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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第一章
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帰還

座り込んでからどれくらい経っただろうか。

蹴破るように扉が開かれ、衛兵とルッツと共にクラヴィクスが入ってきた。

一直線に由良の元に来たクラヴィクスは、由良の元に跪き、由良をじっと見つめソッと額に手を当てた。


「クラヴィクスさん……」


クラヴィクスの顔を見ると安心してしまって涙腺が緩む。

ポロポロと泣く由良を見て、眉間の皺を寄せたクラヴィクスはハンカチを握らせ立ち上がる。

そのままユリウスの元に来たクラヴィクスは、冷たい声を発した。


「ユリウス。王族の君にフォンツァを預けようとも思ったが……考えを改めよう。フォンツァを危険に晒す君にはやれない」

「それは、重々承知です」

「………だが、良く市民を傷付けずフォンツァを守った」

「……ありがとうございます……」


悔しそうな顔で俯くユリウスを見たクラヴィクスは、それだけ伝えると直ぐに由良の元に戻ってきた。

ルッツに支えられた由良は立とうとしたけれど、前と同じように力が入らず崩れ落ちそうになる。

寸前の所でクラヴィクスに支えられ、お礼を言おうとすると、また抱き上げられ悲鳴を洩らす。


「ひっ!」

「………」


呆れたように由良を見たクラヴィクスは、ブレスレットを見て難しい顔をしている。


「あの、クラヴィクスさん」


また色が……と言おうとしたけれど、クラヴィクスに睨まれ言葉を止める。


「いやー、由良ちゃんが無事で良かった」

「ルッツ。お前は王宮に帰るんだろう。問題児を連れていけ」

「はいはい」


クラヴィクスに問題児と言われたユリウスは、由良の方を一度眺め、ごめん……と呟きルッツと共に歩いていった。


「あの、降ろして下さい……」

「歩けるのか?」


まだ足に力が入らない。

ふるふるっと首を振ると、ため息を吐かれてしまった。

でもこのお姫様抱っこの状態で街を歩くのは……と思ったが、そもそも意識を失った状態で連れてこられたので、ここがどこか分からない。


「タフィー。すまないが開けてくれ」

「はっ!」


以前挨拶をしたことがあった、対人間部隊長のタフィー・ローレンツは、抱えられた由良をじっと見つめ、そしてペコリと頭を下げた。


「由良様。助けるのが遅くなり申し訳ございません」

「いえ!タフィーさんも、ありがとうございます」

「いえいえ。あ、クラヴィクス様。後程報告書をお持ちいたします」

「ああ。宜しく頼む」


頷いたタフィーに扉を開けてもらい、クラヴィクスに抱えられ外に出ると、一面野原が広がっていた。

そして馬車があるのに気が付き、お姫様抱っこから直ぐに解放されるのだと思うと嬉しく思えた。



***



王宮のクラヴィクスの執務室に戻ると、涙目のディアナが待ち構えていた。

今にもユリウスの元に突撃し、説教をしそうなディアナを宥める。

落ち着いた頃合いを見計らい、クラヴィクスはディアナに話し掛けた。


「ディアナ。紅茶を」

「………はい、畏まりました」


一瞬眉をひそめたディアナは、スッとお辞儀をし部屋から出ていく。

ソファーに座っている由良に近寄ったクラヴィクスは、ソッとブレスレットを調べていく。

ブレスレットが光った状況や、どんな風に何が現れたのか、聞かれるがままに答えていくと、クラヴィクスの大きなため息が聞こえてきた。


「クラヴィクスさん?」

「予想が裏切られることを期待したが……そうか」


1人だけ確信めいているが、何のことか分からずクラヴィクスを見る。

クラヴィクスも由良をじっと眺め、頭をポン……と撫でた。


「君は、やはり面白いな」


そう呟いたクラヴィクスの瞳はどこか憂いを帯びていた。


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