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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第一章
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ルッツの追及

ルッツが足早に歩くのは、何らかの危機が迫っている時と、早く話したいことがあるからだ。

今回は後者で、ルッツはクラヴィクスの執務室を訪問した。


「たのもー!」

「……煩いぞ」


ノックもそこそこに突入すると、クラヴィクスの不機嫌さは絶好調だ。

仕事を進めるスピードが鬼のように速い。

しかもこれで仕事も正確だから誰もが頼りにしている。

休める時に休めと言っても休まないのは問題だが、助かっているのは事実だ。


(まあ、由良ちゃんがいれば休むんだけどな……)


クッキーを食べて休むのは、今までなら考えられなかった。

執務室で寝かせてあげる間、人をあまりいれないのも結界を強固にして守るのも、髪飾りを渡すのも……どれも驚く行動だ。

まあ、年が若いフォンツァに対し、自身やディアナも妹のように大事にしてしまうのだから、クラヴィクスがそうなっても不思議ではない。

それに今までと違い、力を持つ研究対象だから……と言うのもあるだろう。

でもそれ以外にもあるだろう?と期待したいのが、正直な心境ではある。


「私は忙しいんだが?」

「ふーん。ああ、薬品の匂いって服とかに残るよな」

「…………何の話だ」


遠回しな発言にも気付く頭の回転の良さは、見習いたいと思っている。


「聞いてただろ。由良ちゃんの話」

「さぁ。何のことだか分からん」

「由良ちゃんは何か不安がってる」

「知らん。あれは私には話さない」


その発言に、ん?と首を傾げクラヴィクスをまじまじと見る。

不機嫌そうな瞳の奥に、微かに怒りに似た感情が見て取れ苦笑いを見せた。


「まあ、何か不安定だから、俺の家で預かるよ」


クラヴィクスも不機嫌そうだしなと付け加えると、クラヴィクスが椅子から立ち上がりルッツを睨む。


「ダメだ」

「なんで?薬も飲ますよ」

「……何かあった時にお前では対処出来ないだろう。それに……」

「それに?」

「………」


口ごもるクラヴィクスの気持ちは何となく分かる。

きっと過去を思い出してしまい、自分の傍に置いておきたいんだろう。

だとしても過保護過ぎないか?と思えてしまう。

これは何か他の理由がありそうだ。

さて、どうやって追及しようか……と思っていた時、パン!と結界の破れる音が聞こえ執務室から急ぎ出る。

後ろからついてくるクラヴィクスの表情は、ルッツ自身と同じことを考えていそうだ。

嫌な予感は的中しないでほしいな……なんて思いながら、由良達がいる客間を目指した。






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