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【短編】異世界で代行商談屋はじめました

作者: 沖マリオ

連載で書こうとも思いましたが…とりあえず短編で書いてみました!

「ちょっと、返品できないってどういうことよ!」

 ラムズ街にある小さな酒場。

 ガタイの良い駆け出し冒険者達で賑わうこの酒場で、何やら言い争う一組の男女。

 しかし、その言い争う内容は男女関係の縺れ…などではなく。

「おいおい、何をそんな都合のいいこと言ってんだよ。確かにあの魔法道具をお前に紹介したのは俺だが、それを最終的に買うって決めたのはお前だろ?」

「た、確かにそうだけど!――でも、それはアンタが『この商品は間違いなく売れる!』って言ってたからで――」

「カハッ!お前そんな何の根拠もないこと真に受けてたのかよ!?っていうか、お前も商人ならその商品が本当に売れるか見極められるようになれよ」

「ぐっ…」

――それは商人同士のやり取り。

 数日前に目の前に座る同業者の男の『この商品はこの街で絶対に売れる!実際にこの街でも需要が高いことは魔道具専門店に聞けば分かる!!』というような言葉を信じて“アンチ・マジック”という、どんな魔法攻撃でも一度だけ無効化できるという最高級の魔道具を大量に仕入れた女商人。

 しかし、残念ながらこの駆け出しの冒険者が集まるラムズ街で、そんな高級品が売れるわけもなく…。

「で、でも…せめて半分だけでも返品を――」

 商人として、相手の言っていることの方が正しい――それは女の方も百も承知のはずだが、それでも『売れ残りの在庫を少しでも減らさなければ…』という一心で頼みこむ。

 が、しかし…

「ハッ!そんなの知らねぇよ!!売れるかどうか見極められず、仕入れた商品を売ることもできない無能女がやっていける程、商人ってのは甘くねぇんだよ!」

 男はそんな女の言葉に全く耳を貸す気などなく、ガタンと席を立つとそのまま会計を済ませて店を出て行ってしまった。

「そんなの…自分でも分かってるわよ…!!」

 同業者からの正論を受け、女商人は自らの不甲斐なさに唇を噛みしめながら男の背中を見送った…。


 と、そんな中…

「おいおい、マスター!何でこふき芋一つしかねぇんだよ!!こっちは二人だぞ!?」

 カウンター席の方から、店長にクレームをつける男性客の声が聞こえてきた。

「うるせぇ!タダで飯食わせてやってんだ!ありがたく思いやがれ、この甲斐性なしが!!」

「バカ野郎!そこはもっと器の大きいところを見せて大盛りのチャーハンでも持ってくるのがお約束ってもんだろうが!!」

「バカはお前だろうが!そういうのは一回だけってのがお決まりだろうが!!毎日毎日当たり前のようにタダ飯要求しに来る奴に大盛りチャーハンなんて食わせるわけねぇだろうが!!」

 年齢は20代前半と女商人と同じくらいだろうか。背丈は普通でガタイも貧弱…勿論この世界でも限られた人間しか持っていない魔力など持っているわけもなく、黒髪・黒目という珍しい外見意外は平平凡凡な青年。

「そうですよ、ハルカさん!お芋一つでも無償で恵んでくださるマスターさんに文句をいっちゃいけませんよ!?」

 もう一人は12歳くらいのぱっちりとした目と水色の髪が特徴の可愛らしい少女。

 この二人組、どうやら毎日のようにこの店に来てはマスターにタダ飯を要求しているらしい。

「お、さすがリアちゃん、わかってるな!このボンクラのところが嫌になったらいつでもウチの店で雇ってやるからな!」

「はい、ありがとうございます!――あむっ」

「おまっ!何さり気なく一人で芋食ってんだよ!出せ!俺の芋をいますぐ吐き出せ!!」

「ひょ、ひょっほ!ひゃめへふははいほ!」

「芋を口に入れたまま喋るな!!」

 自分と一回り程年の離れていると思われる小さな女の子と一つの小さな芋を取り合い騒ぐ青年…。

「…今の私もさすがにアレよりはマシよね…。どんだけ落ちぶれてもあそこまでにはなりたくないわ…」

 ――酷く落ち込んでいる時に自分より明らかに下の人間を見ると、不思議と頑張ろうと思うことができる…。

 ハルカと呼ばれるその青年の姿を見た女商人にも、見事にその現象が起きていた。



※※※※


「はぁ~…やっぱり売れないわね…」

 店を出た後、もう一度頑張ってみようと思い、魔道具専門店や他の商人に商品を紹介しに行くものの、やはり現実はそう甘くもなく。

 不発に終わり、女商人は路地裏に一人しゃがみこみ深いため息をついていた。

「やっぱり私なんかじゃ商人は務まらないのかな…」

 いろいろなところに自由に赴き、いろいろな人と出会い、いろいろな物を見て、売れる商品を見つけて仕入れて、それを自分の力で売る。

 ――そんな商人という自由でやりがいのある仕事に魅入られ、親や周りの反対を押し切りはじめた仕事。

 しかし、女というだけで商談相手からは舐められ、さらにあまり人を疑わないという自身の性格のせいもあり、仕事では失敗続き。そんな中で発生した今回の件…女商人は限界を感じていた。

