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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第一章
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王様と王妃

クラヴィクスの頼み事は、ルッツ達がいる王宮内の詰所に書類を持っていくことだったり、面倒だから君が紅茶を持ってきてくれと言ってきたりと、かなり簡単な頼みだった。

それでも無理をし過ぎると倒れてしまい、その度にクラヴィクスの執務室のソファーで寝かされていたのは申し訳なく思うし、何より口を魔法で開けて薬を流し込むクラヴィクスは、余計に負担に思っているのではないか?と不安になっていた。

そんなこともありながら、回数をこなしていくと体力もついてきた。

そろそろお仕事の回数を増やしても大丈夫かな……と思っていた時、クラヴィクスにある提案をされた。


「王と王妃に会いに行くか」

「……はい?」

「体調は?」

「元気ですけど……」


いきなりですか?と思ったけれど、前々から機会を見計らっていたらしい。

ただ、王の前で支えが必要な状態での挨拶は、見栄えが悪いとのことで止めていたそうだ。

あれよあれよという間に、クラヴィクスに王宮の奥に連れていかれた由良は、玉座を目の当たりにして瞳を輝かせた。


「小説の世界が……そこに……」


ファンタジーな世界での定番の玉座。

想像よりもこじんまりとした印象だったけど、威厳のある椅子だ。

あれに王様と王妃様が座るのか……と考えながら待っていると、背後から突然わっ!と脅かされ悲鳴を上げる。


「ははっ、君が由良か。宜しくな」


爽やかな笑顔と茶色の髪の毛。

ユリウスに似ているその顔。きっと王様なのだろう。

ただ、着てる服が王様らしくない。

隣にいるのは王妃だろうか。

美しい黒髪で、マリウスに似ているけれど、こちらも服が王妃様らしくない。

呆けた顔で2人を見ていると、クラヴィクスの不機嫌そうな声が聞こえてきた。


「2人とも……どこに行っていた」

「街」

「護衛は」

「付けていませんわ」


悪びれず答える2人に、盛大なため息を吐いたクラヴィクスは、何も言うつもりは無いのか無言で由良を見た。


「片山由良です」

「バルク・ケーニヒだ」

「ノラ・ケーニヒと申します」


にっこり微笑んで握手を求めた2人と握手を交わしていると、バルクの悪戯っ子そうな笑顔が見えた。


「ユリウスが由良を気に入っていたな」

「そうですか?」


むしろからかわれているだけのような……と答えると、2人が目を丸くさせ笑っている。


「どうだ妃にでもなっておくか?」

「バルク」

「おっと……おい、クラヴィクス。なんだよその目は。ああ、一人娘をユリウスに取られるのが悔しいのか?」


ニヤリと笑うバルクは王様にしてはノリが軽い。

それにしても一人娘とは。

親子ほど年の差は離れていない筈だけど……と、考えながら会話をしている2人を見る。


「あの2人と、あとルッツは小さい頃からの知り合いらしいのよ」

「へぇ!そうなんですね」

「えぇ、何でもクラヴィクスの父親が、王宮のお抱えの魔法使いだったと言っていたわ」


私はその頃のことは知らないけれど……と言うノラは、2人を微笑ましく眺めている。


(クラヴィクスさんのお父さん……)


家族構成など聞いたことは無かったけれど、クラヴィクスの父も魔力の高い人だったのだろうと推測できる。


「フォンツァの御披露目はこれで満足か?」

「ああ、クラヴィクスの愛娘も見れたからな」

「………」

「はいはい。じゃあな由良」

「由良。また会いましょうね」


手をヒラヒラと振る姿はユリウスのようで、ユリウスはきっと父親の癖が移ったのだろうな……と考える。


「クラヴィクスさん?」

「……ああ、戻るか」


2人の姿を眺めていたクラヴィクスは、由良を1度見てゆっくりと歩き出した。

歩幅が全く違うのに、着いていけるように自然と遅く歩くクラヴィクスは、実はフェミニストなのではないか。

執務室に向かう途中、そんなことを考えていたせいでバチが当たったのか、執務室に入った途端くらりと視界が揺れる。


「……?」


ポスンと倒れたのはクラヴィクスの腕の中。

距離を取ろうとしたクラヴィクスは、由良の様子にピクリと眉を上げた。

ソファーに寝かせ額に手を置きじっと由良を見つめる。

舌打ちを1度したクラヴィクスは薬を手に取り、大きくため息を吐く。


「……」


クラヴィクスの髪の毛がさらりと揺れ、由良の頬をなぞる。

起きる気配など見せない由良の唇を1度拭い、再びため息を吐いた。








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