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俺TUEEEE・ハーレム・幸せいっぱい夢の世界系

ゲーム実況をするつもりが、ゲームの中に入ってしまったので、異世界実況に変更されました

作者: いかぽん

 はい、皆さんこんにちは。

 はじめましての人は、はじめまして。


 ゲーム実況をやっております、ユウトと申します。

 本日は動画を見ていただいて、ありがとうございます。


 えー、さて。

 ゲーム実況ということで、今回取り上げたいゲームはこれ──『ファンタジー世界で冒険者になりませんか?』というソフトですね。

 皆さんご存知でしょうか。


 あまり有名なゲームじゃないので知らない人の方が多いかと思うんですが、まず最初に言っておきたいのが──僕、このゲーム大好きなんですよ。


 ゲームクリアっていう概念があまりないゲームなんですけど、ひとまずラスボスっぽい存在を倒すまでに、普通にやって、プレイ時間がだいたい30時間ぐらいかかるゲームなんですけど。

 僕このゲーム、かれこれもう……トータルで、多分何千時間ぐらいはプレイしてるんじゃないかと思います。


 そのぐらいもう、大好きです。


 で、このゲーム、どんなゲームかっていうと──まあRPGです。

 MMOとかじゃなくて、一人でプレイするタイプの、普通のRPGです。


 って言うと何かこう、ぼっちが一人寂しくやるゲームみたいに聞こえてしまうかもしれないんですが、こういうタイプの一人用ゲームだからこその面白さみたいな面もあると思いますので。

 そこはまあ、ぼっちとかね、言わないでいただけると、僕が夜に枕を涙で濡らすことなく寝ることができるわけですが。


 えー、まあ、そんなことはさておき、とりあえず、実況を始めていきましょう。




 ──はい、画面出ましたかね。

 タイトル画面から、「ニューゲーム」を選んで──はい、まずは、「冒険者の創造」です。


 このゲームでは、まずこのプレイヤーの分身となる主人公を、創造するところからスタートします。

 キャラクターを自分好みに設定できるタイプのRPGで、僕はもう、こういうタイプのゲームが大好きなんですよ。


 はい、設定画面です。

 わりと設定項目はシンプルですね。


 今、「種族を選んでください」って出て、「人間」「エルフ」「ドワーフ」「獣人」の四種類の種族が表示されていますが。

 これがまず、一つ目の設定項目ですね。


 このゲームではあと、種族のほかに、職業にあたるクラスを二つ、選ぶことができます。

 この辺は一度決めてしまったら、ゲーム中にはもう変えられないので、とても大事です。


 というわけで、まずは種族を決めていきましょう。

 「人間」「エルフ」「ドワーフ」「獣人」とあるわけですが、ここではオーソドックスに、「人間」を選んでいこうかと思います。

 各種族、いろいろと特徴があるんですが、ここはやっぱり主人公らしく、人間ということで。


 で、次、クラスですね。

 今、「メインクラスを選んで下さい」って出て、八つのクラスが表示されています。


 「ソードマン」「ウォリアー」「ガーディアン」「プリースト」「メイジ」「シーフ」「レンジャー」「モンク」とありますね。

 まあだいたい、クラス名を見ればどんなクラスかは想像つくと思うので、詳しい説明はしない方向でいきます。

 気になる方は攻略サイトでも見てください、ということで。


 で、ここではメインクラスに、剣を扱うバランス型の前衛職である「ソードマン」を選択していきます。

 やっぱり、主人公なら剣でしょうということで。


 で、次に「サブクラスを選んでください」って出ました。

 このサブクラスには、メインクラスと同じクラスは選択できないことになっているので、「ソードマン」は選択できません。


 えー、で、ここではちょっと、サブクラスに「メイジ」を選んでみようかと思います。

 剣も使えて、攻撃魔法も撃てると、なんか「勇者」って感じでカッコイイと思いませんか。


 ちなみに、この手の「剣も魔法も使える」みたいなキャラ構成をすると、どっちつかずの中途半端なキャラになりがちなのが、この手のRPGにはよくあるパターン、あるあるネタだと思うんですが。

 このゲームもそうです。

 ぶっちゃけ、こういう作り方をすると、弱キャラになります。


 ただ僕ぐらいに遊びこんでくると、もう強キャラを追及するのにも、飽きて来るんですよ。

 いっそ少し不利なぐらいのキャラ構成の方が、ゲームバランス的にちょうどいい感じになったりで、逆に楽しかったりするんですね。

 というわけでまあ、ある種の縛りプレイみたいなものと思っていただければ、いいかなと思います。


 ──さて、そんな感じで、種族とメインクラス、サブクラスが決定しました。

 あとはもう、この主人公の見た目なんかを設定していくフェイズですね。

 この辺はゲーム的な有利不利には一切関わって来ないので、完全に趣味の世界です。


 まず性別です。

 女の子主人公のほうが華やかかなと思うんですが、ここは敢えて、ファンタジーモノの主人公らしく、「男」を選んでいきます。

 まあパーティメンバーとして選べるNPCにも女の子キャラはたくさんいるので、その子たちを仲間に入れて、いわゆるハーレムプレイ的な感じで攻めてみようかと思います。


 次に年齢。

 これは人間だと、14歳以下とか、50歳以上に設定すると、能力値にペナルティが付いたりします。

 さっき有利不利に関わって来ないとか言ったけど、ちょっと嘘つきました。


 まあでもこれは、「15歳」を選びましょう。

 主人公らしく、「少年」って感じですね。


 はい、で、あとはこの主人公の、外見を弄っていきます。

 髪の色、目の色なんかも弄れますし、顔立ちとか体格なんかも変えられます。


 ここでは髪の色、目の色ともに、黒にしましょう。

 顔立ちや体型は、そうですね、ちょっとショタっぽい感じで、可愛い系の美少年にしておきましょうか。

 これ、実は男装している美少女でしたとか言われても、アリな感じですね。


 で、最後に声優さん。

 声も決められるんです。


 で、これ実は、男キャラの中にも、男性声優さんだけじゃなくて、女性声優さんも混ざってるんですよ。

 いやー、製作スタッフ、分かってますね。


 というわけで、この少年声の女性声優さんの声を、選んでいきます。


 最後に、名前ですね。

 これはちょっと恥ずかしいですが、まあゲーム実況ということもありますし、僕の名前をそのまま入れていこうかと思います。

 ユ、ウ、ト、ですね。


 ──はい、出ました。

 「このキャラでゲームを始めますか?」と出て、設定した内容と、あとステータスが表示されていますね。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ユウト


種族:人間


メインクラス:ソードマン

サブクラス:メイジ


レベル:1

経験値:0/1000


所持金:80ペニー


HP:64

MP:14


STR:13

VIT:16

DEX:14

AGL:14

INT:13

WIL:14


攻撃:13

防御:5

魔力:13

魔防:4

命中:4

回避:3


▼装備

右手:(なし)

左手:(なし)

鎧:(なし)

補助1:(なし)

補助2:(なし)


▼スキル

(なし)


▼スキルポイント

ソードマン:3

メイジ:2

フリー:1


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 はい、いっそ清々しいぐらいに、ぺったんこの能力値ですね。

 主人公の性別が女だったら、まな板の称号を与えたいぐらいです。


 まあまあ、クラス構成的にその辺はしょうがないので、このステータスでゲームを始めてしまいましょう。


 あ、ちなみに、装備とかスキルとかは、ゲームが始まってから買ったり取ったりできます。

 ですので、ここはこのままで、ゲームスタート──と。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『一万時間プレイ特典!


 あなたはゲーム内の主人公に生まれ変わり、異世界の冒険者になることができます。

 主人公になりますか?


 >はい

  いいえ


 (この特典は、本作を一万時間以上、本気でプレイした人にのみ提示されます)』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ……ん?


 ……んん?

 あれ、何だこれ?


 あれ、キャラ作成のときに、こんな表示出なかったはず……ていうか、一万時間プレイ特典?

 数千時間どころじゃなく、一万時間もプレイしてたのか……いや、それはいいとして。


 あ、えっと、ちょっ、ちょっとすみません、ちょっと待ってもらっていいですか?

 僕もちょっと、あの、予想外のことが起こったので、混乱してます。


 これ、あの、今まで起きたことのない現象なんですよ。

 表示の内容から察するに、一万時間以上プレイしてから、ニューゲームを選ぶとこれが出るんだと思うんですが。


 えっと……どうしようこれ。

 あー……うん、そうね。


 ──えっと。

 ちょっと予定は狂うんですけど、これ面白そうなので、「はい」を選んでみようかと思います。


 今まで表示されたことのないメッセージなので、何が起こるか分からないんですが、そういうアクシデント的な部分も含めて実況できると、それはそれで面白いかなと思いますので。


 はい、では。

 「はい」を選択します。

 いきますよ。


 果たしてどうなるでしょう──か。






 ──はい。

 思っていた以上に、予想外のことが起きました。


 えっとこれ、実況は続けられるのか……?

 いや、今、僕の視界にはですね、一面、ファンタジー世界の「街」が広がっています。


 違うんですよ。

 ゲームのモニターじゃなくて、横見て後ろ見て一周ぐるっと回ってみても、「街」なんですよ。

 中世ヨーロッパ的なというか、ファンタジー的なというか──そんな感じの街並みです。


 これ何だろう、いわゆるバーチャルリアリティ的な感じなんでしょうかね?

