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とある王に変化した魔族の額ゴンゴン

挿絵(By みてみん)

※「とある風となった男と魔族のトライアスロン」登場キャラ

「くそ・・・一体どういうつもりだ!?」


そう怒声を飛ばすのは

手足を縛られてクローゼットに押し込められた

一人の中年男性であった。


中年男性の前に立つ影が、

男性の怒声にクツクツと肩を揺らす。


その影はなんと――

中年男性と瓜二つの顔をしていた。


「そう興奮するな、人間」


手足を縛られた男性と瓜二つの男が、

可笑しそうに言う。


自身の白髪交じりの顎髭を指先で撫で

子供に教えるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。


「我々からのちょっとしたプレゼントだ。

貴様もたまには休息が欲しいだろう?」


「何だと?」


「貴様の代わりに、魔族であるこの俺が

国王としてこの国を支配してやろうというのだ」


自身と同じ顔をした男の発言に

手足を縛られた中年男性が顔を青ざめさせる。


「まさか・・・私にとって代わるつもりか?」


「この田舎国を魔王様の支配下にしてやろうというのだ。

せいぜい感謝することだな」


「ふざけるな、魔族が! そんなこと許されるものか!」


「貴様の許可など必要ない。これは我ら魔族が決定したことだ」


同じ顔をした男。魔法により姿を変えた魔族。

その魔族が表情を歪める人間――国王を嘲笑う。


魔族が懐から布切れを取り出し

その布で国王の口をきつく縛り上げた。


「むう・・・ううううう!」


「家臣どもに怪しまれないためには

王である貴様の知識も必要となるだろう。

ゆえにまだ殺さないでやる。少しでも

長生きをしたければ、俺の機嫌を損ねないことだな」


国王の口を封じて

魔族はクローゼットの扉を閉めた。


そしてこれより始まる国盗りを思い浮かべ

魔族は一人ほくそ笑んだ。



===========================



王城の廊下を歩きつつ

王に変化した魔族は胸中で呟く。


(さて・・・まずは王としての業務に慣れなければな)


すぐにでも国の乗っ取りを始めたいところだが

唐突に態度を変えては周りの人間も怪しむだろう。


しばらくは王の行動を模倣して周囲の信頼を得る。

そのうえで、折を見て家臣などを魔族にすげ替え

国全体を支配していくのが良いだろう。


(長期戦になるが・・・)


少しばかり興奮しているのを自覚する。


作戦上とはいえ、国王としての生活が始まるのだ。

胸躍るのも仕方ないだろう。


これから始まる国王ライフに

魔族の口元が思わず緩む。


(うまい飯も食えるんだろうな・・・)


そう考えたところで、

廊下を歩いていた使用人が

食事の用意ができたことを伝えてきた。


魔族は怪しまれないよう冷静に返事をするも

内心は小躍りしながら食事の場へと急いだ。



テーブルに並べられていた料理は

想像通り豪勢なものであった。


魔族はいそいそと席に着くと

目の前にある料理に手を伸ばそうとして――


ふと頬が痒くなり

伸ばした手を引っ込めて頬を掻いた。


直後――


テーブルの下から突如突き出した鋭い剣が、

魔族の引っ込めた手の指を掠めた。


「・・・・・・・は?」


頬を掻こうとした指先を止めて

ポカンと目を丸くする。


テーブルから無造作に突き出した剣。

もし頬を掻かずに料理に手を伸ばしていれば

手首が切断されていただろう。


「これは・・・一体?」


答えを求めて周囲を見回す。


部屋には数人の家臣がいる。

だが誰もこちらの疑問に応えない。


というか・・・何か奇妙だ。


「・・・ちっ」


家臣の一人が舌を鳴らして

テーブルをタンタンと叩く。


テーブルから突き出していた剣がひっこみ

テーブルの下から剣を握った男が這い出す。


剣を持った男と家臣が一言二言交わして

何やら嘆息しながら剣を握った男が部屋を出て行く。


彼らのやり取りを呆然と見やり

魔族は躊躇いつつ口を開いた。


「あの・・・今のは?」


「どうかされましたか? 陛下?」


剣を持っていた男と会話をしていた家臣が

何事もないように首を傾げる。


「・・・今の男は何だ?」


「男? 何のことでしょうか?」


「いや・・・お前話していただろ?」


「私が? 何かの勘違いでしょう。

おい誰か。私は誰かと話をしていただろうか?」


家臣の一人がそう周りに尋ねる。

部屋にいた家臣の全員が首を横に振った。


「御覧の通り、陛下の勘違いでしょう。

そのような妄言はさておき食事をなさってください」


何やら釈然としない。


魔族は首を傾げながらも

料理に改めて手を伸ばした。


カボチャのスープと思しき皿を手に取り

それを手元まで運ぼうとして――


「・・・あ」


指先からスープの皿が滑り落ちる。


皿がカランと床に落下して、

スープが絨毯に飛び散った。


すると――

絨毯からジュッと刺激臭が立ち上る。


またも呆然とする。


スープに触れた絨毯からブスブスと煙が上り

瞬く間に大きな穴が空けられる。


まるでスープの中に強酸が仕込まれていたようだ。


周囲の家臣を見回す。

だがやはり誰も何も言わない。


ただ予定が外れたというように、

苦々しい表情を浮かべるだけだ。


彼らから感じる無言の気配に、

魔族はダラダラと冷や汗を流した。



=======================



「どういうことだぁああああああああああ!」


クローゼットに閉じ込めていた王に

夕食時の出来事を説明して問いただす。


顔を蒼白にするこちらに

王が神妙な面持ちで淡々と言う。


「まああれだ・・・暗殺だな」


「暗殺だと!?」


「王ともなれば暗殺の一つや二つあるものだ」


なぜかふんぞり返る王に

魔族は狼狽も顕わにして言う。


「だからって露骨過ぎないか!?」


「王ならばこんなこと日常茶飯事だ。

この程度のことで取り乱すな、みっともない」


王にとって暗殺など日常茶飯事なのか!?