「諦めるしか、ないのかなぁ…」

 自分が憧れた仕事…しかし、その仕事への適正がない自分。

 気付けば夢と現実の間で葛藤する彼女の目からは涙がこぼれ落ちていた。

 と、そこへ…


「お嬢さん、お困りですか?」


 不意に一人の青年が声をかけた。

「…へ?」

 服の袖で涙を拭いながら声のした方を見上げると、そこには…

「あ、アンタは…!?」

「あ?何だ、俺のこと知ってんのか?それとも、リア、お前の知り合いか?」

「いえ、残念ながら私もお会いしたことはないですね」

 そこに立っていたのは見覚えのある一組の男女。

 それは彼女が“ああはなりたくない”と思った青年とその連れ添い小さな少女に間違いなかった。

「まぁいい。アンタ商人なんだろ?もし商売のことでお困りなら報酬次第で相談に乗るぜ?」

 その青年は良い笑顔を浮かべてそう言った。


(何なの、コイツ…!何も知らないくせに偉そうに…!アンタみたな恥知らずのダメ男に私の置かれた状況が解決できるわけないでしょ!?それとも弱り切った私を騙して金でも巻き上げるつもり!?)


 そんな青年に対し、女商人は心の中で怒りを滲ませながらキッと睨みつける。

「おい、リア。お前みたいなガキを連れてるせいで、この人が警戒しまくって――」

「誰がガキですか。ぶっ飛ばしますよ?」

「…すみません、調子に乗りました。お願いなのでその拳をお納めください」

 目を細めながら握られた拳を見せつける少女に、躊躇することなく頭を下げる青年。

 そして、その様子を無言で睨むように見つめる女商人…。


「…ま、まぁ、そんなに警戒しなさんな。アンタを騙そうなんて思ってねぇよ。――ただ、俺はビジネスの話を持ちかけてるだけだ」


 若干の無言の後、青年は一つわざとらしく咳払いをすると、自分よりも一回り程小さな少女に屈したことなどなかったかのように商人に話を続けた。

「ビジネス、ですって?」

「そう。もし、アンタが商売のことで悩んでるなら、それを俺達が解決してやる。報酬は成功した時だけ。利益の半分ってことでどうだ?」


(報酬は成功した時だけ!?相談の内容も聞かずに大層な条件提示してきて…!)


 青年が口にした、女商人自身にとって都合の良過ぎる条件に、逆にバカにされているのではないかと思い、さらに鋭く睨む女。

そして、

「そんなに言うならやってみればいいじゃない!私だって一応プロの商人よ!?そんな私ができないことをアンタみたいなロクでなし男ができるわけないわ!!」

「…それは俺達に依頼する、と捕えていいのか?」

「ええ、そうよ!但し、経費は全部アンタ持ち!相談内容を聞いて逃げるのは無しよ!!」

 別に直接青年から何かされたわけでもないのに、完全に喧嘩腰の女商人。

 自分でも八つ当たりだと分かっていても最早途中で止めることはできず、やけくそ気味に依頼を決めた。

「ああ、構わんぜ?――ただ、一個だけ頼みがある」

「何よ!まさかこの期に及んで怖気づいて――」

「とりあえず場所を移すぞ」

 そう言って、青年はため息混じりに自分の後を指さした。

「はっ!!」

 その指差された方へと視線を向けると、そこには女商人の大声のせいで、いつの間にやら集まった大勢の野次馬達が…。

「こんな状況じゃあ、込み入った話はできねぇだろ?」

「…そ、そうね」

 …三人は場所を移して今後について話し合うことになった。



※※※※


「私からの話は以上よ。それで、霧島ハルカさんとリアちゃんだっけ?何か質問は?」

近くの喫茶店に入り、女商人から詳しい事情と相談内容を聞く青年霧島ハルカと少女リア。

「いや、大丈夫だ。全く問題ねぇよ、アニー」

 一般的な魔導具が千バリスくらいの相場の中、一個五万バリスという超高級品である“アンチ・マジック”という魔道具の在庫が20個以上。

 さらに、街近辺の魔道具専門店や他の商人等主な商談相手には既に依頼人であるアニー自身が商談を終えた後。

 そして、残り10日で在庫を全て売り切らなければ今月の納税もできないという状況。

 しかし、そんな深刻な状況を説明されても、ハルカは全く焦る様子もなく余裕綽綽といった様子。


(コイツ…この状況で何笑ってんのよ!)