 まあよく分からないんですが、とりあえず、なんか突然、そんな感じになりました。


 で、僕の体なんですが、これもさっき「冒険者の創造」で設定した、ショタっ子主人公のものになってる感じっぽいんですね。

 声もあの、少年声の女性声優さんの声になってて、さっきから自分の声にめっちゃ興奮してるんですけど。


 ……これ、実況出来てるのかな。

 ちょっとどうなってるかよく分からないんですけど、とりあえずまあ、録音できていたときのことを考えて、実況続けていってみたいと思います。


 ……しかしこれ凄いなぁ。


 いや、ヤバイっすね。

 今僕、めっちゃ興奮状態です。

 胸がドッキンバクバクです。


 僕の体、触れます。

 地面も触れます。

 歩けますし、近くの建物の壁も触れます。

 質感もあります。


 どうなってるんでしょうね、これ。

 まったく分からないんですが。


 この感動を、動画を見てくれている皆さんに伝えられるのかどうか、僕はまったく自信がありません。

 これ……だって、録画無理だよね、どう考えても。

 確実に録画機器のスペックをオーバーしてると思うので、多分画像としてお見せすることができないかなと思うんですけど。


 まあまあ、まあいいでしょう。

 しょうがない。

 できる範囲で、実況していきましょう。


 風景とかも、僕に見えているモノを言葉で説明していってみますので、ちょっとしんどいかもしれないんですが、皆様、想像で補っていただけると、よろしいんじゃないかなと思います。


 さて。

 今僕の視界に何が見えているかと言いますとですね。


 えー、まず、空。

 晴天です。

 昼間ですね。

 太陽がおおよそ真上に上っています。

 こういうところはまあ、ファンタジー世界といっても、地球準拠なんでしょうね。


 で、僕の立っている場所はというと、街のそこそこ大きな通りです。

 コンクリートとかじゃなくて、肌色の土の地面が、そのまま道になっていますね。


 石畳が敷かれていたりはしません。

 敷かれている感じの街も、このゲームには存在するんですが、この街はこんな感じですね。


 で、いわゆる中世ヨーロッパ風の建物が、周囲にはずらっと立ち並んでおります。

 三角屋根の、木造の住居がほとんどなんですが──一軒だけ目の前に、石造りの立派な建物があります。

 これがあの、「冒険者ギルド」っていうヤツですね。


 このゲームはまず、ここから始まります。

 ここでまず冒険者ギルドに入って、そこの受付嬢から、冒険者とは何たるやという説明を聞くわけですね。


 はい、そうです。

 このゲームの主人公は、これから冒険者になろうとして、この街にやってきたばかりと──そういう感じの設定になっています。


 だから今はまだ、新米のペーペーですね。

 これから冒険を重ねるにつれて、一人前の冒険者に成長していくと、そんな感じなわけです。

 まあ実際、1レベルですしね。


 って、これは……どうやったらステータスとか開けるんだ?

 キーボードがない、キーボードがないから──あ、こうか。


 なるほど。

 えっと、頭の中でキーボードを押すイメージをしたら、ステータスを呼び出せました。

 すんげー高機能ですね。

 現代にここまでの技術があったことに驚きです。


 んーっと……うん、同じ感じで、スキル設定とかも操作できそうですね。

 良かった良かった。


 さて、とりあえず、冒険者ギルドの中に入って行ってみましょう。

 入り口の扉を開けまして、中に入ってまいります──


「冒険者ギルドへようこそ! えっと、初めましての方ですよね?」


 はい。

 さっそく、冒険者ギルドの受付嬢から、声を掛けられました。

 入り口を入って正面、すぐ目の前ですね。


 この辺はまあ、イベント進行です。

 一通り、これから冒険者として活動していく上での注意点とかを、受付嬢ちゃんが教えてくれます。


 ちなみに周りをざっと見渡すと、入って右側がすぐ壁になっているんですが、そこに掲示板があります。

 ここに冒険者用の依頼クエストが貼り出されるので、これを毎日確認しに来て、手頃な依頼があったら受けると、そういった感じになりますね。

 まあこの辺は、今話しちゃってもちょっと分かりにくいかもしれないので、あとでまたまとめて説明します。


 で、入って左側はというと、ちょっとした酒場になっています。

 それでそこに、パーティメンバーに誘うことのできる仲間というか、仲間候補生みたいなNPCがいます。


 今いるのは、一人だけですね。

 聖戦士の「クリス」というNPCで、16歳の金髪碧眼の女の子です。


 で、最初はイベント進行で、これから彼女とパーティを組んで、簡単なクエストを受けることになります。

 そのクエストで彼女から、いろいろとゲームのチュートリアルをしてもらうと、そういう流れになります。


 ……なるはずです。

 この状況がビジュアル面以外、いつも通りなら。


「それじゃあユウトさん、これで冒険者登録は完了です。これから冒険者として、頑張ってください。……あと、お願いですから、死なないでくださいね」


 とりあえず、最初の受付嬢イベントが終了です。


 いきなりゲーム開始しょっぱな、「死なないでください」とか、熱いですね。

 まあでも、こういうゲームなんですよ。


 このゲームの特色なんですけど、冒険中に冒険者が戦闘不能になると、そのキャラクターはNPCであろうと主人公であろうと、一定確率で死んでしまいます。


 で、死んでしまったキャラは、二度と蘇らない。

 ニューゲームで最初から始めない限り、死んだキャラは死んだままです。


 もちろん、そういうゲームなので、いわゆる自動セーブ型のゲームになっているわけです。

 リセットしてセーブしたポイントからやり直しとかは、まあできません。

 というか、やっても意味がありません。


 そこがこのゲームの素晴らしいところであり、一般受けしなかった部分でもあるんですが。

 やっぱね、冒険者っていったら、死のスリルっていうものがないと、僕ダメだと思うんですよ。


 まあだからこそ、ライトユーザーに受けにくいっていうのも、分かるんですけど。

 僕は、ここがやっぱり、このゲームの醍醐味だと思うんです。


 あ、もちろん、主人公が死んでしまったら、そこでゲームオーバーです。

 主人公の冒険者としてのクエスト達成履歴とかが流れて、彼の人生終わりです。

 そのセーブデータをロードしても、その履歴画面が出るだけになるっていう。


 ──っと、すいません、熱く語ってしまいました。

 僕が語ってばかりいても仕方ないので、ゲームを進めていきましょう。


 さて、まずは最初、チュートリアルクエストを受けていきます。

 今、クエスト掲示板には、依頼が一つだけありますね。

 これを受けていきましょう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『コボルド退治』

 依頼主:ナルカ村の村長

 依頼内容:村の近くにコボルドの群れが棲みついたので、それを退治・殲滅してほしい。

 報酬:80ペニー


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ……とまあ、依頼はこんな感じになっています。


 ちなみに豆知識。

 ペニーっていうのは、中世でも使われていたイギリスの通貨単位も同じ名称だそうで。

 今では1ペニー=1円ぐらいの価値しかないけど、中世イギリスの1ペニー銀貨1枚は、今の価値に直して、購買力ベースで1,000円ぐらい、労賃ベースで3,000円ぐらいの価値があったらしいです。


 このゲームのペニーは、その中世イギリスのペニー銀貨をイメージして設定されているとのことで、購買力ベースで1ペニー=1,000円ぐらいに相当する──と公式設定資料集に書いてございました。


 さらにちなむと、ペニー(penny)は単数形の呼び名で、複数形ではペンス(pence)になるのだとか。

 だから、イギリスの通貨のペニーと同じものと考えると、報酬80ペニーっていう表記はおかしくて、本当は80ペンスと表記しないといけない。

 だけどそこはゲームとしての分かりやすさを優先して、ペニーで統一したんだそうです。


 以上、豆知識──っと、今どこまで話してたんだっけ。


 あ、そうそう、『コボルド退治』の依頼を受けます、ってところまででしたね。

 これを、依頼書を剥がして、受付嬢のところに持っていきましょう。


 ──はい、受付嬢、依頼書を渡してクエストを受けたい旨を伝えると、少し困ったような顔をしましたよ。


「『コボルド退治』ですか……。確かに、新米冒険者が受けるクエストとしてはちょうどいいですね。でも、さすがに一人では……パーティを組んでいないと、このクエストをお任せするわけにはいきません。えっと──あ、ちょうど酒場にクリスさんがいるので、彼女をパーティに誘ってみてはどうでしょう?」


