とある宇宙から来た女の子のアブダクション
「随分と原始的な星ですねぇ」
宇宙船から降り立ち開口一番にそう呟きました。
この星の文明レベルが低いことは
事前情報により明らかになっていたことです。
それでも周囲に起立した樹々を眺めると
自然とそんな驚きの言葉が口から漏れました。
「まあでも、空気は澄んでますし、
偶にはこんな辺境の星に出向くのも
悪くないかも知れませんねぇ」
そう独りごちながらうんうんと頷きます。
もっとも、あたしは観光に来たわけではありません。
わざわざこんな辺境の星に出向いたのは、
星の生態系を調査するためです。
「とりあえず2、3種類の生物を
検体として持ち帰れということですが・・・」
上司の指示を呟きつつ、
周囲をキョロキョロと見回します。
このような辺境の星では、
宇宙人の存在が知られると
色々と面倒なことになります。
そのためすぐに仕事を終えて、
宇宙船での帰還が推奨されるのです。
するとここで――
「ほう・・・すごい音が聞こえたと思えば、
こんな森深くに人間がいるとはな」
緑色の肌をした屈強な生物が
木々の陰から姿を現しました。
どうやらこの緑色の怪物が、
この星に繁殖する生物らしいです。
人間と言うのもたぶん、
この星に繁殖する生物の名前でしょう。
広い宇宙において、
異星の生物とその姿形が似ることはあるのです。
「あ、ちょうどいいところに居ましたぁ」
あたしは緑色の怪物に歓声を上げました。
緑色の怪物がやや怪訝に眉をひそめ、
だがすぐにその眼光を光らせました。
「ふっふっふ・・・ふざけた人間だ。
まあいい。しばらく血の匂いを嗅いでおらず、
不満が溜まっていたところだ。何者かは知らんが
我が剣にて貴様を八つ裂きに――」
「えい、捕獲」
緑色の怪物の話を最後まで聞かず、
捕獲銃を怪物に発射しました。
「ぼげぇえええ!」と悲鳴を上げ、
緑色の怪物があっさりと
五センチほどのガラス玉に変化しました。
ガラス玉に怪物を封じ込めたのです。
怪物を捕獲したガラス玉をポケットにしまうと、
あたしはまたキョロキョロと視線を巡らせました。
「えっと・・・他には」
新たな獲物を探していると――
ズシンと大きく地面が揺れました。
目の前の木々が左右に開けて、
身丈五メートルもの怪物が姿を現したのです。
「ほう・・・我が右腕たる部下を
一瞬のうちに倒してしまうとは、
見掛けに寄らずなかなかの強者よ。
だがわしが来たからには――」
「えい、捕獲」
身丈五メートルの怪物が、
あっさりとガラス玉に変化しました。
またガラス玉をポケットにしまい、
あたしはほくほくと笑顔を浮かべます。
「こんな簡単に検体が手に入るなんて
ついてますね。この調子なら、
もう一体ぐらいすぐに――」
ここで突然、空が暗雲に包まれました。
黒雲から稲光が走り、
冷たい風が吹きすさびます。
悲鳴にも似た風の音が周囲に満たされる中、
地面が地響きを立てながら真っ二つに割れて――
地中より黒い影が姿を現しました。
「我は666の地獄の門を統べる――魔神なり」
おどろおどろしい声を出しながら、
地中より現れた影がギラギラと赤い瞳を輝かせました。
ただまあそれはそれとして――
「えい、捕獲」
あたしは影に向けて捕獲銃の引き金を引きました。
だけど影はさっと姿を消して、
銃から発射された光を躱してしまいました。
あたしが驚いていると、
すぐ背後からまたおどろおどろしい声が聞こえてきました。
「奇妙な術を使う小娘だ。だが無駄なこと。
私を先程の魔族と一緒には考えないことだ。
私は魔族の神である魔神。暗黒の世界を支配する――」
「えい、パンチ」
ブツブツと話している影に、
あたしは右拳を突き出しました。
「ぶげらぁ!」と悲鳴を上げながら殴り飛ばされる影。
地面に倒れてピクピクと痙攣したところで――
「えい、捕獲」
再び捕獲銃を発射しました。
弱らせたため、今度はあっさりと影を捕獲できました。
またガラス玉を拾い上げ、
あたしは跳びはねたい気分で笑います。
「これだけ検体があれば問題ありませんね。
こんな早くに仕事が終わるなんてラッキーですぅ」
この捕獲した検体は調査機関に回されて、
バラバラに分解されて調査されるでしょう。
少し可哀想な気もしますが、
あたしには関係のないことです。
あたしはルンルン気分で宇宙船に戻りました。
調査には犠牲がつきものなのです。
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