 そんなハルカにアニーは相変わらず厳しい視線を送りつつ、

「それで、この後はどうするつもりなの?言っておくけど、もう主要なルートに関しては売り込みに言ってるわよ?」

 不機嫌そうな口調で今後について問う。

「ああ、それならもう考えてある――」

 するとハルカは、その問いにニヤリと笑った。

「――この街で一番実力のある冒険者を紹介してくれ」


※※※※


「おい、兄ちゃん。悪いがこう見えて俺も忙しいんだよ。くだらねぇ話ならすぐに帰らせてもらうぞ」

 アニーにこの街一番の有力冒険者を教えられた翌日。ハルカ、アニー、リアの三人はこの街唯一の冒険者ギルドにやってきていた。

「お忙しいところすみませんね、ギルダさん。ただ、どうしてもこの街屈指の実力派であるあなたにこそふさわしい商品がございまして…なんとかお話だけでも聞いていただけないかなと」

 その目的は勿論商談。

 他の冒険者達が周りでガヤガヤと食事や酒を楽しむ中、ラムズ街屈指の実力を誇る冒険者ギルダ相手に普段とは違い、ハルカは腰の低いビジネスモードで商談を持ちかけていた。

「そ、そうか…?」

 そして、どうやら感触は良好らしい。

 実は褒められるのに弱いギルダはハルカに持ち上げられて上機嫌。

 面倒臭そうにしていた最初の雰囲気はどこへやら…すっかりハルカを受け入れた様子に。


(よし、さすが“チョロい冒険者”で有名なギルダだ。こりゃあ思った以上に楽勝そうだ)


 勿論これはハルカの戦略。実は事前にギルダの情報を集めていたハルカにとってはまさに計算通りの展開になっていた。

 表情には出さずとも、内心シメシメといった顔で話しを続ける。

 が、しかし…


(コイツ、一体何をするのかと思ってたけど…別に普通じゃない!――ギルダはこの街屈指の実力者である冒険者でもあり、他の冒険者に対しても影響力がかなりある上客…。勿論、私だってこの人に商品は紹介したわ!)


 そんなハルカの様子を隣で見ながら、アニーは内心で鼻で笑っていた。

 というのも、このギルダという男。実は既にアニーから商品の紹介は受けており、一度断っているのだ。しかも…


(ギルダが褒められるのに弱いって話は私も知ってたし、情に弱いっていう情報もあったからそれを活かした交渉も実行した…でも、それだけじゃダメなのよ…)


 今現在ハルカがやっている方法と全く同じやり方で…。


(散々偉そうなこと言っておいて…結局やってることは私と同じじゃない!)


 こんなやり方で上手くいくわけがない!――そんな思いでアニーが二人のやり取りを見守る中、

「それで、そのお勧めしたい商品っていうのがこちらで――」

「ああ、悪いな、兄ちゃん。その商品ならそこにいる姉ちゃんにこの前紹介されたばっかりなんだわ。その商品なら買う気はねぇ」

 案の定、“アンチ・マジック”をテーブルの上に取り出しただけで断られてしまった。


(そりゃそうよ。だって私がこの前散々商品の良いところを説明しても食いつかなかったんだから)


 予想通りの展開に内心鼻で笑うアニー。

 しかし…ハルカの作戦はこれで終わりではなかった…。

「大丈夫ですよ、アニーさん。普段はダメ人間ですけど、この人、商談で失敗はしたことありませんから」

 隣に座る小さな少女リアは余裕の笑みを浮かべていた。


(何を強がってるの?もう結果は出てるじゃない!)


 そんな少女に怪訝な表情を浮かべるアニー。

 そんな中、ハルカとギルダの商談は続けられていた。

「そうですか。ということは、この商品の良いところは全てご存知ということでよろしいですか?」

「ああ。敵のどんな魔法でも一度だけ無効化できて、大きさも小さいから持ち運びも簡単だし、何より戦闘中に使いやすいんだろ?」

「ええ、その通りです!覚えていていただいてありがとうございます!」


(何を既に断られてるのに無駄話してるの!?早く次のお客さんを見つけないと時間もないのよ!?)


 そして、アニーが既に客に断られているにも関わらず、笑顔で話し続ける青年にイライラする中…


「ちなみに、参考までにどうしてこのアイテムをご購入いただけなかったのか…教えていただくことはできないですか?」


 ――いよいよここから霧島ハルカの本領が発揮され始めた。

「は?ダメな理由ってことか?そりゃあ、価格が高過ぎるからだろ。こちとら金に余裕のない冒険者だぜ?さすがに一個5万は高過ぎだろ」

「なるほど…。確かにそうですよね。――ちなみにどれくらいの金額だったら買ってもいいと思います?」

ハルカはギルダから聞いた話をしっかりとメモりながら話しを進める。

「まぁ…半分の2万5千ってところかな。それ以上は高過ぎて手が出せねぇ」

そして…


(貰った!)


