可愛いロッティ
歩けないのはその日だけだったようで、翌日には自分の足で歩けた。
だからもう大丈夫とは思ったものの、今日と明日は大事を取り休みなさいとクラヴィクスに言われ、素直に頷く。
何をしようか悩んだ末出てきた答えは、またクッキーを作ることだった。
今度はディアナに色々と教わりながら一緒に作り、久々に王宮の庭でプチお茶会を開く。
ユリウスやマリウスも誘ってみたかったけれど、ユリウスは謹慎中。
マリウスは稽古に出かけたらしく会えなかった。
残念だと思いながら、ディアナとほのぼのとした時間を過ごしていると、フォンツァ!と大声で呼ばれ目を丸くする。
呼ばれた方向を見ると、領主の娘であるロッティが立っていた。
不機嫌そうに口を曲げ、ズカズカと歩いてくる姿にディアナと2人で警戒をする。
テーブル前に着いたロッティは、持っていた扇子で口元を隠し由良を見る。
「貴女、王子を守ったそうね」
「え?……ああ!」
一瞬何のことか分からずポカンとロッティを見たが、直ぐに合点がいき頷く。
「………少しは見直しましたわ」
「あ、ありがとう……あの、ディアナとクッキー作ったんだけど、食べる?」
言いながら毒味の意味を込めて一枚頬張ると、ロッティが少し戸惑いつつも頷いた。
「お誘いして頂いたのに断るのも申し訳ないわね……えぇ、頂くわ」
ディアナが紅茶を淹れ、ロッティが扇子を片付け優雅にお辞儀をし、カップにソッと口を付ける。
動作1つ1つが綺麗で、これぞ小説で読んだ貴族のお茶会だ……と心の中で興奮してしまう。
そんな思いを知らないロッティは、クッキーを一枚手に取り食べた。
「まあ……悪くないわね」
「ありがとうございます。……由良様。ロッティ様は大層お気に召したそうです」
「そ、そんなこと言ってないわ!」
口調は怒っていても頬は赤く、まるで図星を突かれたようだ。
「ツンデレ……」
「なんですのそれ?」
「基本ツンツンしてるけど、たまに可愛らしい1面を持った子って意味」
「あら、随分と的確な言葉があるんですね」
由良の説明にディアナは大いに頷いたものの、当の本人は不服のようでムスッとしている。
ツンツンしてませんわ!と怒っても説得力が無いし、服装や髪型を褒めると嬉しくなさそうに喜んでいる。
典型的なツンデレだ……と思うと、喧嘩越しなのも可愛らしく思える。
「ねぇ、ロッティって呼んで良い?」
「いきなり呼び捨てですの?まあ、構いませんけど……私も由良と呼ばせて頂きますわね」
「うん。ロッティまた来てね」
帰り際にそう言ってみると、扇子で口元を隠したロッティは、プイッとそっぽを向いた。
「誘われたなら仕方ありませんわね。また来ますわ」
「うん。またお話ししようね」
「そうですわね。…………由良、いつ頃がよろしいかしら?」
何だかんだで楽しみにしてくれているロッティの為にも、次のお茶会は早めの方が良いようだ。
「明日ならクラヴィクスさんが休みにしてくれてるけど……」
「明日ですわね。そうね、午後からで宜しくて?」
「うん。ねぇ、ロッティもクッキー作り一緒に出来ないかなディアナ」
「そうですね。シェフにお願いすれば大丈夫だと思われます」
クッキー作りは楽しいし、どうせなら一緒に参加して欲しいな……と思っていると、ロッティが嬉々とした表情を見せた。
「わ、私……初めて作るわ……」
お菓子作りに興味はあっても、いつもメイドが用意をしたり、市販品だけだったりするらしい。
なら尚更楽しくなりそうだ……と、由良とディアナは顔を見合わせ笑った。




