要求分析6
さて、要求分析をしてきましたが、もう一つやっておくことがあります。それは “Scale” です。とは言え、個別に見れば、世界観やこれまで書いてきた世界設定から、不要な場合もあります。
“Scale” とは、キャラクターや物の大きさ、あるいはエフェクトの効果やその範囲と考えてください。たとえば人間と巨大ロボが共に存在する世界であった場合、それらを現わすには単一の “Scale” を用いた方が簡単だったりもしますが、ここではまだ定量的に考えていないため、 “Primary” などと同じような感じで考えます。そこで、 “Scale” の表現もこのようにしましょう:
Terrible: とても小さい
Poor: 小さい
Average: 人間くらい
Good: 大きい
Great: とても大きい
「小さい」とか「大きい」の基準は、ここでは設けません。というのも、アイテムが恒星間航行船だったり、あるいは太陽系そのものを移動させているなどという場合もありうるでしょう。しかも、さらに大きな超銀河団すらアイテム扱いになるかもしれません。そこで「絶対基準」と「相対基準」をとりあえずアイディア上においては用意します。絶対基準の “Average” は人間なみというところは固定しておいて、あとの絶対基準はとりあえず世界観に合わせましょう。
なお、 “Scale”は、表計算ソフトの1カラムめの右に1つカラムを用意して、そこに書いておきましょう。
仮に、この5つでは不足だとしたら、 “Average + 1” や “Great - 1” のように増やしてもかまいません。ただ、あまり細かくやってもしかたないことには注意してください。おおむねどう割り当てればいいかであって、書き出されているエンティティやそれ以外であってもかなり例外的なものであったりすれば、そんなに気にしなくてもかまいません。
“Scale” を実際に扱う方法としては、うまい具合に設定する方法と、累乗を使う方法があります。数値を使い、かつ累乗や対数を使う場合、1段階大きくなると実際の値としては、いろいろと1.3倍から2倍大きくなることに対応することが多いかと思います。1.3の2乗、3乗……とか、2の2乗、3乗……とか、どうせ表計算ソフトを使っているので、どんな感じになるかをいろいろ見てもらうといいかもしれません。1.3倍〜2倍というのも、そのあたりのものが多いという話であり、そうでなければならないという話ではないので、数値を使うなら何倍にするかは表計算ソフトで試してみてください。
相対基準の例も挙げておきましょう。現在の段階では気にしなくてもいいのですが、相対基準だと扱いがこうなるという話です。
あるキャラクターやアイテムの “Scale” が 絶対基準で “Good” だったとしましょう。この場合、そのキャラクターやアイテム自身にとっての “Scale” も “Good” とはならないとしましょう。あるキャラクターやアイテムにとって、自分自身は常に “Average” です。こちらが「相対基準」ということになります。このあたり、上では絶対的に “Good” だったりしたので混乱するかもしれません。
そして、絶対基準において “Good” であるキャラクターやアイテムでの相対基準としての “Average” は、絶対基準に直すと “Good” になります。
このようにする利点は、たとえば巨大ロボ同士の戦闘やら、逆に小さいものどうしのなにやらも、絶対基準と同じように処理できるという点があります。つまり、巨大ロボ同士であれば、相対基準である巨大ロボの “Average” が基準となって処理できるわけです。
あるいは宇宙艦隊戦なんかでもそうですが、このあたりで絶対基準しかないとしましょう。そうした場合、判定が存在するシステムであって、能力値やスキルが存在する世界設定およびシステムであれば、判定に使うパラメータは人間と同程度でないと判定がしにくくなります (できなくなるわけではありませんが)。それに対して、そのエフェクトは距離にせよダメージにせよ人間基準のものからはかけ離れたものになります。というわけで、パラメータとエフェクトの数値 (を使うのであれば) がかけ離れたものになります。それでもかまわないという場合や人もいるでしょうが、「なんか気持ち悪い」と感じる場合や人もいるでしょう。
実際の話として絶対基準に統一するか、絶対基準と相対基準を用いて表現するかは、まだあとの話ですので、相対基準を用いる方法もあると考えておいてくれれば、それでかまいません。
絶対基準を表計算ソフトに書き込んでいく作業により、エンティティのエフェクトの強さなどが変更されるかもしれません。
もっとも、“Scale” を書き込むのは面倒臭いとか、世界設定として不要という場合もあります。その場合はそれでかまいません。
ところで、この連載は小説家になろうという場所で行なっているため、世界観の作り方あたりについては触れませんでした。とてもおざっぱなものを、昔、書いて、ある場所に公開している、「こういうパラメータが存在するとして」という場合のTRPGを作るという話から持ってきます:
* 人々はどんな生活をしているのか?
その世界には、どんな人達が、どんな生活をしているのでしょうか?
* どんな物がある世界なのか?
その世界には、どんな物があり、どんな物が無いのでしょうか?
* どんなことができ、またできないのか?
その世界ではどんな現象が有り、またどんな現象は存在しないのでしょ
うか? これは、世界設定に関しても考えなければなりませんが、 シ
ステムにおいてそれをどのように表現するのかについても 考えなけ
ればなりません。
* PCは、その世界でどのような立場にいるのか?
PCはどんな立場に立つのでしょうか? 英雄かもしれません、あるいは
ひ弱なただのとるにたらない存在かもしれません。
これに関係して、次のようなことも考えるといいかもしれません (これも同資料より):
* 世界の論理性 (?? : 強/中/弱)
* 世界の雰囲気 (?? : 明/並/暗)
* 時代 (過去/未来 : 遠/近い、ほとんど今)
* 舞台の広さ (国/星系 : 広/中/狭)
* PCの職業選択の幅 (冒険者/探偵 : 広/中/狭)
* 人間以外の知性体 (亜人間/モンスター/異星人/AI/幽霊 : 多/少)
* 超越的存在 (精霊/魔物/神/AI : 多/少/影響が明確/影響が不明確)
* 肉体能力の強さ (?? : 強/中/弱)
* 肉体能力の拡張 (魔法/奇跡/科学技術/コンピューターネットワーク :
強力/貧弱/多/稀)
* PCの行為の影響 (?? : 大/中/小)
* 対立構造 (善悪 : 明確/不明確/単純/複雑)
このあたりから出発して、いろいろ書き出したり、これまでやってきたようにエンティティとして書き出したりというあたりを試してみてください。
さて、これで「どういうことができるようにしたいのか」という要求分析はできました。次回からは、「それをどのように運用可能にするのか」という話に入りたいと思います。