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掛け合い

 ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎




 「宜しくな」と、言われながら差し出された太い腕に対して恐る恐る手を差し出したのはエレナ。こ、ここ、こちらこそ……と、あまりの覇気に圧倒されてしまっていたが、礼には礼を持って遇する、礼儀として返さないわけにはいかない。弱々しく握り返そうとしていると、何倍もの太さの腕が大きく動いてその手を掴んで縦に振るう。




 木の幹と並べても何ら遜色の無い精錬された二の腕や上腕二頭筋、完璧な戦闘武器と化している腕を見ればその根元へと視線が引き寄せられるのは自然なことだった。




 鍛え抜かれた体というのはこういうことを言うのだと思い知らされる。自分も多少は体つきに関しては自信があった方だというのに、これと比べられては勝てる気も持てない。




 ミリタリー色のトランクス一枚を除くその体の全てには、殆どの部位という部位に何かしらの傷跡が残っていた。矢傷から刀傷に至るまで、ありとあらゆる戦いの爪痕がこの男から滲み出ている。




 その全てから総合してこの男を評価するなら……素手でサイクロプスを相手にできても不思議では無い。 この人の実力はミコトさんやミズキさんと同じかそれ以上だと見ていいだろう。




「ガハハハハハ! 儂に気圧されながらもこうして礼は弁えている辺りが流石はチノの友人たちだ! 」

「ど、どうもです……」

「それに、よく見れば三人とも相当の別嬪さんではないか! 将来的に期待できる分楽しみだな! 」

「シド隊長それ……セクハラですよ? 」

「本当それ、そういうデリカシー無い発言してるから女の子が怖がったり引いて近づかないんですよー」

「何ぃー? 儂としてはそんなつもりは微塵もないんだがな……」

「ほらー、自覚がないところが余計にダメです。自覚がある方がまだ治しようもあるのに……」

「本当それ、天然セクハラ親父とか今時ウケないっすよー。まあ、つまりは……」

「「駄目駄目だよねーwww」」

「シン! フー! 五月蝿いぞさっきから! お前ら隊長の事を馬鹿にしすぎだ! 」

「出たよ隊長オタク! ハイネは良い加減隊長離れした方が良いんじゃないの? 副隊長の癖に早く自立してほしいもんですなー! 」

「本当それ、男のクセに中年好きとか……」

「「駄目駄目だよねーwww」」

「な、なな、なんだとぉぉぉぉぉ‼︎ お前ら表に出ろ! 俺がみっちり稽古つけてやるから早くしろぉぉ‼︎ 」

「「嫌だよ」」

「な、なにぃ? 」

「だって汗掻いちゃうじゃん! 」

「本当それ、私達これでも乙女なんですけどー? 」

「まだ十歳程度の双子が乙女とか言うな! た、隊長ぉぉ! こいつらにバシッと言ってやってくださいよー」

「まあそう言うなハイネ。こいつらは何だかんだ言いながらも根は優しい子達だ、許してやれ」

「た、隊長がそこまで言うなら……」

「あー優しい副隊長様で助かったー! 」

「本当それ、お優しい副隊長様には感謝です」

「グヌッ……! が、我慢だ……ここで怒れば隊長との約束が……」





 何だこの更に個性的な人達は。テントの奥から現れた四人に度肝を抜かれた。一人は黒い髪を寸分違わずピッチリと分け切った真面目そうな男性。そして残り二人は顔が瓜二つの少女達。どこがどう違うのか探す事が難しい位、二人は似過ぎていて、薄紫色の髪に着けているリボンが唯一の違いを示していた。




「ふ、ふふふ、あはははは! 」

「ぷ、ぷっはっはは! 」

「んん? 」



 エレナとミハルがこのノリに堪らず吹き出し、口元を隠して誤魔化しているがポーシャも体が小刻みに動いていた。まあ、こんなコント擬を見せられちゃ腹筋が嫌でも捩れてしまう。そんな訳で三人と違わず俺も笑いが止まらない。




 それが不思議に思っているのか、はたまたこれが日常的な会話となってしまっているのか、第七独立戦闘部隊のメンバーはキョトンとした表情でこちらを見ていた。




「す、すみません! なんだか思ってたイメージと皆さんが全然違って……面白くてつい……」

「なんだ、いきなり笑い出したから心配したぞ。お前等、良かったな。一般市民の方々からお褒めのお言葉を頂けたじゃないか」

「隊長も漏れなく入ってますけどね……」

「本当それ、パンイチガチムチ中年とか……」

「「キャラ濃すぎwww」」

「ん、そうかー? 男は家ではパンツ一丁が正装だろうに……なあ? 」

「いや、自分に聞かないでくださいよ! 」




 再び会話を聞いてしまうことで、俺達の笑いのツボに突き刺さり笑いがドッと起き、それにつられて第七独立戦闘部隊の人達も笑い出す。まだ自己紹介も済んでいないのにこの人達とは仲良くやれそうな気がした。




「お前等、この際だから序でに挨拶しておけ。チノの友人達だ」

「私はシン、こっちは」

「フーでーす、宜しくねー」

「あ、はい! 宜しくお願いします! 」

「しっかし……珍しい事もあるもんですね。チノちゃんが私達以外のお友達を連れてくるなんて、しかも女の子だけじゃなくて男の子もいますよー? 」

「本当それ、男嫌いなチノにしては珍しいこれはまさか……」

「「恋の予感⁉︎ 」」

「違いますから。二人とも勘違いも度を越すと呆れてきますから止めてください。殺しますよ? 」

「「お、おおー、クールだー! 」」

「馬鹿は放っといて……私はハイネと申します。以後お見知り置きを」

「この人……男好きだから君も気をつけた方がいいかもね! 」

「本当それ、ハイネは男好きだから背後には気を付けてねー? じゃないと……」

「い、良い加減黙れぇぇぇぇぇ‼︎‼︎ 」

「わーい、ハイネが怒った〜! 」

「本当それ、歳下に怒るとかマジでないわー! でも、取り敢えずここは……」

「「にっげろ〜‼︎ 」」

「待てゴラァァァ‼︎ 今日という今日は絶対に許さんからなぁぁぁぁぁぁあぁあ‼︎ 」

「……まあ、彼奴らは良い奴で腕は確かなんだが……すこーしばかり元気が良過ぎるから勘弁してやってくれ」

「面白い人達でしたね。軍役に付いている人には思えない位ユニークでしたし」

「なんだかアットホームな空気で楽しそう」

「おっ! じゃあ、お嬢さん達もウチに来るかい? 美人さん揃いだし儂もハッスルしちゃ……「パパ」

「な、なんだ……チノ? 」

「度重なるセクハラ発言……ママに言いつけてやります……」

「すまん! それだけは勘弁してくれ! 」

「ふん……私を辱めた罰ですよ」

「許してくれチノォォォ‼︎ 」




 威厳ある中年の姿が一瞬で溶け、パンツ一枚のガチムチ中年が小さな女の子に縋り付いては泣いている。凄いのか凄くないのか




「な、何もそこまで泣かなくても……」

「パパはママに対して圧倒的に弱者なのでこうして弱みを握ればあっさりなんです。ふふ、面白いでしょ? 」

「「「あ、悪魔だ……悪魔がいる……」」」




 天性のドSの片鱗を見せるチノとその仲間達。キャラが濃すぎてこちらの存在感が薄れそうに感じた。

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