 その言葉を聞いたハルカは目を見開き、心の中でガッツポーズをとった。

「そうですか…ちなみに、ここだけの話、ギルダさんにだけなら2個で5万バリス――この条件でお売りしても良いと思っているのですが…どうですか?」

「は!?2個で5万!?」

 そのハルカの言葉に真っ先に驚きの声を上げたのは…交渉相手のギルダではなかった。

「ちょっと!2個で5万って半額よ!?そんな安売りしてくれなんて頼んだ覚えないわよ!?」

 その破格の条件に席を立ちあがり、興奮気味に捲し立てるアニー。

 その様子は客であるギルダまでもが逆に驚くほど。

 それもそのはず。この商品、仕入れ値はなんと4万バリス。2個で5万バリスなんかで売れば勿論赤字になってしまうのだから。

 しかし…

「落ち着いてください、アニーさん。勿論その条件だと大きく赤字になってしまうことくらい分かっています。――ですから、ギルダさん。あなたにはその価格で売る代わりにやっていただきたいことがあるんです」


(いいぞ、アニー!お前のリアクションのおかげで2個で5万っていう価格がどれだけ無茶な金額かギルダに伝えられた!)


 それもハルカの計算の内。予想通りのアニーの行動に内心ほくそ笑む。

 そして、

「別に難しいことじゃありません。――ただ、他の冒険者仲間にこの商品の良さを伝えてほしいだけです」

「他の連中に紹介…?」


(悪いなギルダ。ここでお前にゆっくり考える暇は与えない。ここは強引に話を進めさせてもらうぜ!)


 ギルダの思考がまとまらないうちに『2個で5万、追加条件さえOKなら買う』という空気にするべく、ハルカはここぞとばかりにたたみかける。

「別に無理矢理他の方々に買わせる必要なんてありません。ただ、紹介さえしていただければいいんです。あくまで紹介していただいた方々にはご自分の意思で買っていただきたいので」


(客を紹介してくれ、とかいくつか売ってきてほしいとかは条件のハードルが高過ぎてどうしても躊躇っちまう。だけど、ただ紹介するだけなら…)


 無理に買わせる必要はない…ただ、紹介するだけ。

 そんな簡単でリスクの少ない条件で高性能のアイテムが半額に…。

――そういった情報を次々に出すことによって、お得なイメージをどんどん交渉相手に植え付けていく。

「どうですか、ギルダさん?一度お試しいただけないですか?」

「う~ん…でも、5万ってのは…」

 その結果、なかなか首を縦には振らないものの、ギルダの中には『これなら買ってもいいんじゃないか?』という思いがどんどん強くなってきているのを、この男は見逃さない。

 そして…ハルカは最後の仕上げに入った。

「勿論、この話、断っていただいても構いません。ただ――最初に申し上げた通り、私はあなたにこそ、このアイテムはふさわしいと思っています」

「!!」

 買うかどうか悩む相手に対して、突然“断ってもいい”などと言い出す男に言われ、『え?』という表情をするギルダ。


(この男、何を急に言い出してるの!?ここは当然もうひと押しするべき場面でしょ!?)


 さらに、それを隣で聞いていたアニーも目を見開く。

 しかし、当のハルカ本人はアニーに対して、一瞬チラリとこちらに『心配するな』という視線を送ると、ギルダに対して真剣な口調でさらに続ける。

「あなたはこの街一番の冒険者です。この先もどんどん強くなられて、ゆくゆくは魔王の幹部なんかと戦わなくてはならなくなる場合もあるかもしれません。そうすれば、必然的にピンチに陥る可能性も高くなってしまいます。――そんな時、少しでもあなたの力に…いえ、この世界の力になれれば――私はそう思っています」

 褒められるのに弱く、情に熱い性格のギルダに対し、“ギルダは特別な存在だ”と伝えつつ、あくまで“ギルダのために”という想いを真剣な口調で熱く訴えかけるように語りかけていく。

対して、その言葉を目を閉じ、黙って耳を傾けるギルダ…。

 そして…

「…分かった。売ってくれ」

「!!」

 その言葉は見事彼の琴線に触れたらしく…ハルカは、遂にギルダの首を縦に振らせることに成功した。

「ありがとうございます。ギルダさんのご活躍を影ながら応援させていただきます」

「おう!」

 がっしりと握手するハルカとギルダ。

 そして…そんな光景をアニーは目を見開いて眺めていた。



※※※※


「良かったですね、ハルカさん!これで依頼の達成も間近!ようやくまともなご飯が食べられますよ!!」

「ったく、何にもやってねぇくせに食い意地だけは一人前だな、マジで」

「あなたと一緒に居る場合、食い意地が無くなったら餓死しちゃいますからね!当然です!!」

 数日後。街の喫茶店で堂々と『注文は水だけ!』を実行しながら普段通りのやり取りをするハルカとリア。

 ギルダへの販売後、約束通り周りに宣伝してくれた彼の貢献もあり、魔道具専門店からは“アンチ・マジック”を売って欲しいという依頼があり、在庫は既に残りわずかという状況にまでなっていた。

