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 暖かい日差しが差し込む中、カプリオによるネゴシエーションは始まった。相手は遥か上の階級で少将だ。いかに面識がありリラックスしている相手とはいえ、交渉が成功するかはカプリオ次第。





「……ふむ、駐屯地内での商売活動か。確かに私が許可を出せば問題は無いだろう。だが、前例が無いし、簡単にはいそうですかと出せるものでもないね」

「では、私達の第七独立戦闘部隊の管轄区域内でなら許していただけませんでしょうか? 」

「……シドさんには大きな借りがあるし……でも、上にバレたら煩そうだなあ……」




 白く染まった頭を掻きながらこちらを見据えている。それは信用に足る者達なのか、メリットとデメリットを天秤に掛けて利があるか考える商人に似ていた。

 



 この人、見た目は温厚な男性だけれど、その実は色々な事を頭で考えて、蜘蛛の糸のように思考を張り巡らせているキレ者の目をしている。人の上に立てる素質とは人を見る目も必要なのだろう。




「ほんの少し、ほんの少しの時間だけでも良いので御許可をいただけませんか? 責任は私、チノ・カプリオ伍長並びにアマノ・マサムネ一等兵が負います! 隊長にも話は通しますのでどうかご考慮を! 」

「「私達からもお願いします! 」」



 深々と頭を下げ、誠意を見せる。

 顔に手を乗せ、一度深く溜息を吐くとタカハラ少将は諦めた顔で笑いながら言った。




「いいよ」

「ほ、本当ですか⁉︎ 」とエレナが聞き直す、タカハラ少将はエレナに対して柔かな表情で頷いて返す。




「私もね、かねがね思っていたのだけれど、外からの刺激が無いと中に溜まってしまうモノもある、それを解消するには外的な風を吹き込ませることだと思っていたんだ。この際だから丁度良い、好きにしなさい」

「ありがとうございます! 」

「ただし! そちらの言った条件を忘れないように。他の場所を彷徨いていたりしたら……分かるね? 」

「はい! 私達が責任持って監視します! 」

「うん、なら良いんだ。あ、あと、シドさんにこの前の借りはこれでチャラにしておいて下さいと伝えてくれるかな? 」

「了解しました! 必ず伝えておきます」

「それでは、私はやる事があるので戻らせてもらうよ。部下達には後でそちらへ覗いてみるように言っておこう……勿論内密にね」

「「か、重ね重ね感謝します! 」」



 

 敬礼をするカプリオに合わせて礼をした後、俺達はその場を後にした。

 あれよあれよと話は進み、タカハラ少将はテントへと帰っていく。こんなに簡単に話が済んで良かったのか?




 なんて考えていたら後ろのテントから慌てて出てくる人物がいた。そう、タカハラ少将その人である。

 



「忘れていたよ! チノちゃん! 隊に戻る時は少し遠回りだけど大きな道を選んでいくと良い」





 この時、誰もこの言葉の意味を察する事が出来なかったが、後になって分かる。タカハラ少将はやはりキレ者だったと。





 

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「思ったよりも話が分かる人で助かったね」

「タカハラ少将は一応戦闘職種ですが、戦闘力でのし上がったというよりは人望であの地位まで上り詰めた人なので人を見る目はあるんですよ。その人に認められたからこそここまですんなりと進んだんです」

「なるほどねー」

「部下からの信用も厚く、下の意見を吟味して採用することに関してはプロ中のプロです。人を使わせたらあの人の右に出る者はいません」

「そう言えば、勝手にカプリオの所属する部隊の管轄内で良いって言ったてたけど大丈夫か? 許可も何も上官に聞いてもいないのに」

「私の言うことなら何でも聞いてくれる人なので」

「さいですか」




 カプリオの所属している部隊ってかなりルーズなのだろうか。少しだけだけど興味が出てきた、隊長と呼ばれる人に早く会ってみたい。




 駐屯地内を歩いていると流石に見慣れぬ一行がいるとあって人目を集めているようで、強い視線を何度も感じる。だが、これはこれで印象付けておくことで後々になって集客効果が出てくる。何せ、こっちにはエレナやミハルにポーシャの美人美女が三人もいる、人目につくのは当然だ。




 それぞれタイプが違う可愛さを備えていて、男が圧倒的に多いこの駐屯地内で花の様な若い女子がいたら、盛り上がりも尋常じゃない。まだここに来て少ししか経っていないのにすれ違う人、見物人が増えている気がする。




 ここにきて、タカハラ少将が最後に話した言葉の意味が分かった。あえて大通りを歩く事で人目にワザとつかせようとしていたのだ。




 エレナ達は少し恥ずかし気な表情でカプリオの側から離れぬようくっ付いて歩いているが、その奥ゆかしさが返って高評価らしい。ひそひそ声で口々に『可愛い』とか、『名前はなんて言うんだろう……』なんて言ってるみたいだし。




「は、恥ずかしいですね……」

「そうですか? ミハルはなんともないですケド……」

「と、とか言ってミハルちゃんも頰っぺた赤いよ! 声も裏返ってるし‼︎ 」

「そ、そんな事ありません! ちょ、ちょっとだけ緊張してるんですっ! 」

「皆さん綺麗ですから隊員達も浮き足立ってるんですよきっと」

「……あんまり言ってやるな、三人ともガチガチになってる」




 仕事は仕事、プライベートはプライベート。いつも他人と接客することで対人は得意に見える三人だが、ここまで沢山の、それも男性ばかりに注目されるのは恥ずかしいようで、男達に反応する事無くそそくさとテントを目指した。



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