 流れるように鮮やかに説明台詞を話す受付嬢ちゃんは、NPCの鏡ですね。


 さて、パーティ編成のフラグが立ったので、クリスに話しかけます。

 酒場に入って、カウンター席に座って飲んでいる金髪碧眼の美少女の斜め後ろに立って、声を掛けていきます。


「ねぇねぇ、お姉さん」


 少しショタキャラっぽくしゃべってみます。


「──ん、何か用?」


 ワインを傾けていたクリスは、グラスを置いて、視線だけをこっちに向けて聞いてきます。

 ここは、いつものゲームでは「パーティを組んでほしい」「何でもない」の二つの選択肢から選ぶことになるんですけど……選択肢が出ないですね。


 んー……試しに、ちょっと遊んでみましょうか。


「……お姉さん、僕とパーティ、組んでくれませんか?」


 ちょっともじもじしながら、上目遣いで言ってみました。

 すると──


「なっ……」


 なんとクリスが、頬を赤らめて、驚愕の表情を浮かべております。

 おー……この初期イベントでこの反応は、見たことないですよ。


 明らかに、僕の行動に反応してますよね。

 やばっ、何これ、面白い。


「だめ……ですか……?」


 ショタ力をフルに発揮して、クリスに追加攻撃を仕掛けてみます。

 そうしたら──効果は抜群でした。


「か、か、か──可愛いーっ!」


 クリスはガタッと席から立ち──なんと、僕に抱きついて来ましたよ。

 金髪の美少女が、ぎゅうううっと僕のことを抱きしめてきます。


 ……えーっとですね、すごい、いいにおいがします、はい。

 ふわっとね、こう、女の子特有のいいにおいが……。


 そう言えば、視覚、聴覚、触覚だけじゃなくて、嗅覚まで再現されてますね。


 それにしても何なんでしょうね、この技術の粋を無駄に凝らしたような特典ゲームは。

 こんなことができるんなら、一万時間のプレイ特典とかじゃなくて、最初からこれで売りに出していれば、もっと確実に話題になったと思うんですけど。

 謎技術すぎますね。


 ちなみに、ちょっとリアルすぎて残念なのが、鎧の質感まで表現されてしまっていることで。

 クリスはチェインメイルを装備しているので、折角抱きついてくれているのに、その柔らかい温もりとか味わえなくて、むしろほのかに痛かったり。


「……お、お姉さん、痛いよ」


 ちょっと抗議してみます。

 ショタプレイは忘れません。


「はっ──ご、ごめんなさい! 私つい、こんな聖戦士にあるまじき行為を──」


 我に返ったクリスが、解放してくれました。

 聖戦士にあるまじきっていうか、普通に初対面の人間にやることじゃないと思うんですが、そのあたりいかがなものでしょうか。


 まあ、それにしても、こっちの言動によってNPCの言動が変わるっていうのは、めちゃくちゃ面白いですね。

 インタラクティブ性とでも申しましょうか。


 これ一体、どういうシステムになってるのか、ホント気になりますね。

 人工知能が、もはやここまで進化しているってことなんでしょうか。

 現代技術恐るべしです。


 えっと、それで何の話をしていたんだったか──あ、そうそう、クリスとパーティを組むところでしたね。

 ちょっとイタズラしてみてしまいましたが、さて、ちゃんとパーティを組めるでしょうか。


 なんて思っていたら、クリスは僕の目線に合わせて屈んで、頭をなでてきました。


「それで、パーティだったね。いいよ、お姉さんが一緒に行ってあげる」


 なんて言って、にっこり笑ってきました。


 えっと……目の前での金髪美少女の笑顔、ヤバ可愛いです。

 惚れそうです。

 NPCに恋しちゃいそうです。


 だとしても問題ないですよね。

 嫁が二次元にいる人だっていますし。


「うん、ありがとうお姉さん!」


 とりあえず、さっきのお返しに、こちらからも抱きつき返してみました。

 リアルでこんなことしたら、僕の容姿だと確実に通報されて豚箱行きですが、ここはゲームの中だし、美少年なのできっと大丈夫です。


「はわっ……か、可愛い~。何この子~、ヤバイよ~」


 ほらね。

 僕に抱きつかれたクリスの方が、嬉しそうにいやんいやんと悶えています。

 しかし芸の細かい人工知能だこと。


 ちなみに、聖戦士って設定はどこに行ったんだっていう感じの壊れっぷりなクリスたんなんですが、こいつ実は元々こういうキャラだったりします。

 NPCとの『親密度』っていう隠しパラメータが上がっていくと見れるようになる『NPCイベント』っていうのがあるんですが、その辺見ていくと、こいつが「可愛いもの好き」なキャラであることが判明するんですね。


 可能であればこのプレイでも、そういうNPCイベントもガンガン起こしていきたいと思っているんですが──ともかく今は、チュートリアルクエストですね。

 パーティメンバーに加わったクリスを連れて、もう一度、受付嬢のところに行って、クエストを受注します。


 あ、そうそう。

 クリスのステータスも出せるはずなので、それも見せていきたいかなと──あ、はいはい、出せますね。

 クリスのステータスは、こんな感じになっています。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


クリス


種族:人間


メインクラス:プリースト

サブクラス:ソードマン


レベル:3

経験値:3,320/7,000


HP:76

MP:21


STR:15

VIT:19

DEX:15

AGL:15

INT:15

WIL:20


攻撃:29

防御:16

魔力:15

魔防:16

命中:7

回避:4


▼装備

右手:ブロードソード(攻撃+14)

左手:ラウンドシールド(回避+1、防御+1、魔防+1)

鎧:チェインメイル(回避-1、防御+9、魔防+9)

補助1:(なし)

補助2:(なし)


▼スキル

《ヒール》2

《ヒールタッチ》1

《WILブースト》1

《剣マスタリー》3

《パリィ》1


▼未使用スキルポイント

プリースト:0

ソードマン:0

フリー:0


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 こいつの能力値も、ぺったいですね。

 って言っても、ぺったくない能力値のキャラがまだ出て来てないので、これがどのぐらいぺったいのかも分かりにくいかとは思うんですけど、その辺はまた、追々見せていければいいかなと思うんですが。


 ちなみにクリスの胸部は、全然ぺったくないです。

 むしろ常識レベルでは、かなりジャンボな方ですね。


 いや本当、先ほど抱きつかれたのが鎧越しだったのが、実に悔やまれます。




 さてそんな感じで、少し残念な聖戦士のクリスをパーティに加えてから、もう一度受付嬢のところに行くと、今度こそ、クエスト『コボルド退治』を受領することができます。

 というわけで、そろそろ冒険者ギルドの建物を出ていきますね。


「ところでキミ──まだ装備とか買ってないみたいだから、先に武器屋に寄って装備整えたほうがいいよ」


 冒険者ギルドの建物を出たところで、クリスがそう助言してきます。

 で、クリスが先を歩いて、武器屋まで誘導してくれます。

 この辺、親切設計ですね。




 ──はい、というわけで、街中を歩いて、武器屋に到着しました。


 いやしかし、街中を歩いてみて思うのが──今更ながらなんですが、風景ビジュアルがすごいリアリティですね。

 3D技術はここまで来ていたのかと、驚くよりほかありません。


 建物の質感とか、地面の質感とか、全っ然CGっぽくないんですよ。

 もうこれ、現実世界にしか見えないです。


 この映像美を皆様にお見せできないであろうことが、ホント残念でしょうがないです。

 僕も3D映像技術の最先端とか詳しいことはわからないんですけど、素人目に見たら、革命としか言いようがないですよこれは。


 で、それはさておき、武器屋です。

 中に入っていくと、木が香る木造建築の店内は、それほど広くはない感じですね。

 ちょっと狭めのコンビニ並みか、それよりもっとコンパクトなぐらいです。


 そのコンパクトな店内に、壁やら棚やらありとあらゆる場所を使って、いろんな武器が展示されております。

 剣とか斧とか槍とか、弓なんかもありますね。

 で、剣は剣でも、僕の腕ぐらいの長さのショートソードから、僕の背丈と同じぐらいの長さがあるグレートソードまで、あれやこれやと揃っております。


 で、店の入り口すぐの横手にカウンターがあって、髭面の武器屋の店主が座っています。


 いや、それにしても──今ちょっと僕、ブロードソードを手に取ってみているんですが、この金属っぽい質感とか、重さ、冷たさとかもう、惚れ惚れしますね。


 余談ですが、リアルでも中世ヨーロッパ風の武器を取り扱っている店とかあるんですけど、行ったことある人いますかね。

 あれね、一度行ってみると、感動しますよ。

 少年の心を取り戻します。


 まあ西洋剣でも、一振り数万円とかする上に、所持に資格とか必要なのかもわからないので、冷やかしになっちゃうんですけどね。

 それでも、男の子としては、人生に一度は行っておきたいスポットです。


 まあそれはともかくとして、今僕の手元には、あのリアル武器屋の感動があるわけですよ。

 ずっしりと重たい鉄の剣が、いま僕の手の中に、みたいな。

 少し抜いてみると、シャリっていう音がして、銀色に輝く刀身が現れます。


 しかも、これをね──だってこれ、僕が使っていいんだよね?

 洞窟でぐわーっとモンスターとか襲い掛かってきたときに、これを振るって攻撃していいってわけなんですよね、きっと?


 マジヤバでしょう。

 ちょっとドキワクが止まらないんですけど。


 えーっと、それで、僕が買うべきものは、決まっています。

 ソードマンで僕、ユウトのステータスだと、買うべきは一択、今手に持っているこの「ブロードソード」です。

 値段は35ペニーですね。


 そう言えば、お金ってどうやって出すんだろう。

 えっと……あ、あったあった。


 普通に、財布っぽい小さな革袋を、懐に持っていました。

 中には小さな銀貨がじゃらっと入っています。


 このペニー銀貨1枚の大きさは、1円玉よりも少し小さいぐらいですね。

 その銀貨を、革袋の中から全体の半分ぐらいを鷲掴みにして、店主の前のカウンター上にじゃらっと置きます。

 で、それをひの、ふの、み……と数えていきます。


 35ペニーだから、35枚ですが……これ地味にめんどくさいな。

 金貨とかあればいいのに。

 たしか設定上は、12ペニー相当のシリング金貨とかいうのがあったはずだけど……よし、さておき、これで35枚のはず。


 というわけで、武器屋のおっちゃんに銀貨35枚を対価として渡して、ブロードソードを、買いました。

 武器屋を出ます。


 そんなわけで、今僕の手元には、僕の所有物となったブロードソードがあります。

 鞘に入っていて、ずっしりと重い、鉄の剣です。

 なんか恐れ多くてね、さっきから捧げ持つように持っちゃってるわけですが。


 鞘に留め金が付いているので、それで左腰のベルトに下げてみます。

 装備完了です。


 左手で鞘を押さえて、右手で剣の柄を持って、抜いてみます。

 シャラっと音がして、抜けました。


 目の前に掲げてみます。

 日の光を反射して、キラッと光りました。


 ……やっべ、かっけぇ。


 ええー、いいのこれ、本当にいいのこれ?

