仕様分析8
ではまた判定器の話に戻ります。なお、この後に書こうと思っていたことも思い出したので、まだ続きます。
前回書いたように「バランス」の話です。バランスとは言っても、一回一回の判定器のバランスについてです。エフェクトが絡んだりということもありますが、それも含めての話です。ゲームを通してのバランスということになると、別の話も絡んでくるのですが、それはまた後程ということで。
この段階での問題を考えてみましょう。
まず、判定器にかかわる部分を文章にしてみましょう。
その上で、どういう判定器であるにせよ —— GMに一任は除きますが ——、50%の確率で成功して欲しいという条件下において、その判定器で50%の確率で成功するとします (まぁ、何%であるにせよ)。普通に考えると、問題ないはずです。ところが、後程触れるテスト・プレイをやってみると、プレイヤーから「成功する確率が低過ぎる/高過ぎる」という声が出ることがあります。
そこでテスト・プレイの前に、まず、一回の判定での成功の可能性が、見込まれるものに沿っているかを確認しておきましょう。50%の確率で成功して欲しいという状況下において、本当にその判定器で50%の確率で成功するのかを確認するということです。簡単な確率計算で確認できる判定器もあるでしょうし、状況がすこし複雑な場合もあるでしょう。
その段階で問題がないとしたら、判定器を誰かに試してもらいましょう。その際には、書き出した、判定器にかかわる部分の文章に沿ってやってもらいます。感想などを聞くのは、すくなくとも何回も試してもらってからです。また、何種類かの成功の可能性の程度を用意し、それぞれをやってもらいましょう。そして、記録も残してもらいましょう。
この段階において、試してもらった記録を確認しましょう。当然誤差は大きいと思いますが、想定に近い確率で成功しているでしょうか? もしここで想定とあまりに違うとしたら、確率計算あるいはその他での見込みを確認してみましょう。その確認ができたなら、判定器になにか変更を加える必要があるかもしれません。変更を加えたなら、再度誰かに試してもらいましょう。
仮に想定に近い確率で成功しているとしたら、試してもらった人の感想は記録しておくとして、今度はキャラクターを作ってもらい、あるいは用意して、また試してもらいましょう。この場合の見込まれる確率もまた確認しておきましょう。そして試してもらい記録も取っておきます。その結果の誤差はやはり大きいはずですが、見込まれる確率などと違うなら、もう一度見込まれる確率などを計算し、必要なら判定器になにか変更を加えることになるかもしれません。
ここで問題になるのは、上にも書きましたが、記録から得られる確率が見込まれる確率と同程度であるにもかかわらず、プレイヤーが「成功する確率が低過ぎる/高過ぎる」という感想を持つ場合です。正直に言えばこのあたりについての人間の感覚は、いまいちあてにできません。ですが、プレイヤーの感覚に合わせるという選択肢も存在します。それに合わせれば全体としての成功の確率が高めになる、あるいは低めになるという結果になるかもしれません。それを許容するかも含めて考えてみてください。
また、プレイヤーの感想については別の要因もあります。たとえば、「PCの長所を活かせ」という設計方針であったとしたら、それに反したキャラクターを作れば、「成功の確率が低過ぎる」という感想になるかもしれません。「PCの長所を活かせ」という方針ではなく、「PCの弱点を補え」という方針であれば、もしかしたら「成功の確率が高過ぎる」という感想になるかもしれません。このような問題であれば、キャラクター・メイキングに関する記述にそれらを明記しておくことをメモしておきましょう。
プレイヤーにとって見込みがわかりやすい判定器の場合、このような問題は起き難いかもしれません。しかし、プレイヤーにとって見込みがすこしわかり難くなるだけで、このような問題が起きることがあります。これらの結果を受けてどうするかは、TRPGを作っている人の判断に委ねられることになりますが、説明が必要な場合があるということを念頭に置いておくことは無駄ではないでしょう。
ここでは具体的な例を挙げたほうがわかりやすいかもしれません。特殊な例としての判定器を設定します。1d10で能力値以下を出せば成功であり、スキルであるエンティティのレベル回振る間に1回能力値以下が出ればいいとしましょう。そして、ここでは能力値は3、レベルは3とします。するとそのスキルが成功する可能性はいくらになるでしょうか? (「レベル個のダイスを振る」場合の計算よりわかりやすいと思うので、このようにしました。また、すこし急いで試してもらいました。)
レベル1: 3/10 = 0.3
成功
レベル2: 3/10 + (7/10) * (3/10) = 0.51
成功 失敗 * 成功
レベル3: 3/10 + (7/10) * (3/10) +
(7/10) * (7/10) * (3/10) = 0.657
成功 失敗 * 成功
失敗 * 失敗 * 成功
計算をミスってなければ、66%ほどの可能性で成功します (ミスってるかもしれません。その際はご指摘ください)。しかし、能力値が3近辺でそろっているとすると、その "3" という数値や1回めの "3/10" がプレイヤーの印象に残るようです。そして、レベルによる影響は考慮に入らないか、考慮に入りにくいようです。その結果、プレイヤーの感想あるいは印象と、実際の確率にズレが生じます。
これを、「能力値 + スキルのレベル」以上で成功というする例と比べてみましょう:
レベル1: 4/10 = 0.4
レベル2: 5/10 = 0.5
レベル3: 6/10 = 0.6
能力値を "3" と低めに設定していることも影響していますが、それでも実は「もう1回振れる」ことの影響が小さくないことがわかります。それと同時に、「もう1回振れる」ことがどれくらいの確率で成功するかへの影響の見込みが難しいこともわかるかと思います。また、後者ではレベル1が見込まれる結果に反映しているのに対し、前者では反映されていない (ように見える) ということも理由の一つかもしれません。
このズレについて対処するには、ルールに方針を記述しているだけでは不十分で、確率の目安の表を載せたり、何回もプレイしてもらい体感してもらうしかないのかもしれません。
数値での例、とくにダイスを使っているっぽい例を挙げましたが、これは掲載が楽だからです。他の判定器でももちろんかまいませんが、同じような問題が起きる可能性はやはりあります。
また、ここで問題が見つかったら早めに修正しておきましょう。多くの要素がすでに絡みあっていますが、その絡みあいが確定する前に修正しておきましょう。
次回は、再現できる範囲と汎用性について書きます。
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補:
参考のために、「レベル個のダイスを振れる」とした場合の例を挙げておきます。 (ミスっていたらご指摘ください。)
レベル1: 3/10 = 0.3
レベル2: (2C1 * 3/10 * 7/10) + (2C2 * 3/10 * 3/10)
= (2 * 3/10 * 7/10) + (1 * 3/10 * 3/10)
= 0.51
レベル3: (3C1 * 3/10 * 7/10 * 7/10) + (3C2 * 3/10 * 3/10 * 7/10)
+ (3C3 * 3/10 * 3/10 * 3/10)
= (3 * 3/10 * 7/10 * 7/10) + (3 * 3/10 * 3/10 * 7/10)
+ (1 * 3/10 * 3/10 * 3/10)
= 0.441 + 0.189 + 0.027 = 0.657
どれかが成功するという点では前の方の例と同じになります。
3つのやりかたを読んだとき、どれが想像しやすかったでしょうか? また、成功する確率の見込みはどれがやりやすかったでしょうか? そして、それらの見込みはそれなりに当っていたでしょうか?




