とある最弱の救世主とターミネーター
そいつは何の前触れもなく俺の前に現れた。
「ようやく見つけたぞ。救世主よ」
理解できないそいつの言葉に、
俺は首を傾げた。
「・・・何者だ貴様。見たところ
俺と同じ魔族であるようだが」
緑の肌に頭から生えた角。
一般的な魔族の特徴を有した存在。
だがどこか奇妙だ。
正確には分からないが
その魔族は雰囲気が違う。
魔族のそいつは頷いて
すぐに頭を振った。
「確かに俺は魔族だ。
だが現代の魔族である君たちとは
異なる存在でもある」
「現代の魔族だと?」
「俺は今から二十年も未来から
タイムスリップしてきた魔族なのだ」
「タイムスリップとな?」
眉間にしわを寄せる俺に
未来の魔族を名乗るそいつが首肯する。
「今から二年後に私たち魔族は人間に敗北する。
そして人間による監視社会の元、
魔族は絶滅の危機に瀕してしまうのだ」
「なんと・・・それは誠か?」
「うむ。だがそんな時代において
魔族のために立ち上がった救世主がいる。
それが未来の君だ。救世主たる君は
革命軍を組織して、人間に戦いを挑んでいる」
「なるほど。何の疑いようもなく理解した。
だがそれを伝えるために、わざわざ
未来からタイムスリップしてきたのか?」
「いや、そうではない。
革命軍の抵抗を脅威に感じた人間が
救世主として覚醒する前の君を始末しようと
この時代に暗殺者を送り込んだのだ」
「暗殺者?」
「魔族の姿を模した機械人形。
通称ターミネーターだ。私はその
ターミネーターから君を守るために
タイムスリップしてきたのだ」
「そういうことか。ところで先程から
気になっていたのだが、お前の背後にいる
妙に角ばった魔族チックな奴は何者だ」
「はて? どれどれクルリと・・・ふむ。
おお。こいつが先程話していたターミネーターだ」
「ギガッシュ!」
角ばった魔族――ターミネーターが
機械音を鳴らしてポージングする。
チカチカと豆電球ていどの光量で
目を光らせるターミネーターに
俺はおもむろに首を傾げた。
「こいつがターミネーターか?
確かに我ら魔族を模しているようだが、
不思議と俺は普通の魔族と見分けがつくぞ。
どことなく角ばっているからな」
「それは君が救世主だからだ。
普通の魔族はこのターミネーターと
通常の魔族を識別することはできないだろう」
「だがお前も識別したではないか」
「うむ。角ばっていたからな」
「ボガッシュ!」
ターミネーターがシャドーボクシングをする。
どうやら戦闘意欲ばつぐんのようだ。
敵意を尖らせるターミネーターに
未来からきた魔族が警戒を浮かべる。
「気を付けろ。機械人形である奴は
強力な武器を使用する。トンカチとかペンチとか
プラスチックバットとかな」
「恐ろしい奴だ。いいだろう。
ターミネーターだか何だか知らんが
俺がこの場で倒してくれる」
「止めろ! 君に勝ち目はない!」
「しかし俺は救世主なのだろう?
ターミネーター一体ぐらい倒せるはずだ」
「君は救世主の中でも最弱だ」
「そんな四天王的なノリなのか?」
「いかん! 来るぞ!」
「ゲゴゴゴゴシャー!」
ターミネーターが奇声を上げて
襲い掛かってくる。
恐ろしい速度だ。
うわあ向かってキターとか
何とか考えている間に
三歩ほど歩いている。
ターミネーターが
豆電球の眼球を光らせて――
「魔族見つけたぁあああああああああ!」
ここで突如冒険者然とした人間が現れ
ターミネーターに延髄蹴りをかました。
ターミネーターの頭が千切れ飛んで
景気よく地面に跳ねる。
頭部を失ったターミネーターが
パタンと地面に倒れて
冒険者が拳を突き上げてガッツポーズした。
「ちゃららちゃっちゃっちゃー!
レベルアープ!」
ぽかんと目を丸くする俺と未来の魔族。
ターミネーターを瞬殺した冒険者が
こちらにくるりと振り返る。
「えっと・・・もうノルマは達成したんで
君たちとは戦いません。あしからず」
そう言って冒険者が去っていく。
人間の背中を沈黙して見送る。
人間が見えなくなった辺りで
俺はぽつりと未来の魔族に呟いた。
「・・・よく分からんが、
何にせよ救世主たる俺は守られた。
お前はもう未来に帰ると良い」
「ああ、そうしよう」
「さらばだ」
「うむ。アイル・ビー・バック」
未来の魔族が親指を立てて
踵を返して去っていった。
戻ってくるんかい。
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
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