 そんな中、

「何であんなに簡単に売れるの?私があんなに一生懸命説明して、あんなに褒めて、あんなに情に訴えかけてもダメだったのに…なんで!?」

 アニーは未だ納得できないといった様子でハルカに詰め寄っていた。

「おいおい、ちょっとは自分で考えろよ…」

 一方ハルカは、そんなアニーにため息混じりに軽く嫌味を言いつつ、

「まぁいいや。俺はお前の商談を見たことないからもしかしたら間違ってるかもしれんが…」

 そう最初に付け加えてから語り始めた。

「まぁ、いろいろと覚えるべきことはあるんだが…とりあえず一番基本的なとこから――お前、商品の紹介して断られた後、“断られた理由”聞いてねぇだろ?」

「え?まぁ、そういえば聞いてないかも…でも、そんなことしたって無駄じゃない!だって、もう既に断れて――」

 アニーはそこまで言いかけてハッとした。

「別に絶対必要なものじゃない上に、こっちから売り込みに行ってるんだ。商品紹介しただけで欲しいと思う客なんてほとんどいない。――だからこそ、売り込む商談ってのは、断られてからが本当のスタートなんだ」

「断られてからが、スタート…?」

「人間、何か断る時っていうのは、何か断る理由を用意することがほとんどだ。価格が高いとか、既に持っているとか、デザインが気に入らないとか、使い道がないとか…とにかく何らかの断る材料を無意識のうちに用意する」

 人によってそれが一つだけだったり、二つだったり…はたまたもっと多く用意されていることだってある。

 しかし…


「だけど、もしその“断る理由”が無くなってしまったら?」


「!!」

「断る理由が無くなれば客は心理的に首を縦に振らざるを得ないと感じることがほとんどだ。――つまり、商談を成功させるためには、相手から“断る理由”を聞き出し、それを取り除いてやるだけでいい」

 今まで自分になかった考え方に目からうろこのアニー。

「まぁ、他にもいろいろ細かい技術はあるが…まずは基本のこれさえできるようになれれば十分だ。――多分それだけで交渉の成功率は2、3割くらい増すと思うぜ?」

 そう言ってハルカはフッと笑った。

「分かった。頑張ってみるわ…」

 そう返事を返すアニーの目には、最早怒りの感情は一切なかった。



※※※※


「それでは、また追加のご注文ございましたらいつでも言ってください」

「あぁ、宜しく頼むよ。それじゃあ」

 満足気な表情で席を立ち、店御を出ていく男。

 その男の後ろ姿を見送りながら、席に残った三人のうちの一人は信じられないといった表情を浮かべていた。

「ほ、本当に全部売り切っちゃった…」

「まぁ、元々そんなに大量にあったわけでもなかったしな。数日ありゃあ、これくらい当然だろ」

「アニーさん、そんなに驚かなくても大丈夫ですよ?どんな人間誰にだって特技の一つや二つありますから」

 しかし、驚いているのは依頼人であるアニーだけ。残りの二人はさも当然といった様子で先ほどまで商談相手が座っていた向かい側の席へと移動する。


(コイツ等…何この結果が当たり前みたいに言ってんの!?1個5万バリスの高級品よ?プロの商人が数日で1個売れればいいと思ってるような品物を商人でもないこんな男が数日で20個売るなんて…)


 そんな目の前の二人を信じられないといった表情で見つめるアニーは、

「アンタ達、一体何者――」

 ハルカ達に対してそう問いかけようと口を開いた。が、しかし…


「よう。アンタ等か?俺が仕入れた“アンチ・マジック”を売りまくってるって奴は?」


 その問は最後まで言葉にすることはできず、アニーにとって悪い意味で聞き覚えのある声によって遮られた。

「アンタ…マルクス!?」

 アニーが慌てて振り返ると、そこにはやはり、彼女を騙して大量の高級品を買わせた張本人…今回の元凶とも言うべき男が立っていた。

「よう、アニー。なんだかそこの兄ちゃんのおかげで破産しなくて済んだみたいでよかったじゃねぇか」

「アンタ、よくものうのうと私のところに来れたわね!」

 やはり申し訳なさや反省といった気持ちは一切なく、それどころか嘲笑を浮かべてさらに煽ってくる男に、声を荒げ、鋭く睨みつけるアニー。

「そんな熱くなるなって。っていうか、悪いが今日用があるのはお前じゃないんだよな」

 しかし、そんなことなどこのマルクスと呼ばれる男にはまるで効果なく。

 彼はアニーの言動を軽く受け流し、目的の人物へと視線を移し…


「おい、そこの兄ちゃん。用があるのはお前だ」


 そう言ってハルカを指さした。

「…は?俺?」

 突然の指名に明らかに嫌そうは顔で返事するハルカ。

「そうだ。今日はアンタに依頼があって来た!――報酬はこの女の2倍出す!だから俺が仕入れた商品を売ってくれ!!」

 マルクスは店中の客が注目するほどの大きな声で高らかにハルカに告げた。

 その発言に店内が一瞬静まり返ったが本人は全く意に介さず、

「俺は明日、“アクセラレータ”っていう高級アイテムを50個仕入れるつもりだ。アンタにはそれを1週間で売ってほしい。正直普通なら不可能だが、“アンチ・マジック”を数日で20個も売ったアンタなら楽勝だろ?どうだ?」

