事の発端はいつの時代だって唐突でいやがる
はいはい駄文投下駄文投下。シリアスの始まりはテンポ良い日常シーンから始まる定期(尚、日常とは言っていない)
八月も下旬である本日は、我が『東川丘高校』の始業式である。夏の残暑はまだ引かず、雲ひとつ無い……とはいかないまでも、蒼天の中に御天道様がギッラギラ光っていらっしゃる。
正直言って、夏休みという行事を考えた奴をぶん殴りたい。中途半端に長期休みなどという物を作る事で、この登校時の気怠さが増長されるのだ。そもそも宿題が出る時点で休みでは無いと思うのは俺だけなのだろうか。ま、宿題なんぞは直ぐに終わるが。
そんな下らないモノローグを脳内再生しながら通学路を進む。
…………帰るか。今日授業無いしな。どうせ行ったとしてもこのクソ暑い中校長の長話聞いて、HRでプリントとか配られて終わりだもんな。それに――
――俺が帰ったところで、誰もその事に『気付けない』しな。
さーて、そうと決まればササッと帰って夏休みの日付にプラスワンするか! 待ってろドラゴンミッションオンライン(ゲーム)ッ!
「ちょっとそこの貴方。」
……何か女子の声が聞こえた気がしたけど気のせい気のせい。さーて、帰ってファイナリーファンタジーXIII(ゲーム)やるか!
「待ちなさい。」
うっわー、腕掴まれたー。チョッ、お前メッチャ力強いなぁ!!? 折れる折れるッ!!
「ギブだ。天道 明里。」
俺は振り向いて後ろの人物の顔を見る。透き通るような肌に『蒼い』髪。同じく、蒼く煌めいて全てを見透したような瞳。傍から見ればかなり整った顔立ち。スラッとしたスレンダーなそよ見間違えの無い立ち姿は、俺の所属しているクラスの学級委員、文武両道を体現したかのような真面目系女子(ついでに俺のような屑の天敵)天道 明里様のものだ。
……あぁ、因みに彼女はカラコンを付けている訳でもなければ、義眼を付けている訳でも、髪を染めている訳でもないし、はたまたカツラを被っている訳でもない。彼女の蒼髪蒼目は自前である……と、俺の壮絶につまらない人生が超絶イケメン俳優主演の実写映画化した時のわざわざ金を払って見に来やがったお前俳優見に来ただろって奴の為に言っておく。あれ? 言う必要無くね?
と、そんな事を考えていると後ろの鬼がご立腹だぁ……!
「何故私を無視したのでしょうか。」
オイオイ、俺が何したってんだジーザス。何で校則とかに厳しい学級委員を態々俺の前に降臨させるんだよ。なんか彼女が掛けている筈の無い眼鏡が光った様な気がするぞまったく。え、マジで? これ何か疑われてる?
……はあ、面倒くさいが、この位サッサと切り抜けて帰ろう。愛しきゲームの為に。
「いっやぁ、まさか同じクラスメイトであるとはいえ、学年一や校内一レベルで素ン晴らしい美貌を持つアンタが、一度も話した事の無い、クラス内でも影が薄い何の取り柄も無いちっぽけな俺という存在に声をかけてくださるとは思わなかっただけだ。」
と、振り向きざまに返す。どうだ、この俺の華麗な切り返しテクは。
「随分と嫌味な言い方をするのですね。」
はいダメですよねぇ。……仕方ないな、相手があの天道だからつい敵対心が……
はあ……自分の低能な頭に溜め息が出る。何で自分の『役割』を利用して休もうとしたんだ俺。バカか畜生、こうなる事がわかってたら俺はそもそも学校に行こうとしなかったぞ。
「まあいいです。それで、何故学校とは反対の方向に歩を進めようとしているのですか?」
はい本題キタ。ここでどう返すかが重要だな。
「あー……ちょっと忘れ物をしてな。家まで取りに帰ろうかと。」
ここは頭を掻いて「あー、忘れ物しちゃったー。」感を出す無難な返し。これなら、現在俺への好感度圧倒的右肩下がりの天道さんも疑いやしないだろう。
「……なるほど、引き止めて失礼しました。」
「おう! じゃあ俺、家戻るわ!」
「待ってください。」
いや何で引き留めんだよ。こっちは忘れ物取りに行こうとしてんだぞ? 本当は忘れ物すらしてねぇけど。お前の所為で遅刻したらどうすんだよ。いや、そもそも始業式出る気皆無だが。
「……何だよ。」
「今日は授業がありませんから持ってくる物は少なかった筈ですが、一体何を忘れたのですか?」
