システムを作る必要はあるのか
さて、一つ前の「最初に考えること」では、「この時点でどれかに決めよう」とは言っていないことに注意してください。システムは、おおまかに分けてもこの四種類があるというだけです。もっとも、この時点で勇気を持って決めてしまうという手もないわけではありませんが。
そのあたりの詳細に入る前に、「そもそもシステムを作る必要があるのか?」という問題があります。つまり、既存のTRPGのシステムを持って来るという方法もあるわけです。もっとも、その場合だと二次創作的にシステムやルールに改変を加えたものを公開しちゃったりすると、問題が起こりかねません。システムを持って来る場合には仲間内での利用に留めましょう。
とはいえ、例外もあります。「これこれというTRPGのシステムを使う」と書くだけで済ませる場合、グレーゾーンになるかもしれません。その場合に含まれるのですが、汎用システムを使うのならいくらかホワイトに近いグレーゾーンになります。汎用システムを使う場合でもやはりグレーゾーンに位置するのは、「どう使うか」に依存するためです。出版されているサプリメントからデータを持って来て公開すると、濃いグレーの方に状況は移動します。
汎用システムをすこしは安全に使うには、世界設定のみを書き、データも含めてシステムやルールについては「これこれというシステムと、それのなんとかというサプリメントとかんとかというサプリメントを使う」と書くことです。これでもきっちり安全かというと、そうとも言えないのですが。というのは、独自の世界設定であっても、そこには使用する汎用システムの思想なりなんなりが入り込むからです。たとえば単純な例としては、アイテムなりガジェットなり、そのほかのなにかであれ、どのようなパラメータで表現するかというのは、使用する汎用システムに依存せざるをえません。依存しないのなら、その汎用システム上では、それらのアイテムなりなんなりは機能しないわけですから。
ですので、ここで明確に選ばないといけない事柄が存在します。つまり、仲間内だけで遊ぶのか、公開するのかによって、取れる方法が違ってくるわけです。仲間内だけで遊ぶ場合、システムやルール、データを持って来ても問題にはなりにくいのですが、公開する場合であれば自前でシステムも作るしかありません。どちらの場合でもここで厄介なのが、世の中に存在するシステムをすくなくともそれなりに把握していないと、この選択すらできないということです。そして、思いもよらないシステムが世の中には存在します。ですので、「完全自作」を謳っていても、きっちり安全とは言えないのです。それは、「実は既に存在しているかもしれない」のです。ここをきっちり安全にしようとするなら、改変を認めており、改変したものの——あるいは改変していないものの——公開も行なうのであればそれも認めているものを探す必要があります。これについては、他に非営利目的に限り可であるとか営利目的も可というような条件も確認しましょう。
ただ、小説家になろうの規約に触れるかもしれないという理由で、この連載で製品・作品を紹介していくことは難しいと思います。そこで、この連載では完全自作の方向で進めますが、加えて、この連載の安全のためにもあくまで仲間内で遊ぶために作るという前提で話を進めます。
さて、システムを持って来る場合でも、「ただ持って来るだけ」では事は済みません。そのシステム、ルール、データがどういう意図のもとに作られており、どのように機能するかを理解していなければ、機能不全となる場合もあります。「最初に考えること」で書いた4つの分類は、どういう意図のもとに作られているのかを理解するための一歩です。これは持って来るのではない自作の場合についても同じです。どういう意図のもとに作るのかを考えるための一歩です。
ところで、世界設定とシステムやデータのどちらを最初に作るのがいいのでしょうか? 小説家になろうという場所を考えた場合、「世界観は持っている」という方も多いでしょう。しかし、世界設定と世界観とは異なるものです。おおざっぱに言えば、世界設定は運用できるものであり、世界観とはそれよりもぼんやりとしたものです。小説を書く際にどれだけ膨大な資料を作っていたとしても、それは世界観であり、世界設定ではないと思ってください。
というのも、「世界設定は運用できるもの」と書きましたが、それが可能となるにはシステムやルール、データと結びついていないといけません。ですから、システムを借りる場合でもシステムについての理解が必要ですし、システムを作る場合であればなおさらです。
そうすると、「両方を並行して作っていく、あるいは理解していく」のが有力な方法になると思われるかもしれません。ですが、実はその方法はお勧めできません。世界設定を作っている間に、システムに重大な変更が必要になる場合があるためです。
ではどうしたらいいのでしょう? 実際には世界設定を先に作ることも、システムを先に作ることも、両方を意識して並行して作ることも可能ではあります。ただし、TRPGを作ることにそれなりに慣れているならという条件が付くわけですが。それは作れる人向けということで、ここではすこし違った方向を紹介していきたいと思います。
ここまでが試供版でした。