 意気揚々と依頼内容を説明し、ハルカに対して同意を求める。

 すると、

「ちょっとアンタ――」

 その発言に対し、最初に反応したのはアニー。

 マルクスに掴みかかろうかという程の勢いで立ち上がり、反論しようとするが、

「まぁまぁ、落ち着けって」

 ハルカに制され、ここは渋々引き下がる。

 そして、黙って引いたアニーを確認すると、ハルカはマルクスの方に視線を移し、面倒くさそうに口を開いた。

「えっと…マルクスだっけ?」

「ああ。そう――」

「悪いがお前からの依頼は受けられん」

 そう言って、ハッキリと依頼を断った。

「ど、どうして!?」

「残念ながら俺はアニーからの依頼を終えた後はしばらく仕事は休むつもりだ。今回の依頼で金も入るし、働きすぎは良くないからな」

「な!?そんな理由で――」

 そう適当な調子であしらおうとするハルカ。

 しかし…


ザンッ!


 ハルカの口にしたしょうもない理由に反論しようと口を開きかけたマルクス。

 だが…それを遮り真っ先に異を唱えた人物が一人いた…。

「ちょっと、ハルカさん?この件ほったらかしにしてしばらく休むとか…それ、本気で言ってます?」

 その少女は手元にあったフォークを激しくテーブルに突き刺しマルクスの言葉を遮ると、笑顔でハルカに問いかける。

「い、いや…でも、たまには休みがあっても――」


ザンッ


 それに対し、反論しようとするハルカの言葉を遮り、無言でさらにもう一本フォークを突き刺すリア。

「…すみません。休みはこの件が片付いてからにしましょう…」

 ハルカは自分の目の前に突き刺さった2本のフォークを見ると、顔を引きつらせながらリアの意見に同意した。


(霧島ハルカが何も反論できないなんて…。このリアって子、今まで特に目立ったことしてなかったからただのお子様だと思ってたけど…意外とすごい子なのかしら…?)


 普段全く物怖じしないハルカが一回り以上年の離れた少女相手にタジタジしている光景に心の中で驚くアニー。

「それじゃあ!」

 そんな様子を見て、自分の依頼を受けてもらえると思い、声を弾ませるマルクスだったが…

「こほん!」

 ハルカはわざとらしい咳をした後、チラリとリアにアイコンタクトを送る。

『本当にやるのか?』

『当たり前です!』

 少女からのその返答を受けたハルカは大きくため息をつくと…

「はぁ…悪いな、マルクス。期待させたみたいで悪いが、やっぱりお前の依頼は受けられん」

 次の言葉を待つマルクスにそう告げた。

「は!?何言って――」

 当然反論するマルクス。

「その代わり、俺がお前に交渉成立させるためのコツをいくつか教えてやる」

 それに対し、今度は不敵な笑みを浮かべながら、ハルカはその発言を遮った。

「交渉のコツ…だと?」

「ああ、そうだ。しかも、これさえしっかりモノにできれば交渉の成功率が3割くらい上がるっていうヤツだ」


(交渉のコツか…。コイツの話が本当なら聞く価値はありそうだ。何せ俺が押し付けた在庫品を数日で全部売っちまう程の奴の言うコツだからな…)


 ハルカからの思わぬ代案に戸惑うマルクス。その提示された代案が本当に価値のあるものなのか頭を悩ませる。

「報酬はいくらだ?」

「そうだなぁ…5万バリスでどうだ?」

 ハルカが提示した額は5万…皮肉にも“アンチ・マジック”一つ分と同じ金額。


(交渉のコツだけで5万なんて本来ならボッタクリもいいところだが…)


 その高額な報酬に若干躊躇するも…

「分かった。その代わりそのコツがいい加減なものだったら報酬は返してもらうからな!」


(数日で“アンチ・マジック”を大量に売る男から教わるコツだ。上手くいけば普通に依頼するより稼げるかもしれねぇ!)

