが勃発していった。

土地は荒れ人々は各地を転々とし暮らすしかなかった。

そのあまりの光景に、フランカを作ったとされる神様が怒り、強力な地響きを起こした。

次第に大地が割れ、遂には五分割されたと言われている。


初代国王達は神の力に恐れ争いを止めた。

川に使っていたボートを使い、離れた国に赴き、互いに争いを終結させる書簡を渡し合う。

それを数年間繰り返し、国王以外にも領主一族を作り、市民の安全を守る協定を作っていった。

現在は協定により平和が保たれているが、神様が落としたとされる人間がやってきたことで、また何か起こるのでは?と囁かれている。


現在、落とされた人には政治的圧力が掛からないよう、世界の国々の協定が結ばれているが、初期の頃は神の力の持ち主だと信じられ、力を奪い取ろうとする一部の者に殺されることもあった。

研究やレポートにより、余命が少ないと分かってからは、神のフォンツァを生かす薬を開発することになり、開発に成功した。

これは国民達にも効き目のある薬として、重宝されている。


「簡単に説明するとこんな感じだな」

「これ簡単か?」

「まだ騎士の役割も街の様子も伝えていない。簡単だろう」


また話し出した2人の会話が頭に入ってこない。


「……余命って」

「ああ、それね。まあ、由良ちゃんは他の奴より生きれるよ」


魔法使いや戦いならファンタジーな世界の定番で、それほど驚かないものの、フォンツァの扱いや余命と書かれている文字をなぞる。

ただ他の人より生きれるとは?……と、首を傾げながらルッツを見る。


「なんたってこのクラヴィクスがフォンツァの薬を開発した張本人だからね!」


バーン!と効果音が付きそうなくらい、明るく言い放ったルッツと、不機嫌そうにため息を吐いたクラヴィクスを見る。


「まだ行き届いていない国に落ちなくて良かったよ。あそこじゃ数日しか生きられなかっただろうしね」

「数日……」


神隠しにあってから、数日で戻ってきた人もいれば、一ヶ月後に戻ってきた人もいた。

テレビでその違いは不明と言っていたけれど、薬を飲めた人と飲めなかった人との違いだったと言うことだろう。

確か最長は少し前に戻ってきた人で、期間は1年ほどだった。

その人は最後に怖い目にあったのか、未だ家から出られないと言っていたのを思い出し身震いをする。

懐から袋を取り出したクラヴィクスは、その袋を由良に手渡した。


「薬は1日2回。飲んだ後のデータも取りたいので、飲むのは私の執務室でだ」

「わぁお、マッドサイエンティスト」


ルッツを睨んだクラヴィクスは、由良が持っている資料の一番後ろを指差した。


「診察した所、君は他のフォンツァに比べて身体が弱そうだ。それは君特有なのか、年齢による物なのか、経過を観察するとして……今日は休むと良い。何かあればディアナに」

「はい。お任せください」

「ルッツ。お前は国王に報告を。それとフォンツァ登録書類と、申請に辺り誰が彼女を保護するのか考えておいてくれ」


次々と指示を出し、ベット横のチェストに何やら置いたクラヴィクスは、言い終わると慌ただしく外に向かっていった。

ポリポリと頬をかき苦笑いを見せたルッツは、由良の頭をポンッと撫でた。


「続きは明日。ディアナ宜しくな」


コクりと頷いたディアナは、ルッツがいなくなったのを見て由良をまたベットに寝かせた。

まだ寝たくないのに…と思っていたのは一瞬。

すぐに眠りの世界へと旅立っていった。




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