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第ニ話

そこは薄暗い森。だがどこか神秘的な場所。


今の時代こんな自然が残っている場所は少ない。



「美しいだろ、人間。昔はこんな自然が多くあったものだ。我ら龍人の森が。」


ヴァン達に向かって龍人のリーダーらしき者が言った。


その声は懐かしむようにも悲しんでいるようにも聞こえる。


「…だが貴様ら人間が森を、我らの里を破壊していった!」


龍人は突然声を荒げ、目付きが鋭くなった。


「貴様ら人間共は、ここに立ち入る事自体許されんのだ!」


そう言って龍人は背中の翼を広げる。


それが合図だったのか他の4人の龍人達が飛び掛かってきた。


ライト達はまともに戦えるのが3人。さらにその中の一人は新人であまり期待できない。


「ヴァン!!結界を!!」(今からでは間に合わないのは分かっている。だがそうするしか…。)


龍人達がどんどん近づいくるのがわかる。


ライトは一瞬死を覚悟した。


だが


「諦めんのははやいだろ!」


ヴァンがそう言うとライト達の周りに風が起こる。


「これは…『ウィンド』!?」


『ウィンド』はもともと初級の攻撃魔法だが、ヴァンはそれで壁を作りうまく防御魔法として発動したのだ。


「結界より早く作れるんだ。あんま保たないけどね。」


ヴァンはまだあきらめてはいない。


(そうだったな。簡単に諦めちゃいけないよな。)


ライトは冷静を取り戻したようだ。


「…すまないヴァン。…だがこの状況ではどうする事もできん。一時撤退するぞ。」


ヴァンは少し嫌そうな顔をしたがさすがに部が悪いのはわかっている。


「わかったよ。兄さ…。」


だがヴァンが言い終える前に風の壁が崩壊した。


「我らをなめるなよ!人間共!」


そう言うと龍人はライトとリチャードに向かって火球を放つ。


2人はそれをなんとか避けることができた。


だがギルダ達は動けず炎に飲み込まれてしまった。


「畜生!」


ライトは空中で体の向きを変え、龍人と向き合う。


「食らえ!龍人!『ホワイトランス』!」


そう叫ぶとライトの手から無数の白い雷槍が放たれる。


それは龍人目掛けて飛んで行き、4人は避けたが逃げ遅れた一人の龍人を貫いた。


「ちっ!よくも人間のぶんざいで!」


龍人の怒の声が聞こえた。


「朽ち果てろ!人間!」


龍人は再び口から火球を放つ。


ライトとリチャードは空中で身動きがとれない。


そして……


…2人は炎に包まれた。


「兄さん!!リチャード!」


ヴァンは必死にライト達を助けようとした。


だが火の勢いが強すぎて近付くことができない…。


それを見ていた龍人達が口を開いた。


「諦めろ人間。あれはもう助からない。」


龍人達は満足そうに笑っている。


『全員死ぬなよ』


ヴァンの頭に出発前のライトの言葉が思い出された。


ライトとの小さい頃からの記憶と共に…。


「…許さない…。」


ヴァンは炎を見つめて呟いた。


「なんだと?」


「許さない!」


「何を言うお前らだって我らの同胞を…」


「許せない!!」


そう叫ぶとヴァンから凄まじい魔力が漏れだし、体を覆っていく。


すると、みるみる髪と瞳がきれいな黒から白銀へ変わり始める。


さらに背中からは服を突き破って銀の翼が現れた。


「なっ!なんだそれは!」


龍人は驚いたように叫んだ。


そして次の瞬間―


龍人の3人が銀の炎に包まれ一瞬で灰になった。


「なんだと!?どう言う事だ!本来火を司る我ら龍人がやかれるなど…!」


龍人の頭に一人の存在が浮かび上がった。


…知っている。あの銀の炎を。あの凄まじい力を。


『人間と龍人は共に歩いて行ける』


いつもそう言っていた龍人。


同族でただ一人の白銀の龍人。


唯一龍を焼けるほどの炎を持っていた龍人。


《アルバ・ハートラル》!!


「…だがあの方は1000年以上前に死んだ伝説の龍人だ!生きているはずが無い!それに人間では無い。龍人だ!」


だが目の前にいるのは白銀の炎と凄まじい力を持つ人間。


「どう言う事だ!人間!」


だがそんな龍人の話などヴァンは聞こえていないように、手のひらから白銀の火炎が放たれた。


その炎は最後の龍人を一瞬包みこみ、灰にした。



それから何時間がたっただろうか…。


ヴァンは自分がわからなくなっていた。


知らない力、姿。

人間なのか龍人なのか…それともただのモンスターなのか…。


「兄さん…。」


ヴァンは既に白銀の姿でなく元の姿に戻っていた。だが手には短剣を持ち黒い髪には返り血をあびている。


そしてヴァンの足下には無残な龍人達の死体。


ヴァンは一人で龍人の里を全滅させてしまった…。


だがその中にはまだ子供の龍人、年老いた龍人もいた。


ヴァンは命令でもない限り殺しなどしない。むしろ敵でさえ助ける時もある。


「戦争…なんだ…。」


焦点が合っていない瞳からは涙が流れている。


絶望の瞳。精気も覇気も無い。


「…それは違うぞヴァン・ダムホープ。」


突然後ろから声がする。


ヴァンが振り向くとそこには何人もの黒いフードをかぶった者達がいた。


「…誰だあんたら…。この里の奴、じゃないな。なんで俺の名前を知っている?」


すると中の一人の男が口を開いた。


「…君の事はよく知ってる。14歳で入隊。15歳にして異例の少尉昇進の神童。そして…。」


男は一瞬口を閉じてから続けた。


「…白銀の龍人―アルバ・ハートラルの細胞を受け継いだ人間。《A系ストライダー》ヴァン・ダムホープ。」


「《A系ストライダー》?なんだそれは。お前らなんなんだ?」


わからない事が多過ぎる。


ヴァンはだんだんイライラしてきた。


「あぁ。紹介が遅れたね。私達は戦争反対派の人間、龍人が集まって結成した組織。」


ヴァンは戦争反対派の人間は何人も見ている。


だが龍人と組んでいる組織は初めて見た。


「我らの指導者は龍人だ。…会った事は無いがな。その方は我らに力を残しておいて下さった。《ストライダー》と言う力を。」


「《ストライダー》って俺か?」


「まぁそう言う事だ。《ストライダー》とは人間に龍人の細胞を組み込むことで進化した人間。」


ヴァンはハッとした。

あの力、あの姿。


「そうだ。君は1000年前の龍人であり我らの指導者、アルバ・ハートラルの細胞を受け継ぎ進化した人間ストライダーだ。」


「なん、だと…。」


「アルバ・ハートラルは自分の細胞を残し技術を記した遺跡を創った。我らはそれを発見し《ストライダー》を創り、反戦争組織を創った。我らの名は…。」


《SILVERWORLD》




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