とある異世界に召喚された魔族の戦い
少女が高らかに杖を掲げる。
「いでよ! 最強の勇者よ!」
少女の足元に魔法陣が展開され
眩い光を放つ。
ドキドキと胸を鳴らしながら
魔法陣を見つめる少女。
魔法陣の上に光の輪郭が生まれ
その光が徐々に実態を帯びていく。
そして瞬く間に――
魔法陣に一人の戦士が召喚された。
「む・・・ここはどこだ?」
魔法陣から現れた戦士がぼそりと言う。
少女はぴょんと跳ねると
召喚された戦士に歓喜の声を上げた。
「きゃあああ! やったああああ!
ついに成功したわーー!」
「ぬ、貴様――人間だな!」
召喚された戦士。
緑の肌に角を生やした生物が、
手にしていた肉厚の剣を構えた。
「ぬははははは! ここで会ったが百年目!
魔族のこの俺が貴様を殺して――」
「勇者様! どうか世界をお救い下さい!」
「殺して――ん? 何だって?」
召喚された戦士こと
緑の肌をした生物こと
世界の命運を握った勇者が首を傾げる。
困惑している勇者に
少女は両手を合わせる。
「いま世界は悪の根源に苦しめられています!
どうか、どうか勇者様のお力をお貸しください!」
「いや待て・・・勇者とは何だ?
俺は魔族だぞ? むしろ正反対だろ?」
「マゾク?」
少女が疑問符を浮かべる。
悩むように沈黙し
しばらくしてポンと手を打つ。
「もしかして勇者様の世界にいる
種族の名前でしょうか?
ここは勇者様のいた世界とは異なる
世界なのでマゾクと呼ばれる種はいません」
「ぬう・・・異世界とな」
勇者が腕を組みこくんと頷く。
「なるほど・・・俺の世界にいる
勇者とやらも異世界から来たという。
俺はどうやらそれと同じ状況にあるようだな」
「さあ勇者様! どうかその力で世界に光を!」
懇願する少女に
勇者が難しそうに眉をひそめる。
「しかしここが異世界だろうと俺は魔族だ。
勇者の真似事をするというのはどうだろうか?」
「お願いします!」
「んー・・・勇者と言えばあれだな」
勇者が真剣な面持ちで言う。
「ラッキースケベだ。その特典はあるのだろうか?」
「え? まあ・・・あるんじゃないんです?」
「ハーレムはどうだ? 大中小と三種類ほしい」
「よく分かりませんが・・・善処します」
「チートも欲しい。
あれ?俺なにかやっちゃいました?的なやつ」
「全部用意します! だから助けて下さい!」
「ぬははははは! この俺に任せるがいい!」
勇者が剣を頭上に掲げる。
「この俺こそが世界を救う勇者なり!
さあ悪の根源のもとに俺を案内するがいい!」
「ありがとうございます!ではこれを――」
少女がさっと勇者に武器を手渡す。
それは悪の根源たる存在を唯一倒せる武器――
スリッパだ。
「? なんだこれ?」
「敵は冷蔵庫の下です!さあ早く!」
「いや待て!スリッパ!?どういうことだ!?」
「あの黒い物体に世界中のみんなが苦しんでます!
世界を救うため、どうかあの黒い物体を倒してください!」
「だから待て!まさかと思うが――」
勇者が絶叫する。
「敵とはゴキブリのことか!?」
「え? 当たり前じゃないですか。
この世界にゴキブリ以外の敵などいません!」
「念のため確認するがテ○フォーマー的な感じではないな!?」
「テラ○ォーマー的じゃないです!普通の奴です!」
「ふざけるな!勇者がゴキブリ退治など聞いたことない!」
「ラッキースケベもハーレムも用意します!
一番可愛いゴキブリを用意しますから!」
「何でだ!?世界の敵じゃなかったのか!?」
「チート能力!『ゴキブリの捕食』もつけます!」
「つけられても食うか!んなもの!」
「倒してください!」
「いやだ!」
「倒してください!」
「だからいやだと――」
パァアアアアアアアアン!
少女が勇者の頬を叩く。
ぺたんと尻もちをついて
呆然とする勇者に少女が叫ぶ。
「やれっつってんだよ!
ばらして便所に流すぞゴラァアアア!」
「・・・は、はい・・・」
勇者が涙目で頷く。
こうして――
勇者の世界を守る戦いが始まった。
2週間ぶりの割に内容がない。
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