 マジでドキワクっすわ。


 ……おっと、いかんいかん。

 実況者が一人で興奮してちゃいかんですね。


 さてでは、試しにステータスを開いてみましょう。

 ステータス、オープン!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


攻撃:13→27

防御:5

魔力:13

魔防:4

命中:4→3

回避:3


▼装備

右手:ブロードソード(←new!)

左手:(なし)

鎧:(なし)

補助1:(なし)

補助2:(なし)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 能力値とかは変わらないので該当部分だけですが、はい、こんな感じです。

 変更部分が明滅していますが──攻撃力が14上がって、命中力が1下がってますね。


 命中力は、武器を装備していない「素手」っていう状態が、地味に命中力が上がる仕様なので、結果として下がってしまっています。

 まあでも、この数値変更なら全然、攻撃力アップの効果のほうが大きいですし。

 それに後でソードマンのスキルを取得することで、剣装備時の命中力を上げられるので、そこはカバーできます。


 なお、所持金ですが。

 キャラ作成時に80ペニー持っていたはずなので、ブロードソードで35ペニー使って、残りは45ペニーのはずです。

 ちゃんと数えてないですが、ざっと見た感じ、財布の中にそのぐらい残ってそうな感じです。


 ──さて、武器を入手しました。

 次は防具です。


 こちらもクリスに案内されて、武器屋の隣の防具屋に入っていきます。


 えー、内装はおおむね、武器屋と同様ですね。

 ただし武器の代わりに、展示用に直立されたプレートアーマーとか、革製のレザーアーマーとか、質感たっぷりの防具たちが、これでもかと並べられています。


 カウンターには、武器屋のおっさんと双子という設定の、まったくそっくりな顔の髭のおっさんがいます。

 ……いつもだとグラフィックの使い回しなんて気にもならないんですが、このぐらいリアルだと、さすがに気味が悪いですね。


 さて、ともあれ。

 ここでも買うべきものは決まっています。


 まず、メインウェポンが片手用武器のブロードソードなので、盾がほしいです。

 ということで、前衛戦士用の最も基本的な盾である「ラウンドシールド」を購入します。

 これが15ペニーです。


 ラウンドシールドというのは、文字通りラウンド──円形の盾です。

 大きさ的には直径70~80センチぐらいで、内側のバンドに腕を通して体の前に構えると、上半身が丸々隠れるような形状になっております。

 素材はベースが木製で、フチの部分と中央部だけが、鉄で補強されていますね。


 さてこのラウンドシールを買うと、もう所持金は30ペニーしか残りません。

 なので、鎧は20ペニーで買える「レザーアーマー」を購入します。


 本当は、ステータス的にはもっと上の鎧──40ペニーの「クイルブイリ」とか、65ペニーの「スケイルアーマー」とかを買いたいんですが、お金が足りないのでしょうがないです。


 ちなみにまた豆知識なんですが。

 レザーアーマーの「レザー」っていうのは、動物の毛皮から毛を取り除いて「なめす」という作業をしたもののことを言うらしいです。


 この「なめす」という作業によって、英語的には「ハイド(hide)」や「ファー(fur)」が「レザー(leather)」になって、日本語的には「皮」が「革」になると。

 あるいは、そのまんま「なめし皮」なんて呼ばれたりもするそうですが。


 で、この「なめす」っていう作業、何なのか。


 動物の皮っていうのは、そのままにしておくと、すぐに腐ったりしてダメになってしまう。

 ただそれを、草木に含まれるタンニンっていう成分が入った液体と水とに何度も交互に漬け込むことで、柔軟性と保存性を持たせることができるんだそうで。

 これが結構手間のかかる作業なんだとか。


 さらに言えば、毛皮から毛を取り除いたり、内側に残った動物の肉をそぎ落としたりするのも、薄い鉄の板みたいなので手作業で地道にやっていたようで。

 そうして綺麗になってなめし加工をされた「レザー」っていうのは、職人の手間暇がかかっているために、元の毛皮と比べて結構な価値のあるものになったんだそうです。


 以上、豆知識でした。

 話を戻します。


 ラウンドシールドとレザーアーマーの代金、合計35ペニーを支払っていきます。

 財布の革袋から、残りの銀貨をごっそり取り出して、35枚数えて防具屋のおっさんに渡します。


 えー、相変わらずめんどくさいです。

 金貨プリーズ。


 さて、それはともかくとして、支払いも終わり、これらの防具も僕の所有物となりました。

 防具屋を出たところで、さっそくこれらを装備していきましょう。


 まず、レザーアーマーを装備します。

 服の上から、もそっと着込んでいきます。


 はい、着てみました。

 ステータスを見てみましょう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


防御:5→8

魔防:4→7


▼装備

鎧:レザーアーマー(←new!)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 影響のある部分だけピックアップしますが、防御と魔防が3ずつ上がりました。

 地味ですが、こうやって着実にプラスを積み重ねていくことが重要です。


 次に、盾を装備していきます。


 左腕を、ラウンドシールドの内側のバンドに通して、手でその先の取っ手をつかんで装備してみました。

 それを体の前に構えてみると、いい感じですね。

 何か心強いです。


 そんなわけで、ステータスをドン。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


防御:8→9

魔防:7→8

回避:2→3


▼装備

左手:ラウンドシールド(←new!)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 防御と魔防、それに回避が1ずつ上がりました。

 地味ですが、確実なパワーアップです。

 こういうものをしっかりと確保していきたい所存であります。


「うん、装備は整ったかな」


 防具屋の前でフル装備した俺を見て、クリスが満足げにうなずいてきます。

 その上で、付け加えるように、


「あとは、スキルをまだ覚えてなかったら、今のうちに習得しておいたほうがいいよ」


 とチュートリアルしてくれます。

 そんなわけで、ここでスキルも取っていきましょう。


 まあでも、あんまり細かく説明しても、動画見てる人は面白くないと思うので、この辺はちゃちゃっと、取るべきスキルを取っていっちゃおうかと思います。

 ちゃちゃちゃのちゃ──っと、はい、できました。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


命中:3→5


▼スキル

《剣マスタリー》2(←new!)

《パリィ》1(←new!)

《炎マスタリー》1(←new!)

《ファイアボルト》1(←new!)

《コンセントレーション》1(←new!)


▼未使用スキルポイント

ソードマン:3→0

メイジ:2→0

フリー:1→0


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 こんなんなりましたが、一応、簡単にスキル内容の説明を。


 《剣マスタリー》は、さっきちらっと言った、剣を装備しているときの命中力を上げるスキルですね。

 《パリィ》は、敵の攻撃を一定確率で無効化するスキルです。


 《ファイアボルト》は炎属性の基本的な攻撃魔法で、《炎マスタリー》と《コンセントレーション》は魔法の命中率を上げるためのスキルだと思ってください。


 というわけで、スキルポイントは全部使い果たしました。

 またレベルが上がると手に入るので、そうなったらまた新しくスキルを習得していこうかと思います。


 ──さて、じゃあ最後に、装備の購入とスキルの取得の影響を、トータルとして見てみますね。

 はい、ステータス、ドン。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ユウト


種族:人間


メインクラス:ソードマン

サブクラス:メイジ


レベル:1

経験値:0/1000


所持金:80ペニー→10ペニー


HP:64

MP:14


STR:13

VIT:16

DEX:14

AGL:14

INT:13

WIL:14


攻撃:13→27

防御:5→9

魔力:13

魔防:4→8

命中:4→5

回避:3→4


▼装備

右手:ブロードソード(←new!)

左手:ラウンドシールド(←new!)

鎧:レザーアーマー(←new!)

補助1:(なし)

補助2:(なし)


▼スキル

《剣マスタリー》2(←new!)

《パリィ》1(←new!)

《炎マスタリー》1(←new!)

《ファイアボルト》1(←new!)

《コンセントレーション》1(←new!)


▼未使用スキルポイント

ソードマン:3→0

メイジ:2→0

フリー:1→0


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ……とまあ、こんな感じです。

 僕なんかこういう、出来上がったステータスを見てニマニマしてしまう方なんですが、皆さんどうなんでしょうかね。

 僕が奇人変人の類なんでしょうか。


 まあ、それはさておき。


「──うん、スキルの取得も終わったみたいだね。それじゃ、行こっか」


 クリスがそう言って、街中を、出口の門に向かって歩いていきます。

 僕はそのあとを、ついていきます。


 ──さあ、これから、命懸けの冒険の始まりです。

 ちょっと緊張してきました。


 頑張ります。






 ──はい、というわけで、コボルドが棲みついているという、洞窟の前まで来ました。


 途中、クエストの依頼人の村であるナルカ村に立ち寄って話を聞いたりしましたが、その辺は編集カットで。


 ちなみにですね、ここに来るまでに、辟易へきえきしたことが一つありまして。

 何かというと──街から村まで、村から洞窟までが遠い!

 道のりが長い!


