最初に考えること
いろいろ中身——というか、それ以前——に入る前に、一つ考えて欲しい事柄があります。それは——なろうだからということもありますが——、「自分の小説をTRPG化したいのか?」ということです。
自分の小説をTRPG化した場合、小説の著者として思い描いているセッションやシナリオとは異なる遊び方がされる場合があります。それを認めないという場合、自分の小説のTRPG化はお勧めしません。
ギミックを用意し、どういうシナリオやセッションが可能なのかを制限することはできます。ただし、そのTRPGを遊ぶ人には、そのギミックを無視する自由があることも忘れないで欲しいと思います。ですので、あくまで自分の小説のイメージだけを他の人と共有したいということであれば、TRPG化はお勧めできないということになります。
では、本題に入りましょう。
TRPGを作る際に最初に考える必要がある事柄はなんでしょうか? 世界観? システム? 違います。まず最初に考えることは——システム寄りの話ではありますが——、「数値を使うかどうか」です。
たとえば、攻撃が当たったら即死だとしましょう。この場合、攻撃が当たったかどうかを決定するかにはいくつもの選択肢があります。攻撃側が常に成功するでもいいでしょうし、GMの判断に任せるでもいいでしょうし、ジャンケンに勝ったらでもいいでしょうし、トランプでハートかダイアを引いたらでもいいでしょうし、ダイスで偶数を出したらでもいいでしょうし、1d6で3以下を出したらでもいいでしょう。
それと同時に最初に考えることとして、「ランダムな要素を入れるかどうか」もあります。
この組み合わせとして「1. 数値を使わず、ランダムな要素もない」というものが現われます。これは純粋な記述型システムとなります。
あるいは、「2. 数値を使わず、ランダムな要素はある」という場合もあります。トランプのスートを使ったり、タロットを使ったりという場合——使い方にもよりますが——、これにあたります。これもほとんどは記述型システムとなります。
3つめとして、「3. 数値を使い、ランダムな要素はない」という場合もあります。能力値などが存在し、そこから直に結果がわかるような場合がこれに相当します。
最後に、「4. 数値を使い、ランダムな要素もある」という場合があります。よく見るTRPGのシステムはこれでしょう。
この4つのどれがいいということは言えません。システムの話としてだけではなく、世界観にも関係しますし、どういうセッション運営を想定しているかにも関係します。非常におおまかな話としては——かつGMがいるとして、GMがPC、NPC、状況のデータ、加えてルールを確実に把握しているなら——、1. から4. の順番に処理に時間がかかります。 (追記: 4. の方が時間がかかります。)
また、この4つは、それぞれがまったく別というわけでもなく、1つのシステムがいくつかの要素を持つ場合もあります。たとえば、1. の場合において、PCの設定として「ボクシングの世界チャンピオン」であるという記述があったとします。対してNPCに「ボクシングの日本チャンピオン」であるという記述があったとします。これは絶対的な判断基準にはなりませんが、ボクシングでの強さにおいてはPCが強いという状況を作れるでしょう。ここにおいて数値は明確には現われていませんが、順序付けする根拠となる——それが強い根拠ではないとしても——データは存在します。これは暗に数値が存在しているとも言えます。
また、この4つのどれにするかは、処理の速さ以外にもセッション運営に影響します。4. の場合、プレイヤーは——およびGMも——、結果の傾向についてある程度の予想がつき、その予想に基づいて行動をするかもしれません。しかし、「いけるかもしれない」という範囲においては、賭けに出るかもしれません。それに対し1. の場合、「いけるかもしれない」という範囲での賭けに出るのではなく、PCが有利になる状況を作ることに注力するかもしれません。
この4つのどれを選ぶのがいいかについて一般的には答えられません。また、ここで決める必要もありません。どれを選んでも——とくに4. 以外の場合——、それ自体がシステムの特徴となるでしょう。