死の島
オレは、よく、海に行く。
海へ行っては、満天の星空を見て、ただ、転がり込むだけの時も多く、その時に聴こえてきた海の音はオレを癒してくれ、また、包み込むような暖かさで水平線上に火が見えた。
なだらかな丘陵の奥地に見える、青い北西部にある海の向こうに、死の島、という島がある、ということを、オレは小さいころから時には童話のように、母から聞いたものだった。死の島に行ったら戻ってはられないのだ。という、話を聞いては、もしもオレがそこに行ってはどうなるのだろうか? ということを考えていた。
そしてその日も雨が降っていた。雨音がポタポタ鳴りやまない。それが一か月くらい続いた日だっただろうか? 村で身よりのいない娘を晴れるように、という祈りを神にささげるために崖から海に突き落とすことになった。オレは反対しなかった。その役目を果たすのは女性だけと決まっていたから、オレには関係がないのだ。村娘が海に突き落とされて雨は止んだ。そして五年以上、雨が降らなかったから、海が消えたのだ。誰も近寄らなかったから、みな、知らぬふりをしていたが、オレは死の島はほんとうにあるのか気になり砂粒をひたすら伝説が示す経度と緯度の指し示す方向に進んでいったが、迷子になり十日ほどたって、オレは空腹のあまりか倒れた。ああ、そうなのか、とオレは理解した。死の島は言い伝えでしかないのだ。そしてそれは死を導くのだろう。暗い力の奥に、死の島はある。もはや、誰もかれもが、死の島の存在を信じるのだろう。そして同時に信じないのだろう。オレは死の島を見ることもなく、死を待つ人として、死にあらがうこともなく、ただ、黄泉の国へ行く日を待つだけなのだ。