王に変装したことをやや後悔しつつ

魔族は頭を抱えて王に尋ねる。


「ど・・・どうすればいい?

このままでは殺されてしまう」


「魔族にアドバイスなどしたくないが、

暗殺などされたとあっては王の沽券にかかわる。

いいだろう。私もよく使う対処法を教えてやる」


手足を縛られた王がむんと胸を張り

至極当然のごとく言葉を続ける。


「愚民どもを従えるには恐怖政治が手っ取り早い。

まず街に出て自分を睨んできた馬鹿どもも片っ端から

処刑すればいい。女子供も関係ない。皆殺しだ。

さすれば低俗なカスどもも、王であり神である

私に逆らうことの愚を悟り、自然と大人しくなろう」


「・・・え?」


「なんだ? 私は何かおかしなことを言ったか?」


疑問符を浮かべる王に魔族はやや尻込みつつ言う。


「その・・・睨んできただけで処刑するのか?」


「私を不快にさせたのだからな」


「暗殺に関与しているか分からんのにか?」


「怪しい奴は軒並み処刑すれば、

いずれ犯人にも辿り着く」


「・・・ひどくない?」


「どこがだ? 王として当然の権利だろ?」


淡々と言う王に、

魔族は背筋を凍えさせた。


(この男が暗殺される理由が分かった気がする)


するとここで――


「このクソ野郎が! テメエの圧政もここまでだ!」


突然部屋の扉が開かれて

武器を手にした人間が大勢なだれ込んできた。


慌ててクローゼットを閉めて振り返る。


自身の鼻先につきつけられた刃を前に

魔族は空回りする舌を必死に動かした。


「ななな、なんだ貴様らは! 護衛はどうした!?」


「『ガンバ』って快く送り出してくれたわ!」


どうやらこの国には自分――というか王――の

味方は誰一人いないらしい。


するとここでクローゼットの中から

吐き捨てるような罵声が鳴らされた。


「この低次元のカスどもが何の用だ! 

この王たる私に逆らうということは、

神への反逆に等しい行為だと分からんのか!?」


「なんだと!? このクソったれの王が!」


「ち、違う! 私が言ったんじゃない!」


クローゼットからの声をこちらの言葉だと

勘違いして武器を手にした人間たちが憤慨する。


鼻先に触れていた刃がズブズブと肉に

めり込んでいく痛みに背筋を粟立てつつ

魔族は必死に弁明した。



「ききき、君たちの怒りはごもっともだ!

まったくもって酷い王だ! うん!」


「他人事みたいに言ってんじゃねえ!」


「それは・・・ととと、とにかく落ち着いて!」


「クソゴミの愚民が王であるこの私に

大層な口利いてくれんじゃねえか!? ああ!?

テメエらカスどもが私を殺せると思ってんのか!?

やれるもんならやってみやがれ! 便所虫が!」


「おもしれえ! 今ここでぶっ殺してやる!」


「ちょっと待てえええええ!」


クローゼットの中から意気揚々と怒鳴り散らす

王に魔族は生きた心地がしなかった。


「ほんと違うんだ! これからは心を入れ替える!

だから今回だけは許してくれ! 頼む!」


「誰が便所虫どもに謝るか! テメエらクソどもなんぞ

私の神から与えられた神パワーで八つ裂きにしてくれるわ!」


「テメエ! 謝ってんのか煽ってんのかどっちだ!」


「ほんとこの通りだ! 私が間違っていた!

お願いだ! 命ばかりは助けてくれ!」


「ゴミムシに命乞いなんぞできるか!

テメエらに頭を下げるくらいなら、

道端のガムに頬ずりしたほうが何倍もましだ!」


「だからどっちなんだ! テメエは!」


「助けてくれ! まだ死にたくないんだ!」


「愚民どもが! 皆殺しだ! 誰も彼もぶっ殺してや――」


「黙ってろおおおおおおおおおおおお!」


クローゼットを全力で殴りつける。


クローゼットが横倒しとなり

口汚く罵っていた声が途端に沈黙した。

クローゼットに閉じ込めていた王が気絶したのだろう。


魔族はそれを確認すると

膝を折り曲げてペコペコと土下座した。


「本当に今回ばかりは見逃してくれ!

私は生まれ変わったんだ! もう君たちに

酷いことなどしない! どうかこの通りだ!」


「・・・あの傲慢な王が・・・俺たちに頭を下げて」


ゴンゴンと床に額を打ち付けるこちらの姿勢に

人間たちが戸惑いながらも武器を下した。


「・・・本当に心を入れ替えたのか?」


「入れ替えた! もう私は別人になった!

いやホント・・・マジで別人だから!」


必死にそう訴えるこちらに

人間どもがやや思案してから言う。


「俺たちもこんなやり方で国を滅茶苦茶にしたくない。

お前がそう言うのならもう一度だけチャンスをやる」


「ほ、本当か!」


「ただしこれまでのように圧政が続くようなら

今度こそ武器を取り貴様を殺す! いいな!」


「も、もちろんだ! 私はこれから

民のために身を粉にして働く所存だ!」


魔族はそう誓いを立てると

瞳の中にやる気の炎を燃えあがらせた。



そしてその後魔族は

王として立派に勤めを果たしたとさ。



めでたしめでたし。



話が長い! あとタイトル適当!


ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。

もう少し延長させてやろうという方、

よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。


ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。

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