 街から村まで、リアルに歩いて1時間かかりました。

 街の門を抜けて、木々に囲まれた街道を歩くこと、本当に1時間ぐらい。

 時計がないんで、厳密にはわからないんですが、まあそのぐらいかかったと思います。


 それだけ歩いてようやくたどり着いた村は、一面の麦畑で見た目には綺麗でしたが、あの田舎特有のあんまり嬉しくない感じのにおいとか──まあ、堆肥たいひのにおいなんですが、うげげって感じでした。

 すんません、都会のもやしっ子なもんで、慣れてないんですよ。


 で、さらにその上で、村からコボルドの棲んでいる洞窟までが、森の中とかやたらと足場の悪いところを歩いて、30分ぐらい。


 でもなんか不思議なことに、僕の身体能力がリアルのものとは違ってて、山道みたいなところを歩いてきても、疲労でガクガクってこともないので、その辺はいいんですが。

 ゲーム内の主人公のステータスに依拠してるんでしょうかね、これ。

 不思議なもんです。


 それにしても、何もこんな移動時間とかまでリアルにしなくてもって思うんですが、仕様なんでしょうね。

 製作スタッフの執念にも似たこだわりというか、なんというか。

 僕もね、本作のファンですから、こういうのも呑んでいきますけど。


 でもまあ確かに、これは初見のプレイヤーにやらせたら、初っ端で投げ出すでしょうね。

 その点は、どっぷりハマったプレイヤー専用のゲームとして提示したのは、やっぱり正解なのかなって気もするんですが。


 救いだったのは、それが実質、クリスとのデートかピクニックかっていう感じで、ドッキドキの時間だったことですね。

 いやもう、NPCだとか、そういうのどうでもよくなってきますよこれ。


 めっちゃ可愛い。

 この金髪美少女、いじると超可愛いの。


 例えばね、村までの林道で、


「クリスお姉さんって、恋人とかいるんですか?」


 とか聞いてやると、すんごいわかりやすく頬を赤くして、


「ううっ……いい人がいればなぁって、思うんだけどね……」


 なんて言って、ちらっ、ちらって僕のほう見てくるんですよ。

 ヤバくないっすか?


 いつもはこんな、序盤から主人公補正が入りまくりのギャルゲーみたいな感じじゃないんですけどね。

 このリアル仕様だと、容姿で補正が入るようになってるのかもしれません。

 主人公ユウトのこの容姿が、クリスに設定された好みにドンピシャというのは、可愛いもの好きのクリスなら、あり得る話です。


「じゃあ、その……ユウトくんは、好きな人とかいるの?」


 なんて、逆にクリスのほうから切り込んできたりもします。

 展開早すぎです。

 そしてせっかくなので、ここでもちょっと遊んでみました。


「僕、クリスお姉さんのこと、好きですよ」


 なんて、クリスの手を取って言ってみます。

 可愛い面してプレイボーイな発言ですが、クリスは少し、違う意味にとらえたようです。

 彼女は顔から湯気を噴かんばかりに真っ赤になって、あわあわしながら


「そ、そういうんじゃなくて、その、ほら…………う、うん、まあいっか……」


 なんて言って、以後二人でお手々つないで歩いたりしました。

 クリスの手は柔らかくて、にぎにぎしているだけですごくドキドキしました、はい。


 え、キモイって?

 そういうクレームはあの、事務所を通してください。

 僕の豆腐メンタルがもたないので。


 え、うらやましい?

 うん、僕もね、このゲームを一万時間遊んできたことで、こんな嬉しいことがあるなんて、思ってもいなかったんですよ。


 でも逆にね、相手がNPCだと思うからこそ、こうやって躊躇なくいじれるっていうのはありますね。

 リアルじゃもう、とてもこんなことする度胸もないし、仮にやったとしたら、前にも言ったかもしれないですけど、まあ「お巡りさんこいつです」って言われて豚箱行きですよね。


 でもその割には──NPCっていう割には反応が、リアルっていうのとはちょっと違うかもしれないんですけど……アレですよね、主人公好き好き大好きってなることが約束されたアニメの萌えキャラと、主人公である自分がリアルに会話してる感じ?

 伝わるかなー、このニュアンス。


 まあまあ、そんな嬉しい感じだったので、道程は言うほど苦ではなかったです。

 ていうかいっそ、デート気分楽しかったと白状してもいいぐらいです。


 はい、ごめんなさい、そっちが本音でした。

 楽しかったです。


 ──が、ですよ。

 ここからは、真面目にやらないといかんですね。


 改めて言っておくと、僕とクリスの二人は今、コボルドが棲みついたという洞窟の前にいます。

 村から森の中のけもの道を歩いてきた先に、開けた場所があって、少し先に切り立った崖があって、その底部に洞窟の暗い入り口がぽっかりと穴を空けております。

 あの中に、いつものゲーム通りであれば、トータルで10体ぐらいのコボルドがいるはずです。


 ちなみにコボルドっていうのは、このゲーム中でもぶっちぎりで最弱クラスのモンスターです。

 このクエストも、半ばチュートリアルの一環だけあって、クリスと二人掛かりであれば、よっぽど運が悪くなければ、苦戦はしないはずです。


 ……が、しかしです。

 先にも言った通り、このゲーム、基本的にデスゲームなんですよ。


 よっぽど運が悪くなければ苦戦をしないと言いましたが、これはつまり、よっぽど運が悪ければ、苦戦をするということです。

 そして、よっぽど運が悪いが二乗で重なるぐらいの事態が起きると……まあ、お察しです。


 まあ、クリスのことといい、いつものゲームと違う部分がちょいちょいあるので、完全にいつも通りとは限らないんですが。

 ただねー……このいつもよりリアルっぽくなったゲームが、製作スタッフの想いと執念によって形作られたものだとするなら、まず間違いなく言えるであろうことが一つあってですね。


 それは、製作スタッフはこのゲームを、「主人公やNPCが絶対に死なないゲーム」には、絶対にしないであろう、っていうことです。

 どんな強者でもひょんな不運で命を落とすっていうような、そんな諸行無常の死生観みたいなものは、絶対に曲げてこないと思うんです。


 ドラマ的でも、物語的な必然でも何でもない、何の価値もない死っていうものが、どこかで自分に、あるいは仲間に起こるかもしれないし、それはこのチュートリアルクエストで起こるかもしれない。

 このゲームを遊ぶ以上は、そういうことは、覚悟して挑む必要があります。


 ──それに、だからこそ、僕はこのゲームのことが大好きなんです。


 ある種のギャンブルに近いんだと思います。

 負けたら破産するような、とんでもない額を賭けた自分の全身全霊を乗せたギャンブルと、おそらくは同質です。

 命や想いといったものをチップにした、至高のギャンブルですね。


「──それじゃ、行こうか、ユウトくん」


 クリスが、1時間前のぐだぐだ状態が嘘だったかのように、真剣な面持ちで言ってきます。

 その右手にはブロードソードを、左手には火をつけたランタンを持っています。


 ランタンを持っている──というのは、照明器具なしで暗い洞窟を探索するのは、自殺行為だからです。

 コボルドは暗視能力を持っているので、暗闇の中から一方的になぶり殺しに遭います。


 あ、そういえば、そもそも皆さん、「ランタン」ってどういうものか、ご存知でしょうか?

 まあ検索すれば出てくると思うんですが、一応簡単に説明を。


 ものすごく大雑把に言ってしまえば、ランタンっていうのは、ガラス瓶の中に蝋燭ろうそくを入れて、それに取っ手をつけたような道具です。

 中の蝋燭に火をつけると、持ち運べる照明器具になるというわけですね。


 中世ヨーロッパ風のファンタジー世界では、松明たいまつと並んで、有名な照明器具かと思います。

 ああでも、蝋燭を使うものより、アルコールランプみたいな油に浸した太い紐に火をつける形式のもののほうが、一般的かもしれませんが。


 さて、一方の僕はというと、右手にブロードソード、左手にはラウンドシールドという装備です。

 照明とか無視して、ガチで戦闘しか考えてないスタイルです。


 NPCとはいえ、これだけリアルな環境下で女子に照明担当=盾装備ができない役を任せるのは、心苦しくないと言えば嘘になりますが。

 しかし実際問題として、レベルが高くてチェインメイルを装備している彼女のほうが、防御能力の面で圧倒的に上です。


 無駄に男気を見せることで、無駄に死にたくはないですし、そうなることは回り巡ってクリス自身にも無駄なリスクを負わせることにもなりかねません。


 ──さてさて、それでは。

 命をチップ台に乗せて、洞窟に踏み込んで行きましょうかね。






 ──はい、そんなわけで現在、洞窟を進んでおります。


 壁がごつごつとした、岩肌の洞窟ですね。

 ランタンの明かりに照らされた洞窟の壁は、青みがかった灰色ですが、明かりの揺らめきに応じてほのかに色彩を変えています。


 今、僕ら二人が歩いているのは、通路です。

 高さ、幅とも3メートルぐらいの──ちょっと広めですかね、そんな通路になっています。

 僕とクリスが両手をいっぱいに広げて横に立てば、お互い、片方の手が壁に付いて、もう一方の手が相手の手にくっつく感じの広さです。

 まあ、二人が横に並んで戦うにあたって、問題のない広さでしょう。


「さて、そろそろかな……」


「……? そろそろって、何が?」


 僕のつぶやきに、横を歩くクリスが反応してきました。

 ランタンの明かりが少し揺らめいて、風景をちらりと揺らします。


 そして通路の先、その明かりが届いている一番奥──明かりと暗闇の境界から、二つの小さな人影が現れました。

 犬に似た頭部と、人間の子供のような小柄な体を持ったモンスター──コボルドです。


 一方のコボルドはショートスピアを。

 もう一方のコボルドはダガーを、それぞれ片手に持っています。


 隣のクリスに、サッと緊張が走ったのが分かります。

 そっとしゃがんでランタンを床に置き、剣を構えています。

 盾は背負っているので、左手は空いた状態です。


 僕も息を呑み、手にしたブロードソードとラウンドシールドを、あらためて構えなおします。


 ふぅー……これは、FPSのゲームより、迫力あるな。

 視界に自分の装備している盾と剣が見える、この感じね。


 コボルドたちは、通路の先で僕らを威嚇するように、ぐるるっと唸っています。

 いつ駆け寄ってきてもおかしくない感じですが、まだ少し遠い間合いです。


「──ねぇクリス、左右、入れ替わったほうがいいと思う」


 僕は緊張しながら、右手にいるクリスにそう提案します。

 ショタプレイが抜けて、クリスを呼び捨てにしてしまったのは緊張のせいですが、もうこれで通しちゃえばいいかなって気もします。


 ちなみにこのゲームは元々、NPCはそれぞれ、戦闘中には独自のAIで動きます。

 それに対してプレイヤーは「命令」することはできず、「提案」という形で、行動提案することができるだけです。

 「誰に提案する?」→「何を提案する?──攻撃、魔法、隊列変更」とか、そんな感じ。


 各NPCは、その提案にイエスと言うときもノーと言うときもあるんですが、その辺は結構キャラの性格なんかが反映されていて、面白かったりします。

 が、これも一般的なプレイヤー層にはあまり受けがよろしくなかったらしくて、クソゲー呼ばわりされる原因の一つになっていたりするわけなんですが。


「……入れ替わる? どうして?」


 僕の提案に対して、クリスがそう聞き返してきました。


 やっぱりそうなるか……。

 こういうところは、元々のゲームにはない仕様ですね。


「相性の問題だよ。左の短剣のコボルドのほうが、右の槍のコボルドより命中力が高いけど、攻撃力が低い。短剣のコボルドを相手にチェインメイルを装備してるクリスなら、命中されても、クリティカルされなければほとんどダメージ通らないはず。逆に軽装の僕は、命中力が高い相手のほうがやりづらい」


