とある記憶喪失の青年と遺跡
ふと目を覚ました時、
俺は川辺で寝転んでいた。
全身が濡れている。
どうやら川から打ち上げられたようだ。
朦朧とする意識の中で
上体を起こす。するとその時――
ズキンと頭が痛んだ。
「・・・ここはどこだ?」
いや、それ以前に――
「俺は・・・誰なんだ?」
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記憶喪失。
状況から考えて
そういうことなのだろう。
俺は自身の姿を確認した。
天秤の紋章が彫られた鎧に、
七色に輝いている肉厚の剣。
俺はどうやら戦闘を
生業とする者だったらしい。
だがいくら首を捻ろうと
目を覚ますより以前の記憶が浮かんでこない。
「俺は・・・何者なんだ」
とりあえず
どこか休める場所まで移動しよう。
俺は森の中を歩き出した。
するとここで――
「ぐははは! 魔族の参上だ!」
茂みから魔族が現れた。
疲労困憊の状態で魔族と戦うのは厳しい。
何よりも記憶が失われていては
まともな戦略など立てられるはずもない。
そう思うが――
俺の体は自然と剣を抜刀していた。
「――き、貴様は!?」
剣を抜いた俺に、
魔族が狼狽の表情を見せる。
一体どうしたのか?
魔族が慌てて森の奥へと逃げて行った。
俺は意味が分からず
森の中で一人呆然とした。
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とある村へと辿り着く。
休める場所を探している俺に
血相を変えた一人の村人が駆け寄ってきた。
「お、お前さん! その紋章は・・・」
「この紋章が・・・何か分かるのか?」
鎧にある天秤の紋章を見て狼狽する村人に、
俺は怪訝にそう尋ねた。
村人が重苦しい表情で小さく頷く。
「この山を越えた場所に遺跡がある。
その天秤の紋章はその遺跡の民のものだ」
「遺跡・・・つまりもう人は住んでいないのか?」
「ああ・・・300年も前に滅んだとされている」
村人の話を聞いて、またズキンと頭が痛んだ。
失われた記憶。だが直感が告げている。
その遺跡と俺は――無関係ではない。
「その遺跡について詳しく教えてくれ」
勢い込む俺に、村人は沈痛に顔を曇らせた。
「残念だがそれほど詳しくはない。
分かっているのはひとつだけ・・・
その遺跡の民が――『戦人の民』と
呼ばれていたことだけだ」
「・・・戦人の民?」
「一人の戦士が数千もの兵に凌駕するという話だ。
どこまで本当かは知らんがな・・・もしそのような民が
誠に存在するならば・・・この魔族がはびこる世界も
平和に導いてくれるだろうにな」
「・・・世界を・・・平和に」
「ふ・・・つまらぬ話をしたな、旅の人よ。
ただの噂だ。そうお気になさらぬな。
そのような救世主など要るわけがないのだからな」
そう苦笑して村人は去っていった。
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俺の足は自然とその遺跡へと向かっていた。
300年前に滅んだはずの一族。
強大な力を有した『戦人の民』。
その遺跡に向かったところで
得られるものなどないのだろう。
それは分かっている。
理解している。
だが理屈ではない何かが
俺をその遺跡へと向かわせた。
俺の中に流れている血が――
俺の中に脈動している魂が――
その遺跡との邂逅を望んでいた。
山の頂上にある遺跡。
当たり前だが人気などない。
冷たい風が肌を撫でる。
だが俺はその遺跡を前にして――
体が熱くなるのを感じていた。
「俺は・・・この場所を知っている」
自然と涙があふれてきた。
失われた記憶。
過去のない人間。
頭蓋に収められた脳には
自分を証明するものは何もない。
だが目の前に――
伽藍洞とした遺跡に――
息吹きのないその場所に――
俺の記憶が確かに存在していた。
「俺は・・・『戦人の民』だ」
それを確信する。
――するとここで
背後から頭を強かに叩かれた。
「こんの厨二病小僧が!
性懲りもなくまた現れおったな!」
べちゃりと倒れて意識が遠のいていく。
木の棒を持った数人の老人が倒れた俺を囲い込む。
「俺は『戦人の民』の生まれかわりだぁあって、
遺跡にペンキで汚いサインまでしてくれおってからに!
ペンキ落とすのに管理人であるわしらが
どれだけ苦労したか分かっておるんか!」
「まだそんなオーダーメイドの鎧と剣なんぞ
装備しておるんか!? そもそもこの遺跡は
『戦人の民』つうようわからん一族のものではなく、
猫派犬派抗争で滅んだ馬鹿民族の遺跡だ言うとろうが!」
「この辺りじゃ魔族さえもオメエさんを避けるらしいな!
あまりにイタイからして関わると頭がおかしくなるつうて!」
「昨日川に捨ててやったのにまだ生きおったのか!
もう一度川に捨ててやるべ! みんな!」
こうして老人たちが俺の体を担いだところで
俺の意識は闇に落ちて消えた。
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ふと目を覚ました時、
俺は川辺で寝転んでいた。
全身が濡れている。
どうやら川から打ち上げられたようだ。
朦朧とする意識の中で
上体を起こす。するとその時――
ズキンと頭が痛んだ。
「・・・ここはどこだ?」
いや、それ以前に――
「俺は・・・誰なんだ?」
以下ループ。
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