ルッツの追及
ルッツが足早に歩くのは、何らかの危機が迫っている時と、早く話したいことがあるからだ。
今回は後者で、ルッツはクラヴィクスの執務室を訪問した。
「たのもー!」
「……煩いぞ」
ノックもそこそこに突入すると、クラヴィクスの不機嫌さは絶好調だ。
仕事を進めるスピードが鬼のように速い。
しかもこれで仕事も正確だから誰もが頼りにしている。
休める時に休めと言っても休まないのは問題だが、助かっているのは事実だ。
(まあ、由良ちゃんがいれば休むんだけどな……)
クッキーを食べて休むのは、今までなら考えられなかった。
執務室で寝かせてあげる間、人をあまりいれないのも結界を強固にして守るのも、髪飾りを渡すのも……どれも驚く行動だ。
まあ、年が若いフォンツァに対し、自身やディアナも妹のように大事にしてしまうのだから、クラヴィクスがそうなっても不思議ではない。
それに今までと違い、力を持つ研究対象だから……と言うのもあるだろう。
でもそれ以外にもあるだろう?と期待したいのが、正直な心境ではある。
「私は忙しいんだが?」
「ふーん。ああ、薬品の匂いって服とかに残るよな」
「…………何の話だ」
遠回しな発言にも気付く頭の回転の良さは、見習いたいと思っている。
「聞いてただろ。由良ちゃんの話」
「さぁ。何のことだか分からん」
「由良ちゃんは何か不安がってる」
「知らん。あれは私には話さない」
その発言に、ん?と首を傾げクラヴィクスをまじまじと見る。
不機嫌そうな瞳の奥に、微かに怒りに似た感情が見て取れ苦笑いを見せた。
「まあ、何か不安定だから、俺の家で預かるよ」
クラヴィクスも不機嫌そうだしなと付け加えると、クラヴィクスが椅子から立ち上がりルッツを睨む。
「ダメだ」
「なんで?薬も飲ますよ」
「……何かあった時にお前では対処出来ないだろう。それに……」
「それに?」
「………」
口ごもるクラヴィクスの気持ちは何となく分かる。
きっと過去を思い出してしまい、自分の傍に置いておきたいんだろう。
だとしても過保護過ぎないか?と思えてしまう。
これは何か他の理由がありそうだ。
さて、どうやって追及しようか……と思っていた時、パン!と結界の破れる音が聞こえ執務室から急ぎ出る。
後ろからついてくるクラヴィクスの表情は、ルッツ自身と同じことを考えていそうだ。
嫌な予感は的中しないでほしいな……なんて思いながら、由良達がいる客間を目指した。