――そんな思いもあり、最終的にマルクスは頷いた。


「ああ、了解だ。――それじゃあ――」

 その反応を受け、ハルカは約束通りさっそく“交渉のコツ”について説明し始めた。

 …そして、その話を嬉しそうに聞き入る男を見て…ハルカは心の中で不気味に笑っていた。



※※※※


 さらに数日後。

「それじゃあ、報酬も受け取ったし、もう行かせてもらうぜ?」

「アニーさん、また依頼したいことがあったら相談してくださいね」

 在庫を全て売り切り、アニーが無事に今月の納税も乗り切ったのを確認したハルカ達。

「フン!もうこんなのご免だわ!結局アンタ達の報酬払ったら利益なんてほとんどなかったわけだし!!」

 一方、そんな彼らに悪態をつきつつも、

「ま、まぁ、アンタ達がいなかったら納税義務も果たせず今頃どうなってたか分からないし…一応感謝してやらなくもないけど…」

 モジモジしながらゴニョゴニョと感謝の言葉を口にするアニー。

「おいおい、今時そんなテンプレなツンデレ流行んねぇぞ?」

「は?つん、でれ…?」

 聞きなれない言葉に首をかしげるアニー。

「あ!私知ってますよ!!ツンデレって好きな相手に素直になれない人のことですよね?――あれ?ということは…もしかして、アニーさんってハルカさんのこと好きなんですか!?」

 そんなアニーの疑問を解消すべく、リアは元気よく無い胸を精一杯張り、頼んでもいないのにハルカに教えてもらった“ツンデレ”という言葉の意味をドヤ顔で解説。

「なっ!?わ、私がこのロクデナシ男を!?そ、そんなわけ…」

 そして、その言葉を真に受けて顔を真っ赤に染めるもう一人の女。

「ヤレヤレ…モテる男はつらいなぁ」

「違うから!!」

「ぐはっ!」

「二人だけ盛り上がってズルいです。私も仲間に入れてくださいよ~」

「盛り上がってない!!」

 と、人通りのいない道だということをいいことに最後に騒ぐ三人だったが…その別れの挨拶は一人の男によって遮られた。


「よお、アンタ等…探したぜ?」


 息を乱しながら、怒りの形相で現れたその男の名はマルクス…アニーに売れない高級在庫を押し付け、さらにハルカに交渉のコツを伝授された男だった。

「ま、マルクス!?アンタ、まだ――」


(ようやく来やがったか…)


 不意に現れた男の声にハルカは内心ニヤリと笑った。

「おいおい、どうしたんだ?そんな血相変えて…なんか嫌なことでもあったのか?」

 予想外の男の再登場に思わず取り乱しかけるアニーとは対照的に、彼がここに来ることを想定していたハルカとリアは落ち着き払っていた。

 “予定通り”執拗に彼を煽るハルカ。

「テメェ…俺を騙しやがったな…?」

 そんなハルカの態度もあって、さらに眼光と口調を鋭くさせるマルクス。

 その手には冒険者が持つような短剣と大きな白い袋が力強く握られていた。

「アンタがなんでそんなに怒り狂ってるのか知らんが、言いがかりはよせよ」

「何が言いがかりだ!お前がこの前教えた“交渉を成功させるコツ”…それをすべて使って交渉したのにまったく効果ねぇじゃねぇかよ!!」

 マルクスはそう言って、白い袋をハルカ達の方へと放った。

「“アンチ・マジック”か…これまた大量に仕入れたもんだな」

 ハルカがため息混じりにその袋の中身を確認すると、その中身はすべて“アンチ・マジック”。その数はざっと見ただけでも30以上はあった。

「約束通り5万バリス、きっちり返してもらうぜ!?――さもなくば…わかるな?」

 “そのコツがいい加減なものだったら報酬は返してもらうからな!”

 ハルカと取引する前に交わした言葉を盾に、“金を返せ…さもなくば殺す”――そう脅しつけて支払った報酬の返金を迫るマルクス。

 しかし…

「言っておくが金は返さんぞ」

「なッ!?」

 ハルカは全く動じることなくそう告げた。

「テメェ…自分が何を言ってるのかわかってんのか!?お前は俺を騙して――」

「あー。なんか勘違いしてるみたいだから言っておくが…俺はお前を騙してなんていねぇよ」

「はぁ!?」

「俺がお前に教えた情報やコツは全部本当だ」

 “相手の要望を聞くことが第一”、“事前に交渉相手に関する情報を入手し、その情報を交渉の勝負所で活用する”等など、ハルカが教えたことは全て交渉事における重要な要素ばかり。嘘の情報等一つもなかった。

 しかも、それを実演交えてまで丁寧に説明したハルカに一切の落ち度はなかった。

「俺の教えた情報はどれも本物だし、全て交渉事では有効なものばかりだ。それを知った上でアンタの商談が上手くいかなかったってことは…そりゃあ、アンタの実力不足のせい以外ないだろ?」

「なんだと!テメェ――」

 鼻で笑い、相手を見下したような笑みを湛えながら煽るハルカに対し、声を荒げるマルクス。

 しかし、それに対しハルカは…

「ま、仮に俺の与えた情報が全部デタラメだったとして、それはアンタの責任だろ?」

 遂にマルクスの怒りを爆発させる言葉を放った。

「だって、アンタ自分で言ってたじゃん?――“売れるかどうか見極めることもできない無能がやっていける程、商人ってのは甘くない”って。つまり、俺の情報が役に立つ情報かどうか確認もせずに俺の提案に応じたあんたは商人失格だった…そういうことだろ?」


(こ、この男…あの会話聞いてたの!?)


