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魔道薬剤官

作者: 神城クリス

 野戦病院。

 そこは戦場で負傷した兵士が治療のために運び込まれる場所。


 銃弾や砲撃を受け、怪我をした兵士達の呻き声が至る所から聞こえる中、一人その場に似つかわしくない、幼い少女の姿があった。


 彼女の名はエキドナ・ヒュギエイア特任軍曹、まだ10歳にも満たない彼女はこう見えてもれっきとした連合王国軍の魔道薬剤官だ。


 彼女は今日この日、生まれて初めて野戦病院という場所を訪れ、その惨状に慄いていた。


 話には聞いていたが、まさかこれほどとは思っていなかった。

 これはあまりにも酷すぎる。


 彼女は心の中で舌打ちをする。


 精々産業革命が始まったばかり程度の文明度しかないこの世界では、未だろくな麻酔も消毒薬もありはしない。


 受けた銃創を治療する医療技術も発達しておらず。

 銃弾を受けた腕や足は治療など考慮もされず、傷口からの感染症を防ぐために腕や足ごと切断するという事が当たり前のように行われていた。


 切断するにせよ麻酔もないのでここは悲鳴が絶える事がない。


 そして切断された後も全く消毒などされず、止血だけして後は不衛生な環境で放置だ。


 当然こんな状況では助かる命も助かりはしない。

 怪我そのものよりも、感染症で死んでいく兵士達が大半であった。


 狼狽えるな。しっかりしろ。

 私は彼らを助けに来たんだ。


 エキドナは呼吸を整え、気合を入れ直した。


 ◻︎


「本日より着任いたしました、魔道薬剤官のエキドナ・ヒュギエイア特任軍曹であります」


 エキドナは戦地での医療の指揮を執る、ボール軍医長官に挨拶をした。


「ふん、魔道薬剤官だかなんだか知らんが、ラミアごときに好き勝手させるつもりはない。君は我々の指示に従い、一切余計な事をするな」


 ボール軍医長官はエキドナをゴミでも見るような目つきで睨みつけると、威圧的な声でエキドナに命令した。


 友好的だなんて期待は微塵もしていなかったが、敵意すら抱かれてるレベルで最初から嫌われるとは。

 全く先が思いやられるな。


 軍医長官の部屋を退室したエキドナは大きな溜息をつく。


 ラミアというのは彼女の種族であり、人間をベースにヘビの特徴を併せ持ったような亜人種で、細長く縦に裂けた瞳孔が特徴的だ。


 そして何よりも大切なのが、此度の戦争の敵国がラミアの国家であり、人間がほとんどの連合王国軍内でラミアに対する感情は最悪で、エキドナは軍の中でも肩身の狭い思いをしているということだ。


 エキドナ自身は生まれも育ちも連合王国なのだが、そんな事は彼らにとって関係ないらしい。


 ここに来る前も同じ軍の仲間から悪意を向けられたり嫌がらせを受けた事は何度もあったし、ここに来てからもすれ違うたびに彼女の顔を見た人々のほとんどが嫌な顔をして隠そうともしなかった。


 自分がここで全く歓迎されていないのは明らかで、ここまであからさまに不快な感情を向けられてまで彼らを助ける意味が有るのかと心が折れそうだ、と幾度となく思いはしたが、それでも目の前の助けられる命を見捨てるわけにもいかんだろう。


 ◻︎


 それからしばらく私は上官の命令に従って負傷兵の傷の手当てを手伝いつつ、他に出来ることがないかと探り続けた。


 案の定というか、便所も大変汚い状態だったのだが、どうやら掃除の担当というのは決まっておらず、誰も掃除をしたがる人がいないらしい。

 私の休憩時間中に勝手に掃除する分には誰も文句を言う奴はいないだろう。

 とはいえトイレの中は強烈な悪臭が漂い、ただそこにいるだけで私の中の何かが削られていくような感覚に襲われる。

 世の中トイレ掃除が大好きだなんていう奇特な人間は恐らくいやしないが、しかしこれは誰かがやらねばならぬ仕事なのだ。

 やりがいのある仕事だと思って頑張るしかあるまい。

 私についてきてくれた数少ない貴重な理解者達に向かって衛生環境を向上させる事の大切さを語り、私は彼らにトイレ掃除を行うよう命令をだした。


 ◻︎


「何やってんだヘビ女」


 トイレ掃除をしようにも私達には人手も時間も足りていない。

 私自らもトイレ掃除に参加し、ひたすら無心でトイレ掃除を行っていると、一応立って動き回れる程度の気力はあるらしい、片腕を失った兵士が機嫌の悪そうな声で話しかけてきた。

 確かに私は貴様より年下で、戦闘に関する指揮権はない薬剤官だとはいえ階級は上なのだが、明らかにこの男の言動は上官に対するそれではない。

 やはり子供でラミアだから侮られているのか。


「トイレ掃除だ」


「見かけねぇ顔だが、着任早々何かやらかして懲罰か?」


「ボランティアだ」


「ボランティアだぁ? お前頭おかしいんじゃないか?」


 私としてはこんな状況を放置してる貴様らの方が狂っているとしか思えないのだが、それを彼に言ったところでどうしようもない。

 私は彼の相手をするのをやめ、清掃活動を再開した。



幼女戦記に触発されて書いてみたはいいが、妖怪長編書けないに取り憑かれているためとくに続きを書く予定はありません。


世界観としてはクリミア戦争をイメージしています。

主人公のイメージはナイチンゲールをモデルにダイナマイトを発明したノーベルさんとかを足した感じを想定してましたが、そこまで書き込むに至らず。


異世界転生してきた主人公が現代知識で衛生環境を改善していく感じの話を書きたかったなぁと。


あと麻酔とか抗生物質とか時代を先取りした医薬品を次々と開発して行ったりと。


でもその妄想をストーリーとして文章にする気力も技術も足りないので勢いで書いてみた分だけ投稿してみた感じです。


中途半端な作品で申し訳ありません。


願わくば誰かがそんな感じの小説を書いてくれる事を願って。

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