 僕がそう理由を並べ立てると、クリスは少し驚いたという表情で僕のほうを見てきました。


 ……あれ、やっぱりゲーム用語使っても、NPCにはわからないか?

 いつものゲーム同様、「スキル」とかのメタい言葉平気で使ってくるから、通じるかと思ったんですが。


 でも、それは杞憂きゆうだったようで。


「……そうね、わかった。私が短剣のほうの相手をするわ。ユウトくんは槍のほうをお願い」


 クリスは頷いて、提案に乗ってくれました。

 よしよし。


 まあ、わりと些細ささいな差ではあるんですけどね。

 万全は期していかないと。


 そんなわけで僕とクリスとは、ハイタッチならぬグータッチをしつつ、左右を入れ替わります。

 そして、そうしたところで、今が攻め時と思ったのか、コボルドたちが駆け込んできます。


 いや、攻め時でも何でもないんですけどね。

 僕とクリスは、普通に問題なく応戦を開始します。


 槍を持った犬面のモンスターが、唾液とかだらんだらん垂らしながら、僕に向かってバタバタと駆け寄ってきます。

 顔は凶悪ですが、ショタ体形の僕よりも小さいぐらいの小柄なモンスターなので、あまり迫力はないです。

 ちょっと発狂しちゃった感じの、小学校低学年の子供に襲い掛かられるような印象です。


 ただ、子供でも包丁を持って迫ってきたら、それはやっぱりそれなり怖いのと同じで、油断はできません。

 しかもコボルドが持っているのは、包丁よりも凶悪な、戦闘用のショートスピアです。

 そしてコボルドの身体能力も、さすがに小学校低学年の子供と比べたら、だいぶ上です。


 ──そして何より、僕です。

 当然、槍なんて凶器を持った敵と殺し合いをした経験なんてないですし。

 剣とか槍を扱った経験もないですし。


 何より、さっきから、心臓がバクバクいってます。

 ヤバいです。

 胸の鼓動だけで死にそうです。


「がうぅううううっ!」


 ついに俺の目の前まで駆け寄ってきたコボルドが、飛びかかるように槍を突き出してきます。

 あっ、ヤバい──と思ったのですが。


 でも、僕の体は自然に動き、その槍を盾で弾きました。

 そして、一歩を踏み込み、剣を突き出します。


 ブロードソードが、コボルドの肩を貫きます。

 でも致命傷には、なっていないようです。


 僕が剣をコボルドの肩から引き抜くと、そのコボルドは反撃とばかりに、再び槍を突き出してきました。

 その攻撃に僕は、ヤバっ、と直感しました。

 回避も、盾による防御も間に合わず、コボルドの槍が僕の胸に吸い込まれ──


 ──た、かと思ったときに、僕の右腕が驚くほど素早く動きます。

 ガキン、という音とともに、僕の剣が、コボルドの槍を弾きました。


 そして返す刀で、僕の剣が、コボルドの胴体を斜めに切り捨てます。


 それでコボルドは、ボッという音とともに、黒いもやのようなものになって、消えていきました。

 そのあとに、紫色の小さな宝石が、地面に転がります。


 ……どうやら、コボルドを倒したようです。

 さっきの槍を弾いた動きは、《パリィ》のスキルが発動したのかもしれません。


 クリスの方はと見ると、そちらもちょうどコボルドの首を跳ね飛ばし、黒い靄に変えたところでした。

 戦闘終了のようです。




 ……はい。

 ちょっと、すいません、叫ばせてもらっていいですかね。


 いいですか?

 じゃあ、いきますよ。


 すぅー、はぁー……。









 ──怖ぇぇえええええええええええっ!




 なんだこれ、怖ぇよ!

 体勝手に動いてよかったよ、怖いよこれ!


 死ぬかと思った!

 マジ死ぬかと思った!


 いや、コボルドから1回命中を受けたぐらいで、まあ滅多死ぬわけがないんですけど、もうそういう問題じゃなくて。

 普通に怖いっす!


 安全だと思ってても、ジェットコースターが怖いのと一緒。

 本能レベルで怖い。




 ……あ、でも、なんだろうなこれ。


 ぞぞっとするんですけどね。

 それがなんかこう、癖になりそうな感じ?


 いや、ドMとか、そういうんじゃなくて。

 今ジェットコースターの話とかしましたけど、ほらジェットコースターとかお化け屋敷とか、「怖い」って分かってても、行きたくなるじゃないですか。


 それと同じで、これなんか、すげぇ癖になります。

 これヤバ……僕なんか、ヤバいところにスイッチ入っちゃった気がします。


 ……まあ、そんな僕の内面の葛藤はさておき。

 宝石を拾って腰の小袋に入れたクリスが、歩み寄ってきます。


「ふぅ……お疲れさま。大丈夫? 怪我はしてない?」


「う、うん……だ、大丈夫。……クリスお姉ちゃんは?」


「ユウトくんのおかげで、大丈夫。一撃だけ命中受けたけど、チェインメイルで止まったわ」


 クリスはそう言って、ぽんぽんと自分のわき腹をたたきます。

 そこに命中を受けたっていうことみたいです。


「……ユウトは、震えてるね。実戦は初めて?」


「……うん」


 素直にうなずいておきます。

 言われてみると、震えて……ますね。

 興奮のしすぎかもしれません。


「戦術が的確だから、ひょっとしたらベテランなのかなって思ったけど、ユウトくん1レベルだし、そうだよね」


 ……おっと。

 NPC側からも、こっちのステータスが見れるんでしょうか。

 これは、NPCも侮れません。


「……と、ところで、もしよければ、なんだけど……」


 ……ん?

 クリスが何か、顔を赤らめながら、指で頬をかいています。


「……その、震えが止まるまで、お姉さんが、ぎゅって抱いててあげようか?」


 ……おい。

 緊張感が一気に吹き飛んだぞ。


 NPCが積極的に、真剣な冒険RPGをギャルゲー路線に変更してこようとするんですが、これはどういうことでしょうか。

 いやまあ、いつも通りなら、この近辺にはもうコボルドはいないはずだし、大丈夫といえば大丈夫のはずですが。


 ──いや、大丈夫なら、いいか。

 僕はクリスに向かって、上目遣いでこくんと頷きます。

 これもある種のNPCイベントみたいなものと思えば、回避してしまうのももったいないですしね。


「はううぅっ! この可愛さは凶悪すぎるぅ~っ!」


 クリスが、鼻血吹きながら悶えつつ、何か言ってます。

 お前キャラ崩壊早すぎんだろ。


「じゃ、じゃあ失礼して……ぎゅうううううう」


 クリスが抱き着いてきました。


 チェインメイルを押し上げる凶悪な胸が、僕の胸に押し当てられます。

 今度はこっちもレザーアーマーを着ているので、チェインメイルの鎖が痛いとかはないです。


 運動した後のほのかな汗のにおいが、僕の鼻孔をくすぐってきます。

 ……いや、だからね、嗅覚まで刺激してくるのは、反則だと思うんですよ。


「く、クリス、ごめん……も、もう大丈夫だから」


 このままだとヤバいことになりそうだったので、クリスの体にギブアップの意思を込めたタップをして、事前にストップをかけておきます。


「えっ……あ、うん……ごめんね、また痛かった?」


 クリスがホールド状態から僕を解放しました。


「ううん、そうじゃないけど、その……やっぱり、恥ずかしくて」


 ということにしておきます。

 男の子の部分が大変なことになりそうだったから、とは言えません。


「あははっ、そ、そうだよねっ。私ったら、何しちゃってるんだろうね、あははははは」


 クリスは赤くなった顔をパタパタと手で仰ぎながら、空笑いを浮かべています。

 とりあえず、どうにか誤魔化せたようです。




 さてさて、そんなわけで第一の戦闘を終え、いつもはないはずのNPCイベントを消化したところで、洞窟をさらに進んでいきます。


 ちなみにこの洞窟、いつものゲーム通りなら、あまり長くはないです。

 もう1回遭遇ポイントがあって、そこを突破したら、あとはボス戦を残すだけですね。


 あ、そうそう。

 このゲームでは、モンスターとのランダムエンカウントっていうのは、基本的にはありません。

 それはシンボルエンカウントっていう意味でもなくて、そもそも戦闘が起こるポイントが、限られているということです。


 この洞窟だったら、さっきの一戦目と、この後に待っている二戦目、それからボス戦という、合計3回のイベント戦闘が起こるのみです。

 だから戦闘回数自体はそんなに多くならないので、1回のクエストっていうのは、わりとサクサク進みます。


 ──は、いいとして、予定通りなら、そろそろ第二の遭遇ポイントですね。

 最初の遭遇場所から、数分ぐらい洞窟をうねうね歩いた頃ですが……あ、いましたいました。

 隠れましょう。


 ……さて今、僕と、同じく敵の存在に気付いたクリスは、洞窟の通路に張り付いて、曲がり角の向こう側を覗いています。

 その曲がり角の向こう側は、ちょっとした広間のようになっていて、そこで4体のコボルドが地べたに座って酒盛りをしています。


 はい。

 ちょっとこういうのに慣れない人もいると思うので、言い間違いじゃないよという意味を込めて、もう一度繰り返しておきます。


 コボルドたちは、酒盛りをしています。

 オーライ?