……そうきたかー。そこは盲点だったわー。
「……さ、流石に筆記用具ぐらいは持ってこなくちゃあ駄目だろ?」
「なるほど……」
顎に手を当てて考えているところ悪いんだが帰っていい? そろそろ俺、ウォーターエンプレス(ゲーム)やりたいんだけど。
「なら、良かったです。」
天道はそう言いながらこちらを見て少し微笑んだ。
……いやいや何処が良いんだよ忘れ物してんだぞ? Why? いやそんな天道さんをちょっと可愛いと思ってしまった俺をブン殴りたいがその前に何だお前、真面目なフリして人の失敗見てほくそ笑むタイプの人間だったか。奇遇だな、俺もだ。
「宿題等は忘れていないのですね。」
「……あぁ、そうだが?」
おっと、天道が屑説はどうやら気のせいだったようだ。だからなんだという話だが。
……まあ、宿題は夏休みの前に全て終わらせて初日に鞄に突っ込んだから忘れてない……てか、そもそも筆記用具も忘れてないけどな。そうか、宿題忘れた事にすりゃ良かったな……そっちの方が危機感あるしな。しくじった……
「――では、今日一日私が筆記具を貸します。」
「………………!!!!!!!?」
いやおま、え? 何言っちゃってててんのこの人とととと!?落ち着けけけけけけ!? うん、天道 明里の性格的に考えて、この行動は何も不自然では無い。然し、然しだ。天道は恐らく『登場人物』だ。この出来事が《物語》の中であったとしたら――
――天道 明里が、『モブ』である俺にこうして関われるのは不自然になる。
……まあ、だからといって『物語』の意思が未だ見えない以上、手の打ちようが無いのだが。
さて、どうするか。いっそ帰ってしまうというのも一つの手ではあるが……いや、素直に学校に行っておくか。無理に逃げて追いかけられても面倒くさいしな。
はーあ、何で始業式なんていうメンドイ行事に出なきゃなんねぇんだマイガー(オーマイゴットを凄く流暢に発音した時に出る声)……俺が前世で何をしたってんだ。精々銀行強盗ぐらいしか出来ないちっぽけな存在だろうが。重罪だなそりゃ、裁かれても仕方無いわ。って、誰が銀行強盗かっ。
「んじゃあ、ありがたく借りておくが……ホントにいいのか?」
「ええ、別にさほど席が遠いとかいうわけでもないのですし。」
「そうだったか……?」
そう呟いた瞬間、天道は俺に「何だコイツ、信じられねぇ。」とでも言いたそうな表情を向けながら大きな溜め息を吐いた。
「一番後ろの列の窓から三番目が貴方、二番目が私です。隣の席の人の顔ぐらい覚えておきなさい。」
へー、まさか隣だったとはな。俺がノートにプログラミング言語風味に板書してたのも、もしかしたら見られてんのかね。ま、見られた所でどうでもいいが。
「生憎他人に興味がわかないもんでね。アンタの顔も明日になれば忘れてるかもな。」
「嫌味もここまで極まるといっそ清々しいですね。というか、私の名前は覚えていたじゃありませんか。」
当たり前だろお前みたいな登場人物は予めマークしてんだよ。まあ基本的に他人に無関心だから席順とかは全く気にしねぇが。わかったらさっさと俺の事を忘れてくれ。
「……偶々だ。それに、天道さんは有名人だからな。」
「口だけは減りませんね。」
「話して数秒な気がするけどな。」
「そういう所を言っているのですよ。揚げ足を取るのがお上手ですね。」
「そーれほどでも。」
「嫌味ですよ。」
「知ってる。」
溜め息を吐いた天道に明後日の方向でも見ながら意思表示し「そろそろ行くぞ」と、声をかける。天道も俺の対応に諦めたのか、半ば渋々といった感じで学校へと歩を進め始めた。
結局、始業式はゲームのレベリングの効率化の方法を考えていたらいつの間にか終わった。そして筆記用具などは一度たりとも使わず……
俺は、天道にシャーペンを返し忘れた。ジーザス……
どーもー残機1LIFE0と申します。もう一作の連載作品『【連載版】誰か銭湯の男湯に美少女が居た時の正しい対処法を教えてくれ。』を読んでる方は直ぐ様ブラウザバックをオススメしまーす。だってコレコメディじゃねぇし。気分がドン底の時に思いつくネタしか出さねぇし。主人公クズにしたかったんだよ馬鹿野郎! うっせぇうっせえ。じゃーねーバイチャ(謎テンション意味不明)