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信じる者は救われる  作者: 皐月
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第一話

斉しく眼瞼が縫合されている世界で、ただ其が解れてしまっただけの一条。

光が射すか射さないかは、多分誰も知らない。


生死の境を彷徨う程の事故にあってから、瀬尾直は記憶を無くした。

しかしそれと引き換えに得た物がある。死んだ人の霊が見えるという所謂、霊感だ。


病院で目を覚ました時、そこら中に不法侵入者がいて驚いた。記憶が無いもので、それが非常識か常識かなんて事も考えが及ばない。

ただぼう、と目の前を行き買う人々を見た。昼夜問わずにぎゃいぎゃいと騒がしい人々。煩過ぎて安眠妨害だ。うるさいです静かにしてください、と言えばその人達はニタリと笑って言った。兄さんにはあたしらが見えるんかい? と。

そこに居るのだから見えて当然だ。馬鹿にしているのか、そんな言葉遊びで騒いでいる事の免罪を獲得しようとでも。眉を寄せれば、その人たちは教えてくれた。死んだ人間は霊体になり、生身の人間を陰で支え、善行を積み、そうして生まれ変わるのだと。何言ってんのこの人たち、と直も初めは半信半疑だった。霊と言えば足が無い。なのに行き買う人はくっきりと足まで見える。青白く見える事もない。いや、時々青白かったり赤黒かったりする人もいるが、大半は生身と変わらない。声も聞こえるし、触れる事も出来た。


「あんたは霊感がすこぶる強いんだねえ」

老婆が一人、そう言った。こんなもの見えても飯が食っていける訳でも無し、記憶が戻る訳でもない。何の

ための力なのか、さっぱりだ。


そこから、自称幽霊たちと仲良くなった。忘れてしまった常識、言葉、色々な知識を教えてもらう。記憶喪失のはずなのに素晴らしい学習能力を持って直は早々に退院した。どうやら自分は大学生らしい。生まれたての自身に知識だけを詰め込んだような状態で、大学生活をエンジョイしていく。大学の勉強は難しいけれど、解らなくなったら霊に聞けばいいし、楽だ。


霊曰く、青白かったり赤黒かったりする霊は人に害を与えるから目を合わせるなと言われた。目を合わせればこいつは自分が見えるのだと気付き取り憑くらしい。じゃあ霊感の無い人なんて目を合わせているつもりもないのに目があって取り憑かれ放題じゃないかと聞いたらそうでもないと言われた。どうやら取り憑くにしても人間に訴えかけたい事があるからこそ取り憑くのであって、霊感が無ければ即ち気付いて貰えない。訴えかけも受け取って貰えないのだから意味が無く、ならば霊感がありながらにして無防備な人を狙うのだと。


「良い霊でもあんた様は現世に生きとるんじゃけんね。わしらに頼っとったらいかんとよ」といつか出会った霊体は言った。


そうは言っても、普通の人間と違いが解らないのだから、仕方ないではないか。



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