 酒場でマルクスと口論していたところを聞かれていたことに気付き、ハッと驚くアニー。

 さらに今までの彼らの言動が頭の中で蘇る。

 そして…そこで彼女はようやく気付いた。

 ――彼らは初めから自分を助けようとしていたこと…。

 ――マルクスが言い寄ってきた時、リアはなぜ突然適当にあしらうことを止めさせたのか…。

 ――今現在、彼らは、自分のためにマルクスを見返そうとしてくれていること…。

「アンタ達…」

 目の前の青年と小さな少女の言動の意味をようやく理解したアニーは目に涙を溜めていた。


「テメェ!!」

 一方、当然マルクスはそんなこと知る由もなく。

 ハルカからの挑発の言葉を聞いた瞬間、怒りの形相でハルカに飛びかかり…持っていた短剣を勢いよく振り下ろした。

「危ない!!」

 アニーの悲鳴のような叫びが響き渡る。

 しかし、そんな中…ハルカは不敵に笑っていた。

 そして…


バシッ!

「!!」


 その短剣がハルカに届くことはなく…


「すみません。うちの店長、口だけで戦闘能力はゼロなんですよ。――なので、私が代わりにお相手させていただきます」


 二人の男の間に割って入った少女によって、マルクスの短剣は弾き飛ばされていた。

 先程までの元気な少女はどこへやら…不敵な笑みを浮かべながら殺気を放つリア。

「…チッ!クソガキが!!」

 思わず距離を取り警戒を強めるマルクス。

「やめとけやめとけ。アンタじゃうちの怪力娘には勝てねぇよ」

 そんな彼に降参を促すハルカ。

「俺が商人だと思って舐めてんじゃねぇぞ!」

 しかし、その呼びかけが逆効果になり、さらに激昂するマルクス。

「俺は自分の身は自分で守れるように長年戦闘訓練だってちゃんとやってんだ!はっきり言ってそこらのヘボ冒険者よりは百倍強ぇ!!――それに」

 そう言ってマルクスは剣を持つ手とは逆の掌をリアに向けると…

「“ファイヤー・ボール”」

 一言詠唱すると、大きな火の玉が出現し…その手から放たれた。


ドオンッ!!


 その破壊力はかなり大きく、辺り一帯に轟音が鳴り響き、激しく土煙が舞った。

「り、リアちゃん!!」

 再びその場にアニーの悲痛な叫びが響く。

「ハッ!あのクソ野郎もクソガキも、この俺をバカにしやがるからだ!せいぜいあの世で後悔するんだな!!」

 そして、しばらく経っても出てこないハルカとリアに対し、マルクスはそれだけ言い残すと満足気に踵を返し…かけたところで…


「ちょっと、私を置いてどこへ行くつもりですか?」


「!?」

 慌ててマルクスが振り返ると、そこには無傷の青年と少女が。

「クソがッ!」

 驚愕の表情を浮かべつつも、本能のままに慌てて持っていた剣を振り上げるマルクス。

が…

「遅いですよ」

「ガハッ!」

 マルクスが剣を振り下ろすよりも速く、リアの拳が彼のみぞおちに決まった。

 崩れ落ちるように倒れ、そのまま気を失うマルクス。

「重ね重ねすみません。あなたがいくらそこらのヘボ冒険者より強かろうと、私に勝てないのは変わりありません。――私に勝ちたいなら一流冒険者10人は集めてもらわないと」

 倒れ伏すマルクスに、リアはそう言うと、年相応の可愛らしい顔で笑った。

「ったく、ホントその小っこい身体のどこにそんな怪力があんだよ。この怪力ロリが!」

「ハルカさん?私は前にも言った通り、17歳です。それを踏まえてお聞きしますが――“ロリ”というのは私のことを言っているのですか?」

「おいおい、リアちゃん。聞き間違いは良くないな。俺は“怪力ロリ”なんて一言も――」

「誰が“リアちゃん”ですか!!」

「ぐはッ!!」

 リアにボディブローをお見舞いされ、地面にうずくまるハルカ。

 背の小ささと見た目の幼さを気にしているリアに対し、子供扱いをしたハルカが制裁を受ける…二人がそんな普段のお決まりとも呼べるやり取りをしていると…


「アンタ達…一体何者なの?」


 アニーの口から不意にそんな問いが放たれた。

 片や、プロの商人等比べ物にならない程の交渉能力を持った青年。

 片や、冒険者よりも遥かに強い戦闘力を持つ少女。

 ――彼らは一体どこの誰なのか?もしかして、実はかなり身分の高い人だったりするのだろうか?

 ここまで二人と行動を共にしたアニーの純粋な疑問だった。

 その質問に、ハルカとリアは顔を見合わせると…


「莫大な在庫販売や絶対に失敗できない大きな商談から値下げ交渉まで、商売に関することなら何でも代わりに交渉します!――“代行商談屋”」


「「どうか今後とも御贔屓に!」」

 そう声を揃えてニッと笑った。



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