とある会話をする闇の神とその眷属
ここは現実には存在しない異空間。
闇の神と謳われる彼は長い間、
勇者が現れるのを待っていた。
「勇者とやらはまだ現れぬのか?」
「そのようです」
闇の神たる彼の問いに、
闇の眷属たる老人が答える。
「なんとふがいない」と闇の神が頭を振る。
「今だ魔王と名乗る小物などに手こずっておるのか?
ふむ。やはり勇者こそが我を倒すことができる
唯一の存在だという伝承はデタラメに過ぎぬか」
「左様です。主様を滅ぼせる者など
勇者はおろか天空の神々さえもおりますまい」
眷属の言葉に闇の神は大きく頷く。
「創造より生まれた混沌。深淵なる闇より抱かれ育まれた
我の力に及ぶ者など存在しないということだな」
「荘厳なき軋轢。深紅なき老獪。それこそが
主様の刹那なる意義と意志でございます」
「その通りだ」
闇の神が再び頷く。
「まあ・・・あれだ。きっと、その通りだ。
しかし退屈だ。絶大なる力を保持した孤児。
我は常に孤独なり。勇者なる存在なれば
我の枯渇した生への渇望。潤沢なる死の虚栄。
盲目なき城壁なれど砂上の空炎を満たしてくれるものと
期待していたのだがな」
「仰るとおりです。勇者と言えど所詮は人の子。
主様の紅蓮のごとき強大な力の前では、
稚児なる玩具も絶望にむせび泣くことでしょう」
「その通りだ」
闇の神が三度頷く。
「ちょっとよく聞こえなかったが、その通りだ。
真紅のベールに包まれた不条理と不合理を
収束して解放、虚実の海へといざなう者として
我と言う存在がありおりはべりいまそかり」
「パンパミーヤでございます。要約すると
ぐじゅるべじゅるじょじょりありおん。
主様ならばこの意味、ご理解いただけますね」
「ぶんじょぐりあーん。無論だ。
しょしょりこんぱーやるるるぶぶぶりんさんぐと
ぽぽろくろいすものがたり――だろう?」
「流石でございます。しょしょりんぽーん」
「そうおだてるな。ブションこがリリガントとするぞ」
「それはトトロボーンンですな」
「いやむしろエエンボンジョーロだろう?」
「――」
「――」
両者がふと沈黙する。
しばらくしてから闇の神が「ふむ」と首を傾げる。
「なんだ? パンパミーヤとは?
全然、それっぽくなかったぞ。
どうやらこの勝負、我の勝ちだな」
「お待ちください、主様」
闇の神の言葉に眷属が頭を振る。
「それを仰るのであれば、
主様の「ありおりはべりいまそかり」も
意味不明でございます。ラ行変格活用など
ファンタジーには登場しないはず」
「むう・・・ならばなんだ?
稚児なる玩具が絶望にむせび泣くとは?
稚児がむせび泣くなら百歩譲って分かるが、
なぜ玩具が泣く? 玩具とかカッコイイから
無理やり入れてきた感が満載だぞ」
「それを言ってしまいますか?
ならば私も言わせてもらいますが、
空炎とは何です? 適当に文字うったら
漢字変換で出てきた感が丸出しですぞ」
「いやそれならお前の方こそ――」
「いえいえ主様の方こそ――」
二人は延々と無意味な指摘をし合い、
しばらくしてから二人同時に嘆息した。
「退屈だ。勇者はまだなのか?」
「・・・まだでございます」
「裏ボスも楽ではない」
「左様ですな」
それから長い沈黙を挟んで、
二人はまた誰ともなく
『ボスっぽい会話選手権』を始めた。
次で100話だって。驚きだね。
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