 こういうね、モンスターたちも生きてるんだぞっていう感じのイベント表現は、このゲームの面白いところですね。

 いや、生きてるっていっても、この世界のモンスターは「魔石」って呼ばれる宝石を媒介にして生み出された魔法生物みたいなものなので、生きてるって言っていいのか微妙なところではあるんですが。


 生活感、ですよね。

 生活感っていうのはこのゲームを表すキーワードの一つだと思うんですが。


 その、モンスターの生活感を見せておいて、そいつらと殺し合いをしろっていうこの、罰当たりな感じね。

 まあ世界観的に、モンスターは放っておくと人間を殺すものなので、生存競争としてしょうがないっていうことなんですが。


 善悪っていうものを超えた、ダーティさとでも言うんですかね。

 そういう殺伐としたところもまた、僕は好きなんですが。


 あ、ちなみに、コボルドたちが酒盛りをしている広間の壁には、火のついた松明たいまつが掛かっていて、広間はわりと明るいです。

 暗視能力を持つコボルドたちも、酒盛りは明るいところでしたいんでしょうか。


「連中、だいぶ出来上がってるみたいね。──どうしよう、飛び込もうか?」


 クリスが僕の耳元で、小声でささやいてきます。


 ……吐息が耳にかかって、ヤバかとです。

 ていうか、体もわりと密着してて、体温が……っていかんいかん、シリアスにやらんと死ぬ。


「その前に、僕がファイアボルトを撃ち込むよ。向こうが反応して襲い掛かってくるまでに、2発は入れられるはず。クリスは、残って来たやつを迎撃して」


「うん、分かった。それでいこう」


 そう言って、僕とクリスはグータッチ。

 行動に移ります。


 まず僕が、曲がり角に出て、酒盛りをしているコボルドたちの前に姿をさらします。

 酒盛りでべろんべろん状態のコボルドたちのうち、何体かが、僕の存在に気付いたようです。


 さて、魔法の使い方に関しては、見当がついています。

 脳内の選択肢から、《ファイアボルト》の使用を決定。

 適当に対象を決めて、そいつに向けて剣を突き出します。


「──ファイアボルト!」


 女性声優さんの綺麗なショタ声とともに、突き出した剣の先の空間に、燃え盛る火の玉が生まれ、すぐさま発射されます。

 火の玉の大きさは、野球ボールより少し大きいぐらいですかね。


 ボッという音を発して発射された火の玉は、酒盛りをしていたコボルドたちのうちの一体に着弾し、その体を燃え上がらせました。

 そして、そのコボルドは黒い靄になって消え去り、その下の地面に小さな宝石を落とします。


 ──おろ?

 一撃で倒したか。

 クリティカルしたかな?


 まあ、とにかく1体撃破です。

 残るは3体。


 ちなみに、魔法を生み出した直後に、体から何か精気のようなものが抜けていった感じがしました。

 これは、MPが減った感覚なんだと思います。

 まあでも、ユウトの最大MPは14あって、《ファイアボルト》の消費MPは2なので、あと5発は問題なく撃てるはずです。


 なお、このゲームではMPが0になると、精神力を全部失って昏睡──気絶状態になっていまいます。

 魔法のご利用は計画的に、ですね。


 さて、面食らったのは、残る3体のコボルドたちです。

 慌てて武器を持って立ち上がり、こちらに向かってこようとしますが──嬉しいことに、そのうち1体が足をもつれさせて転倒しました。

 ビバ、千鳥足。


 そして、残る2体に関しても、僕のところに辿り着くまで、まだ少し間があります。

 その間に、追撃をかけることにします。


 まず、脳内選択肢から、先ほどは起動しなかったスキル、《コンセントレーション》を発動します。

 これはMP消費なしで使える、魔法攻撃の命中率を上げるスキルなんですが、移動と同時には使えないので、さっきは使えませんでした。


 今回は、条件を満たしているので、乗せていきます。

 不意打ち状態でもなくなったので、命中率に不安も出てきますしね。


 それから、本命の魔法を発動させていきます。


「──ファイアボルト!」


 再び、僕が掲げた剣の先の空間から、火の玉が発射されます。

 そしてそれが、転倒せずに向かってきたコボルドのうちの1体に、命中します。

 そのコボルドの体が、炎上します。


 ──が、今度はそのコボルドは、黒い靄となって消えることはなく。

 その体を包む炎が収まったあとも、ひるんだ様子なく、こちらに駆け寄ってきます。


 ですよねー。


 ユウトの《ファイアボルト》でコボルドを一撃で落とすのは、基本しんどいはずです。

 さっきは運よくクリティカルしたせいで、一撃で落とせたんだと思うんですが。


 まあ、それはそれとして。

 そんなことを考えているうちにも、2体のコボルドが、僕の目の前まで迫ってきます。


 例の狂犬よろしく唾液をだらんだらん垂らした感じで、短槍や手斧を持って──

 あ、ヤバいヤバいヤバい──


 でもそこに、ユウトとコボルドたちとの間に颯爽さっそうと割り込んでくる、金髪美少女の姿が。

 あらヤダ、かっこいい。


 はい、もちろん僕らのヒロイン、クリスたんです。

 あらかじめランタンは床に置いて、盾を装備した、フル装備のクリスたんです。


 向かってくる酔っ払いコボルドを待ち受けたクリスは、ファイアボルトでダメージを受けている方のコボルドに剣による突きを放ち、その心臓を貫いて、さっそく1体を黒い靄に変えます。


 うーん、鮮やか。

 その頼もしくて麗しい背中に、惚れちゃいそうです。ぽっ。


 その後、クリスはもう1体のコボルドと交戦に入りっていきます。

 が、酔っぱらってふらついているコボルドと、装備も万全のクリスとでは、格の違いは明らかです。


 しかしそこに、先ほど転倒したコボルドが、起き上がって参戦してこようと向かってきます。


 もちろん、僕がそうはさせないわけですが。

 僕はクリスの横に立って、向かってくるもう1体のコボルドを迎撃していきます。




 ──その後結局、僕とクリスはそれぞれ二撃で担当コボルドを沈め、黒い靄にしてやりました。

 酔っていたコボルドは命中力と回避力が下がっていることもあってか、二人とも無傷での勝利です。


「ユウトの作戦、ばっちりハマったね」


 剣を収めたクリスが、笑顔になって、その手で僕の頭をなでなでしてきます。

 わぁい、ご褒美だ~……って無邪気に喜ぶのもどうかと思うんですが、なんか気持ちいいので、せっかくなので堪能しておきます。

 それにしてもこの娘は、自分の1歳下でしかない男の子を、何だと思ってるんでしょうね。


 ──まあそれはさておき、あとはボス戦を残すのみです。

 この調子で、乗り切っていきましょう。






 ──というわけで、やってまいりました、ボス戦前。

 この洞窟は一本道なので、迷うことなくここまで来れます。


 ぐねぐねと歩いてきた洞窟の通路が、正面が行き止まって、ほぼ直角に左手に曲がる方角に通路が続いています。

 いつものゲーム通りなら、この角のすぐ先が、ボスのいる広間になっているはずです。


 ──おっと。

 クリスが無造作にその角に出ようとしたので、僕はその肩をつかんでストップをかけます。


「待って、クリス」


 僕が声を抑えてクリスの耳元でささやくと、クリスは少し顔を赤らめつつ、しかし僕の様子から状況を察したのか、僕の指示に従ってくれます。


「どうしたの? ……この先にモンスターが?」


「うん。この洞窟のコボルドの、リーダーがいるはずだよ」


「……どうして分かるの?」


 あっと、そうか……どう言い訳しよう。

 さすがに、いつものゲーム通りなら、なんて言うわけにはいかないし……。


「中からコボルドたちの声が聞こえた。モンスターの言葉、勉強したことがあるんだ」


 とりあえずそんなあたりで誤魔化しておきます。

 クリスはそれで納得してくれた模様。


「……それで、どうするの?」


 洞窟の曲がり角前で立ち止まって、作戦会議をする僕とクリスですが……まあ、正攻法しかないよなぁ。

 リアルに考えても、ランタンの明かりは角まで漏れているし、クリスのチェインメイルが立てる音も結構大きいしで、こっちの存在も向こうに気付かれていると見るべきでしょう。


