言葉の海を渡りゆく
想うだけでは伝わらないから、
僕らは五十の音を繋ぎ合わせて言葉を紡ぐ。
そこへ気持ちを乗せてゆく。
ほら。今、君へ言葉を届けるよ。
でも、僕は口下手だから、
想いの全てを伝えることなど出来なくて。
でも、この世界はどうだい?
文字に溢れたこの世界。
口と耳を結ぶだけが全てじゃない。
ここでは心と手を使い、
君の瞳を通じて、言葉を、想いを届けることが出来るんだ。
そこには年齢も性別の境もない。
誰もが等しい存在で。誰もが自由で。
そして誰もが、言葉の海をそれぞれの泳ぎで渡る。
荒々しい人。ゆったりとした人。独創的な人。
誰の真似をしなくてもいい。思うがままの泳ぎでいい。
そこにはきっと、みんなが楽しむための必要最低限なルールしかない。
そうして掻き分けた軌跡は、自分だけの物語を紡いでゆくから。
一人でも多くの人に、僕の物語を知って欲しいから。
誰かの心にそれが響いて、想いを共有できたなら、
それはきっと、とても幸せなことで。
それはきっと、とても幸せなことで。
朝靄にけむる見慣れた街を見渡して、不意にそんなことを想ったんだ。
そうして今日も、これからも、言葉の海を渡りゆくだろう。
僕だけの物語を、まだ見ぬ誰かへ届けるために。
走り続ける者にこそ力は存在する。
僕の大好きなその言葉が、不意に聞こえた気がしたんだ。