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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第一章
28/78

星と月の髪飾り

『も…一度……』

『……か……って』


また夢見が悪くなってきた。

客間では眠れず、無理を言って執務室のソファーで眠ると、執務室の強固な結界のお陰か良く眠れる。

ブランケットにくるまりながら眠る由良を見ているのは、執務室の住人であるクラヴィクスと、メイドのディアナと王宮騎士であるルッツだ。

執務室の机で何やら書きながら話すクラヴィクスは、2人の呆けた顔を見て、何かおかしい所でも?と問い掛けた。


「以上が、私の仮説だ」

「は?いやいやいや、お前何言ってんの?」

「そうですよ。由良様は普通の女性です!」


クラヴィクスのとある仮説にルッツは驚き、由良の頭を撫でていたディアナは少し怒ったように感想を述べた。


「ふむ。……しかし、彼女の力は普通ではない。そこは理解しておいて欲しい」

「仮説には理解を示さなくても良いのか」

「根拠の無い仮説はただの空想に過ぎない。だが、私はその仮説を立証してみたい」

「おいおいおい、由良ちゃん使って危ない実験するつもりかよ」


それは止めろよ!と本気で心配しているルッツの声に目が覚めたのか、由良がのっそりと起き上がった。

そんな由良に近付いたクラヴィクスは、額に手を当てた後、由良の腕を手に取りまたブレスレットを付ける。

無色透明なブレスレットは、クラヴィクスの目から見れば瞬時に色を変えていく。


「風、闇、それと光属性……か」

「なぁ、それ本当に色、変わってんの?」

「私にも見えませんね。由良様はいかがです?」

「見えないんだよね……」

「恐らく魔力によって見えているんだろう。私と同等かそれ以上の魔力を持っている者なら見えると思うが……」

「そんなのいたらこの間の戦いだって苦労しねぇよ!」


それもそうか……と呟いたクラヴィクスは、一度由良から離れ、机の中から木箱を取り出し戻ってきた。

クラヴィクスが木箱の蓋を開けると、クラヴィクスの瞳と同じような、ブルー色の星と月の装飾がされた、金色の髪飾りが1つ入っていた。

髪飾りを手に取ったクラヴィクスは、由良の手にソッと握らせる。


「クラヴィクスさん、これ……」

「無いよりはマシだろう。着けていなさい」


でも大事そうに木箱に入っていた物を着けているのは……と、返そうとしたけれど、ルッツに腕を掴まれ止められてしまった。


「由良ちゃんそれ貰ってくんない?」


ニッコリと微笑みながらも圧が凄い。思わず頷くと満足そうな本物の笑みを見せてくれた。


「あの、クラヴィクスさん。ありがとうございます」


折角貰ったから……とディアナに着けてもらい、クラヴィクスの方を向くと、飾りがぶつかり合い、シャランと音がした。


「……ああ」


その音をじっと聞いていたクラヴィクスは、由良の言葉に空返事をしている。


「おーい、クラヴィクス。由良ちゃんがお礼を言ってるぞ」

「ん?……ああ、そうか」


心ここに在らず。クラヴィクスの珍しい姿に3人で呼び掛けると、クラヴィクスがハッと気が付いたように、3人に視線を向けた。


「……イヤらしいこと考えてたんじゃねぇ?」

「それはお前だろう」

「最低ですね。ルッツ様」

「……え?俺!?いや、そりゃ、男は色々と考えますよ?でもここは俺じゃないだろ!!」


ルッツの叫びに由良とディアナが笑い、クラヴィクスは煩わしそうな顔を見せる。

久々に4人で話した日は、とても楽しい1日だった。



***



パチリと目が覚めるともう夕刻。

ディアナとルッツはいないようで、クラヴィクスは……と視線を移すと、机に頬杖を付きうたた寝をしていた。


(珍しい……)


むしろ寝ている姿を見るのは初めてだ。

何だかワクワクしながらクラヴィクスに近寄る。

サラリとした銀髪は、夕焼けに当たると神秘的な輝きを発する。

触れてみたいと手を伸ばし、恐る恐る髪の毛に触れると、クラヴィクスの唇が動く。


「……恵梨……」

「……恵梨って……え?」

「……」


心がざわめく。

その後も、何か呟くクラヴィクスの表情は、見たことのない柔らかな表情を見せている。

由良の脳裏に過ったのは、ゴツゴツとしたブレスレットを付けた、由良と同じように小説が好きな先生の姿だった。





 






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