 ちなみにボス部屋で待ち構えているのは、コボルドが2体と、この洞窟のコボルドのリーダーである「コボルドチーフ」というモンスターが1体で、合計3体のはずです。


 まあ、このコボルドチーフ、半ばチュートリアルクエストであることもあって、ボスと言ってもあまり強くはないです。

 リスクに対する安全マージンを考えなければ、クリス一人でも殲滅できるんじゃないかっていうぐらいです。


「真正面から戦うのが、一番いいと思う。でも万全で挑みたいから……」


 僕は自分が背負っている荷物袋を下ろして、その中から、松明を一本取り出します。

 これまで必要がなかったから言ってなかったですが、実はこういう装備品を、ゲーム開始時から自動的に持ってるんです。


 これがちょいちょい役に立つんですが……今がその時だ、と。


「この先の部屋には、リーダーのほかに雑魚コボルドが2体いるはずだけど、そいつらは無視して、集中攻撃でリーダーを先に叩いたほうがいいと思う。その方がリスクは小さくなるはず……クリス、ちょっとごめんね」


 僕はそう言いながら、クリスが持っているランタンのシャッターを開けて、そこについている火を、自分が取り出した松明につけます。

 松明に巻かれた、可燃性の油が染み込んだ布切れに火がつき、それは瞬く間に大きな炎となって燃え盛っていきます。


 僕はその燃え盛る松明を、通路の角の前まで行って、その先の左手側に向かって勢いよく投げ込みます。

 暗闇だった通路の先の左手側が、その向こう側から明るく照らされます。


「これでこの先の明かりは大丈夫。クリス、ランタンを置いて、盾を装備。準備ができたら攻め入ろう。それで悪いけど、クリスは前衛をお願い。僕は後衛からありったけのファイアボルトを撃ち込む──それでいい?」


 僕のその提案(?)に、クリスは最初きょとんとしていたけど、すぐにランタンを地面に置いて、慌てて背中から盾を取り出し、それを装備しながらこくこくとうなずきます。

 ちょっと強引すぎたかなーとも思いますけど、まあ提案が通ったんなら、それでよしとします。


「じゃあ──行くよ、クリス!」


「う、うん」


 準備が整ったところで、僕とクリスは角を曲がり、その先へと駆け込みます。




 角を曲がった先は、予定通り、広間になっていました。

 そしてその奥の方に、ひときわ体の大きい──といっても普通の人間サイズぐらいですが、ボスコボルドが1体と、その取り巻きの雑魚コボルドが2体います。


 3体のコボルドたちは、武器を手に、戦闘態勢を整えて待ち構えていました。

 ……まあ、そうでしょうね。


「──あれがボスね!」


 クリスが、中央の大柄なコボルド──コボルドチーフに向かって、身を低くして駆け出していきます。

 っと、こっちも遅れをとるわけにいかないですね。

 脳内から《ファイアボルト》の魔法をチョイスし、それを発動していきます。


「──はぁっ!」


 僕の魔法が発動するより早く、敵のもとに駆け寄ったクリスの剣が閃きます。

 コボルドチーフはそれを回避しようとしたようだけど及ばず、クリスの剣がチーフの体を斜めに切り裂きます。


「──ファイアボルトっ!」


 そこに僕の魔法が追い打ちをかけます。

 僕が掲げた剣先の空間に生まれた火の玉は、高速で発射され──ドォオオオンッ!


 ──げっ、マジか!?


 コボルドチーフの顔面目掛けて飛んだ火の玉は、チーフがとっさに顔を横に倒したせいで、目標を外れてその背後の洞窟の壁に着弾、壁の表面を破壊してしまいます。


 くっそぉ……《コンセントレーション》乗せられないと、こんなもんか。

 リアルラックの問題ではあるんだが──


「くぅっ……っ!」


 僕がそんな不手際をしている間に、コボルドたちの凶刃がクリスを襲っていて──クリスは雑魚コボルド2体の攻撃を凌いだものの、チーフが振るうロングスピアによる一撃を、腹部に受けてしまったようです。

 致命傷ってことはなさそうだけど……まずいな。


 ……いやいや、あのぐらい大丈夫のはずなんですけど。

 クリティカルさえしなければ、チーフの攻撃がヒットしても、クリスのHPを2割削るぐらいのはずなんで。

 まだまだ全然、余裕はあるはず。

 危なくなったら自分で《ヒール》をかけるはずだし。


 でもなんか、いつもと違う環境のせいで、つい焦ってしまいます。

 焦っちゃダメですね、落ち着け、落ち着け……。


 落ち着いて、やることは決まっているんですから。

 《コンセントレーション》起動からの、《ファイアボルト》。

 それだけです。


「──ファイアボルトっ!」


 もう何度聞いたか、いつもの女性声優さんの少年声。

 火の玉が、ボッと音を立てて、山なりに緩やかな曲線を描いてコボルドチーフに襲い掛かります。


 ごおっと、チーフの体が燃え上がりました。

 ほっ……命中したか。


「──はぁぁあっ!」


 そしてその炎が収まったところに、クリスの鋭い剣の一撃が、コボルドチーフの胸板に突き立てられます。


 それが、フィニッシュになりました。

 コボルドチーフの体が黒い靄となって、消滅していきます。


 はー……やった、倒した。

 まったく、心臓に悪い。


 これであとは、雑魚コボルドたちを片付けるだけです。




 ──それから後は、クリスと協力して、残った2体のコボルドをつつがなく片付けました。

 クリスが追加で小さな手傷を負ったけど、大事なく終了です。


「はー……」


 戦闘が終了して、僕はぺたんと、洞窟の地べたに座り込みます。

 なんか、すごい精神的に疲れました。

 いやMPを消費したからとか、そういうことじゃないと思うんですが。


 その僕のもとに、倒したコボルドたちの宝石を拾い終えたクリスが、歩み寄ってきます。


「お疲れさま。……ユウトって変な子だね、ベテランかと思うぐらい手慣れてるところもあれば、ビギナーらしいところもあるし」


 そう言って、クリスが僕に、手を差し出してきます。

 僕はその手を取って、立ち上がります。

 クリスの手は、にぎるたび、柔らかくてドキドキします。


「うん……クリスは怪我、大丈夫……?」


「──ああ、これ? 平気平気。こんなのはヒールで一発だし」


 そう言ってクリスは、わき腹の傷口に手を当てて、《ヒール》の魔法を使います。

 クリスの手から光が発せられ、それが彼女の傷口を癒していって、その負傷を完全にふさいでしまいました。


「それじゃ、帰ろうか」


「うん。一緒にクエスト受けてくれてありがとう、クリス」


「ん、こちらこそ。ありがとう、ユウト」


 ──と、二人で謎のお礼を言い合って、コボルド退治を無事に終えた僕たちは、街への帰路につくのでしたとさ。






 ──はい、というわけで、間は編集カットして、街の冒険者ギルドまで帰ってきました。


 時間はもう夕刻。

 街の三角屋根の建物たちも、ほどよく夕焼け色に染まっていますね。


 冒険者ギルドに入って、受付嬢ちゃんにクエスト達成を報告します。

 途中のナルカ村で受け取った達成証明の札を渡して、クエスト達成報酬である80ペニーを受け取りました。

 で、その半分の40ペニーを、クリスに渡します。


 あと、モンスターを倒した時に落とす宝石──あれが「魔石」っていうんですが、あれは街で換金してもらえるので、その分を配分して、各自3ペニーを入手します。


 さて、クリスとはこれで、一度パーティ解散です。

 また別のクエストを行なうときに、必要であれば彼女に声をかけることになります。




 それでは、最後にステータスを確認して、今日のプレイを終わりにしたいと思います。


 このゲームでは、主にクエストを達成することにより、経験点を手に入れることができます。

 モンスターを倒すことでも、ちょっとは経験値が入るんですが、それは本当に微々たるもので、それよりも圧倒的に大きいのが、クエスト達成経験点なのですね。


 はい、それでは──ステータス、ドン!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ユウト


種族:人間


メインクラス:ソードマン

サブクラス:メイジ


レベル:2(←Level up!)

経験値:1,050/3,000


所持金:10ペニー→53ペニー


HP:68(+4)

MP:15(+1)


STR:14(+1)

VIT:17(+1)

DEX:15(+1)

AGL:15(+1)

INT:14(+1)

WIL:15(+1)


攻撃:28(+1)

防御:9

魔力:14(+1)

魔防:9(+1)

命中:6(+1)

回避:5(+1)


▼装備

右手:ブロードソード

左手:ラウンドシールド

鎧:レザーアーマー

補助1:(なし)

補助2:(なし)


▼スキル

《剣マスタリー》2

《パリィ》1

《炎マスタリー》1

《ファイアボルト》1

《コンセントレーション》1


▼未使用スキルポイント

ソードマン:1(+1)

メイジ:0

フリー:0


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ……とまあ、クエストを達成することによって、こんな感じでレベルアップをしていきます。

 こうしてだんだん強くなっていって、やがては英雄と呼ばれるような存在になっていくわけですが──まあ、「途中で死ななければ」の話ですね。




 ──それでは、今日はこのぐらいにしておきましょう。

 まあ、録音だけでもできているかも、相当怪しいですが──できていた場合には、皆様ご視聴ありがとうございました、ということで。


 それでは、次の動画でまた会いましょう。

 お疲れ様でした~。















 ……ん、あれ?

 これ、ゲーム終了、どうやるんだ?

 頭の中探しても、コマンドがないぞ。




 ……あれ?




 えっ……あれれ?




 …………。






 えええええええええええーーーーーっ!!??


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[良い点] 臨場感あっていい感じです(´・ω・`)
[良い点] 雰囲気。 高度に洗練されたあるあるはワンダーと変わらないのでっす! [気になる点] まさに、実況不能だよね...勿論、今後は無理、な筈、なのだけど実はされてて、視聴者コメとかが何かアレする…
[良い点] 大変楽しく読ませていただきました。 原作ゲームはTRPGとかオープンワールドRPG的もの(スカイリムとか)をイメージしましたが、面白そうですね! オートセーブで、死んだら終わりなのも好み…
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