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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第一章
32/78

フォンツァを望む声

客間入り口近くに行くと、ディアナが震えながら由良様!と叫んでいる。

前方には顔が見えないように漆黒のローブを纏った男と、拒絶するように、捕まれた手を離そうとしている由良がいた。

ルッツが他の騎士に目配せし包囲網を作っていく。

まさか王宮のど真ん中に侵入してくるとは、誰もが思わなかっただろう。

逃げ場が無くても、逃げる算段が付いているか王宮で死ぬつもりか。


「フォンツァをどうするつもりだ?」

「俺は、まだ……生きるんだ……」

「生きるとは?」

「まだ……死ねない……」


話が噛み合わない……と舌打ちをする。

ただフォンツァに対する執着が激しいようで、由良の手はしっかりと握られたままだ。


(ここで魔法を使い助けるべきか)


ただ何か罠がある可能性がある。先に無力化をするべきだろうと動こうとしたが、男の様子に眉をひそめる。


「フォンツァ、ちか、ら……」


黒い渦が男の周りを包む。

その力が由良も呑み込もうと迫る。

あれは不味いと右手を突き出し、自身の中にいる魔物を呼び出す。


「行け!」


キュー!っと叫び飛び出したのは、由良がキュウリと名付けた魔物だ。

弾丸のように飛び出し渦の中心に突入していく。

バチン!と電気が弾けるような音がし、キュウリが自身の元まで飛ばされる。


「いきる……いきる……」


渦は段々と濃さを増す。

チッと舌打ちを1度して、由良がオーちゃんと名付けた魔物も出し、由良の元に向かわせた。

更に手のひらに力を込め、来い!と叫ぶ。


「おいおいおい!ちょっ、もうこれ以上出すな!」


ルッツは制止するが、このままでは由良が連れていかれる……と、構わずもう一匹魔物を呼び出す。

グルルルルルと唸り声を上げ出てきた魔物は、角が二本生えコウモリのような羽を持った黒い魔物。

魔物というよりは、悪魔と称した方が良いのだろうか。

得意の槍を構えた魔物は、男に向かって一直線に進んでいく。


魔物達に黒い渦を任せ、本体を攻撃するために手に力を込め、魔法を打てる状態にする。

まずは簡易魔法で様子見か……と考えていたが、由良の苦し気な表情を見て考えを変える。


「痛い、離して!」

「ちから、もらう……か、み…」

「神の力なんてない!っ!」


抵抗すると腕に力を込められるのか、痛そうに顔を歪めた。

そしてこちらの方を向き、クラヴィクスさん……!と泣き出しそうな顔で叫んだ。


「一気に決める……」


あれの泣きそうな表情はあまり好きではない……と、自身の周囲を風が包む。

ふぅ……と息を吐き前方を見据えた。

未だ心意の掴めない男と、そんな男に捕らえられている由良。

ため息を吐いて由良から目を逸らし、男を見た。


「全て消し去ってやる」

「いやいやいや!尋問あるからな!!?」


慌てて魔法を止めようとしたルッツだったが、男の異様な雰囲気を感じ口をつぐむ。

男はカクカクと首を傾げながら一歩進む。

男が左手を構えた所で、好機だ!と走り出す。

魔物達を男に突撃させ、由良から離れた瞬間、自身の背中に由良を隠す。


「フォンツァ!フォンツァ!どこだ!!!」


背中にいる由良が声も出さずに震えているのが、背中越しに良く分かる。

男に対峙するように手を構えると、男は首を左右に振りこちらを睨む。

ローブの隙間から見えるその瞳は異様に光って見える。

男に応戦し魔法を打ち続けると、男が疲弊してきたのか、息を切らし始めた。

このままならルッツの望み通りに尋問出来るだろう……と思っていたが、男はローブの懐から薬を取り出し一気に飲み干す。

カランカランと落ちる空き瓶を見て、ハッと男を見る。


「また、また……現、れる」


不吉な言葉だけを残し、男はその場で崩れ落ちた。

男が飲んだのは、男から情報が読めなくなる自害用の薬品だ。

飲めば段々と体が動かなくなり、最後は生命活動すら止めてしまう。

これではどうやって侵入したのかも掴めなくなるだろう。

うめき声を上げ苦しむ男の声と姿を、由良に見せないように抱え上げる。

ルッツに目配せをし、足早にその場を後にすると、離れたことで安心したのか、由良の意識は深く落ちていった。

ソファーに寝かせると、身じろぎをした由良は、クラヴィクスさん……と寝言を口にした。


「……」


薬を飲ませるために屈んで直ぐに立ち上がる。

由良の唇を指でなぞると、言い様のない感覚に襲われ、深いため息を吐いた。




















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