とある偽りの親子関係とイセカイ・ラブ♡
「ぐはははは! 人間どもめ! 滅ぼしてくれるわ!」
私はいつものように近隣にある人間の村を襲っていました。
理由ですか? 特にありません。
強いて言えば魔族として生まれたから、でしょうか。
敵対する人間を滅ぼせと小さい頃から聞かされてきました。
だからこそ村を略奪することに何の疑問もなかったのです。
しかし私はその日に運命的な出会いをしました。
私の生き方を変えてしまう運命――
それはそう――
一人の女性との出会いです。
「ちょっと何してんだいシゲオ!」
初めは自分に言われていると気付きませんでした。
当然です。私はシゲオではないからです。
しかし村の奥から現れたその女性は私の方に向かってきたのです。
その時の私はまだ知りませんでした。
この女性が後に、私にとって一番大切な人になることを。
「ようやく帰って来たかと思えば、また村の人に迷惑をかけているのかい!まったくアンタもいい歳だってのに子供の頃から何も変わらないんだから!」
当然私は否定しました。私はシゲオではないと。
だが女性は聞く耳を持たず私を自分の家に連れ帰ったのです。
「ほら、アンタの好物のオムライスだよ。アンタがいつ帰ってきてもいいように母ちゃん毎日作ってるんだからね」
出されたのは作り立てのオムライスです。
私がこの村に来ることは事前に知らないはずなので毎日作っているという彼女の発言は事実なのでしょう。
「なんだいその顔は? まさかシゲオ。母ちゃんの顔も忘れちまったのかい?」
どうやらこの女性は私を息子のシゲオと勘違いしているようでした。
私は自分が息子ではないことを告げました。
しかし女性は私の言葉を鼻で笑うのです。
「舐めんじゃないよ。幾ら盲目したとはいえ自分の腹を痛めて産んだ子供を忘れるかい。ほら、詰まらない冗談は良いからさっさとオムライス食べちまいな。洗い物が片付かないだろ」
女性をひき肉に変えることは簡単でした。
しかし私はどういうわけかそんな気が起きなかったのです。
私は仕方なくオムライスを食べてその日は村を出ました。
「また行っちまうのかい。まあアンタの自由にすればいいさ。だけど母ちゃんと約束しな。十日間に一度でいいから母ちゃんのところに帰ってオムライスを食べるんだよ。親をいつまでも悲しませるもんじゃないよ」
私が村を去る時に女性はそう言いました。
もちろんそんな約束など私は守るつもりもありませんでした。
少なくともその時はそうでした。
しかし十日後――
私は気付いたらその女性の家を訪ねていたのです。
「来たね。ほらオムライスできてるからね。さっさと食べちまいな」
女性はそうぶっきらぼうに言いました。
しかし女性の出したオムライスはいつも温かいのです。
まるでそれが女性の本心であるかのように。
それからというもの私は十日に一度、女性を訪ねることが日課となりました。
私自身、どうして女性のもとを訪ねるのか分かりませんでした。
しかし今にして思うのです。
私は――寂しかったのかも知れません。
魔族である私は破壊と略奪のために生きています。
その世界はとても冷たく凍えたものです。
そんな私が女性の温かいなぬくもりを知りました。
それは私を息子と勘違いしたことによる偽りの想いなのかも知れません。
それでも私はその女性に求めてしまったのでしょう。
魔族にはない人間の愛というものを。
「――母さん」
私は気付いた時には女性のことをそう呼んでいました。
女性もまた私の呼びかけに微笑んで答えてくれました。
そんな偽りの関係が半年続いたある日――
女性がおもむろにこう言ったのです。
「私の命ももう――1ヶ月らしいよ」
私は女性にその意味を尋ねました。
女性は笑いながらこう答えたのです。
「病気だよ。これまで薬で何とか抑えてきたがね、どうやらもう限界らしい。」
目の前が真っ白になりました。
そして女性は私に驚くべきことを言いました。
「すまないね――息子のフリなんかさせちまって」
私は驚きのあまり声を失いました。
しかしすぐに尋ねます。
気付いていたのかと?
すると女性は笑いながら答えたのです。
「最初は気付かなかったんだ。だけどね・・・何日かして思い出したんだよ。息子は五年前に死んでいたことをね」
病気を抑える薬は強力なものです。
そのため意識が朦朧とすることもあるそうです。
女性は薬の副作用により息子が死んだことを忘れて、私のことを息子だと勘違いしたようです。
「病気を治すには高額の治療費が掛かる。とてもじゃないが払える額じゃないんだ」
女性は笑っていました。
死期を悟っていたのでしょう。
そして私にこう言うのです。
「今までありがとうね。ほんの僅かな時間だったけど本当に息子が帰って来たみたいで嬉しかったよ」
私は――泣きました。
生まれて初めて大きな声を上げて泣いたのです。
そして私は女性に言いました。
私が貴女を死なせはしないと。
私が貴女を救って見せると。
「気持ちは嬉しいけどね・・・どうしようもないだろ?」
女性は苦笑しました。
しかし私には一つの方法がありました。
そう――女性が話していた高額の治療費です。
その治療を受けることができれば女性を助けられる。
私は自分がその治療費を払うと女性に言いました。
「とんでもない――他人様の貴方にそんなこと頼めないよ」
頭を振る女性に私は言いました。
他人ではないと。
そんな悲しいことを言わないでほしいと。
貴女は私の母親であり――
私は貴女の息子なのだと。
例え血のつながりがなくとも――
例え種族が異なっていようと――
私と女性との間には家族と同じだけと絆がある。
私はそれを信じたのです。
女性は私の言葉にポロポロと涙をこぼしました。
「すまない・・・すまないねえ・・・私は本当に親孝行の息子を持って――世界一の幸せ者だよ」
涙を流した女性を――
世界で一番愛した母親を――
私はその場で強く抱きしめました。
====================================
リポーター
「女性のことを本当の母親だと感じていたのですか?」
魔族[ボイスチェンジャー]
「はい。私は彼女を本当の母親だと思っていました」
リポーター
「なるほど。ではお聞きしましょう。その女性はこれまでも同様の手口により魔族から金品をだまし取ってきました。騙されたという思いはありますか?」
魔族[ボイスチェンジャー]
「いいえ。母さんが僕を騙すはずがありません。なにかの間違いだと思っています」
リポーター
「しかし警察により女性はすでに逮捕されていますが」
魔族[ボイスチェンジャー]
「僕は母さんが無実であることを信じています」
リポーター
「分かりました。以上、詐欺被害者の声でした。次週は『俺、勇者勇者詐欺』事件の被害者に直撃します。それではいいですか? せーの――」
リポーター&魔族[ボイスチェンジャー]
「イセカイ・ラブ♡(番組名)」
リポーター
「また来週ーーー!」
みなさんもせーの――イセカイ・ラブ♡
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




